奥サマは小学生

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奥サマは小学生
ジャンル ギャグラブコメ
漫画
作者 松山せいじ
出版社 秋田書店
掲載誌 チャンピオンRED いちご
レーベル チャンピオンREDコミックス
発売日 2008年11月20日
発表期間 2006年12月26日 - 2008年8月5日
巻数 全1巻
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画
ポータル 漫画

奥サマは小学生』(おくサマはしょうがくせい)は、松山せいじによる日本ギャグ漫画秋田書店チャンピオンRED いちご』Vol.1(2006年12月26日発売)からVol.9(2008年8月5日発売)まで連載[1]、単行本は全1巻。2011年10月3日よりマンガ図書館Zで成人指定の上でウェブコミック配信している。

ストーリー[編集]

少子化が進む一方の日本で、労善総理大臣の思い付きにより婚姻可能年齢が引き下げられることになり、法律の本格施行に先駆けて実証データを得るため、小学校教諭の安住直人(24歳)とその教え子・一ノ瀬春(12歳)が結婚することになった。

ナオトは幼妻のハルに対して様々な妄想を抱くものの、ハルの心身を気遣って思い留まり、決して手を出すことはなく、悶々とした新婚生活を送る。

登場人物[編集]

安住 直人(あずみ ナオト)
主人公。小学校教諭を務める24歳で、労善総理大臣が少子化対策として提唱した婚姻可能年齢引き下げの実証データを得るために教え子のハルと結婚する。ただし、社会実験のためハルと夫婦であることは周囲に秘密とされている。日々、ハルを相手に様々な妄想を抱いているが、自分の妻とは言えまだ現役の小学生であるハルの心身を担任として気遣っており、そうした妄想を実行に移すことはない。
一ノ瀬 春(いちのせ ハル)
婚姻可能年齢引き下げにより、担任のナオトと結婚した小学6年生。ナオトの脳内ではバナナを咥えさせられたり練乳をぶっかけられたりしているが、ハル自身はナオトがそのような妄想を抱いていることには気付いておらず、実際に行っているスキンシップはナオトの頬にキスをするぐらいである。
五十嵐(いがらし)
ナオトの教え子の一人。大企業の社長令嬢で高飛車だが、ナオトに対しては浅からぬ好意を抱いており、必要以上にハルと張り合おうとすることも。ナオトが水泳の授業で溺れた際には自ら率先して人工呼吸を施している。
夏町(なつまち)
ナオトの教え子の一人。内気で鈍くさく、歩くのも苦しいほどの爆乳がコンプレックス。五十嵐と同様、ナオトに対して浅からぬ好意を抱いている。
五十嵐の母(いがらしのはは)
ナオトの教え子・五十嵐の母親。大企業の経営者で、夫に先立たれており、ナオトとの再婚を目論んで娘ともどもナオトに色仕掛けで迫って来る。
労善総理大臣(ろうぜんそうりだいじん)
日本の内閣総理大臣秋葉原通いが趣味。少子化対策として婚姻可能年齢引き下げを思い付き、実行に移す。
鏖総理大臣(みなごろしそうりだいじん)
労善総理の辞任を受けて、後任の総理大臣となった女性政治家。前総理が提唱した婚姻可能年齢引き下げの中止を表明し、ナオトとハルを強制的に離婚させる。しかし、新政権は「タクシーでスイーツ(笑)」接待疑惑のため短期間で崩壊し、労善前総理が再び返り咲く。

絶版の経緯と東京都青少年健全育成条例改正問題に係る論争[編集]

本作は、完結から2年近くが経過した2010年に「表現の自由を侵害する」として漫画家出版社インターネット上のコミュニティを中心に大規模な反対運動が起きている東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正を巡る論議に際し、東京都が「いきすぎた性的表現がある」漫画の具体例として実名を挙げたことで知られている[2]

作中の性的な描写について[編集]

本作では、バナナを男性器に見立てて小学生であるハルに咥えさせたり練乳精液に見立ててハルの全身に浴びせたりする成人向け漫画パロディ的な演出が多用されているが、こうした描写は全てナオトの脳内における妄想として処理されている。ハルの夫であると同時に担任教師でもあるナオトはハルの心身を誰よりも気遣っているため、少子化対策として法律上も子作りを認められているにもかかわらず、決してそうした性的な妄想を実行に移すことはなく本編中では童貞を貫いている。

