静音パソコン
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静音パソコン(せいおんパソコン)とは、明確な定義は存在しないものの、主にファンモーターの音などの稼働音を抑え静穏性、静寂性に配慮したパソコン全般を指す言葉である。
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[編集] 概要
Windows 95発売以降、パソコンの性能はメーカー同士による開発競争により著しい高度化をみせた。その結果、パソコンの消費電力は飛躍的に大きくなり、主として冷却ファンの発する騒音によりパソコンの静穏性、静寂性が大きく損なわれることになった。加えてDVDやTVなど、マルチメディア機能がパソコンに搭載されるようになって以降は、快適な視聴環境の指標としてパソコンの静穏性、静寂性は、性能の1項目として注目されることになった。パソコンの静穏性、静寂性を「静音性」とよび、静穏性、静寂性に著しく優れたパソコンを製造するメーカーが近年増えている。具体的に「静音性」を音圧レベル(dB単位)で公開しているメーカーも幾つかある。
2000年前後を境に、自作パソコン愛好家の中では性能よりも静音性を重視する層が増加し、そういった静音派向けの雑誌も多数販売されている。これはPCが発生させる騒音が年々大きくなったことと、PC自体の高性能化が実用上必要とする性能以上に進み、多少の低性能化を行っても性能面で不満を感じなくなったことが要因として挙げられる。
[編集] 静音パソコンの実装方法
基本的には、物理的に駆動するPCパーツ(冷却ファン・HDD)から音が発生するため、それら騒音源となるPCパーツを取り外すか低騒音な自作用PCパーツに交換することになる。
- CPUファン
- CPUの高性能・高発熱化に伴って最も騒音を発するPCパーツとなっており、通常はヒートシンクに合わせて口径5cm~8cmの高速回転型の冷却ファンが固定されている。その駆動音・風きり音が最大の騒音源となっている場合が多い。CPUを低発熱型(ノートパソコン向けCPUや組み込みシステム向けCPU)に交換したり、ダウンクロック(アンダークロック)や低電圧化といった手法で低発熱化する事が可能であり、さらに大型のヒートシンクを併用することでファンレス化が可能となる。ただし、夏期や高負荷が長時間続く場合には熱暴走や故障の恐れがあり、ケースファンなどの風がヒートシンクに当たるようにエアフロー(通風)を考慮する必要がある。無理にファンレスを狙わず、ファンを大型で低回転な型に換えるだけでも相応の効果がある。一部のメーカー製パソコンでは、排気ファンに隣接させることでファンレス化している例もある。
- 近年になってメーカー製や自作パーツとして水冷ユニットが普及しているが、後述するようにPC内で冷却すべきなのはCPUだけではないので、水冷だからといって過信しないことが重要であり、またメンテナンスに手間がかかり、故障しやすいことも忘れてはならないとされている。
- 電源ユニットファン
- 通常の電源ユニットには冷却用の排気ファンが取り付けられており、それを止めたり極端に弱めることは電源部の異常過熱をもたらし、発火等の重大事故を引き起こす恐れがある。大口径のファンを採用したものや、大型のヒートシンクを用いファンレスを実現した製品が静音電源として市販されている。ACアダプタを使用した外部電源を採用することも効果的ではあるが、入手が困難であったり、電源供給性能に信頼性が低かったり、価格面での不満も多いとされている。
- ケースファン
- 外部から空気を取り入れたり、あるいはケース(筐体)内部の熱を外部に排気するためのファンで、空冷式では最も重要なエアフローの根幹となる。ケース外部に接して装着されるため、このファンも騒音源となりやすい。全て無くすことも可能だが、パソコン内にはCPU以外にもチップセットや各種オンボードチップ類、HDDなど発熱する部品が多々あり、それらを全体的に冷却するためにケース内からの排熱は必ず行われるべきである。通気性の高いケースを使って大型・低回転のファンを使うのが効果的といわれるが、ケース自体が巨大なヒートシンクになるファンレス前提の製品も少数存在する。排気ファンは電源ユニットのファンで兼ねることも可能。煙突などを用い熱対流(煙突効果)を利用した吸排気は、知識と十分な検証なしでは満足に機能しないことに留意すべきとされている。
