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通常食物アレルギーの中でも牛乳アレルギーが主なアレルギーでそれ以外は言及が少ない
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'''牛乳アレルギー'''(ミルクアレルギー)は、動物([[ウシ|牛]]に限らない)の[[乳]]に含まれる成分に対する[[アレルギー]]反応である。{{要出典範囲|[[食物アレルギー]]としては鶏卵に次ぐ|date=2017年8月}}多くの場合、[[牛乳]]に含まれる[[タンパク質]]の一種であるアルファS1-[[カゼイン]]が原因である。このアレルギー反応は[[アナフィラキシー]]を発症し、生命に危険がある場合もある。牛乳アレルギーは、[[乳糖不耐症]]とは異なる
'''牛乳アレルギー'''(Cow's milk allergy)は、[[ウシ|牛]]の[[乳]]に含まれるたんぱく質に対する[[アレルギー]]反応である。[[食物アレルギー]]としては鶏卵に次ぐ<ref name="学会疫学2012"/>主な原因は、[[牛乳]]に含まれる[[タンパク質]]の一種であるアルファ<sub>s1</sub>-[[カゼイン]]である<ref name=Chiropractic/>。[[アナフィラキシー]]を発症し、生命に危険がある場合もある<ref name="pmid23268426"/>


以下、特に断らない限り牛を含む動物の乳をミルク表記する。
以下、特に断らない限り牛乳を中心とする。


== 原因 ==
== 原因物質 ==
ミルクアレルギーミルクに含まれる多くの[[パク質]]が引き起こしている。主な原因は、ミルク含まれ質の1種のアルファS1-[[カゼイン]]である<ref name=Chiropractic>{{cite journal|first=Editorial Staff|title=Goat's Milk: A Natural Alternative for Milk Sensitive Patients|journal=Dynamic Chiropractic|date=1 Dec 1997|year=1997|month=December|volume=15|issue=25|url=http://www.dynamicchiropractic.com/mpacms/dc/article.php?id=38646|accessdate=16 February 2013}}</ref>。
牛乳中の主なアレルゲンは[[カゼイン]]、[[乳清]](ホエイ)の両方に存在する。カゼインでは、α<sub>s1</sub>-カゼイン、α<sub>s2</sub>-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインであり、罹患者はα100%反応し、κでは91.7%であ。乳清では、α-ラクトアルブミ、β-ラトグロブリン、血清アルブミンで、これらに罹患者は最大で約80%が反応するが、免疫グロブリンに反応することは滅多にない<ref name="pmid23268426">{{cite journal |authors=Fiocchi A, Brozek J, Schünemann H, et al. |title=World Allergy Organization (WAO) Diagnosis and Rationale for Action against Cow's Milk Allergy (DRACMA) Guidelines |journal=World Allergy Organ J |volume=3 |issue=4 |pages=57–161 |year=2010 |pmid=23268426 |pmc=3488907 |doi=10.1097/WOX.0b013e3181defeb9 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3488907/}}</ref>。主な原因はα<sub>s1</sub>-[[カゼイン]]である<ref name=Chiropractic>{{cite journal|first=Editorial Staff|title=Goat's Milk: A Natural Alternative for Milk Sensitive Patients|journal=Dynamic Chiropractic|date=1 Dec 1997|year=1997|month=December|volume=15|issue=25|url=http://www.dynamicchiropractic.com/mpacms/dc/article.php?id=38646|accessdate=16 February 2013}}</ref>。


カゼインは牛乳タンパク質の8割を占め、α<sub>s1</sub>-カゼインとβ-カゼインとでその7割を占める<ref name="pmid23268426"/>。
アルファS1-[[カゼイン]]は動物ごとに異なる。このため、羊乳にアレルギーを持つ人が[[ヤギ]]乳を飲めないにもかかわらず、母乳が飲めるということがある<ref>http://foodallergens.ifr.ac.uk/biochemical.lasso?selected_food=5000&allergenID=1041</ref>。

反芻動物のウシ科に属する牛、羊、ヤギの乳とで罹患者は交差反応を示すことがあり、この反芻動物のタンパク質はヒト、豚や馬、ラクダ科とは異なり構造の類似性が低い<ref name="pmid23268426"/>。牛乳中のアレルゲンとなるカゼイン4種、乳清4種はヒトやラクダの乳には含まれない<ref name="pmid23268426"/>。


