回転式拳銃

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コルト・シングル・アクション・アーミー
コルト・パイソン。「シリンダー」と呼ばれる部品を左に振り出したところ。

回転式拳銃(かいてんしきけんじゅう)またはリボルバー(revolver)とは、回転するチャンバー[注 1]によって、を再装填しなくても数発撃てるピストルのこと[1]拳銃ではなく小銃の場合は回転式小銃(かいてんしきしょうじゅう)またはリボルビングライフル(revolving rifle)とも言う。

概説

チャンバー(薬室)が複数、つまり弾を入れる穴が複数あけられた回転式シリンダー(回転式弾倉)を備え、あらかじめまとめて数発分の弾を装填しておくことができ、弾をいちいち再装填せずとも、つづけざまに撃つことができるである。連発式の銃としては比較的初期の方式にあたる。

リボルバーはシリンダーを開放させる方式で、振出式(スイングアウト) / 中折れ式(トップブレイク) / 固定式(ソリッドフレーム)に大別できる。→#分類

リボルバーの作動方式は数種類ある。撃鉄(ハンマー)を引き起こして引き金(トリガー)を引く方式(シングルアクション)か、引き金だけを引き絞って発砲する方式(ダブルアクション)のいずれかがほとんどだが、これらは全て手動で行う。また、少数ながら、発砲の反動などを利用して弾倉を回転させハンマーを自動でコックする「オートマチック・リボルバー」と呼ばれる機種も存在する。

装弾数については大抵のモデルで5-6発だが、80年代からは装弾数が7発や8発の製品も増えている。.22LRなど小口径弾を使用するモデルの一部には装弾数が10発以上のものもある。

なお、弾倉だけで銃身が存在しないリボルバー(「弾倉兼銃身」型リボルバー)は、ペッパーボックスピストルと呼ばれる。

各国の当局での利用状況

欧米、特にアメリカ合衆国中南米では犯罪者が自動小銃機関銃などで重武装化する傾向にあり[注 2]、日常でも銃撃戦に発展することがありがちで、米国の軍隊警察では当局側も対抗上、リボルバーよりも多弾数であり、給弾も素早い自動式拳銃オートマチック)に取って代わられた。だが、米国でも護身用としての需要は今も高い。

欧米とは異なり、日本の警察では「犯罪者との銃撃戦」で多数の弾が飛び交う、などといった事態はまず起きないと想定されているため銃の必要性は非常に低く、せいぜい犯罪者が刃物などの凶器を持ち出した場合などに、銃を構えることで犯罪者を威嚇して投降させるのが主の用途で、それでも襲われた場合に護身目的の最終手段として発砲するための物である。よって弾数の少なさよりも構造の単純さが高く評価されており、日本警察では現在でもリボルバーが主流の銃であり、1960年代にニューナンブM60が、1990年代にM37エアウェイトが、2006年にはM360 SAKURAが導入され、警察官によって広く用いられている。

分類

スイングアウトの一例、S&W M642。シリンダーラッチレバーが“引いて開ける”コルト式に対して“押して開ける”式になっている
振出式(スイングアウト)
現在の回転式拳銃で最も普及している方式。フレームからシリンダーを横に振り出して(上写真参照)弾を込める。装填の容易さとフレームの堅牢性をある程度は両立している。
シリンダーの振り出し方向は基本的には(重力に逆らわず、かつ右利き射手の身体の正面に来る)左下だが、右下に振り出すモデル 1892 リボルバー英語版 や上に振り出すマテバ 2006Mのような例外もある。
トップブレイクウェブリー・リボルバー 6793
中折れ式(トップブレイク)
銃身と回転輪胴が折り曲がる方式。フレームが分割される構造で、.455ウェブリー弾を使うウェブリー・リボルバーなどを除いて強裝弾を使うとすぐ壊れるが、中折れするとエジェクターが全弾を排夾する再装填が素早い構造でもある。
金属薬莢黎明期から20世紀中頃まで流行した形式だが、現代ではスイングアウト式に取って代わられて採用している銃は少ない。しかし近年、バイカル・モデルMP411 パティナバイカル・モデルMP412がロシアで民間向けに開発された。
ソリッドフレームの一例。パーカッション式
固定式(ソリッドフレーム)
文字通りシリンダーが固定されている方式。西部開拓時代のリボルバー(パーカッション式拳銃やそのコンバージョンガン、コルトSAA)、安物のサタデーナイトスペシャルに多い。
振り出しや中折れができないため、再装填は銃後部のローディングゲートと呼ばれる場所から空薬莢を一発ずつ捨て、それからまた一発ずつ次弾を装填するか、シリンダーその物を取り外して装填する。
このため、再装填に長い時間がかかるが、可動部品が少ない単純な構造のぶん堅牢性は非常に高く、通常より威力の高い弾を使用することができる(マグナムを使用するパイファーツェリスカなど)。

