スミロドン
スミロドン | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
新生代第四紀更新世 (約250万 ~ 1万年前) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Smilodon Lund, 1842 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
スミロドン(Smilodon, 'ナイフの歯'の意)は、新生代第四紀更新世(約250万 - 1万年前)の南北アメリカ大陸に生息していた剣歯虎の属[1]。サーベルタイガーの中でも最後期に現れており、アメリカ大陸間大交差によって北アメリカから南アメリカに渡った。
形態・生態
[編集]体長1.9 - 2.1メートル、体高1 - 1.2メートル[2]。南アメリカに進出したグループの方がより大型であった[3]。「サーベルタイガー」の名の元となる、24センチメートルに及ぶ牙状の長大な上顎犬歯を持つ[2]。この犬歯の断面形状は楕円であり、後縁は薄く鋸歯状になっていた[1]。これは強度と鋭利さを兼ね備えた構造であり、獲物にこれを食い込ませる際の抵抗は小さくなっている。また下顎は120度まで開き、犬歯を効率よく獲物に打ち込むことができた[3]。しかし、この犬歯は現生のネコ科のように骨を噛み砕ける強度は持っておらず、硬い骨にぶつかるなどして折損する危険を回避するため、喉元の気管など柔らかい部位を狙ったと推定される[4]。前肢と肩は非常に発達しており、獲物を押さえ込んだ上で牙を打ち込むのに適した形態であった。また発達した肩は、牙を打ち込む際の下向きの強い力を生み出すことができたとされる[1]。
しかし一方、発達した前肢に比べて後肢が短く、ヒョウ属の様な現代のネコ科の大型捕食者ほど素早く走ることはできなかったとされる。そのためマンモスのような動きの遅い大型動物やマクラウケニアなどの弱った個体や幼体を群れで襲い、捕食していたと考えられている。群れを形成していたことの傍証としては、怪我をして動けない個体がしばらく生きながらえていたことを示す化石が見付かっている例が挙げられる。これは、他の個体から餌を分け与えられていたものと推測されている[4]。
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Smilodon populator 骨格側面。
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S. fatalis 頭骨。顎を大きく開くことが出来た。
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S. fatalis の想像図。
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S. populator 想像図。
スミロドンの食性については、大きく発達した犬歯をもつため柔らかい肉や内臓のみを食べたとする説のほか、上下の顎を噛み合わせることが困難であるから獲物の血を啜ったとする説[5]、スカベンジャー(腐肉食者)とする説もある[6]。しかし、スミロドンの骨格には獲物と戦った際についたとおぼしき損傷の跡が見られるものも多いことから、プレデター(捕食者)であったとする説が主流である[注釈 1][2]。
絶滅
[編集]大型の犬歯と発達した前肢は、大型獣の捕殺に高度に適応した完成形態であった。しかしこれはまた、走行という面において、走行と捕殺の機能を高次に兼ね備えた新しいタイプの捕食者に大きく水をあけられてしまうことを意味した。地球が寒冷化し、大型草食獣が減少しつつある時代においては、かれらは時代遅れの存在となっていた[8]。タールピットに嵌まった獲物を狙い、自らも沼に脚を取られて死んだとおぼしき化石も発見されている[2]。
分布
[編集]南北アメリカ大陸に生息。カリフォルニア州ラ・ブレア・タールピット(La Brea Tar Pits)においてダイアウルフ、テラトルニスなどとともに多数の化石が発見されている[3][2]。数は2,000体以上[1]で、これはダイアウルフに次いで多い[3]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 富田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年、92,94頁。ISBN 4-621-04943-7。
- エドウィン・ハリス・コルバート、マイケル・モラレス『脊椎動物の進化(原著第5版)』田隅本生、築地書房、2004年、386-387頁。ISBN 4-8067-1295-7。
- ヘーゼル・リチャードソン 著、ディビット・ノーマン 編『恐竜博物図鑑』新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、192-193頁。ISBN 4-7875-8534-7。
- ティム・ヘインズ、ポール・チェンバーズ 著、椿正晴 訳、群馬県立自然史博物館 監修 『よみがえる恐竜・古生物』 ソフトバンククリエイティブ、2006年。
- 今泉忠明 著、日本ネコ科動物研究所 編『絶滅巨大獣の百科』データハウス〈動物百科〉、1995年、128-129頁。ISBN 4-88718-315-1。
- 実吉達郎『サーベルタイガーとマンモスはどちらが強かったか : 古代猛獣たちのサイエンス』PHP研究所、1990年、106-110頁。ISBN 4-569-52738-8。
関連項目
[編集]- 同時代の生物
- マンモス - スミロドンの獲物の一つ。弱った個体などを捕らえていたと思われる。
- マクラウケニア - 滑距目の草食動物。南アメリカ特有の有蹄類で、スミロドンの獲物の一つ。
- ダイアウルフ - 同時期の北アメリカに生息した大型のオオカミ。
- フォルスラコス - 恐鳥の一種。スミロドンと同時期の南アメリカに生息した肉食の鳥類。ともに当時の食物連鎖の頂点に立っていた。
- ジャガー - 同時代及び現生の捕食者。南北アメリカ大陸に生息。
- 巨大な犬歯をもつ他の化石生物
- マカイロドゥス - 前時代の剣歯虎。
- ニムラブス - ニムラブス科。薄く鋭いサーベル状犬歯を持つ。ネコ亜目ではあるがネコ科のスミロドンとは別系統。「にせ剣歯虎」とも呼ばれる。
- ティラコスミルス - スミロドンより前の時代に生息した南アメリカの肉食有袋類。スミロドンなどに似たサーベル状の犬歯を持つ。収斂進化の好例。
- ゴルゴノプス - 古生代ペルム紀に生きた単弓類。サーベル状の犬歯を持つ大型の捕食者。
- オンコリンクス・ラストロスス - 正確には犬歯ではないが、発達した牙を持ったサケ。記載当時はスミロドンに基づいてSmilodonichthysという学名が付けられていた。