曹士の能力活用
曹士の能力活用(そうしののうりょくかつよう)とは、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の曹士に共通する規律及び風紀の維持に係る体制を強固にするとともに上級陸・海・空曹の活動を推進し、部隊等の任務遂行に寄与することを目的とした制度である。制度の名称が陸上自衛隊では上級曹長、海上自衛隊では先任伍長、航空自衛隊では准曹士先任とそれぞれ異なっている。
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[編集] 概要
本来、士官と下士官・兵は異なった規律に服しており、下士官・兵の問題は、事情に通暁している古参下士官に処理させることが望ましい。そこで、米軍の関連制度を参考に、2003年の海上自衛隊先任伍長制度を皮切りに、陸海空の自衛隊それぞれで制度検証を開始した。 2011年12月現在、陸自のみ試行中である。(海自・空自は正式施行) 設立の経緯は、アメリカ軍や諸外国の軍との交流を持った場合、相手国の最先任曹長のカウンターパートナーが自衛隊も必要だからである。
原則として陸上自衛隊・航空自衛隊にあっては准尉、海上自衛隊にあっては曹長の階級にある者が充てられている。
[編集] 陸上自衛隊
陸上自衛隊では上級曹長制度(じょうきゅうそうちょうせいど)と呼ばれ、陸上自衛隊において陸曹が「曹士の育成・管理」により積極的に取り組み、また第一線部隊指揮官をより効果的に補佐しうる体制の構築を目的[1]とした制度であり、アメリカ陸軍の大隊以上の部隊司令部に配置される最先任上級曹長(英語:Command Sergeant Major)などの上級曹長等制度や、イギリス軍の「連隊上級曹長」(英語:Regimental Sergeant Major)、「中隊上級曹長」(英語:Company Sergeant Major)を参考にしている。[2]
[編集] 沿革
- 2006年(平成18年)4月1日
- 2008年(平成20年)4月1日
- 全国の部隊等に(最)先任上級曹長を配し、全国レベルでの検証を開始(これに伴い、中隊等付准尉(隊付陸曹)の補職は廃止)
- (時期未定):正式施行
[編集] 職務・職責
連隊・大隊等以上では、上級曹長は各級部隊等において曹士に関する事項を所掌し、指揮官を補佐する専門幕僚的地位を有する陸曹の最上位職として、曹士の育成・管理に係る服務その他の人事・教育訓練等(服務指導、集合教育、下士官交流等)を所掌して指揮官を補佐し、その他曹士に係る事項について指揮官等への意見具申等を行い、また、諸外国軍隊・他自衛隊との下士官交流を実施する。[1]
中隊等では、上級曹長は中隊等における陸曹の最上位職として、曹士の育成・管理[3]に関して中隊長等を補佐すると同時に服務指導准尉に指定され、中隊等の服務指導において各営内班長・指導陸曹を統括する。[1](上級曹長制度の導入前は中隊等付准尉もしくは隊付陸曹(准尉~1曹(1曹は陸曹上級課程修了者に限る))と呼ばれる者がこれを実施してきた。)
従来の付准尉の業務は限定された分野(訓練・勤務調整、営内者への外出等の実質的な最終権限保持、各種命令等の伝達、部隊本部における各係への指導及び部隊長等の補佐、所属隊員に対するカウンセリングや各種相談における助言・服務指導准尉として服務指導の統括等)におけるもののみであったが、上級曹長は曹以下の隊員の人事・保全・訓練・補給等すべての面で指揮官を補佐する必要がある[4]。上級曹長のみでは業務すべてを掌握することは困難なことから、大隊以上に配置される先任上級曹長にはその業務を補佐するための准尉・陸曹1~2名(最先任上級曹長付准尉や先任上級曹長付陸曹)が配置される[5]。なお、陸上幕僚長の指揮監督を受ける機関のうち地方協力本部には配置されていない(自衛隊地区病院には配置されている)。
また、中隊(中隊と同様規模の隊編成含む)上級曹長の職にあるものは、従来の付准尉と同様「服務指導准尉き章」を着用する[6]。
[編集] 上級曹長の分類
「陸上自衛隊最先任上級曹長」及び「(部隊等名)(最)先任上級曹長」はそれぞれ以下に示す識別章を左腕に着用する。識別章色は紺色である。
また、最先任上級曹長が使用する車両に提示される車両標識の意匠はそれぞれ下記のものを使用する。
最先任上級曹長に指定される者は、基本的に准尉の階級を持つ者が指定される[7]
- 陸上自衛隊最先任上級曹長:陸上幕僚監部に配置されるもの。金色の桜星4。
- 方面隊最先任上級曹長:方面総監部及び中央即応集団司令部に配置されるもの。金色の桜星3。
- 師団最先任上級曹長:師団司令部及び編制上陸将を長とする部隊等(幹部学校・富士学校・研究本部・補給統制本部・関東補給処)に配置されるもの。銀色の桜星3。
