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この歌唱法で作られた音楽のジャンルを指してラップと呼ばれることもある。ただし、ラップとは上記のような歌唱法を指す言葉なので、ジャンルを指しては、ラップ・ミュージックやヒップホップ・ミュージックなどと呼んだほうが正しい。
この歌唱法で作られた音楽のジャンルを指してラップと呼ばれることもある。ただし、ラップとは上記のような歌唱法を指す言葉なので、ジャンルを指しては、ラップ・ミュージックやヒップホップ・ミュージックなどと呼んだほうが正しい。


ラップをする人のことを'''ラッパー'''(rapper)や'''[[MC (音楽)|MC]]'''と言う。
ラップをする人のことを'''ラッパー'''(rapper)や'''[[MC (ヒップホップ)|MC]]'''と言う。


==語源==
==語源==
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誕生の場は[[1960年代|1960]]~[[1970年代|70年代]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]][[ニューヨーク]]でみられたブロック・パーティーだと言われるが、古くはアフリカン・[[グリオ]]([[文盲]]者に口伝で歴史や詩を伝える者達)にそのルーツが見られ、[[マルコムX]]や[[キング牧師]]といった政治的指導者のスピーチも大きく影響を与えている。[[モハメド・アリ]]のインタビューなどで見られた言葉遊びによって、より広まったといわれる。レゲエにおけるトースティングにも影響を受けていると考えられており、トースティングが[[レコード]]に収録されている[[インストゥルメンタル]]に乗せて行うように、[[ディスクジョッキー#ヒップホップDJ|DJ]]がプレイする[[ブレイクビーツ]]に乗せて行ったのが初期のラップの形だと考えられている。あらかじめ用意した歌詞(リリック)ではなく、即興で歌詞を作り、歌詞とライムの技術を競う[[ラップ#関連用語|フリースタイル]]もある。
誕生の場は[[1960年代|1960]]~[[1970年代|70年代]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]][[ニューヨーク]]でみられたブロック・パーティーだと言われるが、古くはアフリカン・[[グリオ]]([[文盲]]者に口伝で歴史や詩を伝える者達)にそのルーツが見られ、[[マルコムX]]や[[キング牧師]]といった政治的指導者のスピーチも大きく影響を与えている。[[モハメド・アリ]]のインタビューなどで見られた言葉遊びによって、より広まったといわれる。レゲエにおけるトースティングにも影響を受けていると考えられており、トースティングが[[レコード]]に収録されている[[インストゥルメンタル]]に乗せて行うように、[[ディスクジョッキー#ヒップホップDJ|DJ]]がプレイする[[ブレイクビーツ]]に乗せて行ったのが初期のラップの形だと考えられている。あらかじめ用意した歌詞(リリック)ではなく、即興で歌詞を作り、歌詞とライムの技術を競う[[ラップ#関連用語|フリースタイル]]もある。


また「ラップする者」を意味するラッパー(rapper)は[[1979年]][[シュガーヒル・ギャング]]の[[シングル]]「ラッパーズ・デライト(Rapper's Delight)」のヒット以降[[メディア (媒体)|メディア]]が付けた通称で、この呼び名を嫌がり、特に[[ヒップホップ|オールド・スクール]]世代の「ラップする者」は[[Run-D.M.C.]]が名付けた[[MC (音楽)|MC]](microphone controller)という名称を好んで使う。{{要出典範囲|日本人の「ラップする者」は、「ラッパー」という呼称を嫌う者が多い。|date=2008年10月13日}}ヒップホップ発祥のアメリカでは、ニュー・スクール世代には「ラッパー」という呼称も最近は普通に使われる。日本でも若い世代には定着しており、自分のことを「ラッパー」と言う者が増えてきている。
また「ラップする者」を意味するラッパー(rapper)は[[1979年]][[シュガーヒル・ギャング]]の[[シングル]]「ラッパーズ・デライト(Rapper's Delight)」のヒット以降[[メディア (媒体)|メディア]]が付けた通称で、この呼び名を嫌がり、特に[[ヒップホップ|オールド・スクール]]世代の「ラップする者」は[[Run-D.M.C.]]が名付けた[[MC (ヒップホップ)|MC]](microphone controller)という名称を好んで使う。{{要出典範囲|日本人の「ラップする者」は、「ラッパー」という呼称を嫌う者が多い。|date=2008年10月13日}}ヒップホップ発祥のアメリカでは、ニュー・スクール世代には「ラッパー」という呼称も最近は普通に使われる。日本でも若い世代には定着しており、自分のことを「ラッパー」と言う者が増えてきている。


