スティル・ゴット・ザ・ブルーズ
『スティル・ゴット・ザ・ブルーズ』 | ||||
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ゲイリー・ムーア の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
ジャンル | ブルースロック | |||
時間 | ||||
レーベル | ヴァージン・レコード | |||
プロデュース | ゲイリー・ムーア、イアン・テイラー | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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ゲイリー・ムーア アルバム 年表 | ||||
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『スティル・ゴット・ザ・ブルーズ[注釈 1]』(Still Got the Blues)は、北アイルランドのギタリスト、ゲイリー・ムーアが1990年に発表したスタジオ・アルバム。ムーアのルーツであるブルースを探求した作品で、本作が自身最大のヒット・アルバムとなったのを機に、以後もブルース色の強い作品をリリースするようになった[11]。全世界的な売り上げは300万枚以上と言われる[12]。
背景
1980年代末期、ムーアは自分の音楽的方向性に関して迷いを抱いており、長年ムーアと共に活動してきたベーシストのボブ・デイズリーによれば、ドイツ公演前の楽屋でムーアと共にブルースブレイカーズの曲のジャム・セッションを行い、その時にデイズリーが「ブルース・アルバムを作ってみたらどうか?」と進言して、本作の制作につながったという[13]。そして、ムーアは1980年代初頭に共演したベーシスト、アンディ・パイル(元ブロードウィン・ピッグ、サヴォイ・ブラウン)と共にデモ・レコーディングを開始し、当初はパイルと共演経験のあるクライヴ・バンカーがドラマーに起用されたが、バンカーとのセッションはうまくいかず、最終的にはシンプルな演奏を評価されたグラハム・ウォーカーがドラムスを担当した[13]。また、ムーアは別のリズム・セクションも必要と考え、一部の曲では前述のボブ・デイズリーに加えて、ムーアがシン・リジィ時代に共演したブライアン・ダウニーを迎えた[13]。共同プロデューサーのイアン・テイラーは、ムーアの前作『アフター・ザ・ウォー』(1989年)でエンジニアリングとミキシングを務めており、本作以降もムーアの作品のプロデュースに貢献した[14]。
本作のレコーディングでは、主にムーアが1988年に購入した1959年製のレスポール・スタンダードが使用されたが、「ミッドナイト・ブルーズ」や「ストップ・メッシン・アラウンド」では、かつてピーター・グリーンから譲られたレスポールが使用された[13]。また、「テキサス・ストラット」で使用された1961年製のサーモンピンクのストラトキャスターは、ムーアが1981年、グレッグ・レイクのレコーディング・セッションに参加していた際に購入した物で、元々はトミー・スティールが所有していたと言われる[13]。
「オー・プリティ・ウーマン」は、アルバート・キングがアルバム『ボーン・アンダー・ア・バッド・サイン』(1966年)で発表した曲のカヴァーである。キングは本作のヴァージョンにも本人参加し、更に同曲のミュージック・ビデオにも出演した[13]。
「トゥー・タイアード」は、元々はジョニー・"ギター"・ワトソンが1955年に発表した曲で、アルバート・コリンズのアルバム『アイス・ピッキン』(1978年)でもカヴァーされており[15]、コリンズは本作のヴァージョンにゲスト参加したのに加えて、本作のリリースに伴うツアーでも30ほどの公演に参加し[13]、更にムーアの次作『アフター・アワーズ』(1992年)にも引き続き参加した[16]。一方、ムーアは後にコリンズのアルバム『コリンズ・ミックス〜ザ・ベスト・オブ・アルバート・コリンズ』(1993年)にゲスト参加している[17]。
ジョージ・ハリスンが提供した「ザット・カインド・オブ・ウーマン」は、当初はエリック・クラプトンのアルバム『ジャーニーマン』(1989年)の収録曲の候補だったが、同アルバムには収録されず、クラプトンのヴァージョンはチャリティ・アルバム『Nobody’s Child: Romanian Angel Appeal』(1990年)で発表された[18]。なお、ムーアはハリスンの所属バンド「トラヴェリング・ウィルベリーズ」のアルバム『トラヴェリング・ウィルベリーズ Vol.3』(1990年10月発売)収録曲「シーズ・マイ・ベイビー」のレコーディングに参加している[19]。
「オール・ユア・ラヴ」はオーティス・ラッシュが1959年に発表した曲だが、ブルースブレイカーズも1966年のアルバム『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』で取り上げており[20]、ムーアは友人の家でブルースブレイカーズのヴァージョンを初めて聴いた際「一瞬にして人生が変わり、信じがたい啓示を得た」ほどの衝撃を受けたという[13]。
反響
全英アルバムチャートでは26週にわたりトップ100入りして、最高13位を記録し[7]、リリースから4年半後の1994年9月には、イギリス国内でプラチナ・ディスクの認定を受けた[12]。アメリカでは1991年2月16日付のBillboard 200で83位に達して自身唯一の全米トップ100アルバムとなり[10]、1995年11月には、ムーアのアルバムとしては唯一RIAAによりゴールド・ディスクの認定を受けた[21]。
オランダのアルバム・チャートでは32週トップ100入りし、うち3週にわたって1位を獲得した[1]。スウェーデンのアルバム・チャートでは6回(合計14週)連続で1位を獲得し、合計14週トップ40入りした[2]。ドイツのアルバム・チャートでは、2週にわたって4位を記録し、合計57週トップ100入りするロング・ヒットとなった[5]。