- 旅団最先任上級曹長:旅団司令部・編成上部隊長を将補(一)職とする部隊に配置されるもの。金色の桜星2。
- 団最先任上級曹長:編制上陸将補(二)を長とする部隊等に配置されるもの。銀色の桜星2。
- 連隊等最先任上級曹長:方面混成団及び連隊・群等1等陸佐を長とする部隊及び部隊長の指定が1佐相当級[8]の部隊に配置されるもの。金色の桜星1。
- 部隊最先任上級曹長:大隊以下2等陸佐を長とする部隊(部隊旗が大隊旗)に配置されるもの。桜星なし[9]。
- 中隊等先任上級曹長:中隊もしくはそれに準ずる隊編成の部隊に配置される者。緑色地に桜星なし[10]。
| 代 | 氏名 | 階級 | 在任期間 | 前職 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 鈴木弘雄 | 准陸尉 | 2006.4.1 - 2008.3.21 | 第13普通科連隊レンジャー教官 |
| 2 | 下浅勝雄 | 2008.3.23 - 2010.7.31 | 第2施設団本部付隊偵察班長 | |
| 3 | 清水一郎 | 2010.8.1 - | 第10師団司令部最先任上級曹長 |
[編集] 海上自衛隊
海上自衛隊では先任伍長制度(せんにんごちょうせいど)と呼ばれ、海上自衛隊において海曹士に共通した規律、風紀の維持に係る体制の強化、部隊等の団結の強化、上級海曹の活動を推進、並びに、精強な部隊等の育成を目的[1]として、自衛艦など各部隊等に置かれている海曹である。 米国海軍のマスター・チーフ制度(英語:Master Chief Program)をモデルとして、2003年(平成15年)4月に海上自衛隊に置かれたものであり、陸海空の自衛隊のなかで最初に設けられた。[2]陸上自衛隊の上級曹長、航空自衛隊の准曹士先任と異なり、曹長階級の隊員を充てている点が大きく異なる。
[編集] 職務・職責
先任伍長は部隊等の長の命を受け、曹士を総括して、次の事項を実施する。[1]
- 規律及び風紀の維持をはじめとする海曹士の服務の指導
- 部隊等の団結の強化への寄与
- 海曹士の士気の高揚等に係る活動の推進
- 上記に係る事項についての各部隊間における情報交換等の推進
海曹士を取り締まるだけではなく、指揮官(艦長や司令官等)へ意見を具申することで部隊の融和団結等にも資する長所がある。先任伍長は、「先任伍長識別章」を着用する。先任伍長の指定は、自衛艦にあっては、警衛海曹から指定される。自衛艦以外の部隊等にあっては、海曹長(当該部隊に配置されていない場合は一等海曹)の中から、責任感、協調性、規律、実行力、知識・技能、統率・指導力及び表現力の優れた者が指定される。
警衛海曹は、元来はアメリカ海軍の文化の継承であり、海兵隊員が乗艦しない小艦艇で、艦内の規律の取り締まりを行うことが目的であった。これは、徴兵制によって士気が低く、ことあらば反乱を企てかねない水兵を監視する必要があったからである。日本の海上自衛隊では若い尉官が年長の曹長にペコペコする現実こそが問題であり、そういった士官が曹士を指導出来ないからといって先任伍長を置くのは本末転倒であるとの意見を主張している者もいる[11]。
[編集] 先任伍長の分類
先任伍長は配置される部隊等によって次のように区分され、それぞれ先任伍長識別章の桜星の数が異なる。
- 海上自衛隊先任伍長
- 海上幕僚監部に配置された先任伍長をいう。先任伍長識別章の桜星の数は4つ。
- 自衛艦隊等先任伍長
- 護衛隊群等先任伍長
- 護衛隊群、海上訓練指導隊群、航空群、潜水隊群、掃海隊群、情報業務群、海洋業務群、開発隊群、教育航空群、練習艦隊、システム通信隊群、阪神基地隊、潜水医学実験隊、幹部候補生学校、術科学校及び横須賀病院に配置された先任伍長をいい、当該部隊等の名称を冠して呼称する。先任伍長識別章の桜星の数は2つ。
- 部隊等先任伍長
- 上記以外の部隊等に配置された先任伍長をいい、当該部隊等の名称を冠して呼称する。先任伍長識別章の桜星の数は1つ。
| 代 | 氏名 | 階級 | 在任期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 佐賀幾雄 | 海曹長 | 2003.4.1 - 2006.6.29 |
| 2 | 畑中一泰 | 2006.6.30 - 2010.12.21 | |
| 3 | 夏目修 | 2010.12.22 - |
[編集] 海上自衛隊先任伍長会報
海上自衛隊先任伍長会報とは、先任伍長の活動状況の確認、要改善事項の摘出その他先任伍長制度の実施に関し必要な情報交換及び検討のため、海上幕僚長が原則として毎年1回開催する会合である。海上自衛隊先任伍長会報には、部隊等先任伍長を除く先任伍長を以て構成される。
[編集] 航空自衛隊
