コンテンツにスキップ

「オルニトミモサウルス類」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m編集の要約なし
18行目: 18行目:
}}
}}


'''オルトミモサウルス類'''あるいは'''オルニトミモサウリア'''('''Ornithomimosauria''')は[[白亜紀]]に[[ローラシア大陸]](現在のアジア、ヨーロッパ、北アメリカ)に生息していた[[コエルロサウルス類]]の[[獣脚類]]恐竜の[[系統群]]の一つである。現在では一般に階級無しの系統群として扱われるが提案時は下目として設立され、現在でも日本語では'''オルトミモサウルス下目'''と表記される場合がある。俗に'''ダチョウ恐竜'''とも呼ばれ、現在の[[走鳥類]]に似ており、早くることができ最高時速は60-80kmに達したとの推定もある。
'''オルトミモサウルス類'''あるいは'''オルニトミモサウリア'''('''Ornithomimosauria''')は[[白亜紀]]に[[ローラシア大陸]](現在のアジア、ヨーロッパ、北アメリカ)に生息していた[[コエルロサウルス類]]の[[獣脚類]]恐竜の[[系統群]]の一つである。現在では一般に階級無しの系統群として扱われるが提案時は下目として設立され、現在でも日本語では'''オルトミモサウルス下目'''と表記される場合がある。俗に'''ダチョウ恐竜'''とも呼ばれ、現在の[[走鳥類]]に似た{{仮リンク|行性|en|Cursorial}}の体格を持つ。走行速度は種によっては最高時速は60-80kmに達したとの推定もある<ref name="speed_estimate_note">[[:en:Gregory S. Paul|Paul]], regarding his comparative speed estimates, notes that "... just how swift is swift? In hard, precise measure, this can be a real can of worms; for just how fast living animals run is not well known." (Paul, G.S. 1988. ''Predatory Dinosaurs of the World''. New York: Simon & Schuster.)</ref>



==形態==
==形態==
27行目: 28行目:
| issue = 6106 | pages = 510 | year = 2012 | pmid = | pmc = }}</ref>、他のコエルロサウルス類同様に羽毛を持っていたと推定される。
| issue = 6106 | pages = 510 | year = 2012 | pmid = | pmc = }}</ref>、他のコエルロサウルス類同様に羽毛を持っていたと推定される。


===生態===
==生態==
大きな脳を持ち視覚もよかったとされる。
大きな脳を持ち視覚もよかったとされる。
1997年には14体の [[シノルニトミムス]]({{snamei||Sinornithomimus}}) の化石がまとまって発見された。そのうちの11体は[[幼体]]と[[亜成体]]でありシノルニトミムスは群れで行動していたと考えられている<ref>{{Cite journal| author=Varricchio, D.J. |coauthors=Sereno, P.C., Zhao X., Tan L., Wilson J.A. & Lyon, G.A. |year=2008 |title=Mud-trapped herd captures evidence of distinctive dinosaur sociality |journal=Acta Palaeontologica Polonica|volume=53|issue=4|pages=567–578|doi=10.4202/app.2008.0402}}</ref>。
1997年には14体の [[シノルニトミムス]]({{snamei||Sinornithomimus}}) の化石がまとまって発見された。そのうちの11体は[[幼体]]と[[亜成体]]でありシノルニトミムスは群れで行動していたと考えられている<ref>{{Cite journal| author=Varricchio, D.J. |coauthors=Sereno, P.C., Zhao X., Tan L., Wilson J.A. & Lyon, G.A. |year=2008 |title=Mud-trapped herd captures evidence of distinctive dinosaur sociality |journal=Acta Palaeontologica Polonica|volume=53|issue=4|pages=567–578|doi=10.4202/app.2008.0402}}</ref>。
39行目: 40行目:


歯を持つ原始的なペレカニミムスでは主に小動物を捕食していたと考えられている<ref name="perez=morenoetal1994">Perez-Moreno, B. P., Sanz, J. L., Buscalioni, A. D., Moratalla, J. J., Ortega, F., and Raskin-Gutman, D. (1994). "A unique multitoothed ornithomimosaur from the Lower Cretaceous of Spain." ''Nature'', '''370''': 363-367.</ref>。
歯を持つ原始的なペレカニミムスでは主に小動物を捕食していたと考えられている<ref name="perez=morenoetal1994">Perez-Moreno, B. P., Sanz, J. L., Buscalioni, A. D., Moratalla, J. J., Ortega, F., and Raskin-Gutman, D. (1994). "A unique multitoothed ornithomimosaur from the Lower Cretaceous of Spain." ''Nature'', '''370''': 363-367.</ref>。

