荒川橋梁 (東北新幹線)

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荒川橋梁
基本情報
日本の旗 日本
所在地 東京都板橋区 - 埼玉県戸田市
交差物件 荒川
建設 1979年-1985年
構造諸元
形式 合成桁橋
全長 639 m[1]
20.7 m
最大支間長 86.7 m
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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荒川橋梁(あらかわきょうりょう)は、東京都板橋区舟渡埼玉県戸田市堤外の間で荒川に架かり、 東北新幹線上野駅大宮駅間および東北本線の支線(通称埼京線浮間舟渡駅戸田公園駅間にある複々線鉄道橋である。 約70 m上流側に国道17号戸田橋が架かる[1]

建設[編集]

荒川の河口から25.0 km[2][3]の地点の荒川に架かる 橋長521.200 m、総幅員20.700 m(新幹線11.300 m、在来線9.400 m)[4]、最大支間長86.7 m[5]の鉄道橋である。東北新幹線と東北本線の支線(通称埼京線)である在来線が一体となっている橋梁で、周囲は住宅密集地であるため騒音と振動の問題を解決すべく、鋼コンクリート合成構造を持つ7径間の1箱形合成桁橋[6]。道床は弾性直結軌道式を採用している。発注者は国鉄資材局[7]である。総鋼重は新幹線は4751 t、在来線は4525 tで、設計荷重は新幹線はN-16,P-17、在来線はK-12,S-16である[7]。支間割は起点側から第1から第4が68.6 m、第5が72.8 m、第6が86.7 m、第7が74.6 mで[8]、両側のプレストレスト・コンクリート桁で設けられた側径間を合わせると全長は639 mとなる[1]

終点側では、下り列車に対して左へ半径810 mの曲線が入っている。縦断線形は、左右両岸の堤防上道路から決定され、終点へ向けて1.1パーミルの上り勾配である。また橋脚の配置は戸田橋に合わせてある。合計8基の橋脚は、ニューマチックケーソン工が2基、鋼管矢板井筒工が6基である。地盤沈下が激しく、軟弱地盤で変位が大きくなることから、連続桁は不適当とされ、単純桁が採用された[1]。これだけ長大なPC桁の実績がなく、トラス橋か合成桁の採用が必要となったが、防音設備の施工が容易であることから合成桁が採用された。列車荷重によるたわみ差の影響をなくすため、在来線と新幹線の桁は完全分離されている[9]

橋梁の建設に先立ち、1979年昭和54年)1月12日14時より荒川河川敷の架橋地点で、地質調査を目的として数ヵ所のボーリング調査が[10]約1ヶ月間実施されている[11]。 橋梁の起工は1979年(昭和54年)12月19日[12]である。なお、1980年(昭和55年)3月12日に工事現場近傍の星美学園による荒川橋梁建設工事中止の仮処分の申し立てが行われたが、後に和解が成立した(詳細は「赤羽台トンネル#反対運動」の項を参照)。 橋梁の製作会社は櫻田機械工業(サクラダ)、宮地鉄工所(現、宮地エンジニアリング)、横河橋梁製作所(現、横河ブリッジ)である。 設計管理は日本国有鉄道 東京第三工事局で、架設工事は株式会社間組が行い[13]、架設工法として最も一般的な工法である、自走クレーン車もしくは台船によるベント工法が用いられた。ベントとは架設桁を支持するための仮設の構台の事である[14]。 工費は約100億円である[11]。橋梁の開通は先ず1985年(昭和60年)3月14日の東北新幹線の上野駅・大宮駅間の開通に合わせて新幹線部分の供用が開始され、次いで同年9月30日の埼京線の開通により在来線部分の供用が開始された。

開通後の運用[編集]

1987年(昭和62年)4月1日に橋梁は国鉄分割民営化により東日本旅客鉄道(JR東日本)に継承された。 2012年平成24年)7月にJR東京耐震補強工事区が発足し、首都直下地震対策として橋脚にコンクリートを巻き立てるなどの耐震補強工事が2013年(平成25年)1月より実施された[15]。施工は東鉄工業株式会社が担当し、2015年(平成27年)5月に工事が完了した[16]

周辺[編集]

荒川橋梁付近より下流方向を望む。

橋の周辺は市街地となっている。荒川の流心は戸田市側に寄っているため、板橋区側の河川敷が広くなっている。河川敷は公園やゴルフ場などのレクレーション施設として利用されている。

風景[編集]

隣の橋[編集]

(上流) - 笹目橋 - 戸田橋 - 荒川橋梁 - 荒川橋梁 - 新荒川大橋 - (下流)

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 『東北新幹線工事誌 上野・大宮間』p.369
  2. ^ 荒川下流河川維持管理計画【国土交通大臣管理区間編】 (PDF) p.73(巻末-7) - 国土交通省関東地方整備局 荒川下流河川事務所(2017年3月). 2020年2月閲覧。
  3. ^ 企画展「荒川の橋」荒川・隅田川の橋(amoaノート第8号)” (PDF). 荒川下流河川事務所(荒川知水資料館). 2005年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月5日閲覧。
  4. ^ 『橋梁年鑑 昭和59年度版』p.117
  5. ^ 研究展望:土木分野における複合構造の最近の動向と研究状況 (PDF) p.5(p.35) - 土木学会
  6. ^ 鋼コンクリート合成構造の発展の動向と展望 (PDF) p.6 - 土木学会論文集 第414号/V-12 1990年2月
  7. ^ a b 『橋梁年鑑 昭和59年度版』p.182-183
  8. ^ 『東北新幹線工事誌 上野・大宮間』p. 372。
  9. ^ 『東北新幹線工事誌 上野・大宮間』p. 369。
  10. ^ “調査を開始 東北新幹線の荒川橋”. 朝日新聞(東京13版) (朝日新聞社): p. 22. (1979年1月13日) 
  11. ^ a b “新幹線荒川橋 現地調査始まる”. 埼玉新聞 (埼玉新聞社): p. 8. (1979年1月13日) 
  12. ^ 松本岸雄「開業までの経緯」『交通技術』、交通協力会、1982年6月、11-12頁。 
  13. ^ まちづくりフォーラム講演録” (PDF). さいたま市大宮区. pp. 19,49 (2014年3月2日). 2014年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月5日閲覧。
  14. ^ 鋼橋の代表的な架設工法の説明 - 鋼橋ネットサービス
  15. ^ 工事名称 東北線外利用高架橋その他耐震補強工事その1 - 東鉄工業株式会社、2014年10月3日閲覧。
  16. ^ 東北新幹線 荒川橋りょう橋脚耐震補強工事が完成 - 東鉄工業株式会社(2015年7月3日). 2016年1月16日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯35度47分59.9秒 東経139度41分7秒 / 北緯35.799972度 東経139.68528度 / 35.799972; 139.68528