航空自衛隊では准曹士先任制度(じゅんそうしせんにんせいど)と呼ばれ、航空自衛隊において空曹士の服務指導体制の強化、組織の活性化、並びに、他自衛隊、米軍等との交流の活発化を目的[1]とした制度である。 2006年(平成18年)4月1日から2年間の検証を行ってきたが、2008年(平成20年)4月1日に正式施行となった。アメリカ空軍のファースト・サージャント(英語:First Sergeant)を参考にしている。[2]
[編集] 職務・職責
准曹士先任は曹士の最高位の階級として、主に次の事項について指揮官等を直接補佐する。[1]
- 指揮官等の指導監督の下、曹士の服務指導を実施(各級指揮官の意図の徹底等)
- 曹士に係る事項について指揮官等への報告、意見具申等を実施
- 諸外国軍隊・他自衛隊との下士官交流
[編集] 准曹士先任の分類
准曹士先任は配置される部隊等によって次のように区分され、それぞれ准曹士先任識別章の桜星の数が異なる。
- 航空自衛隊准曹士先任
- 航空幕僚監部に配置された准曹士先任をいう。准曹士先任識別章の桜星の数は4つ。
- 編合部隊等准曹士先任
- 編制部隊等准曹士先任
- 航空団、航空救難団、飛行教育団、飛行開発実験団、航空警戒管制団、航空隊、輸送航空隊、航空教育隊、航空警戒管制隊その他の編制部隊等(幹部候補生学校、術科学校、補給処)に配置された准曹士先任をいう。准曹士先任識別章の桜星の数は2つ。
- 編制単位群部隊准曹士先任
- 航空保安管制群、航空気象群、飛行群、電子開発実験群、教育群、整備補給群、飛行実験群、防空管制群、警戒群、基地業務群、整備群その他の編制単位群部隊に配置された准曹士先任をいう。准曹士先任識別章の桜星の数は1つ。
- 編制単位部隊准曹士先任
- 飛行隊その他の編制単位部隊に配置された准曹士先任をいう。准曹士先任識別章の桜星は無し。
| 代 | 氏名 | 階級 | 在任期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鹿股龍一 | 准空尉 | 2006.4.1 - 2008.8.31 |
| 2 | 作山委久夫 | 2008.9.1 - 2011.1.19 | |
| 3 | 本田久範 | 2011.1.20 - |
航空幕僚監部の准曹士先任は准空尉、各部隊に配置されている准曹士先任は准空尉から一等空曹(一等空曹は上級空曹課程修了者に限る。)をもって充てられている。
[編集] 脚注
- ^ a b c d e f g 「防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」、平成19年6月28日、防衛力の人的側面についての抜本的改革に関する検討会
- ^ a b c 「第7回人事関係施策等検討会議議事録」、人事関係施策等検討会議
- ^ 昇任・昇給や士における曹候補生への指定は従来からの通り中隊等上級曹長の意見も反映されている
- ^ 但し、従来の付准尉職においても形式上中隊長等の指揮官における隊員の昇任や訓練・補給等に関しての助言を行っていた例は古くから存在する。あくまでも公式なものではなく助言程度であり、古くから中隊内の事情を知り得ていた先任陸曹としての立場から部隊の今後に影響する部分を主に助言していた例がある
- ^ 連隊・大隊の最先任上級曹長は1名で師団等以上は2名配置される。発足当時連隊・大隊等においては、かつての部隊本部先任と本部付陸曹がそのまま着任している例がある
- ^ 部隊の編成上設けられている「服務指導准尉」は、従来の付准尉と同様に部隊先任上級曹長が兼務となっているためであり、連隊や群等本部の1科(総務科)における「先任」(最先任上級曹長とは別に設けられている)職にある者も着用する
- ^ 便宜上駐屯地基幹部隊の最先任上級曹長の職を指定された場合、同一駐屯地において他部隊が准 尉の先任上級曹長等同一階級の序列において上級者が勤務している例もあるが、例え曹長の階級にあっても駐屯地の最先任上級曹長となる。(大隊に準ずる隊編成が基幹部隊の駐屯地においては、基幹部隊の先任上級曹長が曹長で他の中隊先任上級曹長が准尉という例も一部存在)
- ^ 1佐(三)若しくは2佐で部隊旗が群旗を授与される部隊
- ^ 准尉に限らず、曹長が指定される場合もある
- ^ 部隊長の指定階級が1佐の駐屯地業務隊も含まれており、曹長や1曹の先任上級曹長の例もある
- ^ 隼人千里著 『”あたご事故”の底流にあるもの』 軍事研究2008年10月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー2008年10月1日発行 ISSN 0533-6716 Page.202
- ^ 部隊を隷属させることにより編制部隊でない部隊を組織することを編合といい、編合された部隊を「編合部隊」という。