ダイアウルフ

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ダイアウルフ
生息年代: 新生代第四紀更新世中期 - 完新世初期、0.30–0.010 Ma
ダイアウルフ
ダイアウルフの化石標本
米国カリフォルニア州のジョージ・C・ペイジ博物館所蔵
地質時代
約30万 - 約1万年前
新生代第四紀更新世中期 - 完新世初期)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Caniformia
下目 : イヌ下目 Cynoidea
: イヌ科 Canidae
亜科 : イヌ亜科 Caninae
: イヌ族 Canini
: Aenocyon属 Aenocyon
: ダイアウルフ A. dirus
学名
Aenocyon dirus (Leidy1858)
シノニム

Canis dirus
Canis ayersi
Canis indianensis
Canis mississippiensis

和名
ダイアウルフ
ダイアオオカミ
英名
Dire wolf

ダイアウルフ(異称:ダイアオオカミ学名Aenocyon dirus英語名:Dire wolf)は、約30万- 約1万年前(新生代第四紀更新世中期- 完新世初期)のアメリカ大陸ユーラシア大陸に棲息していた、ネコ目(食肉目)イヌ科に分類される絶滅種であり、既知のイヌ亜科では最大の種である。種小名の dirus はラテン語で「恐ろしい」の意。Aenocyon dirus dirusAenocyon dirus guildayiの2亜種が知られている。

分類[編集]

従来、ダイアウルフは骨の形態の似たタイリクオオカミと近縁と思われていて、イヌ属に分類されCanis dirusカニス・ディルス)とされていた。しかし、2021年1月に発表されたダイアウルフのゲノムを解析した論文では、ダイアウルフはタイリクオオカミとはそれほど近くなく、むしろセグロジャッカルヨコスジジャッカルに近いとされる。オオカミとは、約570万年前にタイリクオオカミの祖先から枝分かれした「新世界」の系統であるという[1][2][3]。この論文では、ダイアウルフをイヌ属(Canis)でなく1918年に提案されたAenocyon属に分類することが提案された。 

特徴[編集]

分布[編集]

北アメリカ大陸南部と南アメリカ大陸北部の、草原から山林に渡る広範囲に棲息していた。近年では中国北東部のハルビン市付近からも産出例が報告されており、これは(北緯42度線以北での化石の発見が存在しなかったため)従来の仮説であった寒冷気候と北米大陸の氷床がダイアウルフの移動を制限していたという説を覆す発見となった[4]。日本列島では、青森県静岡県からダイアウルフに匹敵する大きさのイヌ科動物の化石が出土しているが、ダイアウルフとの関連性は不明である[5]

ダイアウルフは、マンモスステップの主要な捕食者でもあった。

形態[編集]

頭胴長約125cm、尾長約60cm、体高約80cm。現生のタイリクオオカミの大型の亜種に近いサイズだが、よりどっしりとした体つきで、平均体重は現生の北米のタイリクオオカミの平均より重かったと推定されている。A. d. dirusA. d. guildayiより四肢が長い。雄は現生のイヌ科の種に比べて際立って大きな陰茎骨を持っていた。頭部は幅広く、側頭窓頬骨弓の拡大によって咬筋に大きな付着部を与えていた。また、は頑丈であり、タイリクオオカミより大きなを持っていた。

生態[編集]

本種は群れを形成する捕食者であったと推測されている。また、スミロドンの食べ残しも利用していたであろう事も考えられている。しかし、頭蓋骨や歯の形態から、骨を噛み砕くことはあまりなかったと考えられる[6]。歯や骨格に性的二形があまりないため、タイリクオオカミのように一夫一妻であったと考えられる[7]

カリフォルニア州ロサンゼルスにあるラ・ブレア・タールピットにおいてスミロドンなどの他の動物とともに多数の化石が発見されている。タールに足をとられた草食動物を集団で襲い、同様に足をとられたものと思われる。

絶滅[編集]

ダイアウルフは最終氷期後に絶滅したとされる。ダイアウルフの最も年代が新しい化石は、ミズーリ州で発見された約9440年前のものである。絶滅の要因として大型草食獣の絶滅、気候変動、ヒトを含む他種との競合などが考えられているが、はっきりしていない。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ANDREA ANDERSON (2021年1月16日). “絶滅オオカミ「ダイアウルフ」、実はオオカミと遠縁だった”. ナショナルジオグラフィック. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/011500021/ 2021年1月16日閲覧。 
  2. ^ GrimmJan. 13, David (2021年1月13日). “The legendary dire wolf may not have been a wolf at all” (英語). Science | AAAS. 2021年1月24日閲覧。
  3. ^ Perri, Angela R.; Mitchell, Kieren J.; Mouton, Alice; Álvarez-Carretero, Sandra; Hulme-Beaman, Ardern; Haile, James; Jamieson, Alexandra; Meachen, Julie et al. (2021-01-13). “Dire wolves were the last of an ancient New World canid lineage” (英語). Nature: 1–5. doi:10.1038/s41586-020-03082-x. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/s41586-020-03082-x. 
  4. ^ A late Pleistocene fossil from Northeastern China is the first record of the dire wolf (Carnivora: Canis dirus) in Eurasia(DanLuab:2020)
  5. ^ 長谷川善和, 木村敏之, 甲能直樹, 2020年, 日本産後期更新世の巨大狼化石 (pdf), 群馬県立自然史博物館研究報告, 24, 1-13項
  6. ^ Anyonge, W.; Baker, A. (2006). "Craniofacial morphology and feeding behavior in Canis dirus, the extinct Pleistocene dire wolf". Journal of Zoology269 (3): 309–316.
  7. ^ Van Valkenburgh, Blaire; Sacco, Tyson (2002). "Sexual dimorphism, social behavior, and intrasexual competition in large Pleistocene carnivorans". Journal of Vertebrate Paleontology22: 164–169. 

関連項目[編集]