== 症状 ==
== 症状 ==
主な症状は[[消化器]]、[[皮膚]]、[[呼吸器]]にあらわれる。[[皮疹]]、[[蕁麻疹]]、[[嘔吐]]、[[下痢]]、[[便秘]]、[[鼻炎]]、胃の痛みや[[屁]]という症状になってあらわれる。さらに以下の症状もあらわれることがある。[[アナフィラキシー]]、[[アトピー性皮膚炎]]、[[気管支喘息|ぜんそく]]、赤ん坊の[[夜泣き]]、[[胃食道逆流症]]、[[逆流性食道炎]]、[[大腸炎]]、[[頭痛]]/[[片頭痛]]、口の炎症。
主な症状は[[消化器]]、[[皮膚]]、[[呼吸器]]にあらわれる。[[皮疹]]、[[蕁麻疹]]、[[嘔吐]]、[[下痢]]、[[便秘]]、[[鼻炎]]、胃の痛みや[[屁]]という症状になってあらわれる。さらに以下の症状もあらわれることがある。[[アナフィラキシー]]、[[アトピー性皮膚炎]]、[[気管支喘息|ぜんそく]]、赤ん坊の[[夜泣き]]、[[胃食道逆流症]]、[[逆流性食道炎]]、[[大腸炎]]、[[頭痛]]/[[片頭痛]]、口の炎症。


これらの症状は即時反応として飲んでから数分で発症することもあれば、数時間ときには数日で発症する遅延反応としてあらわれることもある。
症状は即時反応として飲んでから数分で発症することもあれば、数時間ときには数日で発症する遅延反応としてあらわれることもある。


== 統計 ==
== 乳糖不耐症との違い ==
牛乳アレルギーは幼児期の食物アレルギーの中で最も多いアレルギーである。先進国の幼児の2%から3%が発症するが、その85%から90%が3歳を超えると発症しなくなる<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S1081-1206(10)62120-5 |author=Høst A |title=Frequency of cow's milk allergy in childhood |journal=Ann. Allergy Asthma Immunol. |volume=89 |issue=6 Suppl 1 |pages=33–7 |year=2002 |month=December |pmid=12487202 }}</ref>。成人の発症は0.1%から0.5%である<ref>{{cite pmid|16373958}}</ref>。
ミルクアレルギーは、[[食物アレルギー]]の1種であり、通常個々には無害な[[タンパク質]]によって引き起される。これに対して[[乳糖不耐症]]は[[食物不耐性]]1種であり、アレルギー反応ではない。乳糖不耐症は腸管において[[ラクターゼ]]などの[[酵素]]の欠乏していることで引き起こされ、ミルク中の[[乳糖]]の消化が十分行えないことが原因である。しがって、乳糖を予め分解したミルクであれば乳糖不耐症ならば問題は起こらないのに対しミルクアレルギーの場合は抗原となり得るタンパク質が存在する限り問題が起こるのである。なお、ミルクアレルギーは病的な状態であるのに対し、乳糖不耐症は元々成長と共に発現するものなので、成人に現れた乳糖不耐症は病的な状態であるとは考えられていない。ただし、乳児に現れた乳糖不耐症は病的な状態である。


日本の食物アレルギーでは鶏卵に次ぐ多さで、牛乳、鶏卵は幼児多い<ref name="学会疫学2012"/>。0歳時を最多にして年齢と共に減っていき、多くは乳幼児期に発症する<ref name="学会疫学2012">日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会『[http://www.jspaci.jp/jpgfa2012/chap02.html 食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版]』「第2章 疫学」 2017年8月15日閲覧。</ref>。幼児には多く見られ、2-3歳で耐性を獲得し自然に消えていくことが多い。
== ミルク中のタンパク質の不耐との違い ==
ミルク中のタンパク質の不耐(Milk protein intolerance : MPI)は通常個々にはアレルギーも不耐も起こさない食物タンパク質への遅延反応である。MPIは non-IgE抗体を生成し、アレルギーの血液検査では発見されない。MPIはミルクアレルギーとよく似た症状を発症し、対処方法もミルクアレルギーと同じである。MPIは[[豆乳]]にも当てはまる(milk soy protein intolerance : MSPI)。