歴史

最初期のリボルバーの一例。8連発 マッチロック式小銃(ドイツ 1580年頃)

連発銃としての起源は古く既に16世紀には存在していた。ノルウェーのマイハウゲン博物館に1597年のドイツ製フリントロック8連発のリボルバーが現存している[2]。しかしこのような極初期のリボルバーは撃鉄(ハンマー)とシリンダーを別々に操作する必要があった。信頼性も低く高価であり、実用品ではなくどちらかといえば貴族のステータスシンボルとして飾られていたという。

上:コルトM1848(通称Dragoon、1847年~)のレプリカ、中段:Colt Single Action Army Model 1873年~、下:Ruger (New Model) Super Blackhawk(20世紀中期~後期)

リボルバーを普及させたのはアメリカで水夫をしていたサミュエル・コルトである。サミュエルはハンマーを起こすと同時にシリンダーが連動して回転する機構(シングルアクション)で1836年特許を取った。初期のリボルバーは、弾丸・火薬・雷管を別々に装填するパーカッションロック式であった。1857年S&W(スミス&ウェッソン)によって金属薬莢を使う実包(メタリックカートリッジ)が開発されるとパーカッション式は駆逐されていった(ただし、特許問題でS&W以外は1869年までメタリックカートリッジを使う回転式拳銃を新規に製造出来なかった。そのための抜け道としてS&Wのパテント失効前には、南北戦争時代の旧式パーカッションリボルバーをメタリックカートリッジ仕様に改造したコンバージョンガンも多く作られた)[注 3]。19世紀中期から後期にはダブルアクション機構を搭載した製品も普及し、リボルバーの基本構造は完成の域に達した。

20世紀初期には欧米では、リボルバーとは異なる方式の連発式銃の自動拳銃(オートマチック)が普及し始めた。軍隊ではリボルバーからオートマチックへの転換が進んだが、構造的信頼性の高いリボルバーは欧米の警察などの法執行機関でも引き続き多く採用された。オートマチックとの差別化を図って大口径カートリッジを使用した製品も多くなっていった。しかし犯罪者の重武装化に伴い、90年代を境に多弾数のオートマチックを採用する警察が各国でも増え、欧米の警察ではリボルバーは姿を消していった。

欧米の警察・軍隊ではほぼ使われなくなったリボルバーだが、民間の護身用拳銃としては今も現役である。オートマチックより優れた利点や構造を生かし、2018年現在でもユニークなコンセプトの新製品が各社から発売されている。

20世紀中盤以降のリボルバーは、ほぼアメリカのメーカーにより開発、改良がされている。特に、コルトとスミス&ウェッソン(S&W)の2大メーカーはライバル関係として知られている。片方がある銃を開発すればそれを意識した銃を開発し、銃の部品名がことごとく違ったり、構造も正反対であったりする。スターム・ルガーは、後発ながらもスタームルガー・ブラックホークなど、安価だが堅実な構造のリボルバーで人気を博し、こちらも一大メーカーとなっている[2]

構造とその優劣

構造は簡便かつ頑丈である。このため、マグナム弾等の強装弾を使用できる機種も多い。

安全機構

かつてのリボルバーには安全機構が無いに等しかったが[注 4]後に様々な安全機構が開発されることになった。まず「ハンマーブロック」という方法が考案され、これは撃鉄と雷管の間が通常はブロックされ、引き金を引いた時のみこの機能が解除され撃てるようになるというものである。一方スターム・ルガー社は、「トランスファー・バー」という方法を自社のリボルバーに採用した。これは、通常は撃針が前進しても雷管を打つ撃針には接触しないようになっており、引き金を引いた時のみ中継用のバーがせり上がって間隙を塞ぎ、雷管に打撃を伝えられるようになるという、ハンマーブロックとは逆の発想である。ただし、トランスファー・バーはスターム・ルガーの特許ではないため、今日のリボルバーはほぼ全てがどちらかの安全機構が搭載されている。リボルバーの特徴として、引き金を引かなければ発射できない「内部安全装置」こそあれ、外部から操作する「手動安全装置(マニュアル・セイフティ)」は基本的に搭載されていない[3]。銃把を握り込むと解除されるグリップセーフティー(スミス&ウェッソン・ハンマーレス)、自動銃並みのセーフティーレバー(ライヒスリボルバーウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー、スチェッキン・OTs-38)など、何らかの形の安全装置を備えた製品も存在するが、少数派にとどまっている。

