トラス橋

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トラス橋(横雲橋)
橋でよく使われるトラス構造

トラス橋(トラスきょう)は桁部分にトラス構造を使ったである。トラスは細長い部材を両端で三角形に繋いだ構造でありそれを繰り返して桁を構成する。トラス橋は桁橋の一種に分類される。

材料としては木材や鉄などの金属が使われるが、ある程度以上の規模の橋は鋼鉄が主流である。鉄を使ったものの場合多くは箱型断面やH型断面の溶接構造が一般的だが、H形鋼山形鋼が組み合わされた構造の場合もある。近年コンクリート製のものも作られるようになった。

トラス橋の設計に伴う構造計算では部材のつなぎ目は一点で繋がり自由に回転できるようになっているとして考える。理想的なトラスでは荷重や温度変化に伴う部材のたわみや伸縮はこの接続点部分に集約される。実際の橋梁においては、初期のトラス橋では理論と同じピン接合の構造が見られたが、現在ではガセットプレートによる剛結接合が一般的である。

トラス構造は他の形式の橋梁でも部分的に用いられることがある。吊り橋の桁部分やアーチ橋のアーチ部分がトラスである場合がある。橋脚がトラスである橋もあるがこれのみでは通常トラス橋とは呼ばれない(例:余部鉄橋、桁部分はトラスではない)。

橋で使われるトラスの形式には図のようなものがある。他にプラットトラス全体を三角形に変形したようなキングポストトラスというのもある。橋自体の形式は次項参照。

目次

[編集] 桁の数による分類

[編集] 単純トラス橋

近鉄京都線澱川橋梁

2つの橋脚でトラス構造の桁を支えるもの。トラス橋として最も簡単な形式である。

[編集] 連続トラス橋

トラス橋を連ねたもの。

  • 関西国際空港連絡橋 全長3750m。トラス橋として世界最長。
  • 高千穂橋梁 水面からの高さ105mは鉄道橋として日本一の高さ。
  • 犬山橋(鉄道橋のみ) 日本最後の鉄道道路併用橋。2000年に南側に新しく道路橋(けた橋。この橋も犬山橋と呼ばれる)が架けられ、現在は名鉄犬山線専用となっている。

[編集] 載荷弦の位置による分類

載荷弦とは、上弦(水平方向の部材のうち、上側)・下弦(同・下側)のうち、荷重が乗る側のことである。鉄道橋でいえば、線路が載っている側である。

[編集] 上路式

主構の上に桁がある。通路は主構の上部となる。

デッキトラスともいう。上弦が載荷弦となっているもの。橋脚の高さを抑えることができる。桁下に十分な空間がある場合などに採用される。トラス橋はそれ自体の高さが大きなものとなるため、採用例は比較的少ない。

[編集] 下路式

主構の下側に桁がある。通路は主構内部となる。

スルートラスともいう。下弦が載荷弦となっているもの。主構(上・下弦材およびそれらを結ぶ垂直材・斜材)の内部を通行する。跨線橋や跨道橋、河川横断部で大径間が必要な場合などに採用される。

[編集] 形状による分類

[編集] 曲弦トラス

不載荷弦(荷重が載らない側の弦材)が曲線を描くもの。多くは格点(部材の結合点)を直線で結ぶ、折れ線状である。第二次世界大戦前の採用例が多い。

下路式のうち、上弦が放物線に近い形状のものをパーカートラス(Parker truss)、放物線に近いが直線で結んだものをキャメルバックトラス(Camelback truss)と呼ぶ。

[編集] 平行弦トラス

載荷弦、不載荷弦ともに直線かつ平行であるもの。現代での採用例が多い。

[編集] トランケートトラス

例えば川に対して斜めに架橋する際に使用する斜角トラス橋。真上から見て点対称の位置にある端柱をなくし、垂直にしたもの。主構を真横から見ると、一端は斜めに、他端は垂直になっている。

