SAPIX小学部

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SAPIX小学部(サピックスしょうがくぶ)は、難関中学受験を対象とした学習塾。2012年からは代々木ゼミナールの関連会社である株式会社日本入試センターが経営している。

1990年代以降、首都圏の学習塾の中では上位の合格実績を保っている。「超難関校への登竜門」という明確なカラーを打ち出し、超難関校受験において押しも押されもせぬシェアと実績を収めている。サピックス小学部のWebサイトなど広報によると、思考力と記述力の養成、個性の強い熱烈な講師陣、クラス内外での競争の奨励などによって生徒を鍛え上げるメソッドが奏効したという。

歴史[編集]

株式会社ジーニアスエデュケーション
Genius Education
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 151-0053
東京都渋谷区代々木1-28-11 代々木プラザ3F
設立 1989年6月
業種 サービス業
事業内容 進学教室サピックス小学部の運営
代表者 代表取締役 髙宮 敏郎
資本金 5,000万円
営業利益 15000万円
従業員数 非常勤を含み約600人
主要株主 代々木ゼミナール 100%
外部リンク https://www.sapientica.com/
特記事項:2010年5月に株式会社日本入試センターに合併
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1989年6月に設立、東京校と杉並校[1]の2校を開校。当初は「株式会社ジーニアス研究所」、附帯事業の分社にかかわる新設を経て「株式会社ジーニアスエデュケーション」が経営。

複数の講師が所属の塾(主にTAP進学教室)を不服として独立集合して成立した塾であり、その発足は決して華々しくはなかった。しかし、TAPにおいて上位クラスを受け持ち、業界でも名前が挙げられる存在であった算数、国語、理科、社会の科目を担当する主要講師が全てSAPIXへ移籍、それに伴った生徒の移動が多数発生したこともあり、設立当初から難関校受験における高い合格率を出していた。前述にある当時の理科担当のトップにあったのが、後述の奥田前社長であり、SAPIX設立に深く関わった一人であった。

創業者で経営陣を固めたベンチャー企業の体を長らく続けたが、2010年5月には全株式が代々木ゼミナールの関連会社である株式会社日本入試センターに譲渡され、代々木ゼミナール関係者が経営を引き継いだ。経営交代は創立者の一人である奥田前社長の「定年退職」と重なり合う時期に実施され、2011年2月までに、創立にかかわった関係者および『生え抜き』の取締役は経営から退き、従業員に移行した。

経営交代後も激しい軌道修正はみられず、2013年現在、京阪神地区に3校舎を展開したことが目を引く以外は、日本橋地区から代々木地区への本社機能移転や、不動産物件のグループ内融通など地味な変化にとどまる。SAPIXブランド各事業の再編経緯はSAPIXの項目も参照。

代ゼミグループ入り後は、他社との提携が活発化している。2011年12月には小田急電鉄と提携し、同社の「小田急こどもみらいクラブ」にSAPIXの学童保育部門「ピグマキッズ」の教材・スタッフを提供しているほか[2]、2012年3月には進学会と提携し、進学会の札幌市内の教室で「SAPIXメソッドコアマスターコース」を開設した。

校舎[編集]

大規模かつ少数の校舎
首都圏の他の塾の多くがきめ細かく多くの校舎を展開する一方で、SAPIXはターミナル駅近辺に校舎を構えるのみである。ただし、近年は明確に拡大路線を採っており、毎年3校程度のペースで校舎を新設している。それでもなお1つの校舎の規模は競合他社に比べて非常に大きく、1つの校舎で1学年につき10コース(クラス)以上を設置する校舎も珍しくない。大規模校舎では1学年あたり15~20コース設置されることもある。新設校舎でも2~3コースを設置するのが通例である。
コース(クラス)
コースは「マンスリーテスト」や「組分けテスト」の成績をもとに決定され、これらのテストによりコースが頻繁に入れ替わる。マンスリーテストは「マンスリー確認テスト」と「マンスリー組分けテスト」に別れ、前者は今いるクラスから校舎によって異なる範囲までしか移動できないのに対し、後者と組分けテストは今いるクラスに関係なくどのクラスにも移動できる。
コース名は下位コースから順に「A・B・C…」とアルファベット順になっている一方、上位コースは最上位コースから順に「α1・α2…」と続く。創業直後は上位半分を「αに添え字」、残りを「βに添え字」としてコースを区別していた。
2018年現在、αコースとなるのは概ね上位10~15%のコースである。この基準は校舎内での順位で決まる。統一された「在籍資格」などはなく、あくまで目安である。たとえば「A~K・α4~α1」の15コース設置の場合、α4コースとKコースで指導内容や担当講師が劇的に異なるものではない。

