ゴロ/フライ比率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ゴロ/フライ比率(GB/FB Ratio)は、セイバーメトリクスの指標の一つである。ゴロ(GB)の総数をフライ(FB)の総数で割り、ゴロとフライの比率を調べる。同じ数の場合は1となり、これより数値が大きくなるほどゴロの割合が高く、数値が小さくなって0に近付くほどフライの割合が高い投手であることが分かる。

概要[編集]

対戦打者ゴロを頻繁に打たせることが出来る投手グラウンドボールピッチャー(Groundball pitcher)と呼ばれている[1]。高い割合でゴロを打たせることで長打になる危険性を低下させ、これが失点を減らすことに繋がる[1]。グラウンドボールピッチャーは平均的にはフェアボールのうち50%程度の割合でゴロを打たせており、極端なグラウンドボールピッチャーは55%前後の割合でゴロを打たせている。50%以下の投手はグラウンドボールピッチャーとは対極のフライボールピッチャー(Flyball pitcher)あるいはこの両方の傾向を示す投手として分類することが出来る[2]

MLBでは2005年頃から球数を節約してグラウンドボールピッチャーの評価が高まり、注目を浴びるようになった[3]セイバーメトリクス研究の第一人者ビル・ジェームズは歴代の最高の投手のリストを作成したところ、いつの時代でもこのタイプの投手は2割しか存在せず、近年になって過大評価されていると主張しており、腕の故障が発生しやすいことも指摘している[4][5]。一方で、セイバーメトリクス研究家のトム・タンゴ、ミッチェル・リヒトマン、アンドリュー・ドルフィンは一般的にはグラウンドボールピッチャーはフライボールの傾向を持つ投手よりも優秀であるという意見に賛同している[6]

また、これと似た指標にGO/AOがあり、ゴロアウトの総数をフライアウトの総数で割って算出する。この数値が高いほど全体のゴロアウトの比率が高いことが分かる。

飛球がフライとライナー(LD)の2種類に分類されており、内野フライ(IFFB)も集計されているFanGraphsによると、2002年から2013年までのフェアボールに占める各打球割合のMLB平均はLD約18~22%、GB約43~45%、FB約34~38%、IFFB約9~12%で推移している[7]

グラウンドボールピッチャー[編集]

2002年以降の通算ではブランドン・ウェブ(64.2%:GB/FB1.82、GO/AO2.91)、デレク・ロウ(62.3%:GB/FB1.66、GO/AO2.61)、ティム・ハドソン(58.5%:GB/FB1.42、GO/AO2.04)、ジェイク・ウエストブルック(58.7%:GB/FB1.45、GO/AO2.19)、王建民(59.1%:GB/FB1.45、GO/AO2.17)はフェアボールの60%前後がゴロで占められており、このタイプの代表的な投手と言える。シンカースプリッターを多用し、ストライクゾーン低めに集めた投球をするのがこのタイプの投手の特徴である[8]

ハードボール・タイムズ誌の著者デビッド・ガッサコは被本塁打率が低いことがこのタイプの最大の利点であることを述べている[3]。フライボールバッターよりもグラウンドボールバッター(多くがコンパクトな打撃をする巧打者)に対して強さを発揮する傾向にある[6]。また、このタイプの投手は球足の遅いゴロを打たせることにも長けているので、走者がいる時に併殺に打ち取れる割合が高くなる傾向にある[1]

ガッサコはゴロ打球のうち2.23%は失策になり、これは全体の失策の85%を占めていることを指摘している。従って内野手の守備に影響されやすいこのタイプの投手は失点率と防御率の差が開きやすい傾向にある[3]。また、このタイプの投手は一般的に奪三振率が低いことからBABIPの関係上、安打を打たれやすいが、55%のゴロ率の投手は45%のゴロ率の投手よりBABIPを若干低くする傾向があることも発見されている(高いフライ率の投手も同様に、打たれたフライに占める本塁打の割合を若干低くする傾向があることも発見されている)[9]

グレッグ・マダックス1994年1995年1996年と3年連続でゴロの割合が60%を超えており、1988年以降の通算でも55.9%の高数値を残している[10]。他にアメリカ野球殿堂入りが有力視されている投手では、通算セーブ数世界1位の記録を保持するマリアノ・リベラが通算のゴロの割合が50.2%とグラウンドボール寄りであった[11]。リベラの通算被本塁打率0.50は1995年から2013年までの期間で1000投球回以上投げた投手の中で最も低い率である[12]