13%から20%の[[牛乳]]に対するアレルギーを持つ子供は、[[牛肉]]にもアレルギーを持つ<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S1081-1206(10)62121-7 |author=Martelli A, De Chiara A, Corvo M, Restani P, Fiocchi A |title=Beef allergy in children with cow's milk allergy; cow's milk allergy in children with beef allergy|journal=Ann. Allergy Asthma Immunol. |volume=89 |issue=6 Suppl 1 |pages=38–43 |year=2002 |month=December |pmid=12487203 }}</ref>。
MPIのミルクは、ミルクだけでなくその派生商品(パンやケーキ)も含まれる。さらに「non-dairy」つまり乳成分を含まないとラベルされた商品でも引き起こされることもある。non-dairyは乳成分が0.5%未満のことを指すためである。<ref>[http://www.godairyfree.org/Food-to-Eat/Food-Label-Info/Dairy-Ingredient-List.html Go Dairy Free | Dairy Ingredient List<!-- Bot generated title -->]</ref>これらには[[カザミノ酸]]のようなワクチンが存在する。


== 乳糖不耐症との違い ==
加熱処理(例:パンのトースト、目玉焼き)によってタンパク質を[[変性]]させることができる。ただし、原材料への加熱が必要である。
牛乳アレルギーは、[[食物アレルギー]]の一種で、通常の人には無害な[[タンパク質]]によって引き起こされる。これに対して、[[乳糖不耐症]]は[[食物不耐性]]の1種であり、アレルギー反応ではない。乳糖不耐症は腸管において[[酵素]]の[[ラクターゼ]]が欠乏していることで引き起こされ、乳中の[[乳糖]]の消化が十分行えないことが原因である。


このた、乳糖を予め分解れば乳糖不耐症では問題は起こらない牛乳アレルギーの場合は抗原となり得るタンパク質が存在する限り問題が起こるのである。なお、牛乳アレルギーは病的な状態であるのに対し、乳糖不耐症は元々成長と共に発現するものなので、成人に現れた乳糖不耐症は病的な状態であるとは考えられていない。ただし、乳児に現れた乳糖不耐症は病的な状態である。
ミルクが使用されていない製品であっても、乳成分入りの材料を含む場合があり注意が必要である。状況によっては深刻な結果になってしまう。


=== 幼児に対するミルクの代替 ===
== 乳タンパ不耐との違い ==
タンパク質の不耐(Milk protein intolerance : MPI)は通常個々にはアレルギーも不耐も起こさない食物タンパク質への遅延反応である。MPIは non-IgE抗体を生成し、アレルギーの血液検査では発見されない。MPIは牛乳アレルギーとよく似た症状を発症し、対処方法も牛乳アレルギーと同じである。MPIは[[豆乳]]にも当てはまる(milk soy protein intolerance : MSPI)。
ミルク中のタンパク質は母乳を通じ幼児が摂取してしまうためミルクアレルギーの児の母親は[[授乳]]を行う場合、乳製品を食べてはいけない<ref>{{cite journal |author=Brill H |title=Approach to milk protein allergy in infants |journal=Can Fam Physician |volume=54 |issue=9 |pages=1258–64 |year=2008 |month=September |pmid=18791102 |pmc=2553152 |url=http://www.cfp.ca/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=18791102}}</ref>
母乳以外をアレルギーを持つ幼児に与える場合、ミルク代替製品が利用される。
ミルク代替品には、大豆製品や[[加水分解]]を利用した低アレルギー性製品、そして遊離アミノ酸ベースの製品が含まれる。


MPIの牛乳は、牛乳だけでなくその派生商品(パンやケーキ)も含まれる。さらに「non-dairy」つまり乳成分を含まないとラベルされた商品でも引き起こされることもある。non-dairyは乳成分が0.5%未満のことを指すためである。<ref>[http://www.godairyfree.org/Food-to-Eat/Food-Label-Info/Dairy-Ingredient-List.html Go Dairy Free | Dairy Ingredient List<!-- Bot generated title -->]</ref>これらには[[カザミノ酸]]のようなワクチンが存在する。
ミルク由来でないアミノ酸ベースのミルク代替品は授乳できない状況での最良の製品であると考えられている。


