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ホスピスは通常、病気の診断や治癒を目的とした治療を行わないが、死を早める治療も行わない<ref name=":1" />。
ホスピスは通常、病気の診断や治癒を目的とした治療を行わないが、死を早める治療も行わない<ref name=":1" />。
代わりに、ホスピスは痛みや症状を緩和する緩和ケアに重点を置いている<ref name="long19"/>。
代わりに、ホスピスは痛みや症状を緩和する緩和ケアに重点を置いている<ref name="long19"/>。
==歴史的展望==
===初期のホスピス===
「ホスピス」という言葉はラテン語の hospitumに由来し、ホスピタリティや休息の場、病気や疲れた人を保護する場所を意味している<ref name=":1" /> 。歴史家は、最初のホスピスは1065 年頃にマルタで始まり、聖地を行き来する途中で病気や死にゆく人の世話をすることに従事したと考えている<ref>{{cite book |last1=Moscrop |first1=Janet |last2=Robbins |first2=Joy |title=Caring for the Dying Patient and the Family |date=2013 |publisher=Springer |isbn=978-1-4899-3376-8 |page=246 |url=https://books.google.com/books?id=gCkDCAAAQBAJ&q=first+hospices+1065&pg=PA246 |access-date=17 January 2020 |language=en}}</ref> 。1090 年代のヨーロッパ十字軍運動の台頭により、不治の病の患者は治療専用の場所に移された<ref name="Robbins">{{cite book|last=Robbins|first=Joy|title=Caring for the Dying Patient and the Family|publisher=Taylor & Francis|year=1983|isbn=0-06-318249-1|page=138}}</ref><ref>{{cite book | last = Connor | first = Stephen R. | title = Hospice: Practice, Pitfalls, and Promise | publisher = Taylor & Francis | year = 1998 | isbn = 1-56032-513-5 | page = [https://archive.org/details/hospicepracticep0000conn/page/4 4] | url = https://archive.org/details/hospicepracticep0000conn/page/4 }}
</ref>。 14 世紀初頭、[[聖ヨハネ騎士団]]により、[[ロードス島]]に最初のホスピスが開設された<ref name=C5>Connor, 5.</ref>。


ホスピスは、中世には栄えるが、しかし、宗教的な騎士団が枝分かれしていくに連れて、衰退していく <ref name=Robbins/>。ホスピスは 17 世紀にフランスで[[聖ビンセンシオ・ア・パウロの愛徳姉妹会]]によって復活した<ref name=C5/>。フランスでは、ホスピス分野での発展が続いた。1843年にオープンしたジャンヌ・ガルニエによって1843年に設立されたアソシエーション・デ・ダム・デュ・カルヴェールのホスピス<ref name=Lewis>{{cite book | last = Lewis | first = Milton James | title = Medicine and Care of the Dying: A Modern History | publisher = Oxford University Press US | year = 2007 | isbn = 978-0-19-517548-6 | page = 20}}</ref>、その後1900年にはさらに6ヶ所のホスピスが誕生した Six other hospices followed before 1900.<ref name=Lewis/>。
==歴史==
===ホスピス」の由来 ===
ホスピスとは、元々は[[中世]]ヨーロッパで、旅の巡礼者を宿泊させた小さな教会のことを指した。そうした旅人が、病や健康上の不調で旅立つことが出来なければ、そのままそこに置いて、[[ケア]]や看病をしたことから、看護収容施設全般をホスピスと呼ぶようになった<ref>サンドル・ストダート『ホスピス病棟から』時事通信社 1994年 p.26-28</ref>。


一方、他の地域でも、ホスピスは広がっていく。イギリスでは、19世紀の半ば終末期の疾患の必要に注意が向けられるようになり、[[ランセット]]や[[ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル]]は、良いケアや衛生状態により終末期の疾患の改善の必要性を指摘した<ref name=L21>Lewis, 21.</ref>。
教会で看護にあたる聖職者の無私の[[献身]]と[[歓待]]を「[[ホスピタリティ]]」({{lang-en-short|hospitality}})と呼び、そこから今日の病院を指す「ホスピタル」({{lang-en-short|hospital}})の語がでた。歴史的には、ホスピタルもホスピス同様に、[[病院]]だけでなく、[[孤児院]]、[[老人ホーム]]、行き倒れの収容施設なども指した。


=== 近代以降ホスピスの歴史 ===
=== 近代以降ホスピスの歴史 ===

2021年6月3日 (木) 08:21時点における版

ホスピス: hospice)とは、終末期患者の痛みや症状の緩和に焦点を当て、人生の終わりに彼らの感情的および精神的なニーズに対処することに焦点を当てた医療の一種である。ホスピスケアは、痛みや苦しみを軽減することにより、快適さと生活の質を優先する。ホスピスケアは、困難な可能性がある、より多くの症状を引き起こす可能性が高い、または患者の目標に沿っていない延命措置に焦点を当てた治療に代わるものである。