==日本におけるラップ==
==日本におけるラップ==
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*フリースタイル(free style) - ある程度即興でリリックを考え、ラップすること。フリースタイルバトルでは、お互いがリリックの内容で攻撃し合う。実際の大会では、有能な対戦相手の弱点を研究し、対策リリックをある程度作ってから望むこともある。一方で特に即興性の高いものは'''トップ・オヴ・ザ・ヘッド'''と呼ばれる。 フリースタイルのイベント・大会等も開催されている。海外アーティストではJINなどがフリースタイル大会の出身者である。
*フリースタイル(free style) - ある程度即興でリリックを考え、ラップすること。フリースタイルバトルでは、お互いがリリックの内容で攻撃し合う。実際の大会では、有能な対戦相手の弱点を研究し、対策リリックをある程度作ってから望むこともある。一方で特に即興性の高いものは'''トップ・オヴ・ザ・ヘッド'''と呼ばれる。 フリースタイルのイベント・大会等も開催されている。海外アーティストではJINなどがフリースタイル大会の出身者である。
* ビーフ(beef) - アーティスト間の論争、(非物理的な)喧嘩の事。昔、アメリカで[[ウェンディーズ]]の[[コマーシャルメッセージ|CM]]でおばさんが[[マクドナルド]]のハンバーガーを食べて「Where is beef?」といったのが語源らしい。
* ビーフ(beef) - アーティスト間の論争、(非物理的な)喧嘩の事。昔、アメリカで[[ウェンディーズ]]の[[コマーシャルメッセージ|CM]]でおばさんが[[マクドナルド]]のハンバーガーを食べて「Where is beef?」といったのが語源らしい。
*ワック(wack) - スラングで不出来な、あるいは偽物の意。「ワック[[MC (音楽)|MC]]」等、他のアーティストをディスる(批判する)時に使用する。
*ワック(wack) - スラングで不出来な、あるいは偽物の意。「ワック[[MC (ヒップホップ)|MC]]」等、他のアーティストをディスる(批判する)時に使用する。
*マイクリレー(mic relay) - 複数のMCが決められた小節を担当し、楽曲をつないでいくこと。
*マイクリレー(mic relay) - 複数のMCが決められた小節を担当し、楽曲をつないでいくこと。



2008年11月30日 (日) 10:19時点における版

ラップ(rap)とは、音楽手法、歌唱法のひとつ。あまりメロディーをつけずに、小節の終わりなどでを踏みながらリズミカルにしゃべるように歌う方法の事である。ヒップホップ四大要素の一つ。稀にMCingと呼ばれることもある。

この歌唱法で作られた音楽のジャンルを指してラップと呼ばれることもある。ただし、ラップとは上記のような歌唱法を指す言葉なので、ジャンルを指しては、ラップ・ミュージックやヒップホップ・ミュージックなどと呼んだほうが正しい。

ラップをする人のことをラッパー(rapper)やMCと言う。

語源

もとは擬音語で、トントン、コツコツ、といった物音を意味する。心霊現象のひとつであるラップ現象(ラップ音)はこの意味である。

俗語としてはさまざまな意味に転じたが、黒人英語では「おしゃべり」や「会話」を意味し、そこから「しゃべるような」という意味に広がった。

概要

メロディーをあまり必要とせず、似た言葉や語尾が同じ言葉を繰り返す、韻を踏む(ライム)のが特徴的で、話し言葉に近い抑揚をつけて発声する唱法。曲の拍感覚に合わせる方法(オン・ビート)と合わせない方法(オフ・ビート)がある。レゲエにおけるディージェイが行うトースティングによく似ているが、ラップはあまりメロディーを付けないのに対して、トースティングは独特のメロディーを付けて歌うという特徴がある。しかし、レゲエ・ディージェイと呼ばれる人物がラップのようにメロディーを付けない歌唱法をしていたり(ダミアン・マーリーの『Beautiful』など)、ラッパーやヒップホップMCと呼ばれる人物がトースティングのようなメロディーを付けた歌唱法をしていたり(初期KRS-OneRBXなど)することも多く、両者に明確な違いは無いと思われる。