==対処==
加水分解ミルク代替品というのは、一部加水分解されたモノから大部分加水分解されたモノまである。部分的に加水分解されたミルク代替品は長鎖[[ペプチド]]のタンパク質が特徴的で、口当たりが良い。しかし、このような製品は口当たりを考慮して作られたのであって、ミルクアレルギーの幼児にむけて作られた製品ではない。ほぼ加水分解されたミルク代替品はタンパク質を遊離アミノ酸と短鎖[[ペプチド]]に分解する。[[カゼイン]]と[[乳清]]は、高い栄養価とアミノ酸成分の質の良さから加水分解ミルク代替品の元として利用されている。
=== 幼児に対する牛乳の代替 ===
母乳が最善である<ref name="pmid27895813">{{cite journal |authors=Fiocchi A, Dahda L, Dupont C, Campoy C, Fierro V, Nieto A |title=Cow's milk allergy: towards an update of DRACMA guidelines |journal=World Allergy Organ J |volume=9 |issue=1 |pages=35 |year=2016 |pmid=27895813 |pmc=5109783 |doi=10.1186/s40413-016-0125-0 |url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5109783/}}</ref>。牛乳タンパク質は母乳を介して摂取されるので、アレルギーの児の母親は[[授乳]]を行う場合、[[乳製品]]全般を食べてはいけない<ref>{{cite journal |author=Brill H |title=Approach to milk protein allergy in infants |journal=Can Fam Physician |volume=54 |issue=9 |pages=1258–64 |year=2008 |month=September |pmid=18791102 |pmc=2553152 |url=http://www.cfp.ca/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=18791102}}</ref>


母乳以外の代替品では乳児の認知機能の発達に重要な[[ω-3脂肪酸]]といった[[不飽和脂肪酸]]が不足しており、脳の発達やアレルギーのような免疫機能に影響が出ることが考えられる<ref name="pmid27895813"/>。代替品には牛乳タンパク質を[[加水分解]]した配合乳の低アレルギー性食品、大豆製品や米製品、重症の場合には遊離アミノ酸ベースの製品が含まれる。加水分解とは、タンパク質を酵素によって小さなペプチドにまで分解するということである。加水分解された配合乳は一部の加水分解から大部分の加水分解までである。
[[豆乳]]ベースのミルク代替品は、危険性を伴う可能性がある。ミルクアレルギーの児は同時に大豆に対してもアレルギーを持つ可能性があるためである。また6ヶ月以下の幼児には豆乳ベースのミルク代替品は推奨されていない{{要出典|date=May 2010}}。しかし、アレルギーを持つ児のための[[米乳]]や[[エンバク]]などのミルク代替品は飲むことができる。


高度加水分解乳(EHF, extensively hydrolyzed formula)が、牛乳タンパク質の大部分が加水分解されたものである。遊離アミノ酸と短鎖[[ペプチド]]に分解されている。部分分解乳(PHF, partially hydrolyzed formula)が、部分的に加水分解されたもので、長鎖[[ペプチド]]のタンパク質が特徴的で口当たりが良い。しかし、このような製品は口当たりを考慮して作られたのであって、牛乳アレルギーの罹患者にむけた製品ではない。
=== 子供と大人に対するミルクの代替 ===
多くの製品が市販されている。[[生乳]]、[[米乳]]、[[豆乳]]、[[エンバク]]ミルク、[[ココナッツミルク]]、[[アーモンドミルク]]はミルク代替品として利用されることがあるが、栄養的には幼児には向かない。しかし、[[大豆]]、[[米]]、[[イナゴマメ]]から作られる特別な幼児向けミルク代替品は広く市販されている。


[[豆乳]]ベースの牛乳代替品は、牛乳アレルギーのの約10%大豆に対してもアレルギーを持つ可能性がある。また6ヶ月以下の幼児には豆乳ベースの代替品は推奨されていない{{要出典|date=May 2010}}。しかし、アレルギーを持つ児のための[[米乳]]や[[エンバク]]などの代替品は飲むことができる。
長期的にミルクを摂取しない場合、[[カルシウム]]欠乏症と[[骨粗鬆症]]に対して注意が必要である。この場合、[[カルシウム]]や[[ビタミンD]]の[[サプリメント]]を利用することでリスクを減らすことができる。ただし、[[骨粗鬆症]]への効果が常に明確にあるというわけではない。フルーツ液のサプリメント([[カルシウム]]、[[ゴマ]]、[[麻]]の種、[[豆腐]]入り)もあるが、健康への別の影響も存在する。