利点

それ以前の銃、銃身(バレル)がひとつで1発しか装填しておけないような銃(あるいは複数バレルで、本数分しか装填出来ない銃)と比べれば、多数の弾を装填しておけるので、実際の戦闘の場面では相当に有利になった。

また、「弾づまり」で全く撃てなくなってしまうということが起きず、オートマチック拳銃と比較して信頼性が高い。オートマチックのようには排莢しないため、ジャム(装弾不良/排莢不良)が発生しない[注 5]。万一不発が発生しても、撃鉄を起こすかもう一度引き金を引くだけで次弾をすばやく発射できるという利点もある[注 6]。このようにリボルバーはオートマチックよりマルファンクション(故障)の可能性が原理的に低い為、護身用銃としての人気が根強い。

オートマチックは、発射の反作用で作動するため、ほぼ銃に推奨される弾薬以外使用できないが[注 7]、リボルバーの場合はシリンダーの穴と同じ径であれば、比較的弾薬の融通が利くという利点もある[6]

欠点
Smith & Wesson Model 686 .38 Specialを撃った様子。シリンダーギャップからガスが横方向に漏れているのがよく判る。リボルバーの欠点のひとつ。

1950年代に自動式拳銃(オートマチック)が普及するようになると、人によっては「自動式拳銃と比較すれば装弾数が少ない」「弾薬の再装填に時間が掛る」などの点を挙げる場合もある。ただし後者の「再装填時間」に関しては、1910年代になると、まず3発の実包をまとめた半月型の「ハーフムーンクリップ」、6発の実包をまとめた円盤形の「フルムーンクリップ」と呼ばれる金属製挿弾子で一気に装填する方法が開発され、またさらに「スピードローダー」と呼ばれる専用の装填器具を用いれば大幅に短縮することができるようになっていたので、それらを活用する場合、再装填時間に関しては自動式拳銃(オートマチック)と比べてさほど遜色はない。

弾倉が回転する都合上、銃身と薬室との間に隙間(シリンダーギャップ)があり、高温・高圧の発射ガスがそこから漏れてエネルギーのロスが生じ[注 8]、発射ガスが吹き付けることでフレームが損傷したり弾倉の軸周辺が汚れたりするおそれがあり、発砲音も大きくなる。このためリボルバーに消音器を使用しても減音効果はほとんど期待できない[注 9]。銃の持ち方によっては、ガスで手を焼く危険もある。また発射時に銃身内腔と薬室との間で芯ずれ(軸のズレ)が起きる可能性がある[注 10]

なお回転輪胴の構造上、排夾不良は起こらないが、遅発(ハングファイアー)に関して危険な面もあり、遅発を不発と思い込んで次弾を発射しようとした時点で当初の弾丸が遅れて発射され、銃身他の前方構造物に当たって危険なことがある。もし不発が起きても次弾を直ぐに発射せずに、射撃姿勢を保ったまま数十秒様子を見るのが肝要である。

そしてパーカッションロック式以前の銃ではシリンダーギャップによるチェーンファイア(発砲炎が隣の薬室に伝火しての暴発)現象も、事故に繋がる重大な問題であった。

リボルビングライフル

コルトM1855 リボルビングライフル(カービン)

リボルビングライフル(Revolving rifle)は回転式装弾機構を持った小銃の一種。短銃身のカービンタイプ以外は厳密な意味では拳銃ではないが、リボルバーの仲間としてここで解説する。

パーカッション時代になっても小銃サイズの連発式火器は複数銃身を持つ物以外、実用的な銃がなかなか成功しなかった。これを成功した連発機構を持った回転式拳銃をスケールアップすることで解決しようとした試みが、19世紀中頃に誕生したリボルビングライフル(カービン)と呼ばれる火器である。だが、結果的には失敗したカテゴリーの銃となった。

短銃身の回転拳銃に肩当て銃床を取り付けたカービンタイプ(片手で操作可能。または用心鉄かグリップの下にもう片手を添える)はそれなりに機能したのだが、長銃身の小銃を保持するのには片手を銃身の下部に添える必要があるため、シリンダーギャップから前・側方へ噴出する発射ガスがそれを直撃し、火傷を負う問題(よって素手での操作は火傷を覚悟する必要があり、使用時には革手袋が必須となる)を最後まで解決出来なかったためである。

しかし、ウィンチェスターライフルを筆頭とするレバーアクション式ライフルが開発されるまで、これに代わる連発機構もなかったため[注 11]、一時はコルト等の大手も参入して盛んに製造され、南北戦争ではコカチネット州で北軍大佐になったサミュエル・コルトが、1861年に私費を投入して同社のリボルビングライフルを装備する「コルト第一リボルビングライフル連隊」などという部隊まで編成している[注 12]

