ラッキー・オールド・サン (ブライアン・ウィルソンのアルバム)

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ラッキー・オールド・サン
ブライアン・ウィルソンスタジオ・アルバム
リリース
録音 キャピトル・スタジオ英語版
ジャンル ロックポップススポークン・ワード
時間
レーベル キャピトル・レコード
プロデュース ブライアン・ウィルソン
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 15位(ノルウェー[1]
  • 21位(アメリカ[2]
  • 33位(スウェーデン[3]
  • 37位(イギリス[4]
  • 41位(ベルギー・フランデレン地域[5]
  • 45位(ドイツ[6]
  • 54位(オランダ[7]
  • 59位(日本[8]
  • 82位(フランス[9]
  • 92位(ベルギー・ワロン地域[10]
  • ブライアン・ウィルソン アルバム 年表
    ホワット・アイ・リアリー・ウォント・フォー・クリスマス
    (2005年)
    ラッキー・オールド・サン
    (2008年)
    ブライアン・ウィルソン・リイマジンズ・ガーシュウィン
    (2010年)
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    ラッキー・オールド・サン』(原題:That Lucky Old Sun)は、アメリカ合衆国のミュージシャン、ブライアン・ウィルソン2008年に発表したスタジオ・アルバムフランキー・レインの歌唱で1949年にヒットした曲「ザット・ラッキー・オールド・サン」をタイトルに冠したコンセプト・アルバム[11]、同曲のカヴァーから始まり、その後も作中で3度リプリーズされる。また、全体を通じて南カリフォルニアが題材となっている[11][12]

    背景[編集]

    ピッチフォーク・メディアのインタビューによれば、ウィルソンは最初からコンセプト・アルバムを意図していたわけではなく、まず個々の曲作りから始め、コンセプトに関しては「後でそうなった」と発言している[12]。ウィルソンはルイ・アームストロング版の「ザット・ラッキー・オールド・サン」を参考にしており[11][13][14]、この曲についてシカゴ・トリビューン紙のインタビューでは「報酬のため必死になって働く奴隷の歌さ。僕にとっては実にスピリチュアルだよ」[13]インデペンデント紙のインタビューでは「ニグロ・スピリチュアル的なコンセプトが欲しかった」「ニグロの人々が、どんな苦難に耐えてきたかを人々に知らせたかった」と語っている[14]

    「キャント・ウェイト・トゥー・ロング」はザ・ビーチ・ボーイズ時代に作られた曲で[15]、元々は1967年末から1968年にかけて[16]、『ワイルド・ハニー』(1967年)及び『フレンズ』(1968年)の制作過程で録音され[17]、後に『スマイリー・スマイル』(1967年)と『ワイルド・ハニー』を1枚にまとめた再発CDに初収録された[16][17]。本作には抜粋ヴァージョンが収録されている。

    本作のオリジナル曲の大半は、1999年からウィルソンのライヴを支えてきたマルチプレイヤーのスコット・ベネットが作詞した[18]。また、スポークン・ワードの曲では、ウィルソンと旧知の仲であるヴァン・ダイク・パークスが、南カリフォルニアを題材とした詩を提供した[18]。なお、ウィルソンとパークスが共作した「リヴ・レット・リヴ」は、2007年公開のドキュメンタリー映画『北極のナヌー』のサウンドトラックに提供されているが[19]、本作には別ヴァージョンが収録された[20]

    ライヴでの披露[編集]

    レコーディング前の2007年9月10日、ロンドンロイヤル・フェスティバル・ホールで本作のお披露目のコンサートが行われ、ウィルソンは当時「レコーディングもしたいけど、今はとにかくオーディエンスに捧げているんだ」とコメントしている[21]。ウィルソンは同月のうちにロイヤル・フェスティバル・ホールで合計6公演を行い、更にブリストルボーンマスエジンバラマンチェスターバーミンガムでも本作を演奏した[22]。また、2008年1月7日にはオーストラリアのシドニー・フェスティバルに参加して、本作の全編を演奏した[23]。そして、レコーディングはザ・ビーチ・ボーイズ時代と同様キャピトル・スタジオ英語版で行われた[24]

    リリース[編集]

