アクセシビリティ

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アクセシビリティ: accessibility)とは、高齢者・障害者を含む誰もが、さまざまな製品や建物やサービスなどを支障なく利用できるかどうか、あるいはその度合いをいう。

概要[編集]

アクセシビリティは、さまざまな製品や建物やサービスへの、アクセスしやすさ、接近可能性などの度合いを示す言葉である。

一般的に、障害や不自由のある閲覧者に対しての閲覧保障性(ウェブアクセシビリティ)=アクセシビリティだと思われがちだが、障害や不自由のある閲覧者だけでなく、さまざまな閲覧環境(ハード・ソフト・操作機器・モバイル等)への対応性を指すのが本来の意味である。

日本では「ユーザビリティ(英語:usability 使いやすさ、利用しやすさ)」に近い意味合いとして、IT分野で使われることが多く、この場合は、さまざまな情報端末やソフトから閲覧参照できることを目指している仕様と理念をさす。

障害のある人の権利条約の発効以降、しばしば車椅子利用者や、コンピュータの画面を読み上げるスクリーンリーダーなど、支援技術を利用しているユーザが、その対象となる様々な製品や建物やサービスなどを利用できるかどうかに焦点を合わせた議論がなされる。そのため、さまざまな点で身体機能の低下が考えられる高齢者も、その対象としてとらえられることが多い。ただ、英語本来の「アクセシビリティ」は、ノーマライゼーションの推進の理念から、社会のすべてに適用される語である。日本での「バリアフリー」がこれにあたる。

振り仮名[編集]

アクセシビリティの向上の身近な一例として、日本語の文章の漢字に添えられる振り仮名がある。学習障害を持った人や、小学生など難解な漢字を読むのが困難な人に向けた文書書籍で振り仮名が使用される。

また、海外からの就労者が多い今日、日常会話をローマ字にすることも、自治体情報等のインフラとして必要性が増している。

また、関連するものでは、例えば海外の映画映像では、外国語が理解できない人のために字幕をつけたり吹き替え同時通訳を行ったりして、視聴者に理解しやすくする。

ウェブページにおけるアクセシビリティ[編集]

ウェブページにおけるアクセシビリティは、そのウェブページが、高齢者障害者も含めた、誰もが情報を取得・発信できる柔軟性に富んでいて、アクセスした誰もが同様に情報を共有できる状態にあること(あるいはその度合い)を意味する。日本語では「アクセシビリティに配慮する」あるいは「アクセシビリティを高める」といった表現で用いられる。

公共サイトにおいては、情報取得機会の均等性確保を担う情報保障上、重要な概念となる。

日本におけるウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインとしてはJIS(日本工業規格)により2004年6月に公表された規格番号X 8341-3(高齢者・障害者等配慮設計指針—情報通信における機器, ソフトウェア及びサービス—第3部:ウェブコンテンツ)があり、WebコンテンツJISと呼ばれる。さらに2010年にはW3C(World Wide Web Consortium)によるWCAG 2.0(Web Content Accessibility Guidelines)の勧告に沿い、X 8341-3は改訂が加えられた。この改訂版では12のガイドラインが改訂前と同様に知覚可能性、操作可能性、理解可能性、堅牢性の4つの原則に整理され、61の達成基準に分けてWCAG 2.0と協調された。 なお、JISへの準拠は基本的に任意であるが、工業標準化法第67条(日本工業規格の尊重)では「国及び地方公共団体は、鉱工業に関する技術上の基準を定めるとき、その買い入れる鉱工業品に関する仕様を定めるとき(中略)日本工業規格を尊重してこれをしなければならない。」とあり、WEBコンテンツJISへの尊重義務が発生する。

ウェブページの中には、ウェブブラウザ解像度を制限したもの、JavaScriptMacromedia Flashを使用したものが多数存在するが、代替情報の付加等により障害者が情報を取得することが出来るウェブページが実現する。同時に、こうした配慮がなされたウェブページは、ウェブを視覚に頼らずテキストベースで巡回する検索ロボットに、効率的に検索されるという利点がある。

障害者の環境では、音声点字による表示や出力を行いながら、パソコンからの情報取得を可能とするが、代替情報の欠損などにより、ウェブページからの情報が取得できない場合がある。