==生息地と起源==
現在のところ化石はかつてローラシア大陸であったヨーロッパ(ペレカニミムス)、アジア(ハルピミムス他)、北アメリカ(オルニトミムス、ストルティオミムス)から発見されている。かつて[[タンザニア]]で発見された[[ジュラ紀]]の属[[エラフロサウルス]]<ref>Galton, 1982. Elaphrosaurus, an ornithomimid dinosaur from the Upper Jurassic of North America and Africa. Paläontologische Zeitschrift. 56, 265-275.</ref><ref name=DAR72>{{cite journal |last=Russell |first=Dale A. |year=1972 |title=Ostrich dinosaurs from the Late Cretaceous of western Canada |journal=Canadian Journal of Earth Sciences |volume=9 |pages=375–402 |doi=10.1139/e72-031|bibcode = 1972CaJES...9..375R }}</ref><ref>Nopcsa, F. (1928). The genera of reptiles: Paleobiologica, 1, pp. 163-188.</ref><ref>Barsbold, R; Maryanska, T; & Osmolska, H: Oviraptorosauria. Weishampel, D B, Dodson, P, & Osmolska, H, editors: The Dinosauria. University of California Press, Berkeley; 1990.</ref>や[[オーストラリア]]の[[ティミムス]]({{snamei||Timimus}})<ref name="Rich1994">T.H. Rich and P. Vickers-Rich, 1994, "Neoceratopsians and ornithomimosaurs: dinosaurs of Gondwana origin?", ''National Geographic Research and Exploration'' '''10'''(1): 129-131</ref>もこのグループに属するとされ、[[ゴンドワナ]]起源(あるいは分裂以前の[[パンゲア]]起源)と考えられたこともあった。しかし、現在では前者は[[ケラトサウルス類]]に<ref>M. T. Carrano and S. D. Sampson. 2008. The phylogeny of Ceratosauria (Dinosauria: Theropoda). Journal of Systematic Palaeontology 6(2):183-236</ref><ref>M. T. Carrano, R. B. J. Benson, and S. D. Sampson. 2012. The phylogeny of Tetanurae (Dinosauria: Theropoda). Journal of Systematic Palaeontology 10(2):211-300</ref>、後者はオルニトミモサウルス類以外のコエルロサウルス類(おそらくはティラノサウルス上科もしくは[[ドロマエオサウルス科]])に分類されている<ref name=Tyrannosaur>{{Cite journal | last1 = Benson | first1 = R. B. J. | last2 = Rich | first2 = T. H. | last3 = Vickers-Rich | first3 = P. | last4 = Hall | first4 = M. | editor1-last = Farke | editor1-first = Andrew A | title = Theropod Fauna from Southern Australia Indicates High Polar Diversity and Climate-Driven Dinosaur Provinciality | doi = 10.1371/journal.pone.0037122 | journal = PLoS ONE | volume = 7 | issue = 5 | pages = e37122 | year = 2012 | pmid = 22615916| pmc = 3353904}}</ref>。系統解析の結果ヨーロッパおよびアジアの属が基底的であり、オルニトミモサウルス類は東アジアもしくはヨーロッパの白亜紀前期{{仮リンク|バーレミアン|label=バーレム期|en|Barremian}}(1億3000万年前から1億2500万年前)に生じ、その後白亜紀後期以前に北アメリカに移住したと結論されている<ref name = "kobayashi&barsbold2005">Kobayashi, Y. and Barsbold, R. (2005). "Anatomy of ''Harpymimus okladnikovi'' Barsbold and Perle 1984 (Dinosauria; Theropoda) of Mongolia." In Carpenter, K. (ed.) ''The Carnivorous Dinosaurs''. Indiana University Press: 97-126</ref>。しかし、2012年の研究では白亜紀前期[[バランギニアン|ヴァランジュ期]]に現在の南アフリカに生息した[[ヌクウェバサウルス]]({{snamei||Nqwebasaurus}})がこのグループの基底に位置するとされ、初期には広範に生息していた可能性が指摘されている<ref name="Choiniere2012">{{Cite journal | last1 = Choiniere | first1 = J. N. | last2 = Forster | first2 = C. A.
| last3 = De Klerk | first3 = W. J. | doi = 10.1016/j.jafrearsci.2012.05.005 | title = New information on Nqwebasaurus thwazi, a coelurosaurian theropod from the Early Cretaceous (Hauteriverian?) Kirkwood Formation in South Africa
| journal = Journal of African Earth Sciences | year = 2012 | pmid = | pmc = }}</ref>。