=== 子供と大人に対する牛乳の代替 ===
=== 突発的アレルギー発症 ===
多くの製品が市販されている。[[米乳]]、[[豆乳]]、[[エンバク]]ミルク、[[ココナッツミルク]]、[[アーモンドミルク]]はミルク代替品として利用されることがあるが、栄養的には幼児には向かない。しかし、[[大豆]]、[[米]]、[[イナゴマメ]]から作られる特別な幼児向け代替品は広く市販されている。
アレルギー体質の人が誤飲してしまった場合、症状の重さによって様々な対処方法が存在する。[[エピペン]]、[[抗ヒスタミン薬]]、[[ジフェンヒドラミン]]などの薬を頻繁に飲むことが必要である。ミルクアレルギーは[[アナフィラキシー]]を発症し、生命危険が存在する。


===加熱処理===
ミルクアレルギーは幼児には多く見られるが、2-3歳で自然に消えていくことが多い。
加熱処理によってタンパク質を[[変性]]させることができる。ただし、原材料への加熱が必要である。


牛乳が使用されていない製品であっても、乳成分入りの材料を含む場合があり注意が必要である。状況によっては深刻な結果になってしまう。
== 統計 ==
ミルクアレルギーは幼児期の食物アレルギーの中で最も多いアレルギーである。先進国の幼児の2%から3%が発症するが、その85%から90%が3歳を超えると発症しなくなる<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S1081-1206(10)62120-5 |author=Høst A |title=Frequency of cow's milk allergy in childhood |journal=Ann. Allergy Asthma Immunol. |volume=89 |issue=6 Suppl 1 |pages=33–7 |year=2002 |month=December |pmid=12487202 }}</ref>。成人の発症は0.1%から0.5%である<ref>{{cite pmid|16373958}}</ref>。


=== 突発的アレルギー発症 ===
13%から20%の[[牛乳|ウシのミルク]]に対するアレルギーを持つ子供は、[[牛肉]]にもアレルギーを持つ<ref>{{cite journal |doi=10.1016/S1081-1206(10)62121-7 |author=Martelli A, De Chiara A, Corvo M, Restani P, Fiocchi A |title=Beef allergy in children with cow's milk allergy; cow's milk allergy in children with beef allergy|journal=Ann. Allergy Asthma Immunol. |volume=89 |issue=6 Suppl 1 |pages=38–43 |year=2002 |month=December |pmid=12487203 }}</ref>。
アレルギー体質の人が誤飲してしまった場合、症状の重さによって様々な対処方法が存在する。[[エピペン]]、[[抗ヒスタミン薬]]、[[ジフェンヒドラミン]]などの薬を頻繁に飲むことが必要である。牛乳アレルギーは[[アナフィラキシー]]を発症し、生命危険を及ぼ場合もある。

== 関連項目 ==
{{Portal|食}}
* [[食物アレルギー]]
* [[アナフィラキシー]]
* [[乳製品]]
* [[乳糖不耐症]]


== 脚注 ==
== 出典 ==
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2017年8月17日 (木) 14:08時点における版

牛乳アレルギー
加熱殺菌された牛乳
概要
診療科 アレルギー学[*]
分類および外部参照情報
ICD-9-CM 995.3, V15.02

牛乳アレルギー(Cow's milk allergy)は、に含まれるたんぱく質に対するアレルギー反応である。食物アレルギーとしては鶏卵に次ぐ[1]。主な原因は、牛乳に含まれるタンパク質の一種であるアルファs1-カゼインである[2]アナフィラキシーを発症し、生命に危険がある場合もある[3]