授業・教材[編集]

復習主義[編集]

SAPIXでは復習を特に重視する。一部の知識学習を除いて、予習は非推奨とされる(教材は原則として当日配布する)。

  • 教材を分冊形式にし、予習をできなくすることで、かえって毎回の授業に新鮮な気持ちで集中して臨むことができる。
  • 小学生が予習を行うのは非効率であり、予習をするならばその分を復習に充てた方がよい。
  • 予習で間違った知識を覚えてしまうとその訂正に莫大な手間がかかる。

授業スタイル[編集]

  • スピードが極めて速いとされている。また、休憩時間は、昼食を除き原則ない。テキストは多くの演習問題で構成される。創業初期から長らく、テキストは問題を羅列しただけに近いものであり、たとえ第三者(プロ家庭教師など)がテキストだけを入手しても使いこなしようがない代物だったが、2000年頃から徐々に家庭での自習を意識した構成が取り入れられた。
  • 学力別コースによる授業内容の差については、広報や説明会、保護者会などでは「掘り下げの深さが異なる」という説明をする。実際のところ、扱う内容はテキストを踏まえて講師または校舎の裁量で決められており、たとえば受験学年である6年生の場合、上位コースは基礎的な知識の説明は省略して応用問題の演習や類題の考察などに時間が割かれるが、下位コースでは基礎の再確認を重視して行われる。これは受験指導として自然な構成であり、SAPIX特有のスタイルであるとまではいえない。
  • 授業後、次回までに多くの復習(家庭学習)が要求される。 復習の指示はさまざまで、担当講師が特に必要と考える場合はこれを提出するよう求めることもあるが、基本は宿題ではなく家庭学習なので、家庭学習をしていなくても怒られることはない。一方、「何も書いていないノートを形式的に提出する」「(失礼に当たらないようにと保護者が気を遣った結果の)まるうつしの宿題を出す」などは、本末転倒として嫌う風土がある。 知識や技術の獲得を重視する局面では「演習の間違い直し」を徹底的に行わせるが、最上位コースの授業ではその限りでない。6年生になると、家庭学習は、テキストの中で自分で必要だと思う問題を解くこともある。
  • かつては授業の延長が日常茶飯事であり、創業以来の講師を中心に、定刻を数十分過ぎても授業を継続するものが多かった。2005年頃からは、保護者の送迎にかかわる地域とのトラブルなどが深刻化したこともあり、定刻を守るよう部内で統制されているという。また、五年生から国語の授業後に前回のまとめテスト(デイリーチェック)が悪かった生徒だけ居残りをする可能性がある。
  • なお、授業後には質問教室が用意されており、生徒からの質問に答えるように講師が配置されている。荒天時や防災訓練実施時などは開催されない場合もある。

小テスト[編集]

  • 毎週、デイリーチェックという前回の内容の確認用のテストがある。
  • 五年生10番テキストからは理科と社会共に毎週コアプラス確認テストという小テストがある。

出版物[編集]

算数の分野別問題集、社会の地理、歴史カード、重大ニュース、理社コアプラス、言葉ナビ、漢字の要、国語の要などさまざまである。

校舎一覧[編集]

原則として、最寄駅名をそのまま校舎名とする。例外は実質的には東京校(人形町駅、馬喰横山駅、東日本橋駅)、晴海校(勝どき駅、月島駅)のみである[3]。かつては西東京校(荻窪駅)、浦和校(南浦和駅)というケースもあった。

閉校した校舎[編集]

著作権侵害問題[編集]

松谷みよ子谷川俊太郎五味太郎をはじめとする作家詩人が、同社と希学園がそれぞれ発行している問題集に、勝手に作品を掲載され、著作権を侵害されたとして、2007年6月21日に、両社に対して、東京地裁に出版差し止めの仮処分を申請した。また、希学園に対しては、約2,400万円の損害賠償請求訴訟も起こしている[4]

脚注[編集]

  1. ^ のち西東京校と改称、さらに吉祥寺校へ移転する形で閉校。
  2. ^ SAPIXメソッドを駅近の学童で 小田急こどもみらいクラブ - 日経DUAL・2014年4月22日
  3. ^ 厳密には、お茶の水校(御茶ノ水駅)、成城校(成城学園前駅、世田谷区成城に所在)、西船校(西船橋駅・京成西船駅、船橋市西船に所在)も異なる。
  4. ^ 作品、勝手に受験問題集に 谷川俊太郎さんら提訴 朝日新聞

関連項目[編集]

外部リンク[編集]