==分類==
==分類==
オルニトミムス科(Ornithomimidae)は1890年に [[O.C.マーシュ]]により命名され、最初は「メガロサウルス下目」({{仮リンク|ゴミ箱分類群|en|wastebasket taxon}}であり、中型から大型の獣脚類が含まれた)に分類された。しかし、しだいに獣脚類の多様性が明らかになって行き、それぞれのより正しい類縁関係が明らかになって来るとこの科はコエルロサウルス下目へと移された。他の獣脚類と比較してオルニトミムス科の独自性が理解されて来たため、1976年に{{仮リンク|リンチェン・バルスボルド|en|Rinchen Barsbold}}はこの科を独自の[[下目]]であるオルニトミモサウルス下目に分類した。1990年代以降分岐学的に定義されるようになるとオルニトミムス科およびおるに富みもサウルス類の内容は論文の筆者ごとに様々に変化している。
オルニトミムス科(Ornithomimidae)は1890年に [[O.C.マーシュ]]により命名され、最初は「メガロサウルス下目」({{仮リンク|ゴミ箱分類群|en|wastebasket taxon}}であり、中型から大型の獣脚類が含まれた)に分類された。しかし、しだいに獣脚類の多様性が明らかになって行き、それぞれのより正しい類縁関係が明らかになって来るとこの科はコエルロサウルス下目へと移された。他の獣脚類と比較してオルニトミムス科の独自性が理解されて来たため、1976年に{{仮リンク|リンチェン・バルスボルド|en|Rinchen Barsbold}}はこの科を独自の[[下目]]であるオルニトミモサウルス下目に分類した。1990年代以降分岐学的に定義されるようになるとオルニトミムス科およびオルトミモサウルス類の内容は論文の筆者ごとに様々に変化している。


