医療詐欺
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医療詐欺(いりょうさぎ、Health care fraud)には、医療保険詐欺、医薬品詐欺、偽医療などが含まれる。多くの場合医療詐欺は、保険者や政府医療プログラム(メディケア等)を相手として行われる。
米国における医療詐欺について、FBIは800億ドルの税金損失と見積もっている[1]。不正請求防止法により、2010年は250億ドルの回収を行う事ができ、多くのケースはキータム訴訟制度(内部告発奨励プログラム)によって回収されている。ホイッスルブローワーに対しては、2010年では総計3億762万ドルの報酬が支払われた[2]。
手口
[編集]日本
[編集]年度 | 医科 | 歯科 | 調剤 |
---|---|---|---|
2014年(平成26年)度[3] | 15件/8人 | 19件/14人 | 7件/8人 |
2015年(平成27年)度[4] | 10件/7人 | 26件/18人 | 1件/1人 |
2016年(平成28年)度[5] | 8件/6人 | 18件/14人 | 1件/1人 |
2017年(平成29年)度[6] | 8件/5人 | 19件/13人 | 1件/0人 |
2018年(平成30年)度[7] | 9件/5人 | 12件/12人 | 3件/2人 |
年表
[編集]- 1997年、大和川病院事件(大阪府、医療法人北錦会)。保険医療機関取消、病院開設許可取消、医療法人認可取消処分[8]。院長は実刑判決。
- 2001年、朝倉病院事件。保険医療機関取消処分。
- 2002年、箕面ヶ丘病院事件。保険医療機関取消処分。
- 2008年、JFE健保組合川鉄千葉病院は、DPC請求をアップコーディングしていたことが発覚[9]。同病院は後に医療法人に事業譲渡された。
- 2009年、山本病院事件。生活保護受給者に対して実際には行っていない医療、不要な医療を行い保険請求していた[10]。医師である院長は詐欺、業務上過失致死にて実刑判決。
- 2010年、熱海温泉病院事件(熱海市、介護療養型医療施設)[11]。不正請求は6千件、20億円の不正請求となり最大級[12]。運営する医療法人は破産申立。
- 2012年、東京医科大学茨城医療センターが2008年4月~2009年5月の間に合計1億円を超える医療費を不正に保険者・被保険者に請求していた。これにより、2012年9月、関東信越厚生局は同センターの保健医療機関取り消し処分を発表(現在は再開)[13]。
- 2014年~2020年 - 三重県立総合医療センターが産婦人科での保険適用外の腹腔鏡手術112件について、開腹手術として診療報酬を不正請求していた。不正請求額は数千万円[14]。
- 2015年、指定暴力団が関与する、複数の医院、歯科医院、接骨院における不正請求事件が発覚。被害額は総額数億円になるとされる[15][16]。
- 2016年、大阪府池田市の男性市議(37歳)が、運営していた整骨院で診療報酬を不正に受給したとして、10月6日、大阪府警に詐欺容疑で逮捕された。男性市議は2015年の市議選で大阪維新の会公認で初当選したが、事件を受け離党。11月、市議会は議員辞職勧告決議を全会一致で可決[17][18]。2018年2月23日、大阪地方裁判所は「開院初期から不正請求を織り込んだ経営を続けていた。悪質で常習的犯行」として男性元市議に懲役2年10月(求刑懲役4年6月)の実刑判決を言い渡した[19]。
- 2017年、福島医療生活協同組合(大阪市福島区)が運営する鍼灸所にて、患者の健康保険を不正利用し鍼灸師が架空の診療をでっち上げ、不正請求していたことが発覚。同組合理事会は鍼灸師を懲戒解雇、鍼灸所は閉鎖[20]。不正請求額等不明。
- 2020年、群馬大学医学部附属病院で2010年4月~15年3月に延べ約74万件の不正請求が発覚し、7月8日までに対象患者約7万人に、余分に受け取っていた医療費計約1億7千万円を返還する方針を明らかにした。患者は県内在住の人がほとんどで、病院は郵送で通知した。麻酔治療の際に実際よりも高い保険点数で請求したり、カルテに記載のない医療行為を請求したりしていた。同院での腹腔鏡などの手術を受けた患者が相次いで死亡した問題(群馬大学病院腹腔鏡手術後8人死亡事故)をきっかけに、厚生労働省が行った監査で判明。不正請求を巡り、病院と医師1人が2017年3月、戒告の行政措置を受けた[21]。
