ナミチスイコウモリ

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ナミチスイコウモリ
ナミチスイコウモリ
ナミチスイコウモリ Desmodus rotundus
保全状況評価
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
: コウモリ目 Chiroptera
亜目 : 陽翼手亜目 Yangochiroptera
下目 : ウオクイコウモリ下目
上科 : ウオクイコウモリ上科 Noctilionoidea
: チスイコウモリ科 Desmodontidae
: チスイコウモリ属 Desmodus
Wied-Neuwied, 1826
: ナミチスイコウモリ D. rotundus
学名
Desmodus rotundus
(E. Geoffroy, 1810)
和名
ナミチスイコウモリ
チスイコウモリ
英名
Common vampire bat

ナミチスイコウモリ(並血吸蝙蝠、Desmodus rotundus)は、動物界脊索動物門哺乳綱コウモリ目(翼手目)チスイコウモリ科ヘラコウモリ科に含める説もあり)チスイコウモリ属に分類されるコウモリ。本種のみでチスイコウモリ属を形成する。チスイコウモリ属はチスイコウモリ科の模式属

分布[編集]

アルゼンチン北部、エクアドルエルサルバドルガイアナコスタリカコロンビアスリナムチリ北部、ニカラグアパナマパラグアイブラジルフランス仏領ギアナ)、ベネズエラベリーズペルーボリビアメキシコ

形態[編集]

体長7-9cm。体重15-50g。背面の体毛は褐色、腹面の体毛は白い。

鼻は大きく反りあがり、獲物が出す赤外線(熱)を感知していると考えられている。これによりかれらは獲物を探し、また獲物に取り付いた後、皮膚下の暖かい血の流れる血管を探る[1]。歯列は門歯が上顎2本、下顎4本、犬歯が上下2本ずつ、小臼歯が上顎2本、下顎4本、大臼歯が上顎2本、下顎4本の計22本の歯を持つ。上顎の門歯犬歯は剃刀状で、獲物の皮膚を切り裂くのに適している。また切れ味が鋭いことや、寝ている時に噛まれることが多いため噛まれた獲物が痛みを感じることは少ない。そして犬のように傷口を舐めて流れて落ちてきた血を飲む。さらに唾液には血液の凝固作用を妨げる物質が含まれているため、獲物の血液が固まらず摂取を続けることができる。

親指は長く、後肢も力強い。そのためコウモリとしては例外的に歩行が得意であり、獲物に接近する時や血を吸った後などは地上を移動することが多い。[2]

生態[編集]

森林に生息する。夜行性で、昼間は洞穴や樹洞の中で小規模な集団でぶら下がり眠る。社会性が発達しており、通常100匹、時として1,000匹にも及ぶ大規模な群れを形成することもある[1]

食性は動物食で、鳥類や哺乳類、主に家畜(ウシ、ウマ、ブタ等)の血液を吸う。コウモリ目では本種のみが哺乳類の血液も摂取する。眠っている獲物の近くで着地後歩いて忍び寄り、鋭い歯で獲物の体毛がない部分に噛みついた後、傷口に舌を高速で出し入れして血液を摂取する。30分ほどの間に、自分の体重の40%もの血液を摂取することができる。本種は小型のため血液を摂取した後は血液の重量や消化のために飛行することができなくなり、地面を飛び跳ねるようにして移動する。その後水分を大量に摂取し排泄を行う。糞は血液のみ摂取するためか黒く粘着質で臭い。また同じねぐらに血液を摂取できなかった個体がいる場合、他の個体が口移しで血液を分け与える。

野生での寿命は約9年[1]。繁殖形態は胎生で、1度に1頭の幼獣を年2回出産する。

利他行動[編集]

飢餓状態の仲間にたいして血を分け与える「利他行為」の習性をもつことで知られる。過去にグルーミングをしたことのある仲の良い個体間などでまれに確認されている。 また別個体の子どもに乳を分け与える現象も確認されており、種族における社会性の高さに研究の焦点が集まっている。

人間との関係[編集]

吸血鬼のモチーフにもなっている。しかし一般的に知られる吸血鬼伝承は東ヨーロッパに由来するが、本種は南北アメリカ大陸に分布するため直接の因果関係はない。

本種は人間の血液も吸うことがあるが、外界から遮断された人家の中に侵入することは困難なこと等から人を襲うことは稀。獲物を死に至らしめるほどの大量の血液を吸う訳ではないが、家畜を複数の個体で襲い衰弱させたり、咬み傷から狂犬病等のウィルスや伝染病を媒介することもあるため害獣とされる[1]

画像[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d ナショナル ジオグラフィック
  2. ^ 『日経サイエンス』 66頁

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科6 有袋類ほか』、平凡社1986年、60-77、84-85、167頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館2002年、122頁。
  • ジュリエット・クラットン・ブロック 『世界哺乳類図鑑』 ダン・E・ウィルソン、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、91頁。ISBN 4-7875-8533-9
  • 日経サイエンス 2009年5月号、66頁。

外部リンク[編集]