    本作は、ウィルソンがザ・ビーチ・ボーイズ時代に所属していたキャピトル・レコードから発売された[25]。初回限定盤には、メイキング映像とスタジオ・ライヴ映像2曲を収録したボーナスDVDが付属[26]。なお、2009年には全17曲のスタジオ・ライヴ映像を収録した映像作品『ラッキー・オールド・サンDVD』が単体でリリースされた[27]

    キャロル・キングと共にレコーディングした「I'm Into Something Good」(キングとジェリー・ゴフィンの夫婦がハーマンズ・ハーミッツに提供した曲の再演)と「素敵な愛」(本作収録曲の別ヴァージョン)はアウトテイクとなったが、ベスト・バイ及び同社のウェブサイトでは、これらの曲が追加された限定盤CDも発売された[28]

    反響・評価[編集]

    母国アメリカのBillboard 200では21位に達し、『スマイル』(2004年)以来のトップ40入りを果たした[2]。イギリスでは2008年9月13日付の全英アルバムチャートで37位を記録するが、チャート入りは1週のみにとどまった[4]

    ジョン・ブッシュはオールミュージックにおいて5点満点中2.5点を付け「黄金期のビーチ・ボーイズ・サウンドの機微には、殆ど近づけていない」「彼には有能な共作者だけでなく、彼自身と一緒に歌う強力なリード・ボーカリストも必要だ」と評している[29]。一方、デヴィッド・フリックは『ローリング・ストーン』誌のレビューで5点満点中4点を付け「ウィルソンが1967年の作品を2004年に再編した『スマイル』と比べると大きな衝撃に欠ける。しかし、ナチュラルで希望に満ちた、心温まる流れが全編にわたって続いている」と評している[30]

    収録曲[編集]

    特記なき楽曲はブライアン・ウィルソンとスコット・ベネットの共作。

    1. ラッキー・オールド・サン - "That Lucky Old Sun" (Beasley Smith, Haven Gillespie) - 0:56
    2. モーニング・ビート - "Morning Beat" - 2:54
    3. 眺めの良い部屋(語り) - "A Room with a View (narrative)" (Brian Wilson, Van Dyke Parks) - 0:45
    4. 素敵な愛 - "Good Kind of Love" (B. Wilson) - 3:20
    5. 永遠のサーファー・ガール - "Forever She'll Be My Surfer Girl" - 2:52
    6. ヴェニス・ビーチ(語り) - "Venice Beach (narrative)" (B. Wilson, V. D. Parks) - 0:45
    7. リヴ・レット・リヴ - ラッキー・オールド・サン(リプリーズ)メドレー - "Live Let Live / That Lucky Old Sun (reprise)" (B. Wilson, V. D. Parks, B. Smith, H. Gillespie) - 2:34
    8. メキシカン・ガール - "Mexican Girl" - 2:42
    9. 5月5日のお祭り(語り) - "Cinco de Mayo (narrative)" (B. Wilson, V. D. Parks) - 0:46
    10. カリフォルニア・ロール - ラッキー・オールド・サン(リプリーズ)メドレー - "California Role / That Lucky Old Sun (reprise)" (B. Wilson, Scott Bennett, B. Smith, H. Gillespie) - 2:40
    11. ビトゥウィーン・ピクチャーズ(語り) - "Between Pictures (narrative)" (B. Wilson, V. D. Parks) - 0:47
    12. オキシジェン・トゥ・ザ・ブレイン - "Oxygen to the Brain" - 3:27
    13. キャント・ウェイト・トゥー・ロング(抜粋) - "Can't Wait Too Long (excerpt)" (B. Wilson) - 0:54
    14. 明日への扉 - "Midnight's Another Day" - 3:57
    15. ラッキー・オールド・サン(リプリーズ) - "That Lucky Old Sun (Reprise)" (B. Smith, H. Gillespie) - 0:43
    16. ゴーイング・ホーム - "Going Home" - 3:03
    17. サザン・カリフォルニア - "Southern California" - 4:55

    デラックス・エディション盤ボーナスDVD[編集]

    • メイキング・オブ・ラッキー・オールド・サン - Making of the Album
    • ライヴ・パフォーマンス・フロム・キャピトル・スタジオ
      • 素敵な愛 - "Good Kind of Love"
      • 永遠のサーファー・ガール - "Forever She'll Be My Surfer Girl"