1990年代前半には{{仮リンク|トーマス・ホルツ|en|Thomas R. Holtz, Jr.}}に代表される古生物学者によりアークトメタターサルな足を持つ獣脚類が近縁な関係にあるという分類が提案された。このグループは二足歩行の獣脚類であり、速く走るための適応として[[中足骨]]が「狭窄された」構造(アークトメタターサル)を持つ。Holtz (1994)での系統群'''アークトメタターサリア'''('''Arctometatarsalia''')の定義は 「アークトメタターサルな足を最初に発達させた獣脚類とその全ての子孫」とされた。そしてこのグループには[[トロオドン科]]、[[ティラノサウルス上科]]、オルニトミモサウルス類が含まれた。後にHoltz (1996, 2000)ではブランチベースの定義として「オルニトミムスおよび[[鳥類]]よりもオルニトミムスと[[最も近い共通祖先|より新しい共通の祖先]]を持つ全ての獣脚類」とされた。その後研究の結果ティラノサウルス上科やトロオドン科がオルトミモサウルス類よりも別のコエルロサウルス類に近縁であることが示されるようになると、ホルツを含むほとんどの古生物学者はアークトメタターサリアが自然な分類群であるという説を放棄した。アークトメタターサリアの厳密な定義はオルニトミムスに基づいており、オルニトミモサウルス類の広義の定義となる余分な名前となっている。そのため一般的にアークトメタターサリアという名は放棄されている。
1990年代前半には{{仮リンク|トーマス・ホルツ|en|Thomas R. Holtz, Jr.}}に代表される古生物学者によりアークトメタターサルな足を持つ獣脚類が近縁な関係にあるという分類が提案された。このグループは二足歩行の獣脚類であり、速く走るための適応として[[中足骨]]が「狭窄された」構造(アークトメタターサル)を持つ。Holtz (1994)での系統群'''アークトメタターサリア'''('''Arctometatarsalia''')の定義は 「アークトメタターサルな足を最初に発達させた獣脚類とその全ての子孫」とされた。そしてこのグループには[[トロオドン科]]、[[ティラノサウルス上科]]、オルニトミモサウルス類が含まれた。後にHoltz (1996, 2000)ではブランチベースの定義として「オルニトミムスおよび[[鳥類]]よりもオルニトミムスと[[最も近い共通祖先|より新しい共通の祖先]]を持つ全ての獣脚類」とされた。その後研究の結果ティラノサウルス上科やトロオドン科がオルトミモサウルス類よりも別のコエルロサウルス類に近縁であることが示されるようになると、ホルツを含むほとんどの古生物学者はアークトメタターサリアが自然な分類群であるという説を放棄した。アークトメタターサリアの厳密な定義はオルニトミムスに基づいており、オルニトミモサウルス類の広義の定義となる余分な名前となっている。そのため一般的にアークトメタターサリアという名は放棄されている。
71行目: 77行目:
オルニトミモサウルス類は鳥類よりオルニトミムスに近縁な全ての獣脚類からなるブランチベースのグループ、もしくはより限定的な意味のグループとして様々な使われ方をしている。包括的な定義が適応されるとアルヴァレスサウルス科がオルニトミモサウルス類に含まれる可能性があるため、より限定的な意味での使われ方が一般的になってきている。別の系統群としてセレノにより2005年にオルニトミムス形類が(''[[オルニトミムス|Ornithomimus velox]]'' > ''[[イエスズメ|Passer domesticus]]'')として定義され、[[アルヴァレスサウルス]]よりオルニトミムスに近縁な恐竜として再定義されたオルニトミモサウルス類とともにアルヴァレスサウルス他のマニラプトラよりオルニトミムスに近縁であることが判明した恐竜を含む包括的な意味でのオルニトミモサウルス類と置き換えられた。{{仮リンク|グレゴリー・ポール|en|Gregory S. Paul}}はオルニトミモサウルス類が原始的で、飛べない鳥類であり、[[デイノニコサウルス類]]({{snamei||Deinonychosauria}})や[[オヴィラプトロサウルス類]]より進歩的であるという説を提案している<ref name=paul2002>{{cite book| author = Paul, G.S.| year = 2002| title = Dinosaurs of the Air: The Evolution and Loss of Flight in Dinosaurs and Birds| location = Baltimore| publisher = Johns Hopkins University Press}}</ref>。
オルニトミモサウルス類は鳥類よりオルニトミムスに近縁な全ての獣脚類からなるブランチベースのグループ、もしくはより限定的な意味のグループとして様々な使われ方をしている。包括的な定義が適応されるとアルヴァレスサウルス科がオルニトミモサウルス類に含まれる可能性があるため、より限定的な意味での使われ方が一般的になってきている。別の系統群としてセレノにより2005年にオルニトミムス形類が(''[[オルニトミムス|Ornithomimus velox]]'' > ''[[イエスズメ|Passer domesticus]]'')として定義され、[[アルヴァレスサウルス]]よりオルニトミムスに近縁な恐竜として再定義されたオルニトミモサウルス類とともにアルヴァレスサウルス他のマニラプトラよりオルニトミムスに近縁であることが判明した恐竜を含む包括的な意味でのオルニトミモサウルス類と置き換えられた。{{仮リンク|グレゴリー・ポール|en|Gregory S. Paul}}はオルニトミモサウルス類が原始的で、飛べない鳥類であり、[[デイノニコサウルス類]]({{snamei||Deinonychosauria}})や[[オヴィラプトロサウルス類]]より進歩的であるという説を提案している<ref name=paul2002>{{cite book| author = Paul, G.S.| year = 2002| title = Dinosaurs of the Air: The Evolution and Loss of Flight in Dinosaurs and Birds| location = Baltimore| publisher = Johns Hopkins University Press}}</ref>。


