多胎児

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Dionne家の五つ子とその誕生を祝う議員(カナダ,1930)
Dionne家の五つ子とその誕生を祝う議員(カナダ,1930)

多胎児(たたいじ)とは、同じ母親の胎内で同時期に発育して生まれた2人以上の子供を指す。双生児三つ子などを総称した呼び方であり、一般に三つ子以上を意識した呼び方である(多胎児と表現する時は、双子を除いている場合もある)。三つ子以上を限定して指す場合、スーパーツインズsupertwins)と言う。なお、多胎は多くの哺乳類(犬や猫など)で一般的に観察される出生形態の一つである。

出産の時には数分から一時間程度の時間差で産まれる事が多いが、記録では数十時間から数十日の間隔が開いて生まれる場合もあるので 誕生日・誕生年が異なる兄弟姉妹もいる。また、日本では後から生まれた方を兄または姉、先に生まれた方を弟または妹として扱う慣習があったが、1874年(明治7年)12月13日の太政官指令により生まれた順に兄弟が定まるようになっている。

目次

[編集] 多胎と表現

胎児数によって多胎の呼称は異なり、以下のように表される。

  • 胎児二人 - 双胎(そうたい、Twins
  • 胎児三人 - 品胎(ひんたい、英:Triplets
  • 胎児四人 - 要胎(ようたい、英:Quadruplets
  • 胎児五人 - 周胎または格胎(しゅうたい、かくたい、英:Quintuplets
  • 胎児六人 - 六胎(英:Sextuplets
  • 胎児七人 - 七胎(英:Septuplets
  • 胎児八人 - 八胎(英:Octuplets
  • 胎児九人 - 九胎(英:Nonuplets
  • 胎児十人 - 十胎(英:Decuplets
  • 胎児十一人 - 十一胎(英:Undecuplets
  • 胎児十二人 - 十二胎(英:Dodecuplets
  • 胎児十三人 - 十三胎(英:Tridecuplets
  • 胎児十四人 - 十四胎(英:Tetradecuplets
  • 胎児十五人 - 十五胎(英:Pentadecuplets

[編集] 多胎と卵性

多胎の種別は、一卵性と多排卵性の組合せで決まる。極めて稀ではあるが、受精卵の分裂が複数回繰り返される場合があり、一卵性多胎児が誕生する場合がある。なお、一つの受精卵が一度に分裂する数は二つであり、三つ子以上の一卵性は複数回の分裂が発生していると考えられる(一度に三つ以上に分裂しない)。したがって一卵性周胎(五つ子)の場合、受精卵のうち一つは最低でも三回、最高で四回の分裂をしていると考えられる(参考画像[1])。

[編集] 品胎(三つ子)と卵性

一卵性三つ子、二卵性三つ子、三卵性三つ子が存在する。二卵性三つ子は、二卵のうち一方が一卵性双生児という組合せになっている。

一卵性三つ子
元は同じ一つの受精卵から誕生した三つ子。二度の分裂過程を経て、受精卵が三つになる。一つの受精卵がまず二卵に分裂し、さらに二卵のうちの一方が分裂することで一卵性品胎となる。
二卵性三つ子
三つ子のうち、二人は同じ受精卵が分裂した一卵性双生児だが、残る一人は別の受精卵から誕生した三つ子。この場合、まず二つの卵子が排卵され、それぞれが受精し二つの受精卵が誕生する。その後、一方の受精卵が分裂して一卵性双胎が生まれ、結果として二卵性品胎となる。
三卵性三つ子
多排卵による三つの卵子それぞれが受精し、三つの受精卵が生じたことから誕生した三つ子。

[編集] 一卵性要胎(四つ子)の事例

品胎と同じように四つ子の卵性も、一卵性から四卵性のケースに別れる。四つ子の四人の中に、一卵性が含まれている組合せは4.35%であった。そのうちで四つ子全員が一卵性、つまり一卵性四つ子

一つの受精卵が分裂(双胎の状態)
二つの受精卵のうち、一方が二度目の分裂(品胎の状態)
三つの受精卵のうち、一つが三度目の分裂・・・一卵性要胎の誕生
二つの受精卵がそれぞれ二度目の分裂・・・一卵性要胎の誕生