「アクセシビリティ」というカタカナの訳語自体が、理解されにくいのではないかという指摘もある。「アクセシビリティ対応」などと書いていても、万人が理解しやすいとはいえない点も考慮する必要がある。

アクセシビリティ・リニューアルの費用を抑えるため、不自由のある人の実使用性を高めるプラグインやASPサービスも普及している。HTMLレベルでのアクセシビリティの実装が膨大な費用規模の場合、暫定的な方法となりえる。

ウェブアクセシビリティが実現してゆくこと[編集]

コミュニケーション情報(視力聴力発声)障害や自力移動運動障害による情報格差(デバイド)を軽減し、コミュニケーションから多くの人との交感を可能にする。このことは社会にinputされていない新たなインスピレーションを多くの人と共有できるということでもあり、新たな特性や感性を社会が受け取る可能性でもある。ウェブアクセシビリティがそういった礎になるかもしれない。

公益性の高いことに、アクセシビリティが遵守される必要があるとともに、特化した機能にアクセシビリティを向上させることで、必要な機能が低下することも、注視される必要がある。システムの即応性や、多機能化が必要な場合に、アクセシビリティを同等の代替手段にすることも考察される必要がある。特に、人命に関わる情報提供などでは、議論されてきている。

視覚障害:失視[編集]

公的な情報の取得を官公庁や福祉施設のウェブサイトから入手できるようになる(印刷物をスキャンからOCR=文字をテキストエディターに読み込み音声化する方法では、枠線などで読めない場合が多い)。スクリーンリーダー或いは音声ブラウザと呼ばれる支援技術を用いて操作することとなる。この技術を健全に発展させることによって、他者の介助に依存することなく、情報を入手し、情報の発信の可能性を拡げることに資するものと大いに期待されている。音声認識合成音声による音訳など使用する技法に対応する形態での情報提示が課題となる。

視力障害:重度弱視[編集]

重度弱視 (ロービジョン)は、文字拡大の手段と、場合により音声の手段を使い分ける事が多い。紙文書が拡大文字でない場合、テレビなどに拡大表示するメディアもすでにある(拡大読書器)。

コンピュータのディスプレイ上では画面拡大をルーペなどでする場合と、ソフト的に拡大する場合がある。 テキストボックスの表示サイズが小さいと、特に読みづらさが増すので、大きめに設計してほしい、という当事者もいる。 音声による手段については、失視と同様である。

聴覚障害[編集]

電話での問い合わせが不自由であるからウェブ上では語句さえわかればハンディは軽減される。 問い合わせ先などでは、キー入力学習未然のかたへFAX番号も掲載することが望ましい。

発声障害[編集]

音声スイッチ依存の方針では補われてゆくべきである。

上肢運動障害[編集]

ページでのユーザビリティと操作において工夫されれば、スイッチやリンクからのサイト内閲覧移動は可能である。

盲聾[編集]

全盲聾(ぜんもうろう)では、高価な点字ディスプレーは、すぐれたデバイスではあるが高価すぎ、また文字数などレスポンスは良いとはいえない。介助通訳者が閲覧をアシストし説明しやすいサイト構造やナビゲーション・見出しが短く工夫されてゆくと良いようにみえる。

留意点・課題[編集]

  • 前述されている画像への代替テキストへの認識の浸透。コード( <img *省略* alt="ここに記述" /> )
  • 重複する表記:ヘッドタイトルやメニュー一覧などを音声読み出し閲覧(スクリーンリーダー音声ブラウザ、)でジャンプする機能。コード( <a href="#ABC">本文へジャンプ</a>・・タイトル・メニュー・・・<a name="ABC" id="ABC">本文はじまり</a>本文)
  • 閲覧操作のためのリンク箇所を大きめにする。( tabindex や アクセスキーの使用もリンクのある箇所の選択には選択的に使われていくことが増えるだろう。)
  • 文字の大きさを特殊なソフトを使用しなくても拡大できる仕様が望まれる。現状の汎用ブラウザでは、文字定義を絶対定義ではなく、相対(=可変)サイズで定義し、文字拡大ができるようにする仕様が適しているといえる。
  • スタイルシートの解除やユーザスタイルシートへ対応した属性定義が望ましい。
  • 色盲(第一、第二、第三、全色盲)のかたへの配慮を可能な限りする。赤・緑・黄・水色などにはウェブデザイナーは注意を払うべきである。