米国のホスピスケアは、メディケアシステムと他の健康保険会社の慣行によって大きく定義されている。これらの保険は、6 か月以内と推定される末期疾患の患者の入院患者または在宅ホスピスケアを対象としている。メディケア、ホスピス給付に基づくホスピスケアでは、病気が通常の経過をたどった場合の余命が 6 か月未満であると推定する 2 人の医師による文書が必要となる。ホスピスの特典には、終末期ケアを専門とする集学的治療チームへのアクセスが含まれ、自宅、長期ケア施設、または病院でアクセスできる[1]

米国以外では、この用語は主に、そのようなケアを専門とする特定の建物または機関に関連する傾向があります。このような施設も同様に、ほとんどの場合終末期にケアを提供するが、他の緩和ケアが必要な患者も利用できる場合がある。ホスピスケアには、患者の家族が起こっていることに対処するのを助け、患者を自宅に留めるためのケアとサポートを提供するための支援が含まれる[2]

ホスピスの哲学

ホスピスケアの目標は、快適さ、生活の質、個人の希望を優先することである。快適さをどのように定義するかは、各個人、または患者が機能不全の場合は患者の家族による。これには、身体的、感情的、精神的および/または社会的ニーズに対処することが含まれる。ホスピスケアでは、患者主導の目標が不可欠であり、ケア全体に織り込まれている[3][4]。 ホスピスは通常、病気の診断や治癒を目的とした治療を行わないが、死を早める治療も行わない[1]。 代わりに、ホスピスは痛みや症状を緩和する緩和ケアに重点を置いている[4]

歴史的展望

初期のホスピス

「ホスピス」という言葉はラテン語の hospitumに由来し、ホスピタリティや休息の場、病気や疲れた人を保護する場所を意味している[1] 。歴史家は、最初のホスピスは1065 年頃にマルタで始まり、聖地を行き来する途中で病気や死にゆく人の世話をすることに従事したと考えている[5] 。1090 年代のヨーロッパ十字軍運動の台頭により、不治の病の患者は治療専用の場所に移された[6][7]。 14 世紀初頭、聖ヨハネ騎士団により、ロードス島に最初のホスピスが開設された[8]

ホスピスは、中世には栄えるが、しかし、宗教的な騎士団が枝分かれしていくに連れて、衰退していく [6]。ホスピスは 17 世紀にフランスで聖ビンセンシオ・ア・パウロの愛徳姉妹会によって復活した[8]。フランスでは、ホスピス分野での発展が続いた。1843年にオープンしたジャンヌ・ガルニエによって1843年に設立されたアソシエーション・デ・ダム・デュ・カルヴェールのホスピス[9]、その後1900年にはさらに6ヶ所のホスピスが誕生した Six other hospices followed before 1900.[9]

一方、他の地域でも、ホスピスは広がっていく。イギリスでは、19世紀の半ば終末期の疾患の必要に注意が向けられるようになり、ランセットブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは、良いケアや衛生状態により終末期の疾患の改善の必要性を指摘した[10]

近代以降ホスピスの歴史

18世紀末、アイルランドは、イギリス植民地プロテスタントによる弾圧により居場所を失った人々が居た。修道女 マザー・メアリ・エイケンヘッドen:Mary Aikenhead、アイルランド「シスターズ・オブ・チャリティ」(慈善修道女会・カトリック)創立者)はその居場所を創る志を立て、19世紀ダブリンに(ホスピスの原型と思われる)「ホーム」が建てられた。

20世紀に入り、治療の当てがなく、余命いくばくもない患者の最後の安息に満ちた時間をケア(ターミナルケア)する施設としての近代ホスピスが、イギリス、アイルランドから始まった。

1967年セント・ジョセフ・ホスピスロンドンハックニーアイルランド人の多い地域)で学んだ、女医シシリー・ソンダースは、セント・クリストファー・ホスピスを建設、緩和ケアを基本とした、近代ホスピスの基礎を作り、世界的な広がりの先駆けとなった。

アメリカ合衆国では在宅ホスピスが中心である。

日本のホスピス

日本で最初のホスピス・ケアを提供する病床は、大阪の淀川キリスト教病院に設けられた。当時のホスピス長、柏木哲夫の功績によるものである。この病院での実質的なホスピス・ケアは、1973年から始められた[11]

独立した病棟としてのホスピスは、1981年長谷川保による聖隷三方原病院浜松市)の末期がん患者などのためのホスピス(緩和ケア病棟)開設が日本で最初である[11]