コエルロサウルス類内での位置については諸説あり、その一つWeishampel et al.2004に拠るクラドグラムを下記に示す。
コエルロサウルス類内での位置については諸説あり、その一つWeishampel et al.2004に拠るクラドグラムを下記に示す<ref name="Weishampel2004">Makovicky, P.J., Kobayashi, Y. & Currie, P.J. 2004. Ornithomimosauria. In D.B. Weishampel, P. Dodson & H. Osmólska (eds.), The Dinosauria, Second Edition. University of California Press, Berkeley/Los Angeles/London.: 137-150.</ref>


:━[[コエルロサウルス類]]
:━[[コエルロサウルス類]]

2014年1月26日 (日) 12:57時点における版

オルトミモサウルス類
生息年代: 140–65.5 Ma
[1]
地質時代
白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
階級なし : テタヌラ類 Tetanurae
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : オルトミモサウルス類 Ornithomimosauria
学名
Ornithomimosauria
Barsbold1976
下位分類
本文参照

オルトミモサウルス類あるいはオルニトミモサウリアOrnithomimosauria)は白亜紀ローラシア大陸(現在のアジア、ヨーロッパ、北アメリカ)に生息していたコエルロサウルス類獣脚類恐竜の系統群の一つである。現在では一般に階級無しの系統群として扱われるが提案時は下目として設立され、現在でも日本語ではオルトミモサウルス下目と表記される場合がある。俗にダチョウ恐竜とも呼ばれ、現在の走鳥類に似た走行性英語版の体格を持つ。走行速度は種によっては最高時速は60-80kmに達したとの推定もある[2]


形態

ストルティオミムスの復元図

オルトミモサウルス類の形態的特徴として小さくスレンダーな頭骨・大きな・長い首、腕・固まった尾・強靭な後肢等が挙げられる。腕と尾を除けば走鳥類と非常に似た体つきをしており実際に生態にも共通点があったと推測される。比較的原始的な属であるペレカニミムスハルピミムスには歯があったが、より進化的なオルニトミムス科の種では歯が無く、くちばし状の口器になっている。 オルニトミムスでは羽毛の化石が発見されおり[3]、他のコエルロサウルス類同様に羽毛を持っていたと推定される。

生態

大きな脳を持ち視覚もよかったとされる。 1997年には14体の シノルニトミムスSinornithomimus) の化石がまとまって発見された。そのうちの11体は幼体亜成体でありシノルニトミムスは群れで行動していたと考えられている[4]

オルトミモサウルス類の2種(ガルディミムスとオルニトミムス)と現生の鳥類や爬虫類との強膜輪の比較から周日行性英語版、つまり短い間隔で終日活動していたことが示唆される[5]

食性

オルトミモサウルス類の食性についてははっきりとした結論は出ていない。

その歯の無いくちばし状の口器から進歩的なオルニトミムス科では雑食性であるとも考えられるが、ガリミムスオルニトミムスでは頭部化石の研究からくちばしに小さなスリットを多数持つことがわかっており[6]フラミンゴのような濾過食ではなかったかという意見もある。ただ水中の藍藻類や小動物だけでは、オルニトミムス上科の恐竜にとって十分な量を確保できなかったのではないかという反論もある(小型恐竜といってもそれらの水鳥よりははるかに大きかった)。 また胃石の化石や頭の真横に着いた眼、前述の細く長く物をフックのように引き寄せるのに使われたと思われる手などから植物食、または植物食の傾向が強い雑食だったというのが現在の主流である[7]

歯を持つ原始的なペレカニミムスでは主に小動物を捕食していたと考えられている[8]

生息地と起源

現在のところ化石はかつてローラシア大陸であったヨーロッパ(ペレカニミムス)、アジア(ハルピミムス他)、北アメリカ(オルニトミムス、ストルティオミムス)から発見されている。かつてタンザニアで発見されたジュラ紀の属エラフロサウルス[9][10][11][12]オーストラリアティミムスTimimus[13]もこのグループに属するとされ、ゴンドワナ起源(あるいは分裂以前のパンゲア起源)と考えられたこともあった。しかし、現在では前者はケラトサウルス類[14][15]、後者はオルニトミモサウルス類以外のコエルロサウルス類(おそらくはティラノサウルス上科もしくはドロマエオサウルス科)に分類されている[16]。系統解析の結果ヨーロッパおよびアジアの属が基底的であり、オルニトミモサウルス類は東アジアもしくはヨーロッパの白亜紀前期バーレム期(1億3000万年前から1億2500万年前)に生じ、その後白亜紀後期以前に北アメリカに移住したと結論されている[17]。しかし、2012年の研究では白亜紀前期ヴァランジュ期に現在の南アフリカに生息したヌクウェバサウルスNqwebasaurus)がこのグループの基底に位置するとされ、初期には広範に生息していた可能性が指摘されている[18]

