大韓航空801便墜落事故

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大韓航空 801便
KOREAN AIR Boeing 747-3B5 (HL7468 22487 605) (5687222614).jpg
事故機(HL7468)
概要
日付 1997年8月6日
原因 パイロットエラーCFIT
場所 Flag of Guam.svg領・グアム国際空港手前
死者 228
負傷者 26
航空機
機体 ボーイング747-300
運用者 Flag of South Korea.svg大韓航空(KAL)
機体記号 HL7468
乗客数 231
乗員数 23
生存者 26
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事故機の残骸

大韓航空801便墜落事故(だいかんこうくう801びん ついらくじこ)は、1997年8月6日午前1時42分頃(現地時間)、アメリカグアムグアム国際空港へ着陸進入中の大韓航空801便が、パイロットミスにより滑走路手前にあるニミッツの丘付近に墜落した航空事故である。乗員乗客254人のうち228人が死亡した。

経緯[編集]

この事故を起こした大韓航空801便は、韓国ソウルにある金浦国際空港発グアム国際空港行きのボーイング747-300型機(1984年製の機体記号HL7468)であった。801便には乗客231人、乗員23人が搭乗していた。801便は金浦国際空港を午後8時53分に離陸した。なお、事故機のHL7468は、当日このフライトの前に香港啓徳空港間を1往復する運用についていた。

801便はいつも通り、韓国上空を南下し、福岡航空交通管制部日本領空通過の許可を得て九州四国の上空を通過して、太平洋上空をグアムに向けて南下した。途中、太平洋上空で一時的に乱気流に遭遇したが、その後は順調に飛行していた。事故当時のグアムは大雨で、目視での着陸は非常に困難であった。しかし、グアム国際空港の計器着陸装置(ILS)の1つであるグライドスロープはシステム更新中のために運用停止中であった。そのためこの大雨による視界不良の中で超短波全方向式無線標識 (VOR) / 距離測定装置 (DME) の非精密進入(決められた場所で決められたように高度を徐々に下げていくアプローチ)を行うことになった。しかし801便はその決められた場所での決められた高度である2,000フィートと1,440フィートのいずれも割り込んで降下していった。そして801便はそれに気が付かぬままどんどん降下していき、ついには空港からおよそ5キロメートル手前にあるハガニアニミッツ丘に墜落した。

墜落した機体は炎上して大破・全損し、乗客231人・乗員23人の合計254人中、乗客206人・乗員22人の合わせて計228名が死亡した。また、生存者である乗客23人、乗員1人の合わせて24人も重傷を負った。死亡した228人のうち数十人が墜落した(出火した)時点では生存していたが、その数十人も焼け焦げた遺体で見つかった。大破した機体の残骸は爆発を繰り返したという。事故機に静岡県三島市在住の日本人の少女が搭乗していて、彼女は救助されたが、韓国籍の彼女の母親は死亡した。

事故原因[編集]

直接要因[編集]

この事故は典型的なCFITと呼ばれるタイプの事故であった。CFITとは、航空機自体には問題がないにもかかわらず操縦士が自機の位置を正しく把握していないときに起こる事故のことである。この事故もまさにそのCFITであった。決められた高度を割り込んだのは自機の位置を正しく把握していなかったためであった。

CFITとなってしまった原因は、まず機長の状態にあった。機長はこの当日にアラブ首長国連邦へ向かう便に乗務する筈であったが、勤務変更を命じられ過労気味であったといわれている。その証拠として機長は飛行中に「とても眠い」とコメントしていた。さらに、副操縦士航空機関士もはっきりとした助言を機長に与えなかった。その理由としては、韓国の上位者を敬う国民性が影響したとされている(この機長は事故3ヶ月前の5月にB747でエンジントラブルを起こした際の対処で表彰を受けた機長であった事から尚更である。ちなみにテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故でもKLM機のコックピット内において同様の状況が発生している)。

墜落直前、副操縦士と航空機関士が着陸復航を進言したが、機長の反応が無く、「Minimum(着陸決心高度)! Minimum! Sink Rate(降下率注意)! Sink Rate! Two Hundred(地上高200ft、約50m)!」の警告音が鳴っても滑走路が見えなかったのでゴーアラウンドを行った。ゴーアラウンドの決断が遅く、エンジン全開にもかかわらず747型機は機体が重いため、ゴーアラウンドが間に合わなかった。

その他の理由[編集]

当日グアム国際空港のILSシステムのうち、グライドスロープが整備のため運用停止中であった。このことは運航乗務員にも事前に通知されていた。にもかかわらず着陸進入中にILSのグライドスロープが断続的に作動した。国際空港の近くにあるアメリカ軍基地の電波を受け誤作動を起こしたためである。運航乗務員は、「(国際空港の)グライドスロープの試験電波が出ているのだな。よし、これに乗っちゃえ。」と勝手な判断をして、乗ってはいけない米軍基地のグライドスロープに乗ってしまい、その結果事故を起こしたのである。機長が疲労気味で、早く着陸させたいとの心理が働いたのであろう。しかし、グライドスロープ停止の通知を受けていたにもかかわらず、管制官に確認もとらずに勝手にグライドスロープに乗ろうとしたことは、パイロットとして完全にルール違反である。[要出典]

大韓航空はグアム国際空港への着陸に関する乗員への訓練が不適切であったことを指摘されている。NTSBは、大韓航空の教材用ビデオには、グアム国際空港に着陸する際のILSを使わない着陸方法や、最終進入経路について説明不足だったことを指摘している。つまり、機長たちは、計器に頼りすぎていたという。また、上記の通り労使条件も悪く、眠気から機長の判断能力が鈍っていた事も一因とされた。

グアム国際空港のMSAW(最低安全高度警報システム)は非常に精度が悪く(海上を観測していた)、一部の空域で使用禁止になっていたことも事故の遠因として指摘された。

また、視界不良でグライドスロープ停止の状況下で着陸の許可を出した管制官の対応にも疑問が残る。一旦サイパン国際空港に着陸して、グアムの天候回復までの数時間待機するよう命じるべきであったとの指摘もある。

その後、事故原因が究明され、グアムでは国際空港のグライドスロープが停止しているときに、米軍基地のグライドスロープの電波を受信してしまうことがあるという事例が各航空会社に周知され、同様の事故は起こらなくなった。

今日では大韓航空においても改良型対地接近警報装置(EGPWS)の導入が進められており、もしも当該機にEGPWSがついていたならば、進行方向に丘があるのを感知して、早い段階で「Whoop Woop Pull UP(引き起こせ)!」の警告音が鳴って事故が回避されたであろう。

その他[編集]

  • 大韓航空801便はこの事故に配慮して、後に805便に便名が変更された。
  • 大韓航空は、その後MD-11貨物機を上海で、ボーイング747貨物機をロンドンで墜落するなど、重大事故を連続して引き起こした。そのため2000年にアメリカ合衆国政府から韓国自体の航空業界の格付けが下げられる措置を受けたため韓国の航空会社がアメリカ路線の増便も、アメリカの航空会社との共同運航便もすることが出来なくなった。また、韓国政府の航空行政担当の閣僚が更迭された。この措置は現在では改善したとして撤回されている。

テレビ[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯13度27.35分 東経144度43.92分 / 北緯13.45583度 東経144.73200度 / 13.45583; 144.73200