挿弾子

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M1ガーランド小銃用エンブロック・クリップ(左)と、SKSカービン用ストリッパー・クリップ(右)

挿弾子: Clip)あるいはクリップは、銃火器に複数個の弾薬を装填する際に用いる器具である。挿弾子を用いると、で1発ずつ装填するよりも非常に素早く再装填が行える。形状や用途によって数種類に分類され、いずれも使い捨てを前提とした安価なプレス加工で成形されている。だが、実際には頻繁に再使用されているという。

小銃拳銃のほか、ボフォース 40mm機関砲のような火砲でも装填のために類似した器具を使うことがある。

概要[編集]

日本防衛省では、clipまたはcartridge clipの訳語として挿弾子またはクリップを当て、「弾倉への装弾を容易にするために用いる弾薬の保持具。一般に数発の弾薬を保持する。」と定義している[1]

第二次世界大戦頃まで、世界各国の軍隊では固定式弾倉を備えるボルトアクション式小銃を主力小銃として配備しており、これに弾薬を装填する手段として挿弾子も広く用いられた。

しかし、挿弾子は弾薬をほぼ露出した状態で固定することから、装填の際になどが付着して内部に侵入する原因となり、特に機構が複雑な自動火器の場合はメカトラブルを引き起こしやすい欠点がある(自動火器の弾薬には潤滑グリースが塗布されることも少なくないため問題はさらに顕著である)。そのため、現代の自動小銃では重量容積の増大を甘受してでも弾倉自体を交換する方式に改められている。しかし、自動小銃の弾倉に弾薬を装填する際には、依然として挿弾子が使用されることもある。

主な種類[編集]

ストリッパー型[編集]

ストリッパー・クリップ(stripper clip)または単にチャージャー(charger)と呼ばれるタイプの挿弾子は、装填時のみ使用し、これを使用しなくても発砲そのものは可能である。ボルト開放時にこれを装着し(多くの場合、機関部やボルトに挿弾子取付用の溝がある)、上から指で押しこむことによって弾薬が挿弾子から外れて(stripping)内部の弾倉へ送られるのである。

エンブロック型[編集]

エンブロック・クリップ(En bloc clip)と呼ばれるタイプの挿弾子は、銃弾と挿弾子を一括(En bloc)にして弾倉へ装填するものである。挿弾子自体は装填時ないし最終弾発砲後に排出される。エンブロック・クリップは2人の全く見ず知らずの銃器技師がほぼ同時に開発したと言われている。すなわち、1890年式リー小銃の開発者ジェームズ・パリス・リー英語版と、M1885小銃の開発者フェルディナント・マンリッヒャー英語版の2人である。

ドイツGew88小銃フランス1890年式ベルティエ小銃英語版イタリアM1870 ベッテルリ英語版小銃やカルカノM1891小銃、オーストリア=ハンガリー帝国のM1895小銃、ハンガリー35M小銃英語版アメリカM1895 リー・ネイビー英語版M1ガーランドなどがエンブロック・クリップを使用する銃として知られている。

マンリッヒャー型のエンブロック・クリップは、非対称の形状で単方向からの装填しか行えなかったが、Gew88やカルカノでは左右対称のものが採用されている。また、後にジョン・ペダーセン英語版技師は逆方向での装填が可能なエンブロック・クリップを開発し、これは、ジョン・ガーランド技師がM1ガーランドで採用している[2]

ムーン/ハーフムーン型[編集]

ムーン・クリップ(moon clip)と呼ばれるタイプの挿弾子は、回転式拳銃用に開発されたものであり、円形ないし星形で多くは6発程度の銃弾を保持する。これを用いると回転式拳銃のシリンダーに素早く装填することが可能であり、また、薬莢の排出も全弾同時に行えるのである。ハーフムーン・クリップ(half-moon clip)として知られる半円型の挿弾子もある。ハーフムーン・クリップは多くは3発程度の銃弾を保持し、全弾装填のためにはクリップが2つ必要になる。こうした器具は、大抵の場合リムレスの自動拳銃用銃弾を用いる回転式拳銃によって使用された。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 防衛省規格 弾薬用語 (PDF)”. 防衛省 (2009年5月13日). 2015年1月24日閲覧。
  2. ^ Hogg, Ian V.; Weeks, John S.: (2000) Military Small Arms of the 20th Century, 7th Edition; Krause Publications, ISBN 0-87341-824-7