准士官

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准士官(じゅんしかん)とは、下士官出身者で士官に準じる待遇を受ける者の分類をいう。階級名としては、准尉(じゅんい)・特務曹長(とくむそうちょう)・兵曹長(へいそうちょう)などの語が当てられることが多い。

目次

[編集] 沿革

そもそも、近代的軍隊草創期においては、士官は貴族出身者、下士官兵は平民出身者によって構成されたことから、平民出身者が士官に昇進することは不可能であった。そのため、下士官の中で功労があり特別に処遇すべき者に、士官でもなく下士官でもない士官相当の待遇を与える必要が生じた。そこで、設けられたのが准士官の制度である。英語にいうWarrant Officerとは、准士官が辞令を受けて士官の待遇を与えられた武官であったことに由来する。西欧諸国では、准士官中を更に複数等級に分類する国が多い。

[編集] 類型

NATO軍人階級符号では、WO-1 から WO-5 の符号が与えられているが、各国の定義する准士官と必ずしも一致しているわけではない。准士官制度のあり方は国によって様々であるが概ね次の類型に分けられる。

上級下士官型 
准士官の階級は下士官に分類される。上級の下士官に士官に準ずる待遇を与える制度。現在英国軍の准士官制度はこの上級下士官型に分類できる。
士官相当官型 
准士官の階級は士官に分類される。1960年代までの英国海軍の准士官制度では、准士官は少尉相当官であった。大正4年12月2日以降の日本海軍の特務士官はこの一種と見ることができる。
独立階級制度型 
准士官の階級は士官・下士官のどちらにも分類されない。このような准士官制度の場合、NATO 軍人階級符号では、WO-1 から WO-5 の符号が使用される。アメリカ軍の准士官制度は戦闘指揮を執る士官ではなく、軍務上必要な特殊技能を有する者を「上意下達型」の階級から切り離した独立階級制度型に分類できる。アメリカ軍の場合は、NATO 軍人階級符号 OR-5 以上の下士官は上級の下士官へ昇任する代わりに准士官へ転官することができる。
役職型 
第二次世界大戦でのドイツ軍では「准尉」は階級でなく役職で、上級の曹長が任命された。これに対し同時期の武装親衛隊には「SS准尉」が階級として存在する。

[編集] 上級下士官型

[編集] 日本陸軍

大日本帝国陸軍では、当初は准士官と並んで下副官(階級としては曹長)を置いていたが、後に下副官制度は廃止された。実際日本陸海軍の准士官は概ね判任官1等であり、少尉に相当する奏任官6等とは明確に区別されていた。しかし、軍服は将校と同様に自弁であり将校集会所に顔を出す事も出来た。

「陸軍武官官等表」(明治19年3月9日勅令第4号)では、准士官(判任官1等)として、陸軍砲兵上等監護・陸軍工兵上等監護・陸軍二等軍楽長の3種類が置かれている。

明治27年に特務曹長という階級名となる(明治27年7月16日勅令第104号など)。特務曹長の呼称を用いたのは兵科准士官のみで、呼称変更前の最終段階では歩兵砲兵工兵航空兵輜重兵憲兵の各特務曹長があった。特務曹長の名称を用いない准士官としては同じく最終的には兵科の砲兵上等工長・工兵上等工長の2つの他、各部には経理部の上等計手・上等縫工長・上等靴工長、衛生部の上等看護長・上等磨工長、獣医部の上等蹄鉄工長、軍楽部の楽長補の階級があった。1932年(昭和7年)に陸軍准尉という階級名に変更された。終戦時に於ける階級の種類としては兵科の准尉と憲兵准尉、技術部の技術准尉と建技准尉、経理部に主計・縫工・装工の3種、衛生部の衛生准尉・療工准尉、獣医部の獣医務准尉、軍楽部の軍楽准尉、法務部の法務准尉があった。

なお、1917年(大正6年)から1920年(大正9年)までの間、准尉制度というものが設けられていたが、これは階級としての准尉とは異なるものである。すなわち、特務曹長から選抜された者が陸軍士官学校で将校教育を受けたものである。これは1920年(大正9年)に少尉候補者制度と改正される。

[編集] 日本海軍

大日本帝国海軍では、次のような主要な変遷がある。

  1. 1884年(明治17年)7月11日:準士官として、海軍兵曹上長・海軍兵曹長・海軍木工上長・海軍木工長・海軍機関工長属・海軍機関工長・海軍楽長が置かれる。
  2. 1886年(明治19年)7月12日:准士官(判任官1等)として、海軍上等兵曹・海軍軍楽師・海軍機関師・海軍上等技工・海軍船匠師を置く。
  3. 1920年(大正9年)4月1日以降:1897年9月16日以降の海軍上等兵曹等の官名を改め、海軍兵曹長又は海軍(機関・軍楽・船匠・看護・主計)兵曹長とする。