分類

オルニトミムス科(Ornithomimidae)は1890年に O.C.マーシュにより命名され、最初は「メガロサウルス下目」(ゴミ箱分類群であり、中型から大型の獣脚類が含まれた)に分類された。しかし、しだいに獣脚類の多様性が明らかになって行き、それぞれのより正しい類縁関係が明らかになって来るとこの科はコエルロサウルス下目へと移された。他の獣脚類と比較してオルニトミムス科の独自性が理解されて来たため、1976年にリンチェン・バルスボルドはこの科を独自の下目であるオルニトミモサウルス下目に分類した。1990年代以降分岐学的に定義されるようになるとオルニトミムス科およびオルトミモサウルス類の内容は論文の筆者ごとに様々に変化している。

1990年代前半にはトーマス・ホルツ英語版に代表される古生物学者によりアークトメタターサルな足を持つ獣脚類が近縁な関係にあるという分類が提案された。このグループは二足歩行の獣脚類であり、速く走るための適応として中足骨が「狭窄された」構造(アークトメタターサル)を持つ。Holtz (1994)での系統群アークトメタターサリアArctometatarsalia)の定義は 「アークトメタターサルな足を最初に発達させた獣脚類とその全ての子孫」とされた。そしてこのグループにはトロオドン科ティラノサウルス上科、オルニトミモサウルス類が含まれた。後にHoltz (1996, 2000)ではブランチベースの定義として「オルニトミムスおよび鳥類よりもオルニトミムスとより新しい共通の祖先を持つ全ての獣脚類」とされた。その後研究の結果ティラノサウルス上科やトロオドン科がオルトミモサウルス類よりも別のコエルロサウルス類に近縁であることが示されるようになると、ホルツを含むほとんどの古生物学者はアークトメタターサリアが自然な分類群であるという説を放棄した。アークトメタターサリアの厳密な定義はオルニトミムスに基づいており、オルニトミモサウルス類の広義の定義となる余分な名前となっている。そのため一般的にアークトメタターサリアという名は放棄されている。

2005年に古生物学者ポール・セレノ英語版は「イエスズメよりオルニトミムス・エドモントニクスにより近縁な全ての種」という定義に基づいて系統群オルニトミムス形類Ornithomimiformes)を提案した。セレノはオルニトミモサウルス類をより狭い意味として再定義したため、オルニトミモサウルス類と姉妹群であり元々はオルニトミモサウルス類に含まれていたアルヴァレスサウルス科を含む新たな系統群を表す用語を必要としたからでる。しかし、この概念はセレノのウェブサイトでしか発表されておらず、公式に出版された正当な名ではない[19]。またこの「オルニトミムス形類」はホルツのアークトトメタターサリアとよく似た定義であり、内容が同じである。「オルニトミムス形類」の方が新しいグループであるが、アークトメタターサリアはホルツにより根本的に改変されてるとして、セレノはその優先権を拒絶している[19]。その後の別の研究での系統解析ではアルヴァレスサウルス科はオルニトミモサウルス類よりむしろ鳥類に近縁であり、マニラプトラに含まれるとする結果も得られている[20]

近年の研究ではオルニトミモサウルス類の中で ペレカニミムスシェンゾウサウルスShenzhousaurus)、デイノケイルス科、ガルディミムス科、ハルピミムス科を比較的原始的なグループとしオルニトミムス科を適応の進んだグループとして分けている。さらにオルニトミムス科のなかでも北米型としてストルティオミムス、オルニトミムス、アジア型としてガリミムスアンセリミムスシノルニトミムスとしている。