- 少し前までのエアフローはケースの前面で吸気・後面で排気が基本であったが、CPUやビデオカードなどの高発熱に伴って側面からCPU部に直接吸排気するタイプ(パッシブダクト)も人気である。そのほか、24センチ大型低回転ファンの採用や12センチ低回転ファンを複数搭載することでケース内のエアフローを実現した商品もある。ただ24センチなど大口径ファンの冷却能力については、評価は分かれている。
- ファンに供給する電圧を下げる手法もよく取られる。通常、ケースファンの供給電圧は12Vであるが、一般に、ファンは12V以下でも動作する。低電圧を供給することで、低回転・低騒音での駆動を実現する。とはいえ、電圧が低ければトルクが極端に下がり、場合によってはファンが回転しないこともあるため、安易に電圧を下げることは推奨されない。最も簡易な方法は、ATX電源から5Vを供給することであるが、5Vでは動作しないファンも多い。他にも12Vと5Vを反転して接続することで差分の7Vを得る手法があるが、安全性には疑問がある。配線中に抵抗器を入れることで電流を小さくする手法もよく用いられるが、電圧をコントロールすることは難しい(ファンの抵抗は変動するため)。市販の「静音ファン」には、既存のファンに抵抗器を付加した設計のものも多い。ダイオードを順方向に接続し、電圧降下を利用する手法があり、これならば比較的安全に電圧を下げることができるが、実装例は少ない。PWMによる制御を行う手法があり、近年は一部マザーボードでも実装している。電圧を下げるよりも低回転での駆動を実現できるが、かえって耳障りな騒音を発生してしまうファンもある。
- ファンの制御を行う「ファンコントローラ」を利用することも多い。単純なスイッチ、あるいは可変抵抗によって電圧を変更するのみの簡単なものから、サーミスタによるセンシングを行い回転数を制御するもの、USB接続等によってOS上のアプリケーションと連携をとる高機能なものまである。
- HDD
- HDDの騒音はプラッタ(内部の磁気ディスク)の回転音と、磁気ヘッドのシーク・アクセス音に区別される。騒音自体は電源投入時のスピンアップ音(モーター駆動音)が最も大きいが、起動時のみでありあまり問題とされない。稼動中の回転音やアクセス音は比較的新しい製品であればさほど気にならない程度に抑えられている。また、HDDを収納するタイプのパーツを使うことである程度音を封じ込めることが可能。ただし、HDDの発熱がこもったり、障害発生の前兆(異音)に気付きにくくなるというリスクがある。
- なお、近年登場したSSDは、記憶装置にフラッシュメモリを使用しているため機械的な駆動部品が一切存在せず、そのため騒音は皆無で発熱や消費電力もHDDに比べ低く、HDDと置き換えることで静音化に大きく貢献する。ただし価格が高価で容量も少なく、さらに書き込み耐性への不安といったデメリットもある。ただし2009年1月時点では、価格はある程度こなれてきたり(起動・アプリケーションのインストール用途ととして使うのなら32GBで8,000円程度まで下がっている)、容量や書き込み耐性への不安も改善しつつある。
- ビデオカード
- 描画性能の向上に伴って冷却ファンが付いていることが多くなり、ほとんどが小型で薄型の高回転ファンであることから、かなりの騒音が発生する。大型ファンを用いた冷却装置や、ファンレス化するための専用ヒートシンクに交換するなどの対策があるが、取り付け位置の関係でそういった装置を付けられないといった事情もある。また、そもそも必要以上の高性能ボードにしない、最初から大型ファンを使用したボードを購入するといった対処も考える余地がある。
- マザーボード
- ノースブリッジに小型のファンがあるマザーボードは騒音の原因のひとつとなる。
[編集] 静音スパイラル
例えばCPUファンを静音化したら電源のファンが、電源のファンも静音化したらHDDの音が…といったように、最大の騒音源を改善してもまた別の騒音が気になり、次から次へと静音化を実施していくことを、俗に静音スパイラルと呼ぶ。一種の中毒とも言える。
その一方で静音PCの最大のメリットは本項”概要”にもあるように、AV機器として使う場合で、PCからの騒音が抑えられると音楽や映画に集中できる。5.1chサラウンドなど音にこだわったオーナーにとって静音は重要な要素となりうる。
DVDやBlu-rayディスクなどの光学ドライブも最近は静音性を考慮した製品が存在するが、回転数が上がった場合はどうしても騒音が発生しやすいため、最終的にはHDDにコピーして騒音を減らすなどの方法が取られる。その際は著作権保護機能が問題となりやすいため、実施には注意が必要である。