作者から出版社への絶版申し入れ[編集]

2009年東京都知事の諮問機関である青少年問題協議会において、青少年健全育成条例を改正し18歳未満に見える架空のキャラクター(非実在青少年)に対する性行為や性交類似行為を含む出版物の販売規制が議論された際に東京都青少年課は現行の条例で規制が困難な作品として本作を含む複数の漫画・アダルトゲームを例示し[3]、18歳未満の児童との性行為や近親相姦を肯定的に扱う作品の蔓延を防止するために規制強化が必要であるとする趣旨の答申をまとめ、2010年1月に公表した[4]

作者の松山は飽くまで「成人向け漫画のパロディ」という手法を用いたギャグとして本作を描き上げたものの、都条例改正を巡る論議で本作が名指しで取り上げられたことや国会における児童ポルノ禁止法強化の動き(準児童ポルノ)に対して「ジョークすら通じなくなると言う懸念」を抱き[5]、2010年1月12日に発行元の秋田書店へコミックスの絶版を申し入れた[6]

東京都副知事・猪瀬直樹による本作への批判[編集]

作家で東京都副知事(当時)の猪瀬直樹は2010年3月23日付のブログ記事で本作を名指しして「セックスシーンが繰り返し出てくる。これはふつうの書店で、ビニールでもなく、誰でも買えるふつうの棚に置いている。18歳未満でも買うことができる。現状の自主規制の対象ではない」と批判している[7]。また、3月29日BSフジで放送された「BSフジLIVE プライムニュース」において都条例改正に反対を表明している漫画家里中満智子明治大学准教授藤本由香里と討論した際にも本作のコミックスを繰り返し提示しながら「このような過激な表現物を誰でも入手可能な場所に置くべきではない」と主張した[2]

猪瀬の批判に対する作者と出版社の反論[編集]

上記のような猪瀬の批判に対し、松山は作中に猪瀬が主張するような「セックスシーン」、すなわち直接的な性行為の描写は存在せず、またバナナや練乳を暗喩として用いた性交類似行為を含めて広範に「セックスシーン」と称しているのだとしても、主人公のナオトが幼妻・ハルの心身を気遣って妄想に留めるのが毎回、お決まりのパターンとなっているため「猪瀬さんはきちんと内容を読んでください」と、作品のテーマを正しく理解せず表面的な描写をあげつらって批判されるのは心外であると反論している[2][5]。また、秋田書店は『夕刊フジ』の取材に対して広報を通じ「当社の発行物がたまたまそこにあり、内容を見ずにごく一部をとらえて批判の材料に仕立て上げたのでしょう。特に猪瀬氏は発言の影響力が大きい。当社も作者も非常に困惑しております」とコメントしている[2]

脚注[編集]

  1. ^ 掲載誌は「オール読み切り」を謳っているため、読み切りのシリーズ連載扱い。
  2. ^ a b c d “批判が宣伝に…猪瀬“エロ漫画の見本”作者激怒で思わぬ余波”. 夕刊フジ (産経新聞社). (2010年4月1日). http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20100401/dms1004011155001-n2.htm 2010年4月4日閲覧。 
  3. ^ 』2010年1月号「性表現規制をめぐる動き」。本作以外には青木琴美僕は妹に恋をする」やWest Visionのアダルトゲーム「幼辱 〜天使たちの檻〜」が現行の都条例では不健全図書に指定するのが困難な作品として挙げられている(但し「幼辱」については2005年の発売時にコンピュータソフトウェア倫理機構の審査により18歳未満販売禁止とされている)。
  4. ^ 「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」答申の概要
  5. ^ a b 今回の都の条例は、児童ポルノ規制を隠れ蓑にした、メディアへの政治介入に、検閲に情報統制、治安維持法そのものなのでは??
  6. ^ 今回の件では多くの励ましのメールやレスをありがとうございますm(_ _)m しかしながら、一部には誹謗中傷もあり、赤ちゃんと妻、家族との生活を脅かす事態にもあります。僕はだだ静かに生活がしたいです。
  7. ^ ツイッター始めました。 ここで言う「ビニール」は多くの書店が実施している立ち読み防止用のシュリンク包装ではなく、岩手県青少年保護育成条例などで出版社に義務付けられているビニール製の粘着テープで成人向け雑誌の2箇所を留める措置のことと思われる。

書誌情報[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]