R.U.R.

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同名の劇のポスター。
『R.U.R.』の一場面。右から2番目と3番目がロボット。

R.U.R.(原題: チェコ語: Rossumovi univerzální roboti[1]、ロッサム万能ロボット会社)は、チェコの作家カレル・チャペックによる戯曲。1920年に発表された。この劇の発表によって「ロボット」という言葉を創り出した、歴史的作品である。

しかし、劇の内容からアイザック・アシモフロボット工学三原則を使った作品を発表するまでの間、ロボット=反乱というイメージが付きまとうことになる。

当時のチェコはオーストリア・ハンガリー帝国ボヘミア貴族の支配から独立した直後の新興国だったが、国内はロシア革命の影響を受けた労働者富裕層との階級対立が深刻化していた。貴族階級の没落や社会主義革命の脅威といった世相が反映された作品でもある。また、チャペック自身によればゴーレムの伝承も影響しているという[2][3]

演劇としては、工場内の一室のみで全編が進行する室内劇である。

本作におけるロボットの設定[編集]

「ロッサム万能ロボット会社が開発・販売している人造人間(後世のSF概念でのバイオノイドに相当)。人間より安価かつ効率的にあらゆる労働が行える画期的な商品。その他は下記の通り。

  • 脳・内臓・骨といった各器官は攪拌槽で原料を混合して造られる人工の原形質の培養で、神経や血管は紡績機で作られ、それらを部品として組み上げる事でロボットが造られる。製造工程の一部は企業秘密。
  • 完成すると機能チェックと目的の労働を行う上で必要最低限なプログラムが入力される。知力は高いがプログラム以外の事は考えない。感情・味覚・痛覚はなく、に対する恐怖もない。人間の命令には絶対服従。
  • 調理は可能だが味覚が無いため味は今ひとつとされる。
  • 人と比較したコストパフォーマンスは2.5倍。
  • 小型トラクター並みの力を持った肉体労働用や、知力の高い頭脳労働用など目的に特化したタイプも製作され、品質等級もある。かつては身長3m台の大型も試作された。
  • 外見上男性型・女性型なども作られるが本質は無性で、生殖能力はない。
  • 寿命は最高のグレードで約20年。不良品や寿命を迎えた物は粉砕装置で処分される。

物語[編集]

アメリカ合衆国で、1930年代末に連邦劇場計画の手で『R.U.R.』が上演された際のポスター

舞台は未来のとある孤島。そこにはR.U.R社のロボット工場がある。ここで製造されたロボットたちは世界中に送られ、さまざまな労働に使われていた。人々はロボットによって便利な生活をしはじめていた。ある日、社長のハリー・ドミンの元に会長の娘であるヘレナ・グローリーが訪れる。ロボットにも心があると考えているヘレナは人権団体の代表となり、地位向上や権利保護を訴えるために来たと話す。

登場人物[編集]

  • ハリー・ドミン - R.U.R社長
  • ファブリ技師 - R.U.R社技術担当重役
  • ガル博士 - R.U.R社生理研究部部長
  • ハレマイア博士 - ロボット心理教育研究所所長
  • ブスマン領事 - R.U.R社営業担当重役
  • アルクイスト建築士 - R.U.R社建築主任
  • ヘレナ・グローリー - R.U.R社会長の娘
  • ナーナ - ヘレナの乳母
  • マリウス - ロボット
  • スラ - 女ロボット
  • ラディウス、プリムス、ダモン、ヘレナ - ロボット
  • ロボットの召使いとその他大勢のロボット

序幕[編集]

ロッサム万能ロボット製作所のロボットの宣伝から始まる。

第1幕[編集]

ロッサム社のロボット工場がある孤島に同社会長の娘ヘレナがやってくる。社長のドミンはヘレナを一目見るなり心を奪われる。ドミンは自社ロボットの成り立ちを解説し、新人タイピストのスラに会わせる。きわめて知的な会話をするスラをヘレナは人間の女性だと思うが、ドミンはロボットだと言う。信じられないヘレナにドミンは解剖して証拠を見せると言い、スラも抵抗せずドミンについていこうとする。ヘレナは固辞する。その後工場を見学し、ガル博士、ファブリ技師、ハレマイア博士、アルクイスト建築士、ブスマン部長等を紹介される。ヘレナは来訪目的を話す。人権同盟の代表としてロボットの保護と社会地位向上を図りたい。ロボットにも心があるはずだと訴える。だがドミン等はロボットには心は無く、ロボットによって人間は労働から解放され、物価は安くなり、世界は良くなっている事を説き、ヘレナは混乱する。ドミンはヘレナに求婚する。