    参加ミュージシャン[編集]

    アディショナル・ミュージシャン

    • トミー・モーガン - ハーモニカ(#16)
    • ブレット・シモンズ - アコースティック・ベース(#8)、エレクトリック・ベース(#16)
    • ピーター・ケント - ヴァイオリンコンサートマスター
    • シャロン・ジャクソン - 第2ヴァイオリン
    • ジェシカ・ヴァン・ヴェルゼン - ヴィオラ
    • キャメロン・ストーン - チェロ
    • ペギー・バルドウィン - チェロ
    • フィル・フェザー - 木管楽器
    • チャーリー・モラリス - トロンボーン
    • ブルース・オットー - トロンボーン

    脚注[編集]

    1. ^ norwegiancharts.com - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    2. ^ a b Brian Wilson - Awards”. AllMusic. 2015年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月21日閲覧。
    3. ^ swedishcharts.com - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    4. ^ a b BRIAN WILSON | Artist | Official Charts - 「Albums」をクリックすれば表示される
    5. ^ ultratop.be - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    6. ^ officialcharts.de
    7. ^ dutchcharts.nl - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    8. ^ ORICON STYLE
    9. ^ lescharts.com - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    10. ^ ultratop.be - Brian Wilson - That Lucky Old Sun
    11. ^ a b c Brian Wilson opens up about life, lyrics and 'That Lucky Old Sun' - USATODAY.com - article by Edna Gundersen - 2015年1月20日閲覧
    12. ^ a b Interviews: Brian Wilson | Features | Pitchfork - article by Mark Richardson - 2015年1月20日閲覧
    13. ^ a b Brian Wilsons Sound - Chicago Tribune - article by Louis R. Carlozo - 2015年1月20日閲覧
    14. ^ a b Lost in music: The peculiar life of Brian Wilson - Features - Music - The Independent - 2015年1月20日閲覧
    15. ^ Brian Wilson: That Lucky Old Sun | PopMatters - article by Thomas Britt - 2015年1月20日閲覧
    16. ^ a b アメリカ盤CD『Smiley Smile / Wild Honey』(1990, Capitol Records, CDP 7 93696 2)ライナーノーツ(David Leif)
    17. ^ a b Can't Wait Too Long - The Beach Boys | AllMusic - Song Review by Matthew Greenwald
    18. ^ a b Don't worry baby - Page 2 - Los Angeles Times - article by Randy Lewis - 2015年1月20日閲覧
    19. ^ Arctic Tale (2007) - Soundtracks - IMDb
    20. ^ 日本盤CD(TOCP-70602)ライナーノーツ(宇多和弘、2008年7月)
    21. ^ Brian Wilson Hoping To Record 'Lucky Old Sun' | Billboard - article by Juliana Koranteng - 2015年1月20日閲覧
    22. ^ Brian Wilson Performing the World Premiere of new work That Lucky Old Sun and a selection of never before performed classics. - southbankcentre.co.uk (.pdf format) - 2015年1月20日閲覧
    23. ^ Brian Wilson Performs That Lucky Old Sun @ The Sydney Festival | PopMatters - article by Dan Raper - 2015年1月20日閲覧
    24. ^ 初回限定盤(TOCP-70602)付属DVD「メイキング・ラッキー・オールド・サン」より
    25. ^ NME Brian Wilson unveils new album track listing | NME.COM - 2015年1月20日閲覧
    26. ^ Brian Wilson - That Lucky Old Sun (CD, Album) at Discogs
    27. ^ ブライアン・ウィルソン (Brian Wilson)、最新作『ラッキー・オールド・サン』のDVD版をリリース! スタジオ・セッション・ライヴを収録 - CDJournalニュース - 2015年1月20日閲覧
    28. ^ Carole King / Brian Wilson Exclusive Tracks | Carole King - 2015年1月20日閲覧
    29. ^ That Lucky Old Sun - Brian Wilson | AllMusic - Review by John Bush
    30. ^ Brian Wilson That Lucky Old Sun Album Review | Rolling Stone - Review by David Fricke - 2015年1月20日閲覧