- 2020年、三重大学医学部附属病院の医師らがカルテを改竄し、診療報酬を不正請求した疑いがあると9月に病院が発表した。カルテの改竄は約2200症例、不正請求額は2800万円以上。医師らの不正の疑いは3月末に発覚し、大学が院内調査委員会と第三者委員会を立ち上げた。[22][23]。12月、当該元医師(元准教授、懲戒解雇)が公電磁的記録不正作出・同供用罪で逮捕・起訴され、2021年1月にも同容疑で再逮捕された[24][25]。厚生労働省東海北陸厚生局が健康保険法に基づく「要監査」を通知(厚生労働省が医療機関に行う個別指導のうち最も重い措置)した(2021年5月報道)。不正が確認された臨床麻酔部だけでなく全診療科の診療報酬を約2年間かけて監査し、不正請求総額を特定する見通し[26]。
- 2021年2月(発表)、石川県金沢市の医療法人社団博洋会藤井病院(105床)が2016年7月分~18年8月分に渡って約1億6千万円(950件)の不正請求をしていた。これにより東海北陸厚生局は、藤井病院を保険医療機関指定取り消し処分とした[27][28]。
- 2021年9月(報道) - 松本病院(大阪市福島区)が2017年までの3年間、診療報酬の不正請求をしていたことが債権者への説明資料で判明したと毎日新聞が報道。同院を運営する医療法人友愛会が不正請求の返還をすれば事業継続が困難として倒産した[29]。
医療扶助の不適切受給
[編集]→詳細は「生活保護問題 § 医療扶助の不適切受給問題」を参照
日本においては生活保護者の公費負担医療は自己負担ゼロとなるため、過剰医療が指摘されている[30]。向精神薬の不正入手も会計検査院に指摘されている[31]。
療養費の不正請求
[編集]→詳細は「柔道整復療養費の不正請求」を参照
会計検査院の是正勧告によれば、接骨院・整骨院によるレセプト請求の過半数(66.0%)において、接骨院・整骨院では保険適用できない慢性的な肩こり・腰痛・関節痛・リウマチ等に対してマッサージ等の施術を行い、傷病名を急性の「捻挫」「打撲」と偽り保険療養費請求する行為が行われている[32]。
介護保険の不正請求
[編集]→「介護保険 § 不正請求」も参照
介護保険においても不正請求が度々指摘されている。
2007年、東京都において介護報酬不正請求が発覚し、コムスンが4300万円、ニチイ学館が4100万円であった[33]。同年6月、厚生労働省はコムスンの介護保険指定事業所指定を打ち切り[34]、コムスンは事業撤退、各県の1600事業所は事業譲渡され会社は清算されている(コムスン#介護報酬不正請求事件)。
脚注
[編集]- ^ “FBI-Health Care Fraud”. FBI. 2014年4月1日閲覧。
- ^ “The Department of Health and Human Services and The Department of Justice; Health Care Fraud and Abuse Control Program Annual Report for Fiscal Year 2010” (January 2011). 2014年4月1日閲覧。
- ^ “平成 26 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況”. 長野県保険医協会. 2021年1月10日閲覧。
- ^ “平成 27 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況”. 電子書籍 デンタルブック. 2021年1月10日閲覧。
- ^ “平成 28 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況”. 電子書籍 デンタルブック. 2021年1月10日閲覧。
- ^ “平成 29年度における保険医療機関等の指導 ・監査等の実施状況”. 日刊薬業. 2021年1月10日閲覧。
- ^ “平成 30 年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況”. 厚生労働省 保険局 医療課 医療指導監査室. 2020年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月10日閲覧。
- ^ “貧困と生活保護(32)患者が食い物にされていた安田系3病院事件”. yomidr. (2016年5月27日)
- ^ 読売. (2008年1月19日). オリジナルの2008年1月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080120132632/http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080119-OYT8T00345.htm