評価
Daevid Jehnzenはオールミュージックにおいて5点満点中4.5点を付け「ムーアの演奏は過去最良で、印象的な技巧と魂の両立した情熱的なフレーズが、とめどなく流れている」と評している[22]。エリック・クラプトンはアルバム『オールド・ソック』(2013年)で「スティル・ゴット・ザ・ブルーズ」をカヴァーしてムーアを追悼しており、この曲に関して「曲そのものが強力で、改作し甲斐があると思ったから、ジャズ・クラブ風にやってみた」とコメントしている[13]。
その後
収録曲のうち「ミッドナイト・ブルーズ」と「オール・ユア・ラヴ」は、ムーアが2006年に発表したアルバム『オールド・ニュー・バラッズ・ブルース』で再録音された[23]。「スティル・ゴット・ザ・ブルーズ」のギター・フレーズは、ドイツのバンドJud's Galleryが1974年に作った曲「Nordrach」(当時はレコード化されておらず、ライブやラジオでしか聴くことができなかった)との類似が指摘されており、後に同バンドのリーダーであるJüergen Winterがムーアを訴え、2008年にはムーアが敗訴した[24]。
収録曲
特記なき楽曲はゲイリー・ムーア作。
- ムーヴィング・オン - "Moving On" – 2:39
- オー・プリティ・ウーマン - "Oh Pretty Woman" (A.C. Williams) – 4:25
- ウォーキング・バイ・マイセルフ - "Walking by Myself" (Jimmy Rogers) – 2:56
- スティル・ゴット・ザ・ブルーズ - "Still Got the Blues (For You)" – 6:11
- テキサス・ストラット - "Texas Strut" – 4:51
- トゥー・タイアード - "Too Tired" (Johnny “Guitar” Watson, Maxwell Davies, Saul Bihari) – 2:50
- キング・オブ・ザ・ブルーズ - "King of the Blues" – 4:36
- アズ・イヤーズ・ゴー・パッシング・バイ - "As the Years Go Passing by" (Don Robey) – 7:45
- ミッドナイト・ブルーズ - "Midnight Blues" – 4:58
- ザット・カインド・オブ・ウーマン - "That Kind of Woman" (George Harrison) – 4:31
- オール・ユア・ラヴ - "All Your Love" (Otis Rush) – 3:42
- ストップ・メッシン・アラウンド - "Stop Messin' Around" (Clifford Davis, Peter Green) – 4:00
2002年リマスターCDボーナス・トラック
- ザ・スタンブル - "The Stumble" (Freddy King, Sonny Thompson) – 3:00
- レフト・ミー・ウィズ・ザ・ブルーズ - "Left Me with the Blues" – 3:05
- ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード - "Further On Up the Road" (D. Robey, Joe Medwick) – 4:08
- ミーン・クルーエル・ウーマン - "Mean Cruel Woman" – 2:47
- ザ・スカイ・イズ・クライング - "The Sky Is Crying" (Elmore James) – 4:53
シングル
本作からのシングルのチャート最高順位を示す。
タイトル | アメリカ[25] | イギリス[26] | オランダ[1] | スウェーデン[2] |
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オー・プリティ・ウーマン | - | 48位 | 8位 | - |
スティル・ゴット・ザ・ブルーズ | 97位 | 31位 | 2位 | 4位 |
ウォーキング・バイ・マイセルフ | - | 48位 | 28位 | - |
トゥー・タイアード | - | 71位 | - | - |
参加ミュージシャン
- ゲイリー・ムーア - ボーカル、ギター、ストリングス・アレンジ、ホーン・アレンジ
- アルバート・キング - ギター(on #2)
- アルバート・コリンズ - ギター(on #6)
- ジョージ・ハリスン - スライドギター、リズムギター、バッキング・ボーカル(on #10)
- ミック・ウィーヴァー - ピアノ(on #1, #3, #12)、エレクトリックピアノ(on #9)、ハモンドオルガン(on #11)
- ドン・エイリー - ハモンドオルガン(on #2, #5, #7, #8)、キーボード(on #4)、ピアノ(on #6)、ストリングス・アレンジ、ストリングス指揮、ホーン・アレンジ
- ニッキー・ホプキンス - ピアノ(on #4, #8, #10)
- アンディ・パイル - ベース(on #1, #2, #3, #4, #6, #7, #9, #11, #12)
- ボブ・デイズリー - ベース(on #5, #8, #10)
- グラハム・ウォーカー - ドラムス(on #1, #2, #3, #4, #6, #9, #10, #11, #12)
- ブライアン・ダウニー - ドラムス(on #5, #7, #8)
- ラウル・ドリヴェイラ - トランペット(on #2, #7)
- ステュアート・ブルックス - トランペット(on #6)
- マーティン・ドローヴァー - トランペット(on #10)