第2幕[編集]

それから10年後、結婚したドミンとヘレナの間には子供が生まれなかった。いや、全世界で一人も子供が産まれなくなっていた。労働しなくても生活していけるようになった人間たちはすべてをロボットに任せ、文字通り自分では指一本上げないまでに堕落、というより退化してしまっていたのだ。そして島の幹部たちも、手を動かすのが好きなアルクイスト以外は何もしなくなっていた。そこへロボット反乱の報が入り、世界は、そして島もロボットの手に落ちてしまう。ありえないはずの事が起こったのは、ヘレナが「ロボットを人間に近づけて」とガルに頼んで魂を授けさせたせいだった。怒り狂うドミンに、営業担当のブスマンは「世界を動かすのは利潤、あなたの理想もガルの反逆も無力」と言い放つ。そしてブスマンはロボットに不可欠な人工生命製造の秘伝書を盾にロボットたちと取引しようとする。が、秘伝書は「子供が産まれなくなったのは、ロボットなんかに頼るようになったからだ」と思いつめたヘレナの手によってすでに燃やされていた。錯乱したブスマンは金でわが身の安泰を買おうとするが、最初の犠牲者になってしまう。打つ手がなくなったドミンたちは雄々しくも虚しく銃を取るが、「手を動かして働く以上、我々の『同志』だ」とみなされたアルクイスト以外皆殺しにされる。そして、ロボットたちは、ロボットの世が来たことを高らかに宣言する。

  • 本作は当初はここで終わりであり、以後書き足された第3幕は米英圏ではほとんど知られていない。そのため、米英圏での本作は「ロボットが人間を滅ぼして終わりの恐ろしい作品」と誤解される傾向がある。

第3幕[編集]

それからさらに歳月は流れ、秘伝書が失われたことでロボットたちは絶滅の危機に瀕していた。世界で唯一生き延びた人間であるアルクイストは、滅亡の恐怖におびえるロボットたちから同志どころか生き神様として崇拝され、「人工生命の秘伝を解明して我々を絶滅の危機から救ってくれ」と哀願されるまでになっていた。が、所詮は元建築労働者、老いと孤独に苛まれる老人でしかない彼には何もできなかった。そんなある日、彼の元に、ロボット委員会からヘレナそっくりの女ロボット(二役)と若き男ロボットプリムスが派遣されてくる。彼らは反乱の直前にガルの手で最後に造られたロボットだった。「ヘレナを解剖(というより分解)すれば、人工生命の秘伝を解明できるかも」と言ったアルクイストに対し、プリムスは「そんなことをしたら殺してやる」と脅し、ついで「なら私を代わりに解剖してくれ」と哀願する。互いにかばいあう「二人」の間に愛と魂を見出した「老いたる神」アルクイストは、二人を祝福し、新たなアダムとイブとして送り出す。

エピローグ[編集]

物語は、アルクイストの独白で終わる。

「神よ、人間の作り出したくだらぬものはすべて時と共に消え失せました。ただ生命が、生命だけが、不滅です!」

映画化[編集]

1935年ソビエト連邦で映画「Гибель сенсацииロシア語版」(邦題『機械人間 感覚の喪失』)として映像化されたものの、これはソ連のヴラジーミル・ヴラトコの小説「鉄の暴動」に基づいており、ロボットはR.U.R.と銘打ってるものの現在のロボットのイメージに近い完全な工学的機械でストーリーも社会主義的で別物である[4]

日本語訳[編集]

1923年の最初の訳では「人造人間」の題であった。

脚注[編集]

  1. ^ : Rossum's Universal Robots
  2. ^ 井上晴樹『日本ロボット戦争記 : 1939~1945』124頁(NTT出版,2007) ISBN 978-4757160149
  3. ^ Morris, Nicola"The Golem in Jewish American Literature: Risks and Responsibilities in the Fiction of Thane Rosenbaum" p.119
  4. ^ Christopher, David (31 May 2016). “Stalin’s “Loss of Sensation”: Subversive Impulses in Soviet Science-Fiction of the Great Terror” (英語). MOSF Journal of Science Fiction 1 (2). ISSN 2474-0837. オリジナルの26 December 2016時点におけるアーカイブ。. http://publish.lib.umd.edu/scifi/article/view/272. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]