[編集] ポニートラス

画面左側のものがポニートラス

左右の主構のみで、上横構がないもの。小規模な下路式トラス橋に見られる。

[編集] トラスの組み方・架設方法・両者の組み合わせによる分類

[編集] カンチレバートラス(ゲルバー橋)

クーパー橋の例。中央の青いSuspended Spanが吊桁で、それを両側から方持ち梁が保持している

カンチレバートラス(Cantilever truss)またはゲルバートラス(Gerber truss)とは、トラス構造を持つカンチレバー橋である。通常の橋は橋台や橋脚を支点として桁を架けるが、カンチレバー橋は、吊桁を、両側の橋脚から張り出した片持ち梁(定着桁)がヒンジを介して保持するものである。通常のトラス橋は下弦が引張力を、上弦が圧縮力を受け持つが、カンチレバートラス橋は逆である。主として大きなスパンが必要な箇所に架けられる。

ハインリッヒ・ゲルバー(独)Heinrich Gottfried Gerber)が考案したため、日本ではゲルバー橋とも言われる。


[編集] キングポストトラス

キングポストトラス

キングポストトラス(Kingpost truss)とは、下弦が三角形の底辺を、上弦が三角形の2辺を構成し、三角形の頂点から下弦に向けて垂直材を備える、もっともシンプルなトラス橋である。垂直材をキングポスト(真束)といい、下弦とともに引張力がかかる。斜材には圧縮力がかかる。スパンの短い橋で使用される。

[編集] ワデルトラス

ワデル「A」トラス橋

ワデルトラス(Waddell truss)とは、キングポストトラスの分格トラスである。単純な構造であり、架橋現場での施工も容易。主として鉄道用の橋梁として使われた。

1882年から1886年まで東京大学土木工学を教授し、『日本鉄道橋梁論』の著作もあるジョン・アレキサンダー・ロウ・ワデルが考案し、特許を取得した[1]

[編集] クイーンポストトラス

クイーンポストトラス

クイーンポストトラス(Queenpost truss)とは、キングポストトラスを水平方向に拡大する際に、トラス部分を分割し、水平材で延長したものである。

[編集] 三弦トラス

三弦トラスとは、断面が三角形となったトラス橋である。日本では、水管を弦材として用いる形で水路橋に多用される。


[編集] バートラス

バートラス

バートラス(Burr Truss)またはバー・アーチ・トラスとは、アーチとトラスとを組み合わせることで強度を上げた構造である。トラスは橋を構造物として保持するためのみに働き、荷重はアーチが負担する。主として屋根付橋に使用された。

セオドア・バーTheodore Burr)が1804年に考案し、1817年4月3日に特許を取得した。

[編集] ハウトラス

ハウトラス

ハウトラス(Howe truss)とは、斜材を橋中央部から端部に向けて「ハ」の字形状に配置したトラス橋。垂直材に引張力、斜材に圧縮力が生じる。この力の作用の仕方は、プラットトラスと逆である。上路PCトラス橋に使用されるのみで、鋼製のトラス橋には採用されない。端柱(端部の斜材)の有無は問わない。

マサチューセッツ州ウイリアム・ハウWilliam Howe)が考案し、1840年屋根付橋の設計として特許を取得している。

[編集] アラントラス

アラントラス

アラントラス(Allan truss)とは、パーシー・アラン(Percy Allan)がハウトラスをベースに考案したもの。


[編集] フィーレンディールトラス

フィーレンディールトラス

フィーレンディールトラス(Vierendeel trussと)とは、梯子状の主構を持つ橋。部材を三角形に組んでピン結合する一般のトラスと異なり、部材に曲げの力を加えることで斜材をなくし、剪断力が働かないようにしたものである。トラスという語句が入っているが、部材は剛結されており、ラーメン橋に分類される。