宇佐美徹也の著書によると、1981年西本聖はゴロアウト406に対して飛球アウトは198で、GO/AOは2.05を記録している[13]1980年7月25日の試合では12安打をされながら、2失点完投勝利を収めている。5併殺を打たせてピンチを乗り切った。飛球2つ、三振2つ以外は全てゴロによるアウトで、巨人内野手は1試合22補殺の記録を作った。1981年の日本シリーズ第5戦でも13安打をされながら、完封勝利を収めた。飛球1つ、三振4つ、あとの22のアウトは4併殺を含み、全てゴロによるものだった[14]

フライボールピッチャー[編集]

2002年以降の通算ではクリス・ヤング(27.3%:GB/FB0.38、GO/AO0.45)、テッド・リリー(34.1%:GB/FB0.53 、GO/AO0.68)、ジェレッド・ウィーバー(33.2%:GB/FB0.51、GO/AO0.63)はフェアボールに占めるゴロの割合が30%前後にとどまっており、このタイプの代表的な投手と言える。回転数の多い空振りの取れるフォーシームを主体としている点で共通している。長期間活躍している投手は奪三振率が優秀であることが多い。

マリアノ・リベラに次ぐ通算セーブ数世界2位の記録を保持するトレバー・ホフマンは通算のゴロの割合が35.2%と完全にフライボール寄りであった[15]。通算奪三振率は9.36と非常に優秀である。また、既にアメリカ野球殿堂入りを果たしているデニス・エカーズリーは実働24シーズンのうち、1988年から1998年までの11シーズンのゴロの割合は34.1%である[16]

xFIP算出の元になるHR/FB%(フライに占める本塁打の割合)はシーズン毎に数値の揺らぎが大きく、また投手の場合は長い年数をプレーした場合に通算9~10%に近い数値になる傾向が発見されている[17]USセルラー・フィールドのような本塁打のパークファクターが高い球場で多くプレーした場合には平均数値がこれよりも高くなる[18]。そのためにこのタイプで奪三振率がそれほど高くない投手は一般的に被本塁打率が高くなり、パークファクターが高い球場との相性はあまり良くない。

脚注[編集]

  1. ^ a b c Ground Ball Pitcher” (英語). Sportingcharts.com. 2014年7月3日閲覧。
  2. ^ Rob Neyer. “What We Talk About When We Talk About Ground-Ball Pitchers” (英語). SBNation.com. 2014年7月3日閲覧。
  3. ^ a b c David Gassko. “The Truth About the Grounder” (英語). The Hardball Times. 2013年8月21日閲覧。
  4. ^ Is Bill James Right about Ground Ball Pitchers and Injuries?” (英語). FanGraphs.com. 2013年8月21日閲覧。
  5. ^ Rob Neyer. “Bill James on overrating ground-ball pitchers” (英語). SBNation.com. 2014年7月3日閲覧。
  6. ^ a b Tom M. Tango、Mitchel G. Lichtman、Andrew E. Dolphin (英語). The Book: Playing the Percentages in Baseball. Potomac Books. ISBN 978-1597971294. 
  7. ^ Currently viewing seasons between 2002 and 2013” (英語). FanGraphs.com. 2013年8月21日閲覧。
  8. ^ Dan Lependorf. “Where do ground balls come from?” (英語). Hardballtimes.com. 2014年7月3日閲覧。
  9. ^ GB%, LD%, FB%” (英語). FanGraphs.com. 2014年7月3日閲覧。
  10. ^ Greg Madduxbaseball-reference.com
  11. ^ Mariano Riverabaseball-reference.com
  12. ^ Currently viewing seasons between 1995 and 2013FanGraphs.com
  13. ^ 宇佐美徹也プロ野球記録・奇録・きろく P.44
  14. ^ 宇佐美徹也プロ野球データブック P.627
  15. ^ Trevor Hoffmanbaseball-reference.com
  16. ^ Dennis Eckersleybaseball-reference.com
  17. ^ xFIP” (英語). FanGraphs.com. 2013年8月21日閲覧。
  18. ^ HR / FB” (英語). FanGraphs.com. 2013年8月21日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]