系統

Beishanlong grandisの復元図

オルニトミモサウルス類は鳥類よりオルニトミムスに近縁な全ての獣脚類からなるブランチベースのグループ、もしくはより限定的な意味のグループとして様々な使われ方をしている。包括的な定義が適応されるとアルヴァレスサウルス科がオルニトミモサウルス類に含まれる可能性があるため、より限定的な意味での使われ方が一般的になってきている。別の系統群としてセレノにより2005年にオルニトミムス形類が(Ornithomimus velox > Passer domesticus)として定義され、アルヴァレスサウルスよりオルニトミムスに近縁な恐竜として再定義されたオルニトミモサウルス類とともにアルヴァレスサウルス他のマニラプトラよりオルニトミムスに近縁であることが判明した恐竜を含む包括的な意味でのオルニトミモサウルス類と置き換えられた。グレゴリー・ポールはオルニトミモサウルス類が原始的で、飛べない鳥類であり、デイノニコサウルス類Deinonychosauria)やオヴィラプトロサウルス類より進歩的であるという説を提案している[21]

コエルロサウルス類内での位置については諸説あり、その一つWeishampel et al.2004に拠るクラドグラムを下記に示す[22]

コエルロサウルス類
コンプソグナトゥス類
ティラノサウルス類
ティラノサウルス科
マニラプトル形類
オルニトミムス形類アルヴァレスサウルス科を含む)
マニラプトル類
オヴィラプトル類 (テリジノサウルス科を含む)
原鳥類
ディノニコサウルス類トロオドン科を含む)
鳥類

ここに示すオルニトミモサウルス類内部のクラドグラムはTurner, Clarke, Ericson and Norell, 2007により得られたものである[23]。系統群の名前についてはSereno, 2005に拠る[24]

オルニトミモサウルス類

ペレカニミムス

unnamed

アーケオルニトミムス

シェンゾウサウルス

unnamed

ハルピミムス

unnamed

ガルディミムス

オルニトミムス科

ストルティオミムス

ガリミムス

unnamed

オルニトミムス

アンセリミムス

下記のクラドグラムはJin Liyong, Chen Jun and Pascal Godefroit (2012)の解析に拠るものである[25]