代表的な銃には、コルト第一連隊の装備にもなったコルトM1855リボルビングライフルがある(各種口径が揃っており、散弾仕様もあった。特に70口径の銃は「エレファントガン」とも呼ばれた)[8]

メタリックカートリッジ時代になっても、オプションパーツとして回転拳銃をリボルビングカービン化する脱着式ストックが作られている。

主なリボルバーの一覧

脚注

注釈

  1. ^ オックスフォード英語辞典の定義文をそのまま採用する。一応 理屈の上では、最初から「回転するシリンダー」や「回転するシリンダー(回転輪胴)にあけられたチャンバー」と言ってもよさそうだが、「回転式弾倉」[1]と言うほうが一般的。英語でも同様で、「回転するシリンダー」とは言わず、「回転するチャンバー」と言う。
  2. ^ 例えば、「2017年ラスベガス・ストリップ銃乱射事件」では犠牲者58名。犯人はAK-47系の半自動小銃などをバンプファイアで高速連射していた。
  3. ^ これには懐具合から西部開拓民の多くが高価な新型実包式拳銃を買えず、安価な旧式銃改造で済まそうとする事情があったためでもあり、1870年代になっても数多くのコンバージョンガンが市場に出回っている。
  4. ^ 安全のために、撃鉄が触れる部分の穴を空にしておくのが常識だった。しかし、当然それでは一発分損をすることになる[3]
  5. ^ ただし全く起こさないわけではなく、汚れや部品の破損で起こることはある。それ以外に、軽量な割に強力な弾薬を発射できるリボルバーで、軽い弾頭を持つ弾薬を込めて発射した場合、発射の反動で他の穴に入っていた弾薬の弾頭が少し飛び出し、結果的にシリンダーの回転を阻害することによりジャムが起こることもある[4][5]
  6. ^ 近年は自動式拳銃でもダブルアクションを採用したものも多いが、最悪の場合はスライドを操作して不発弾を排出する必要があり、引き金を引くだけで次弾を発射できるリボルバーの利点は不変である。
  7. ^ 装薬量の変化、弾頭の交換、銃身長の変化、サプレッサーの装着のみならず、構えが悪く反動を十分に受け止められなかった場合も作動不良の原因になる。
  8. ^ 急燃性の発射薬を用いることで、弾丸がシリンダーギャップを通過する時点ですでに最高弾速を得ることが可能であり、ガス漏れによる初速低下を防げる。
  9. ^ 一部の機種はシリンダーギャップを埋める構造を持っていたが構造が複雑で普及しなかった。
  10. ^ だが、銃身の後端内側には面取り加工が施されており、弾丸がスムーズに銃腔へ進入できるよう配慮されているため、実用上の精度は自動拳銃に劣るものではない。
  11. ^ ヨーロッパでは1836年にボルトアクションライフルが開発されていたが、19世紀末になるまでは連発機構を備えるまでには至っていない。
  12. ^ しかし、同連隊はコルトの病死により実戦投入はされずに解散した[7]

出典

  1. ^ Oxford Dictionary
  2. ^ 完全版 世界の銃 2010, p. 43.
  3. ^ a b 完全版 世界の銃 2010, p. 42.
  4. ^ 小林 2013, pp. 18–19.
  5. ^ Revolvers Don’t Jam & Other Firearms Myths”. USCCA. 2019年9月11日閲覧。
  6. ^ 完全版 世界の銃 2010, p. 149.
  7. ^ 池田書店『ピストル PISTOL』61-62頁
  8. ^ イーグルバブリシング『萌え萌え特殊銃器事典』16頁。

参考文献

  • ワールドフォトプレス『ミリタリー・イラストレイテッド4 世界の拳銃』光文社、1984年。ISBN 4-334-70071-3 
  • 床井雅美『最新ピストル図鑑』徳間書店、1993年。ISBN 4195776546 
  • 床井雅美『最新ピストル図鑑〈Vol.2〉』徳間書店、1996年。ISBN 4198904936 
  • 床井雅美『現代軍用ピストル図鑑』徳間書店、2002年。ISBN 4198916608 
  • 床井雅美『現代ピストル図鑑 最新版』徳間書店、2003年。ISBN 4198919879 
  • 小林宏明、白石光、野木恵一、他『完全版 図説・世界の銃パーフェクトバイブル』学研パブリッシング、2010年。ISBN 978-4-05-606061-4 
  • 小林宏明『意外と知らない銃の真実』笠倉出版社、2013年。ISBN 978-4-7730-8690-4 

関連項目

外部リンク