アーサー・フィーレンディールArthur Vierendeel)が考案した。

  • 豊海橋 - 日本初のフィーレンディール橋


[編集] ブラウントラス

ブラウントラス

ブラウン・トラス(Brown Truss)とは、上弦と下弦が平行である平行トラス。圧縮力がかかる部分に木材を使用して上弦と下弦とを結び、引張荷重がかかる、路床をつり下げるロッドに鉄を使用する。垂直方向の圧縮力を受ける部材はない。屋根付橋で用いられる。

ジョシュア・ブラウン・ジュニア(Josiah Brown Jr.)が考案し、1857年に特許を取得した。

[編集] プラットトラス

プラットトラス
Kトラス

プラットトラス(Pratt truss)とは、斜材を橋中央部から端部に向けて「逆ハ」の字形状に配置したものである。垂直材に圧縮力、斜材に引張力が生じる。この力の作用の仕方は、ハウトラスと逆である。斜材がK字形、Y字形となるものもあり、それぞれKトラスYトラスとも称する。端柱(端部の斜材)の有無は問わない。ピン結合に適した構造で、日本では明治時代によく採用されたが、やがてハウトラスに移行した。アメリカでは長さ250フィート(76.2メートル)までの鉄道橋を、木橋から鋼橋に架け替える際によく採用された。

マサチューセッツ州のトーマス・プラットThomas Willis Pratt)とその父、ケイレブ・プラット(Caleb Pratt)により考案され、1844年に特許が取得された。

大型のプラットトラスでは、部材が長くなる場合に部材を追加して格間を短くしたものがある。それを分格トラスと総称し、さらにいくつかの種類に分かれる。

[編集] ペンシルベニアトラス

ペンシルベニアトラス。澱川橋梁

ペンシルベニアトラス(Pennsylvania truss)とは、曲弦の分格トラスである。


[編集] ホイップルトラス

ホイップルトラス(Whipple truss)は、プラットトラスの一種である。斜材にはすべて引張力がかかる。特徴的なのは、引張力を受ける部材が長く、多くの場合には細いことである。また、トラス部分は斜材の角度が浅く、二つ以上の支柱間を跨いでいる。 シュウェドラートラスという別名がある。


[編集] ボルチモアトラス

ボルチモアトラス。このような斜材の配置では構造上弱かった。
ボルチモアトラス。上記の改良形。

ボルチモアトラス(Baltimore truss)とは、平行弦の分格トラスである。圧縮力の加わる斜材が歪むのを防ぐために、載荷弦側に副材を配置する。単純で強度があり、鉄道橋で使用される。

  • 一ノ戸川橋梁 - 中央桁がボルチモアトラス。上路橋のため、副材は上弦側にある。


[編集] ペグラムトラス

ペグラムトラス

ペグラムトラス(Pegram truss)とは、ワーレントラスパーカートラスを組み合わせた形状をしている。上弦の部材はすべて同じ長さであり、対応する下弦の部材は上弦よりも長い。上弦と下弦を一組として考えると、その長さに差があるため、各支柱間(パネル)は長方形にはならない。パーカートラスで垂直になるべき部材は、側面から見て中央に向けて60〜75度の角度で斜めに設置される。

ジョージ・H・ペグラム(George H.Pegram)が考案し、1885年に特許を取得した。

[編集] ボウストリングトラス

上路ボウストリングトラスは非常に珍しい存在。トラスはワーレン。旧境橋(新潟県)

ボウストリングトラス(Bowstring truss)とは、上弦と下弦がそれぞれ(ボウ)と(ストリング)のような形状となっているもの。端部の強度に難点があるため、日本へは、1890年代にドイツのハーコート製のプレファブ式のものが70連ほど導入された。なかでも九州鉄道は47連を導入した。プレファブ式であったのは、組み立てに簡便なことを狙ったもので、そのためにピントラスであった。九州鉄道のものは、その後、車両の大型化に伴い架け替えの必要が生じ、各地で転用されている。

下路式のタイド・アーチ(Tied arch)と同じとする見方もあるが、下路式タイド・アーチは基本的にアーチ部分と路床(補剛桁)が圧縮・引張荷重を負担するのに対して、本形式はトラス部分でも圧縮・引張荷重を受ける。トラスの組み方には、プラットトラスとワーレントラスがある。