オルニトミモサウルス類

ペレカニミムス

unnamed

ヘクシング Hexing

シェンゾウサウルス

unnamed

ベイシャンロン Beishanlong

ハルピミムス

未命名の歯の無い系統群

ガルディミムス

オルニトミムス科

出典

  1. ^ Holtz, Thomas R. Jr. (2012) Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages, Winter 2011 Appendix.
  2. ^ Paul, regarding his comparative speed estimates, notes that "... just how swift is swift? In hard, precise measure, this can be a real can of worms; for just how fast living animals run is not well known." (Paul, G.S. 1988. Predatory Dinosaurs of the World. New York: Simon & Schuster.)
  3. ^ Zelenitsky, D. K.; Therrien, F.; Erickson, G. M.; Debuhr, C. L.; Kobayashi, Y.; Eberth, D. A.; Hadfield, F. (2012). “Feathered Non-Avian Dinosaurs from North America Provide Insight into Wing Origins”. Science 338 (6106): 510. doi:10.1126/science.1225376. 
  4. ^ Varricchio, D.J.; Sereno, P.C., Zhao X., Tan L., Wilson J.A. & Lyon, G.A. (2008). “Mud-trapped herd captures evidence of distinctive dinosaur sociality”. Acta Palaeontologica Polonica 53 (4): 567–578. doi:10.4202/app.2008.0402. 
  5. ^ Schmitz, L.; Motani, R. (2011). “Nocturnality in Dinosaurs Inferred from Scleral Ring and Orbit Morphology”. Science 332. doi:10.1126/science.1200043. PMID 21493820. 
  6. ^ Norell, M.A., Makovicky, P.J., & Currie, P.J. 2001. The beaks of ostrich dinosaurs. Nature 412: 873-874.
  7. ^ Nicholls, E. L., and Russell, A. P. (1985). "Structure and function of the pectoral girdle and forelimb of Struthiomimus altus (Theropoda: Ornithomimidae)." Palaeontology, 28: 643-677.
  8. ^ Perez-Moreno, B. P., Sanz, J. L., Buscalioni, A. D., Moratalla, J. J., Ortega, F., and Raskin-Gutman, D. (1994). "A unique multitoothed ornithomimosaur from the Lower Cretaceous of Spain." Nature, 370: 363-367.
  9. ^ Galton, 1982. Elaphrosaurus, an ornithomimid dinosaur from the Upper Jurassic of North America and Africa. Paläontologische Zeitschrift. 56, 265-275.
  10. ^ Russell, Dale A. (1972). “Ostrich dinosaurs from the Late Cretaceous of western Canada”. Canadian Journal of Earth Sciences 9: 375–402. Bibcode1972CaJES...9..375R. doi:10.1139/e72-031. 
  11. ^ Nopcsa, F. (1928). The genera of reptiles: Paleobiologica, 1, pp. 163-188.
  12. ^ Barsbold, R; Maryanska, T; & Osmolska, H: Oviraptorosauria. Weishampel, D B, Dodson, P, & Osmolska, H, editors: The Dinosauria. University of California Press, Berkeley; 1990.
  13. ^ T.H. Rich and P. Vickers-Rich, 1994, "Neoceratopsians and ornithomimosaurs: dinosaurs of Gondwana origin?", National Geographic Research and Exploration 10(1): 129-131
  14. ^ M. T. Carrano and S. D. Sampson. 2008. The phylogeny of Ceratosauria (Dinosauria: Theropoda). Journal of Systematic Palaeontology 6(2):183-236
  15. ^ M. T. Carrano, R. B. J. Benson, and S. D. Sampson. 2012. The phylogeny of Tetanurae (Dinosauria: Theropoda). Journal of Systematic Palaeontology 10(2):211-300
  16. ^ Benson, R. B. J.; Rich, T. H.; Vickers-Rich, P.; Hall, M. (2012). Farke, Andrew A. ed. “Theropod Fauna from Southern Australia Indicates High Polar Diversity and Climate-Driven Dinosaur Provinciality”. PLoS ONE 7 (5): e37122. doi:10.1371/journal.pone.0037122. PMC 3353904. PMID 22615916. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3353904/. 
  17. ^ Kobayashi, Y. and Barsbold, R. (2005). "Anatomy of Harpymimus okladnikovi Barsbold and Perle 1984 (Dinosauria; Theropoda) of Mongolia." In Carpenter, K. (ed.) The Carnivorous Dinosaurs. Indiana University Press: 97-126
  18. ^ Choiniere, J. N.; Forster, C. A.; De Klerk, W. J. (2012). “New information on Nqwebasaurus thwazi, a coelurosaurian theropod from the Early Cretaceous (Hauteriverian?) Kirkwood Formation in South Africa”. Journal of African Earth Sciences. doi:10.1016/j.jafrearsci.2012.05.005. 
  19. ^ a b Sereno, P. C. (2005). Stem Archosauria—TaxonSearch [version 1.0, 2005 November 7]
  20. ^ Senter, Phil (2007). “A NEW LOOK AT THE PHYLOGENY OF COELUROSAURIA (DINOSAURIA: THEROPODA)”. Journal of Systematic Palaeontology 5 (4): 429. doi:10.1017/S1477201907002143. 
  21. ^ Paul, G.S. (2002). Dinosaurs of the Air: The Evolution and Loss of Flight in Dinosaurs and Birds. Baltimore: Johns Hopkins University Press 
  22. ^ Makovicky, P.J., Kobayashi, Y. & Currie, P.J. 2004. Ornithomimosauria. In D.B. Weishampel, P. Dodson & H. Osmólska (eds.), The Dinosauria, Second Edition. University of California Press, Berkeley/Los Angeles/London.: 137-150.
  23. ^ Turner, A.H., Pol, D., Clarke, J.A., Erickson, G.M., and Norell, M. (2007). "Supporting online material for: A basal dromaeosaurid and size evolution preceding avian flight". Science, 317: 1378-1381. doi:10.1126/science.1144066 (supplement)
  24. ^ Sereno, P. C. 2005. Stem Archosauria—TaxonSearch [version 1.0, 2005 November 7]
  25. ^ Jin Liyong, Chen Jun and Pascal Godefroit (2012). "A New Basal Ornithomimosaur (Dinosauria: Theropoda) from the Early Cretaceous Yixian Formation, Northeast China". In Godefroit, P. (eds). Bernissart Dinosaurs and Early Cretaceous Terrestrial Ecosystems. Indiana University Press. pp. 467–487.

Template:Link FA