以下、特に断らない限り牛乳を中心とする。

原因物質

牛乳中の主なアレルゲンはカゼイン乳清(ホエイ)の両方に存在する。カゼインでは、αs1-カゼイン、αs2-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインであり、罹患者はαに100%反応し、κでは91.7%である。乳清では、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、血清アルブミンで、これらに罹患者は最大で約80%が反応するが、免疫グロブリンに反応することは滅多にない[3]。主な原因はαs1-カゼインである[2]

カゼインは牛乳タンパク質の8割を占め、αs1-カゼインとβ-カゼインとでその7割を占める[3]

反芻動物のウシ科に属する牛、羊、ヤギの乳とで罹患者は交差反応を示すことがあり、この反芻動物のタンパク質はヒト、豚や馬、ラクダ科とは異なり構造の類似性が低い[3]。牛乳中のアレルゲンとなるカゼイン4種、乳清4種はヒトやラクダの乳には含まれない[3]

症状

主な症状は消化器皮膚呼吸器にあらわれる。皮疹蕁麻疹嘔吐下痢便秘鼻炎、胃の痛みやという症状になってあらわれる。さらに以下の症状もあらわれることがある。アナフィラキシーアトピー性皮膚炎ぜんそく、赤ん坊の夜泣き胃食道逆流症逆流性食道炎大腸炎頭痛/片頭痛、口の炎症。

症状は即時反応として飲んでから数分で発症することもあれば、数時間ときには数日で発症する遅延反応としてあらわれることもある。

統計

牛乳アレルギーは幼児期の食物アレルギーの中で最も多いアレルギーである。先進国の幼児の2%から3%が発症するが、その85%から90%が3歳を超えると発症しなくなる[4]。成人の発症は0.1%から0.5%である[5]

日本の食物アレルギーでは鶏卵に次ぐ多さで、牛乳、鶏卵は幼児多い[1]。0歳時を最多にして年齢と共に減っていき、多くは乳幼児期に発症する[1]。幼児には多く見られ、2-3歳で耐性を獲得し自然に消えていくことが多い。

13%から20%の牛乳に対するアレルギーを持つ子供は、牛肉にもアレルギーを持つ[6]

乳糖不耐症との違い

牛乳アレルギーは、食物アレルギーの一種で、通常の人には無害なタンパク質によって引き起こされる。これに対して、乳糖不耐症食物不耐性の1種であり、アレルギー反応ではない。乳糖不耐症は腸管において酵素ラクターゼが欠乏していることで引き起こされ、乳中の乳糖の消化が十分行えないことが原因である。

このため、乳糖を予め分解すれば乳糖不耐症では問題は起こらないが、牛乳アレルギーの場合は抗原となり得るタンパク質が存在する限り問題が起こるのである。なお、牛乳アレルギーは病的な状態であるのに対し、乳糖不耐症は元々成長と共に発現するものなので、成人に現れた乳糖不耐症は病的な状態であるとは考えられていない。ただし、乳児に現れた乳糖不耐症は病的な状態である。

乳タンパク質の不耐との違い

乳タンパク質の不耐(Milk protein intolerance : MPI)は通常個々にはアレルギーも不耐も起こさない食物タンパク質への遅延反応である。MPIは non-IgE抗体を生成し、アレルギーの血液検査では発見されない。MPIは牛乳アレルギーとよく似た症状を発症し、対処方法も牛乳アレルギーと同じである。MPIは豆乳にも当てはまる(milk soy protein intolerance : MSPI)。

MPIの牛乳は、牛乳だけでなくその派生商品(パンやケーキ)も含まれる。さらに「non-dairy」つまり乳成分を含まないとラベルされた商品でも引き起こされることもある。non-dairyは乳成分が0.5%未満のことを指すためである。[7]これらにはカザミノ酸のようなワクチンが存在する。

対処

幼児に対する牛乳の代替

母乳が最善である[8]。牛乳タンパク質は母乳を介して摂取されるので、アレルギーの乳児の母親は授乳を行う場合、乳製品全般を食べてはいけない[9]

母乳以外の代替品では乳児の認知機能の発達に重要なω-3脂肪酸といった不飽和脂肪酸が不足しており、脳の発達やアレルギーのような免疫機能に影響が出ることが考えられる[8]。代替品には牛乳タンパク質を加水分解した配合乳の低アレルギー性食品、大豆製品や米製品、重症の場合には遊離アミノ酸ベースの製品が含まれる。加水分解とは、タンパク質を酵素によって小さなペプチドにまで分解するということである。加水分解された配合乳は一部の加水分解から大部分の加水分解までである。