スクワイア・ホイップルSquire Whipple)が1840年に特許を取得している。

[編集] フィンクトラス

フィンクトラス

フィンクトラス(Fink truss)とは、既存の桁に、トラス構造を用いた補強を施した橋である。用いるトラスの形状には、キングポスト形やクイーンポスト形などがある。

アルバート・フィンクAlbert Fink)が1860年代に考案した。ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道によく見られる。

[編集] ベイリー橋

ベイリー橋(Bailey bridge)とは、軍事用の、プレハブ式の橋。部材は標準化されており、必要に応じて長さを加減できる。

[編集] ポストトラス

ポストトラス

ポストトラス(Post truss)とは、ワーレントラスダブル・インターセクション・プラットトラスを融合させた形式である。

シメオン・S・ポスト(Simeon S.Post)が1863年に考案し、特許は取らなかったが、ポスト・パテント・トラス'と称されることがある。[2]

[編集] ボルマン・トラス

ボルマントラス。

ボルマン・トラス(Bollman truss)とは、トラス橋と吊り橋の要素を持つ形式である[3]。下弦(載荷弦)はそれぞれ独立した錬鉄製の引張強度用メンバーによりつり下げられており、これを吊り橋のハンガーロープと同様と見ることができるが、上弦は鋳鉄を使って圧縮に対応している。

独学で鉄道橋梁技術者となったウェンデル・ボルマンWendel Bollman)が考案し、1852年に特許を得たもの。全鉄製の鉄道橋として初めて設計に成功したものである。


[編集] ワーレントラス

ワーレントラス

ワーレントラス(Warren truss)とは、斜材をW字形に配置したトラス橋。斜材は橋中央部から端部に向けて「ハ」の字にあたる部分が圧縮力を、「逆ハ」の字にあたる部分が引張力を負担する。中央のV字形になる部分では活加重に応じて両者を負担する。

垂直材のない二等辺三角形が連続するものと、垂直材があるものもある。垂直材は、端部から中央部にかけて、引張力と圧縮力を交互に負担する。垂直材がないことで鋼材が節約できるため、安価で軽量となる。日本では、明治初期に小さなものが使用された後、しばらくはプラットトラスが主流となったが、昭和に入って再び使用されはじめた。

ジェームス・ワーレンJames Warren)とウイロビ・モンザニ(Willoughby Theobald Monzani)により1848年、特許が取得された。


[編集] ダブルワーレントラス

ダブルワーレントラス

ダブルワーレントラス(Double Warren truss)とは、斜材をすべてX字形に交差されたもの。斜材への負担のかかり方は、通常のワーレントラスと変わらない。


[編集] ラティストラス

ラティストラス

ラティストラス(Lattice truss)は、部材を格子状に組んだものである。主として木材が使用され、施工が容易であるとともに強固である。

[編集] レンティキュラートラス

レンティキュラートラス。南河内橋

レンティキュラートラス(Lenticular truss)またはレンズトラス(Lens truss)は、水平方向の圧縮力と引張力が釣り合うため、それらの力はアーチを支える支柱には伝わらない。これは、ほとんどのアーチ橋と同じ性質である。そのため、トラスを地上で組み立ててからジャッキアップして架橋するという施工方法をとることができる。

19世紀にイザムバード・キングダム・ブルネルにより鉄道用の橋梁として考案された。日本で架橋されたのは3例のみであり、下記の南河内橋が唯一の現存例である。


[編集] 脚注

  1. ^ U.S.Patent529,220
  2. ^ Jackson, Donald C. (1995). Great American Bridges and Dams. New York: John Wiley & Sons. ISBN 9780471143857. 
  3. ^ Caplinger, Michael W. (July 16, 1999). "National Register of Histroic Places Nomination: Bollman Truss Railroad Bridge". National Park Service. 2009-03-18 閲覧。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