障害当事者の実情に即した対応を行うには、知識だけのアクセシビリティではなく、コミュニケーションや運動の不自由当事者を交えたアクセシビリティ改善を行っていく必要がある。

HTMLCSSなどのコーディング規格は、英語圏を中心に標準化されており、日本語の表現をそのままコーディングできない現状もある。

また、明確な基準がない中で、十分なアクセシビリティを確保していなくても「アクセシビリティに配慮した」という表現を行うケースもある。

ウェブアクセシビリティの大意は、「すべての人と情報の共有が可能であれ」という考えが基盤にある。アクセシビリティの取り組みは、技術が完成することを完了としない永いプロセスの中にある。障害当事者同士にもある情報格差の克服や参加の可能性の保持。 また、社会全体からは、未曾有の可能性の顕在化というバリューもあるといえる。

日本工業規格(JIS)におけるウェブアクセシビリティ[編集]

●障害者のインターネット利用状況
障害者のインターネット利用状況は、「利用している」53.0%、「利用していない」46.9%である。障害種別にみると、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由では「利用している」がそれぞれ91.7%、93.4%、82.7%、知的障害では、「利用していない」53.0%である。(総務省, 2012)

●ウェブページにおけるアクセシビリティの規格
日本工業規格(JIS)として、「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」は、基本規格、共通規格、個別規格の3層構造で構成されている。

日本工業規格「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス」基本規格、共通規格、個別規格の3層構造

●JIS X 8341-3:2010 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ
ウェブコンテンツとは、インターネット上で提供・配信されているコンテンツの総称であるが、ここで用いるウェブコンテンツとは、ウェブブラウザ、支援技術などのユーザエージェントによって利用者に伝達されるあらゆる情報及び感覚的な体験を指す。この規格は、日本工業規格の情報処理部門が主に高齢者、障害のある人及び一時的な障害のある人がウェブコンテンツを知覚し、理解し、操作できるようにするために、ウェブコンテンツを企画、設計、制作・開発、検証及び保守・運用するときに配慮すべき事項を指針として明示したものである。 また、ホームページなどで提供される情報やサービスなど、ウェブコンテンツに関する個別規格は2004年6月20日付けで日本工業規格として制定されたが、技術の進歩や国際基準(WCAG2.0)の整合性などを考慮して2010年8月20日に改正された。

建造物におけるアクセシビリティ[編集]

建物並びにこれに至る経路において、高齢者・障害者を含む誰もが、支障なく利用できること或いはその度合いをいう。建物は、建物に至る移動経路等の都市設計上の配慮がなされて始めて利用可能となることから、建物のみでなく建物利用に至る経路を含めてアクセシビリティに配慮することが望まれる。但し、アクセシビリティに配慮する過程で、セキュリティの低下を伴うことがあるため、状況によっては新たにバリアが設けられ、結局施設管理者による介助がなければ施設が利用できないような場合もでてくる(例えば、施設内に進入されることが望ましくない自転車などの軽車両やキックボード等の遊具の通行を阻止するために車椅子用スロープに通行禁止用の柵が設けられ施錠されるなど)。バリアフリー新法も参照の事。

サービスにおけるアクセシビリティ[編集]

助成制度や補助制度などのサービスを、高齢者・障害者を含む誰もが、支障なく利用できること或いはその度合いをいう。サービスは、利用による便益が、これを享受するための手間を凌駕してこそ利用価値があることから、サービス利用による便益享受に至るまでがアクセシビリティの評価対象となる。

参考文献[編集]

総務省, 2012, 障がいのある方々の インターネット等の利用に 関する調査研究 [結果概要]平成24年6月, 総務省 情報通信政策研究所調査研究部
・情報バリアフリーのための情報提供サイト, 2011, 情報アクセシビリティJISの構成<http://www2.nict.go.jp/ict_promotion/barrier-free/103/jis/frame/index.html>(2012年12月23日)
・田中正躬編, 2010, 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3 部:ウェブコンテンツ JIS X 8341-3:2010, 日本規格協会

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

W3C
日本規格協会
総務省