主にサンプリング打ち込みで作られたバックトラックの上にラップを乗せた音楽をラップ・ミュージックやヒップホップ・ミュージックと呼ぶ。ただし、ヒップホップとはニューヨークアフリカン・アメリカンヒスパニック達から生まれた創造性の文化全体を指すため、ラップとヒップホップは同義語ではない。

ミクスチャー・ロックにラップを取り入れたものはラップメタルなどと呼ばれ、上記のラップ・ミュージックとは区別される。他にもハウスやテクノにラップを取り入れたものもある。

歴史

誕生の場は196070年代アメリカニューヨークでみられたブロック・パーティーだと言われるが、古くはアフリカン・グリオ文盲者に口伝で歴史や詩を伝える者達)にそのルーツが見られ、マルコムXキング牧師といった政治的指導者のスピーチも大きく影響を与えている。モハメド・アリのインタビューなどで見られた言葉遊びによって、より広まったといわれる。レゲエにおけるトースティングにも影響を受けていると考えられており、トースティングがレコードに収録されているインストゥルメンタルに乗せて行うように、DJがプレイするブレイクビーツに乗せて行ったのが初期のラップの形だと考えられている。あらかじめ用意した歌詞(リリック)ではなく、即興で歌詞を作り、歌詞とライムの技術を競うフリースタイルもある。

また「ラップする者」を意味するラッパー(rapper)は1979年シュガーヒル・ギャングシングル「ラッパーズ・デライト(Rapper's Delight)」のヒット以降メディアが付けた通称で、この呼び名を嫌がり、特にオールド・スクール世代の「ラップする者」はRun-D.M.C.が名付けたMC(microphone controller)という名称を好んで使う。日本人の「ラップする者」は、「ラッパー」という呼称を嫌う者が多い。[要出典]ヒップホップ発祥のアメリカでは、ニュー・スクール世代には「ラッパー」という呼称も最近は普通に使われる。日本でも若い世代には定着しており、自分のことを「ラッパー」と言う者が増えてきている。

日本におけるラップ

日本においては、多くの単語が共通の綴りで結ばれる(-tion、-erなど)英語と違い、「日本語でラップを行うことは困難」とされており、実際YMO等は英語でラップを試みていた。しかし1980年代以降、ヒップホップミュージックの隆盛にあわせ、近田春夫いとうせいこうらにより日本語ラップへの試みが行われ、読経をベースにし、日本語でもライムが可能である事が発見されるなど多くのMC達の努力の結果、次第に広まりをみせた。昨今ではヒップホップに留まらず、ロックJ-POPにも取り入れられる手法となり、チャート上位の曲でラップを聴く事も多くなった。この流れは、かつての日本語によるロックの経緯と重なる部分がある。使われる音はクリーンが多い。

音楽シーンでは、1984年佐野元春がアルバム「VISITORS」収録の楽曲「COMPLICATION SHAKEDOWN」や「COME SHINING」等でラップへの接近を試みた。これは前年からの約1年間に渡るニューヨーク生活において現地で高まりを見せていたヒップホップ文化から受けた衝撃と影響によるものであり、自身が既発曲で試みていた日本語によるビート感の追求との大胆な融合の産物であった。同アルバムはオリコンチャート1位を記録するものの、当時の多くのファン、マスメディアはこれらの楽曲を的確に理解することが出来ず、その音楽表現の解釈に困惑していた。1985年には吉幾三が「俺ら東京さ行ぐだ」で、ラップ(のようなもの)を取り入れた。この時は、歌詞の滑稽さばかりが取り上げられて、その革新的な作曲は評価されなかった。また、屋敷豪太により、ヒップホップ化されたリミックスが作られたが、吉幾三側によって発売を拒否された。このことからも、本作がラップの日本語化を意図していたとはいいがたい。この後、1994年スチャダラパーの「今夜はブギーバック」やEAST END×YURIのシングル「DA・YO・NE」などによって、ラップの存在が一般に認知されるようになる。そして1990年代後半、Dragon Ashが登場する。Dragon Ashの影響は大きく、それまでのヒップホップアーティストには批判もされながらも、ラップはメジャーシーンに引き上げられ、日本のヒップホップは良くも悪くも変わっていく。90年代半ばから後半にかけてオーバーグラウンドでEAST ENDやDragon Ashが成功を収める一方、アンダーグラウンドでキングギドラなどが隆盛を迎えていたことによって「韻を踏んでないものはラップではない」とする意識がラップミュージックのファンやMC達の間に強く生まれた。