- ^ “奈良、山本病院理事長ら2人逮捕 診療報酬を詐取の疑い”. 共同. (2009年7月10日)
- ^ “最大規模!病院が介護報酬4億円不正受給 勤務表偽装など”. 静岡新聞. (2010年11月10日)
- ^ “熱海温泉病院が不正受給か 診療報酬、破産申し立て”. 共同. (2012年2月10日)
- ^ “東京医大茨城医療センターが行政処分 保険指定取り消しで地域医療はどうなる?”. DIAMOND online 2012.10.4 0:14. 2021年6月9日閲覧。
- ^ “三重県立総合医療センターで不正請求112件 診療報酬巡り数千万円か”. 毎日新聞 2021年1月15日 17時25分. 2021年1月28日閲覧。
- ^ “療養費不正請求、組長と柔道整復師らに逮捕状”. 読売. (2015年11月6日)
- ^ “療養費だまし取った容疑で暴力団組長ら14人逮捕、警視庁”. 産経. (2015年11月6日)
- ^ “整骨院で70万円詐取容疑、大阪・池田市議を逮捕”. 朝日新聞 2016年10月6日 13時48分. 2016年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月26日閲覧。
- ^ “「身を切る改革」が聞いてあきれる元維新市議の末路 整骨院で施術でっち上げ、地元に残る〝ほぐせぬシコリ〟”. 産経新聞 2016/11/17 12:00. 2021年6月26日閲覧。
- ^ “元大阪府池田市議に実刑判決 整骨院療養費詐欺事件「不正請求を織り込んで経営」 大阪地裁”. 産経新聞 2018.2.24 08:33. 2020年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月26日閲覧。
- ^ “福島医療生活協同組合機関紙『ほのぼの』2017年11月号”. 福島医療生活協同組合. 2021年1月2日閲覧。
- ^ “患者7万人に医療費返還へ 診療報酬不正で群馬大病院”. 日本経済新聞 2020年7月8日 17:16. 2021年1月11日閲覧。
- ^ “三重大病院医師、2千万円超を不正請求か 薬投与の虚偽”. 朝日新聞 2020年9月8日 19時40分. 2021年1月7日閲覧。
- ^ “三重大病院、不正請求2200件 カルテ改ざん、計2800万円超”. 共同通信 2020/9/11 17:06. 2021年1月7日閲覧。
- ^ “カルテ改ざんで起訴 津地検、三重大元准教授”. 伊勢新聞 2020/12/24. 2021年1月10日閲覧。
- ^ “診療報酬詐取容疑で再逮捕 三重大元准教授、津地検”. 日本経済新聞 2021年1月6日 18:21. 2021年1月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年1月10日閲覧。
- ^ “三重大病院を「要監査」 全科の診療報酬審査へ 厚労省 /三重”. 毎日新聞 2021/5/27. 2021年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月9日閲覧。
- ^ “診療報酬の不正請求で保険指定取り消し 金沢の藤井病院”. 朝日新聞 2021年2月18日 14時00分. 2021年4月5日閲覧。
- ^ “【お詫び】外来/入院患者様・ご家族の皆様”. 医療法人社団博洋会藤井病院. 2021年4月5日閲覧。
- ^ “倒産の医療法人、診療報酬を不正請求疑い「多額返還なら事業困難に」”. 毎日新聞 2021/9/9 19:30. 2021年10月15日閲覧。
- ^ “生活保護の病巣 利権・練金道具と化す「医療扶助」の闇”. 産経. (2012年11月25日)
- ^ 『生活保護の実施状況について』(プレスリリース)会計検査院、2014年3月、24-28,60頁 。
- ^ 『柔道整復師の施術に係る療養費の支給について(厚生労働大臣あて)』(レポート)会計検査院 。
- ^ “コムスンに4300万返還要求 介護報酬を不正請求”. 共同. (2007年4月10日)
- ^ “コムスンの指定打ち切りへ 厚労省、1600事業所に”. 共同. (2007年6月6日)
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 地方厚生局
- 保険医療機関等及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて - 北海道
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