両病院は1990年4月25日に日本で初めて緩和ケア病棟として承認を受けている。

日本で、完全独立型のホスピスとして初めて完成したのは日本財団笹川陽平会長)などの支援を受けて設立されたピースハウス病院(日野原記念ピースハウス病院と改名、2015年3月営業を停止、2016年4月から再開)である。(1993年)

従来、ホスピスの開設は主に民間の医療機関等が行ってきたが、公的な機関も開設に乗り出すようになっている。日本で最初の国立のホスピスが、1987年千葉県の国立療養所松戸病院(現在の国立がん研究センター東病院の前身、1992年に千葉県柏市へ移転)に開設され、その後、全国各地の国公立病院にホスピス開設の動きが広がっている。

がん及びAIDS等により治癒が難しくなった患者を対象としている。入院費は公的医療保険が適用され、高額療養費制度も受けられる。設置基準で病室の半数は無差額でなければならないと定められている。

ホスピスの種類

一般的に、ホスピスを分類するとすれば以下の5種類ほどに分類できる。

  1. 病院内病棟型(病院内でホスピスを行う病棟あるいは、階を定めて行うもの)
  2. 病院内独立型
  3. 完全独立型(ホスピスのみを行う施設 他の診療科を持たないため、緩和医療以外の具体的な治療を行わない)
  4. 病院内緩和ケアチーム (病院内に緩和医療を行うための専門家を用意し、患者からの依頼などによって主治医とは別に、緩和医療を行う)
  5. 在宅ホスピス

ホスピスとボランティア

ホスピス・ケアには医師看護師薬剤師だけでなく、歯科衛生士作業療法士などの医療職や医療ソーシャルワーカーヘルパーなどの福祉職と、スピリチュアルケアを担当する宗教家、例えばキリスト教系の病院ではチャプレンなどの多くの職種がチームを組んで関わる。そのチームの中にはボランティアも含まれる。

ボランティアの活動は多岐にわたり、行事の手伝い・散歩の付き添い・お茶配り・庭園整備・話し相手・買い物・運営募金集めのバザー活動など資格がなくてもできることが主体となる。活動の主は雑用的なことであるが、専門職が患者のケアに注力できるようにホスピス全体を下支えすることも、最終的には患者のためになるという意識のもとに活動しているボランティアも多い。

医療知識や接遇などの専門的なトレーニングを受けた後に病棟内で活動することが一般的である。医療側でもなく患者側でもない存在が、時には患者にとって安らげる存在となることもある。

日本で唯一のホスピスボランティアを専門に行う学生サークル「マナの会」が聖隷クリストファー大学にあり、看護学生が中心となり聖隷三方原病院にて週末に活動を行っている。

ホスピスを舞台にした映画

参考文献

関連項目

脚注

  1. ^ a b c Marshall, Katherine; Hale, Deborah (2017). “Understanding Hospice” (英語). Home Healthcare Now 35 (7): 396–397. doi:10.1097/NHH.0000000000000572. ISSN 2374-4529. PMID 28650372. 
  2. ^ Suzanne Myers. “End of Life Care”. N2Information. 2017年11月10日閲覧。
  3. ^ Kilpatrick, Anne Osborne; James A. Johnson (1999). Handbook of Health Administration and Policy. CRC Press. p. 376. ISBN 978-0-8247-0221-2 .
  4. ^ a b The History of Hospice Nursing”. UCONN School of Nursing. 2021年6月2日閲覧。
  5. ^ Moscrop, Janet; Robbins, Joy (2013) (英語). Caring for the Dying Patient and the Family. Springer. p. 246. ISBN 978-1-4899-3376-8. https://books.google.com/books?id=gCkDCAAAQBAJ&q=first+hospices+1065&pg=PA246 2020年1月17日閲覧。 
  6. ^ a b Robbins, Joy (1983). Caring for the Dying Patient and the Family. Taylor & Francis. p. 138. ISBN 0-06-318249-1 
  7. ^ Connor, Stephen R. (1998). Hospice: Practice, Pitfalls, and Promise. Taylor & Francis. p. 4. ISBN 1-56032-513-5. https://archive.org/details/hospicepracticep0000conn/page/4 
  8. ^ a b Connor, 5.
  9. ^ a b Lewis, Milton James (2007). Medicine and Care of the Dying: A Modern History. Oxford University Press US. p. 20. ISBN 978-0-19-517548-6 
  10. ^ Lewis, 21.
  11. ^ a b 日本で緩和ケアはどのように受容され、発展したのか”. EPIROGI (2019年2月21日). 2020年3月18日閲覧。

外部リンク