ヒップホップには、社会へのメッセージ性を排し、商業的な成果だけを求める行為を「セル・アウト(sell out)」と呼び、卑しむ文化がある。しかし現在日本の音楽界では話題性などの商業的影響を考え、タレントなどが楽曲をリリースする際に単なるスキャットを「ラップパートがある」と称してリリースされる曲が増えてきている。このためポップ・ミュージシャンなどの門外漢が、ラップをすることに対する強い反感を生み出している。

現在アメリカではトップセールスを記録する曲はラップミュージックが多いが、日本ではラップやヒップホップの本質が、まだ正しく認知されていないのが現状である。リリックの間に「チェケラッチョ(Check it out!)」や「Yo!(「おい」などのかけ声)」を混ぜただけでラップを自称するグループや、ラップ要素がなくともヒップホップファッションをしている等、「リズムのよさや目新しさで印象深くするため」の道具として使われることも多く、これはロック・ミュージックが輸入されときの流れにも似ている。日本では本来のラップとはかけ離れた楽曲を提供する者が、ラッパーと名乗ったりもする。

一方で独自の解釈やセンスで優れたジャパニーズラップを展開し、国際的にも評価されるアーティストが出てきている。

また、1957年発表の黒澤明監督作品『どん底』のラストに出てくる佐藤勝作曲の「馬鹿囃子」は、現在のラップに非常によく似た音楽性を持ち合わせている。

関連用語

主なものを取り上げる。

  • リリック(lyric) - いわゆる歌詞。普通は抒情詩の意味で使われる言葉だが、叙事的な内容の場合もリリックという。
  • 韻 - 語尾の母音を合わせることや、子音も含めて似た響きの言葉の繰り返し。単語単位に限らず、文全体として似た響きを繰り返したりもする。動詞の場合は「韻を踏む」と表現する。
  • ライム(rhyme) - 韻を踏む行為。曲への歌詞の乗せ方など、フロウに近い意味で使用されることも多い。
  • フロウ(flow) - ラップの手法。ラップの節回し、節の上げ下げのなど。多くの場合、メロディに乗せた歌の部分を指す。拡大解釈され、ラップの個性など。「彼のフロウは真似できない」など。
  • フック(hook) - 曲のメインフレーズやサビ。
  • フリースタイル(free style) - ある程度即興でリリックを考え、ラップすること。フリースタイルバトルでは、お互いがリリックの内容で攻撃し合う。実際の大会では、有能な対戦相手の弱点を研究し、対策リリックをある程度作ってから望むこともある。一方で特に即興性の高いものはトップ・オヴ・ザ・ヘッドと呼ばれる。 フリースタイルのイベント・大会等も開催されている。海外アーティストではJINなどがフリースタイル大会の出身者である。
  • ビーフ(beef) - アーティスト間の論争、(非物理的な)喧嘩の事。昔、アメリカでウェンディーズCMでおばさんがマクドナルドのハンバーガーを食べて「Where is beef?」といったのが語源らしい。
  • ワック(wack) - スラングで不出来な、あるいは偽物の意。「ワックMC」等、他のアーティストをディスる(批判する)時に使用する。
  • マイクリレー(mic relay) - 複数のMCが決められた小節を担当し、楽曲をつないでいくこと。

関連項目