体外受精

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生殖医療における体外受精(たいがいじゅせい、: In Vitro Fertilization, IVF)は、不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外で行う方法。

受精し分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)という。

一般では体外授精と表記されることもあるが、日本産科婦人科学会の用語集では「体外精」の表記を用いている。

対象[編集]

通常、卵管閉塞などの器質的原因や、タイミング法人工授精をしたが、妊娠に至らなかった場合に用いられる。通常は精子を自然受精させるが、乏精子症など精子側の受精障害がある場合には顕微授精(多くの場合卵細胞質内精子注入法:ICSI)を行う。卵子を包む透明帯に問題が有り孵化しにくいときは、アシステッドハッチングと呼ばれる技術で着床の手助けをする事もある。自然での人間の周期あたり妊娠率は平均15%前後だが、IVF-ETの場合25%程となる。

広く行われる不妊治療の一つであるが、あくまでも女性の卵子を使用するため、卵子そのものの老化の影響は受ける。体外受精を利用しても、45歳を超える女性の場合、妊娠できる可能性は0.5%ほどである。しかし、その実態を知らず、体外受精をすれば50歳まで妊娠は可能と考える女性もいる[1]

歴史[編集]

イギリスの生理学者ロバート・G・エドワーズ1978年に最初に成功し、女の子が生まれた。エドワーズはこの業績により2010年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。日本では1983年東北大学の鈴木雅州らが成功して以来、約6万人が生まれたと言われている。

開始初期には費用はHMGと呼ばれる注射の排卵誘発剤を用い約30万 - 60万円と高額であったが、近年クエン酸クロミフェン内服錠を用いた簡易誘発法を用いて10万前後で治療を行う施設も出てきている。

方法[編集]

  1. 女性は約1か月、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ(スプレキュア点鼻薬等)を服用し、性腺刺激ホルモンを放出する下垂体の作用を麻痺させる(正確にはダウンレギュレーションと呼ばれる)ことで排卵を防ぎ、卵包を成長させる。続いて閉経ゴナドトロピン(hMG)の注射を7ー9日連続で行い、超音波で卵包が十分な大きさに成長したのを確認した後、最後にヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を注射し、排卵を誘発する(通常の排卵は月経周期につき一個であるが、ホルモンの投与によって複数個の排卵が誘発される。排卵数は個人差が大きい)。
  2. 排卵誘発後35時間に静脈麻酔や部分麻酔をし(医療機関によっては無麻酔の場合もある)、超音波で確認しながら腹式または膣式に細い針を卵巣に刺し、複数の卵子(通常2〜10個程度)を採取(採卵)する。
  3. 採卵日に精子も採取する。
  4. 採卵から1 - 3時間後にシャーレの中で調整済みの精子を振りかけて受精を行い、数日間培養を続ける。
  5. 受精した卵は分割をし、翌日には受精卵として確認できる。体外受精が成功するかどうかの1つの鍵は、どれだけ質の良い受精卵が得られるかということで、色がきれいで、透明感があり、形が良く、はりがあって、傷がない受精卵が着床率が良い。
  6. 4細胞期の受精卵の内、発生が順調で形態の良い受精卵だけが膣から子宮内へ注入される。麻酔は行わない。母子ともにリスクの大きい多胎妊娠を防ぐため、原則として子宮に戻される受精卵は1個とされている。

子宮に戻されなかった余剰受精卵は通常、妊娠が成功しなかった場合に備えて液体窒素タンク中で凍結保存剤を加えて冷凍保存される。これは、排卵誘発および卵子採取に関わる女性への負担を低減する利点がある。ちなみに、冷凍保存を維持するのにかかる費用(定期的な液体窒素の補充や機器の維持管理等)はすべて、不妊治療を受ける夫婦の自費負担となる(体外受精法による不妊治療は健康保険が適用されない)。

合併症[編集]

多数の受精卵を子宮内に戻せば当然妊娠率が上がるため、不妊治療クリニックの中には一度の体外受精で多数の受精卵を子宮に戻すこともあるため、3胎以上の超多胎妊娠の例も増えた。

超多胎妊娠は母体への負担が大変大きいだけでなく「一度にたくさんの子供が生まれても、育てきれない」という事情も産む。減数手術や全数堕胎という、不妊治療としては本末転倒な事態も頻発したために、現在は「体外受精で一度に子宮へ戻す受精卵は原則1個」という産婦人科学会によるガイドラインができている。

脚注[編集]

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関連項目[編集]