[編集] 多胎児の出生頻度

[編集] ヘリンの法則

多胎児の出生率に関する法則として、ヘリンの法則(Hellin's Law)と呼ばれる計算式がある。ヘリンの法則は、欧米(コーカソイド系住人が多い地域)における自然妊娠による多胎児発生率に関する法則であり、胎児数をnとすると、多胎妊娠の発生率は89のn-1乗分の1(\tfrac{1}{{89^{n-1}}})の頻度になるとする。しかし近年では、多胎妊娠の頻度は生殖補助医療等の影響により、この法則から大きく逸脱するようになってきていると言われる。

[編集] 多胎児の出生数

多胎の数が多くなるほどその発生確率は低下していく。2004年のアメリカ合衆国における多胎児出生総組数は139,494組[2]であり、三つ子以上の多胎児出生率は1000組中2組であった。各種多胎の組数は以下のとおり。

  • 双子 - 132,219組
  • 三つ子 - 6,750組
  • 四つ子 - 439組
  • 五つ子以上 - 86組

[編集] 多胎妊娠の発生頻度の増加

1980年代前半頃から多胎妊娠の発生率は上昇してきている[3]。1997年4月7日にラジオで短波放送された日産婦医会アワー[4]では、日本では「1984年から10年間で多胎の発生頻度が、双胎で1.2倍、3胎で2.7倍、4胎で6.7倍、5胎で4.2倍」になり、「3胎以上の多胎が、1995年には分娩件数10万対30.5で、1974年の6.2に比較して約5倍に増加している」と報告された[5]。また、アメリカ合衆国における多胎妊娠の頻度は、1971年から1997年の間に品胎で5倍、要胎で12倍、周胎で6倍に増大している。

[編集] 一卵性多胎児の出生頻度

三つ子以上の多胎児が一卵性で生まれてくる確率は極めて低い上に、その出生確率も不確かである。一卵性多胎児が誕生すると、その受胎・出生確率に関する担当医師のコメントが報道時に引用されるが、その報道される数字はしばしば下記のように大きな隔たりがある。一卵性三つ子の場合、引用される確率の隔たりは、6万分の1から2億分の1にわたる[6]。なお、一般に(卵性不問で)三つ子の受胎率は、コーカソイドで8100分の1、ニグロイドでは9800分の1とされる[7]

一卵性三つ子
イギリス国籍、コーカソイド、誕生地オーストリアの三つ子。2億分の1の発生確率と報道された[8]
一卵性四つ子
カナダ国籍、コーカソイド、誕生地アメリカ合衆国。1100万~1600万分の1の発生確率と報道された[9]

このような報道の一方、日本における1980年の学術調査によれば、三つ子の各卵性別の出生頻度は100万組あたり以下の組数であったと報告されている[10]

  • 一卵性(monozygotic) - 30組
  • 二卵性(dizygotic) - 18組
  • 三卵性(trizygotic) - 7組

但し、北海道と九州・沖縄の一部地域は、他の日本国内地域の標準的な多胎児出生率と比べ、極端な相違があるため、この数字には含まれていない。

[編集] 多胎妊娠の問題

Dionne家の成長した五つ子(カナダ,1947)
Dionne家の成長した五つ子(カナダ,1947)

多胎妊娠の場合、母体への負担が非常に大きい。妊娠高血圧症候群をはじめとした妊娠リスクも単胎妊娠と比較して大きく、場合によっては母体に生命の危険が生ずる場合もある。特に品胎以上の多胎妊娠の場合は早産になったり帝王切開を選択することが多く、NICUを備えた病院で診察を受ける事が強く推奨されている。

また、多胎妊娠の場合、胎児の生育環境が母体子宮の物理的大きさに制約され、胎児の栄養状態・発育遅延の問題が生じる可能性が高い。母体と複数の胎児の生存可能性の問題により、一部の胎児を人工的に堕胎させる選択をせざるを得ない場合もある。これに伴う倫理上の問題やその他の詳細については減数手術を参照のこと。