海軍廃止時には海軍兵曹長のほか、海軍(飛行・整備・機関・工作・軍楽・衛生・主計・技術・法務)兵曹長が置かれていた。

[編集] 自衛隊

自衛隊では、当初は幹部と曹との間には准士官に相当する階級は設けられていなかったが1970年(昭和45年)5月25日に制定された「防衛庁設置法等の一部を改正する法律」(昭和45年5月25日法律第97号)により、3等陸尉・3等海尉・3等空尉(3尉)の下、1等陸曹・1等海曹・1等空曹(1曹)の上として准陸尉・准海尉・准空尉(准尉)が創設される。創設時の俸給月額は41,500円ないし87,600円である(同時期の3尉のそれは44,100円ないし88,200円)。

陸海空3自衛隊の全てで「Warrant Officer」の英訳が当てられている。3自衛隊で共通の英訳が当てられている階級は准尉のみである。

現行制度の准尉は、「高い専門性を有する技術職配置」と「准最高位としての総括的配置」の二つの性格の位置付けがなされている。海上自衛隊における准尉はすべて専門的技術職であり、幹部を補佐する準幹部として配置されているが、陸上自衛隊航空自衛隊にあっては准曹士の総括的配置と専門的技術職との両方がある。[1]

[編集] 陸上自衛隊

陸上自衛隊では、原則として次の職は准陸尉を持って充てられる。

  • 服務指導の分野に於いて、特に慣熟した隊務経験に基づき陸曹以下を指導する職
  • 整備等の分野において、機能維持上特に慣熟した技能を必要とする職
  • 教育又は訓練の分野において、特定の技能について陸曹以下を指導する職
  • 司令部要員等で上記の職と同等以上の責任と経験を必要とする職

代表的な職務には次のような職がある。

部隊等においては、初級幹部低充足から小隊長職、業務隊班長職等の幹部配置に補職させる場合もある。

[編集] 海上自衛隊

海上自衛隊では、原則として次の職は准海尉を持って充てられる。

  • 特技職における熟練者としての高度の知識及び技能並びに海曹士としての長年の経験を背景に幹部を補佐する職
  • 分隊士及び係士官として特技職に係る専門業務及び業務全般について幹部を補佐する職

代表的な職務には次のような職がある。

  • 掌船務士等(艦艇において副直士官として当直士官を補佐)
  • 海上訓練指導隊指導官(艦艇乗組み幹部等の術科指導を実施)
  • 司令部の班長等、特技に関する専門的事項について幹部を補佐する職

初級幹部の配置に補職する場合もある。

[編集] 航空自衛隊

航空自衛隊では、原則として次の職は准空尉を持って充てられる。

  • 曹士隊員の服務指導等に関し、指揮官を直接補佐する職
  • 総括的業務を通じて曹士隊員の指導及び指揮官等の補佐に当たる職
  • 特技に関する高度な専門的知識を持って指揮官の補佐及び曹士隊員の指導に当たる職

代表的な職務には次のような職がある。

准空尉を幹部配置に補職する事例はない。

[編集] 創作世界における准士官

准士官は兵卒・下士官からたたき上げ、士官学校に入ることなく士官に準ずる地位に上がったベテランの階級であるが、軍事に詳しくない作家による作品(特にSFやファンタジー)では、少尉の下であることから最下級の士官と誤解され、士官学校出がいきなりこの階級に任命されることがよくある(『パンプキン・シザーズ』の帝国軍など)。現実世界でも士官学校在学中に緊急の軍務に就いた者が一時的に准尉になるケース(荒川弘鋼の錬金術師』のアメストリス国軍、アニメ『太陽の牙ダグラム』における戦時特例法第205号)もあるが、正式に卒業した者は少尉に任官される。また『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のジオン公国軍では、士官学校卒業生には教導隊で見習い士官相当の准尉として勤務させ、地球連邦軍では臨時のモビルスーツパイロット及び操舵手として活躍した民間人たちを入隊させた折、戦功を認め准尉(特務曹長)に任官している。

[編集] 脚注

  1. ^防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」、平成19年6月8日、防衛力の人的側面についての抜本的改革に関する検討会

[編集] 関連項目