高度加水分解乳(EHF, extensively hydrolyzed formula)が、牛乳タンパク質の大部分が加水分解されたものである。遊離アミノ酸と短鎖ペプチドに分解されている。部分分解乳(PHF, partially hydrolyzed formula)が、部分的に加水分解されたもので、長鎖ペプチドのタンパク質が特徴的で口当たりが良い。しかし、このような製品は口当たりを考慮して作られたのであって、牛乳アレルギーの罹患者にむけた製品ではない。

豆乳ベースの牛乳代替品では、牛乳アレルギーの乳児の約10%は、大豆に対してもアレルギーを持つ可能性がある。また6ヶ月以下の幼児には豆乳ベースの代替品は推奨されていない[要出典]。しかし、アレルギーを持つ乳児のための米乳エンバクなどの代替品は飲むことができる。

子供と大人に対する牛乳の代替

多くの製品が市販されている。米乳豆乳エンバクミルク、ココナッツミルクアーモンドミルクはミルク代替品として利用されることがあるが、栄養的には幼児には向かない。しかし、大豆イナゴマメから作られる特別な幼児向け代替品は広く市販されている。

加熱処理

加熱処理によってタンパク質を変性させることができる。ただし、原材料への加熱が必要である。

牛乳が使用されていない製品であっても、乳成分入りの材料を含む場合があり注意が必要である。状況によっては深刻な結果になってしまう。

突発的アレルギー発症

アレルギー体質の人が誤飲してしまった場合、症状の重さによって様々な対処方法が存在する。エピペン抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミンなどの薬を頻繁に飲むことが必要である。牛乳アレルギーはアナフィラキシーを発症し、生命に危険を及ぼす場合もある。

出典

  1. ^ a b c 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会『食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版』「第2章 疫学」 2017年8月15日閲覧。
  2. ^ a b “Goat's Milk: A Natural Alternative for Milk Sensitive Patients”. Dynamic Chiropractic 15 (25). (1 Dec 1997). http://www.dynamicchiropractic.com/mpacms/dc/article.php?id=38646 2013年2月16日閲覧。. 
  3. ^ a b c d e Fiocchi A, Brozek J, Schünemann H, et al. (2010). “World Allergy Organization (WAO) Diagnosis and Rationale for Action against Cow's Milk Allergy (DRACMA) Guidelines”. World Allergy Organ J 3 (4): 57–161. doi:10.1097/WOX.0b013e3181defeb9. PMC 3488907. PMID 23268426. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3488907/. 
  4. ^ Høst A (December 2002). “Frequency of cow's milk allergy in childhood”. Ann. Allergy Asthma Immunol. 89 (6 Suppl 1): 33–7. doi:10.1016/S1081-1206(10)62120-5. PMID 12487202. 
  5. ^ Crittenden, R. G.; Bennett, L. E. (2005). “Cow's milk allergy: A complex disorder”. Journal of the American College of Nutrition 24 (6 Suppl): 582S–591S. doi:10.1080/07315724.2005.10719507. PMID 16373958.  編集
  6. ^ Martelli A, De Chiara A, Corvo M, Restani P, Fiocchi A (December 2002). “Beef allergy in children with cow's milk allergy; cow's milk allergy in children with beef allergy”. Ann. Allergy Asthma Immunol. 89 (6 Suppl 1): 38–43. doi:10.1016/S1081-1206(10)62121-7. PMID 12487203. 
  7. ^ Go Dairy Free | Dairy Ingredient List
  8. ^ a b Fiocchi A, Dahda L, Dupont C, Campoy C, Fierro V, Nieto A (2016). “Cow's milk allergy: towards an update of DRACMA guidelines”. World Allergy Organ J 9 (1): 35. doi:10.1186/s40413-016-0125-0. PMC 5109783. PMID 27895813. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5109783/. 
  9. ^ Brill H (September 2008). “Approach to milk protein allergy in infants”. Can Fam Physician 54 (9): 1258–64. PMC 2553152. PMID 18791102. http://www.cfp.ca/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=18791102. 

外部リンク