ただし、多胎児の出生にリスクを伴う蓋然性は高いものの、無論のことながら順調に全員が生育する例も多い。

[編集] 多胎妊娠の記録と実例

以下、Facts About Multiplet(外部サイト)[11]の記録に基づく。

最大多胎数の記録:十五胎
排卵誘発剤により誘発されたと考えられている。出産に至らず。ギネスブックに子宮摘出手術で判明との記述。
自然妊娠の最大多胎数の記録:十二胎
24歳の母親による記録。妊娠治療によらない最大多胎。出産に至らず。
出産に至った最大多胎数の記録:十胎
死産を含むか否かの記録はないが、記録に残る最大出産人数である。
一人以上の生存が確認されている最大多胎数の記録:八胎
うち、一人が早逝。詳細は下記のチュークー家の八つ子を参照のこと。
全員がそろって誕生し生存している最大多胎の記録:七胎
記録史上初めて七つ子全員が生きて誕生[12]。以後、七つ子の全員生存例が数例ある。詳細は下記のマッコイ家の七つ子を参照のこと。
一卵性の最大多胎妊娠の記録:周胎(五胎)
数例の一卵性五つ子が確認されている[13]
多胎児の最大組数
18世紀のロシアにおいて16組(四つ子4組、三つ子7組、双子5組)の記録がある(うち二人が早逝)。

[編集] 著名な多胎家族

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  • Keys quadruplets(1915年生まれ、アメリカ合衆国オクラホマ州):四つ子。初めて全員が成人した同じ性別を持った四つ子。
  • ディオンヌの五つ子(en:Dionne quintuplets)」:五つ子で初めて5人欠けることなく育った。
    彼女らは1934年5月28日、カナダ、オンタリオ州で生まれた。当時父は30歳、母は25歳で、すでに6人の子を産み(うち1人は死亡)、これは7回目の出産であった。7ヶ月で生まれたため体重が非常に軽く、最も重くても普通の産児の3分の1しかなかった。すなわち5人の体重は、イヴォンヌ 2ポンド62、アンネット 2ポンド40、セシル 2ポンド10、エミリー 1ポンド14、マリー 1ポンド10。彼女らを取り上げたのは、医師ダフォー(Alan Roy Dafoe)であったが、5人は無事そだった。これを知ったアメリカ合衆国のスミッソン協会はダフォーに、その功績は多大であるから正確な記録を残すように書簡を送った。オンタリオ州当局はディオンヌ姉妹保育委員会を組織し、48万ドルの公債を発行し、保育資金に充てた。こうしてダフォーが保育主任となり、看護師2人が保育にあたり。5人が満18歳になるまで保育委員会が後見することになった。両親は我が子に一指たりとも触れることを許されず、そのかわり月100ドルの手当を保育委員会から受け、このほかに保育所近くに見物人めあてのみやげもの屋を開いた。保育委員会は5人の映画を映画会社に作らせ、見物人から料金を取ることその他により収入を得て、5人の財産は100万ドルに達したという。
  • マッコイ家の七つ子(McCaughey septuplets,1997年11月,アメリカ合衆国アイオワ州):七つ子全員が生存している初の例。
    4男3女の七つ子。この七つ子には1996年生まれの姉がおり、母親はいわゆる不妊状態ではなかったが、排卵誘発剤を利用した医療処置(Fertility medication)を受けていた。7胎の妊娠が確認された際、両親は減数手術を拒否。可能な限りの自然な形での出産を望み、結果として在胎31週の早産となった。早産による未熟性により、7人のうち2人に脳性麻痺が生じている。七つ子の誕生は全米で話題になり、当時のクリントン大統領も電話で祝辞を贈っている。マッコイ家は様々な公的機関や民間企業から継続的な育児支援を約束され、511 m²に及ぶ家の他、資金的・物的援助を受けている。
  • チュークー家の八つ子(Chukwu octuplets,1998年12月,アメリカ合衆国テキサス州):八つ子全員が生きて誕生し、そのうち7人が順調に成長中。
    12月8日に八つ子のうち最初の子供(女)が生まれる。12月20日に残り7人(女5人男2人)が生まれる。12月20日に生まれた女の子のうち、一人が12月27日に早逝[14]。両親の母国はナイジェリア[15]。母親は排卵誘発剤を利用した医療処置(Fertility medication)を受けていた。