- フランク・ミード - サクソフォーン(on #2, #6, #7, #8, #10, #12)、ハーモニカ(on #3)
- ニック・ペンタロウ - テナー・サクソフォーン(on #2, #7, #10)
- アンドリュー・ハミルトン - テナー・サクソフォーン(on #6)
- ニック・ペイン - バリトン・サクソフォーン(on #2, #6, #7, #8, #10)
- ギャヴィン・ライト - ストリングス・リーダー(on #4, #9)
脚注
注釈
- ^ 2002年再発CD (TOCP-53269)、2007年再発CD (TOCP-53943)、2015年再発CD (UICY-25505)、2016年再発CD (UICY-77626)の帯に準拠。日本初回盤CD (VJCP-7)、1993年再発CD (VJCP-23162)、1995年再発CD (VJCP-3048)の邦題は『スティル・ゴット・ザ・ブルース』だった。
出典
- ^ a b c Gary Moore - Still Got The Blues - dutchcharts.nl
- ^ a b c swedishcharts.com - Gary Moore - Still Got The Blues
- ^ norwegiancharts.com - Gary Moore - Still Got The Blues
- ^ Gary Moore - Still Got The Blues - hitparade.ch
- ^ a b Offizielle Deutsche Charts
- ^ australian-charts.com - Gary Moore - Still Got The Blues
- ^ a b GARY MOORE | full Official Chart History | Official Charts Company - 「ALBUMS」をクリックすれば表示される。
- ^ Gary Moore - Still Got The Blues - austriancharts.at
- ^ charts.org.nz - Gary Moore - Still Got The Blues
- ^ a b “Gary Moore Chart History - Billboard 200”. Billboard. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Prato, Greg. “Gary Moore - Biography & History”. AllMusic. 2020年3月21日閲覧。
- ^ a b Sexton, Paul (2019年3月26日). “Gary Moore Gets The Blues, With Some Help From George Harrison”. uDiscoverMusic. 2020年3月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i Shapiro, Harry (2016年8月12日). “Gary Moore: the story of Still Got The Blues”. loudersound.com. Future plc. 2020年3月21日閲覧。
- ^ Ian Taylor | Credits | AllMusic
- ^ Cover versions of Too Tired by Albert Collins | SecondHandSongs
- ^ Sweeting, Adam (2011年2月7日). “Gary Moore obituary”. The Guardian. Guardian News and Media. 2020年3月21日閲覧。
- ^ Wynn, Ron. “Collins Mix: The Best - Albert Collins”. AllMusic. 2020年3月21日閲覧。
- ^ Fanelli, Damian (2018年8月9日). “Eric Clapton and the Beatles: A Guide to Nearly 50 Years' Worth of Studio Collaborations”. Guitar World. Future plc. 2020年3月21日閲覧。
- ^ Mastropolo, Frank (2015年10月29日). “How The Traveling Wilburys Struggled With Loss on 'Vol. 3'”. Ultimate Classic Rock. 2020年3月21日閲覧。
- ^ Cover versions of All Your Love by John Mayall with Eric Clapton | SecondHandSongs
- ^ Gold & Platinum - RIAA
- ^ Jehnzen, Daevid. “Still Got the Blues - Gary Moore”. AllMusic. 2020年3月21日閲覧。
- ^ “ゲイリー・ムーアの新作、日本発売決定”. CDJournal. 音楽出版社. 2020年3月21日閲覧。
- ^ “Ex-Thin Lizzy guitarist loses German plagiarism case” (2008年12月4日). 2020年3月21日閲覧。
- ^ “Gary Moore Chart History - Hot 100”. Billboard. 2020年3月21日閲覧。
- ^ GARY MOORE | full Official Chart History | Official Charts Company
外部リンク
- スティル・ゴット・ザ・ブルーズ - Discogs (発売一覧)