[編集] その他

[編集] 多胎児の兄弟姉妹と出生順

現在においては多胎の出生順により、「(  子中第 子)」という形式で第一子(兄・姉)、第二子以下続(弟・妹)となる。

かつて日本には「後から生まれた方を兄(姉)とする」という因習があった。これは「兄(姉)ならば先に母の中に入ったので、後から出てくるはず」、「弟(妹)が兄(姉)を守るため、先に露払いとして出てくる」などの考え方による当時の「産婆ノ妄説[16]」だったが、1874年(明治7年)12月13日の太政官指令[17]により「前産ノ児ヲ以テ兄姉ト定候[18](先に産まれた方を兄・姉とする)」と多胎児の兄弟姉妹の順が定められた。それ以後、少なくとも法令上は出生順により兄弟姉妹が決められている。

現在は戸籍法第四十九条第三項の定めにより、子が出生すると出生証明書を添えた上で出生の届出(出生届[19])をしなければならない。この届書に「出生の年月日時分」を記載する必要があり、届書に添えられる出生証明書にも「出生の年月日時分」、「単胎か多胎かの別及び多胎の場合には、その出産順位」などが立ち会った医師(またはそれに準ずる者)により記載されていなければならない(法務省・厚生労働省令第一号(平成14年2月18日最終改正)[20])。この出生届出と出生証明書の記載[21]に従い、兄弟姉妹の順が定められている。

[編集] 多胎児サークル

三つ子以上の親が情報交換する場として各地に「多胎児サークル」が存在する。地方公共団体が子育て支援事業の一環として主催、あるいは補助している公的・準公的な性格のものが多いが、NPO・NGOによるもの、完全に私的なサークルとして活動しているものなど、多様な形態がある。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

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  1. ^ 参考画像 一卵性三つ子ともう一人の組合せによる四つ子(英語)
  2. ^ "Facts & Statistics Regarding Multiples"TWINS Magazine
  3. ^ Keith LG, Oleszczuk JJ, Keith DM (2000). “Multiple gestation: reflections on epidemiology, causes, and consequences”. International journal of fertility and women's medicine 45 (3 May-Jun): 206-14. PMID 10929683.
  4. ^ 石井明治 (1997-04-07). "最近の周産期統計より (日本語)" 日本産婦人科医会. 2008-02-04閲覧.
  5. ^ 田原隆三 (1999). “多胎妊娠の予防と周産期管理―予防の実際―”. 日産婦誌 51 (9): 234-238.PDFファイル
  6. ^ "確率2億分の1、一卵性の三つ子誕生 米国"[1]
  7. ^ "Odds of Multiplets"Childbirth Solutions
  8. ^ "Rare identical triplets born in Austria"REUTERS
  9. ^ "Rare identical quadruplets born to Canadian mom in Montana"USA Today
  10. ^ Yoko Imaizumi, Eiji Inouye (1980). “Analysis of multiple birth rates in Japan” (25 JUN).Journal of Human Genetics
  11. ^ Facts About Multiplet(英語)
  12. ^ MICHAEL D. LEMONICK (1997-11-01). ""IT'S A MIRACLE" (英語)" タイム. 2008-02-04閲覧.
  13. ^ Kocherga, Angela (2004-10-20). "Rare identical quintuplets make public debut (英語)" KHOU.com. 2008-02-04閲覧.
  14. ^ "Texas Octuplets"PR Newswire
  15. ^ "'Blessed' octuplet mom goes home"CNN.com
  16. ^ 双子又ハ三子等分娩ノ際兄弟姉妹順次ノ儀内務省伺日本法令索引〔明治前期編〕
  17. ^ 太政官指令第四十八明治7年12月13日明治前期編 法令詳細情報
  18. ^ 指令明治前期編 法令詳細情報
  19. ^ 出生届法務省
  20. ^ 出生証明書の様式等を定める省令法令データ提供システム
  21. ^ 出生届、及び出生証明書法務省

[編集] 外部リンク