風化

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風化(ふうか、: weathering[1])または風化作用(ふうかさよう、英: weathering[1])とは、地殻の表層にある岩石太陽光風雨などにさらされることによって破砕・分解され、物理的、化学的に変質する作用のこと。地形の侵食作用運搬作用の前提に風化作用があり、地形形成や地形変化にも影響を及ぼしているほか、また土壌形成の過程にも風化作用が関与する[2]。なお、風化作用の要因には外的要因と内的要因の2つがある[3]

風化の分類[編集]

物理的(機械的)風化[編集]

物理的風化(ぶつりてきふうか、: physical weathering[4])または機械的風化(きかいてきふうか、mechanical weathering)は、温度変化や氷・塩類の存在によって岩石が破壊される風化のことである[5]。以下の作用の連続により岩石が破壊されていくことから、疲労破壊と考えることが可能である[6]。物理的風化の要因として、以下が挙げられる。

除荷作用
岩石の上部にあった物体(氷河など)が除去されたことによって生じた風化。シーティング節理など[2]
日射風化
岩石の温度変化(昼間の日射による加熱膨張と、夜間の放射冷却による収縮)の繰り返しによる風化[2]
乾湿風化
岩石が吸水・乾燥することで、膨張と収縮を繰り返して起こる風化。スレーキングともよぶ[7]
塩類風化
塩類による風化。塩類の結晶成長が風化に大きく影響を及ぼす[6]
凍結破砕
岩石中の水が凍結することで膨張し岩石を破壊する風化[6]

この他、植物根の進入など生物的要因による物理的風化もある[2]

化学的風化[編集]

化学的風化(かがくてきふうか、: chemical weathering[4])は、などが関係した化学反応によって岩石が分解・溶解する風化である[2]。高温で水分量が多い地点で化学的風化は活発となる[3]。なお、岩石の風化に伴い、水の水質も変化する[8]。化学的風化の生成物が安定な粘土鉱物であることから、化学的風化を岩石の粘土化の途中過程と考えることができる[8]。化学的風化の要因として以下が挙げられる。

酸化
化学的風化の代表例である[9]
加水分解
水に含まれる水素イオンと、造岩鉱物中に含まれるナトリウムイオンカリウムイオンが交換されることによる風化[2]
溶解
造岩鉱物の多くは水に溶解するが、炭酸塩が含まれると岩石の風化速度が上昇する[10]
水和
鉱物が水と反応し体積が増大することによる風化[2]。水和の繰り返しにより岩石は脆くなるが、破壊力は加水分解よりも小さい[11]

宇宙風化[編集]

大気圏外で起こる風化。太陽風宇宙線、微小隕石が原因である。物理的か化学的かと言えば物理的であるが、機械的破砕よりは溶融である。

風化の種類[編集]

玉ねぎ状風化[編集]

岩塊地層節理沿いの角が連続的に風化が進行する現象。タマネギの皮のように風化が進み、内部は状に母岩が残ることとなる。玉ねぎ状構造、球状風化とも呼ばれる。球状風化は一部の花崗岩類で顕著であり、内部に残った球状の母岩(原岩)はコアストンと呼ばれる。

蜂の巣風化[編集]

風化作用で岩石の表面に蜂の巣のようなが空くこと。直径数センチメートルの多数の穴が蜂の巣状になっていて、砂岩の表面に見られることが多い。

風化(転義)[編集]

日本語では、「個であれ集団であれ、人が抱く意識関心の度合いが、経年などによって目に見えて低下すること」を、自然現象である風化に譬えてその名で呼ぶことが非常に多い。すなわち、人の意識の風化である。[要出典]

なお、基本的に、忘れるべきでないものが忘れられてしまう場合に用いられる語であり、同様の忘却であっても、肯定的に捉えられるものに用いられることは少ない。

最もよく言われるのは「災害についての危機意識の風化」であり、自然災害や人災に痛めつけられて人間は「二度とこのような悲しみを味わわずに済むよう」経験から教訓を得るのであるが、その時にあった高い危機意識は年月や世代交代を重ねることによって劣化を避けられず、集団社会からも個人からも色あせてゆくのが世の常である。そのような忘却や関心の喪失がことさら酷い場合に「風化」と表現されるのであるが、そうして本当に「二度目」が来た時には過去の手痛い経験は大して活かされること無く終わり、当事者たちは同じ過ちを繰り返す人間の愚かさを痛感する。そこで、風化によって教訓(先人訓)を活かせなかった人々は「風化など二度とさせまい」と決まって心に誓う。しかしその決意自体がまた風化を免れ得ない不確かなものであって、その危うさをよくよく心得ている深慮の人が「後世の人々に起こるであろう風化が、なるべく少なくて済むように」と記念碑(災害記念碑)などの形をとって遺す場合も多々見える。「天災は忘れた頃にやってくる」(意味:自然災害は人々がその怖ろしさを忘れた頃に再び起こる)という慣用句は、明治時代の地球物理学者寺田寅彦によって生み出されたといわれる(実際には弟子の物理学者中谷宇吉郎が師の言葉として広めた)先人訓で、日本に広く普及している「(自然災害についての)危機意識の風化に対する戒め」である。

一方、同じ「災害についての風化」でも、関心の著しい低下という意味での「風化」もたびたび言われるものである。例えば、世界史上にも稀に見る大規模災害となった東日本大震災2011年3月11日発生)では、直後から大勢のボランティアが被災地域に参集して活動したが、一年も経過しないうちに「災害の風化」あるいは「被災地の風化」とでも言うべき関心の喪失が進行し、約10ヶ月後の被災3県(岩手県宮城県福島県)では、災害ボランティアセンターを介して活動する人の数はピーク時の約10分の1にまで激減した[12](ピークは発生年のゴールデンウィーク時で、1日あたり1万人以上。それが、同年12月18日以降では1日あたり1千人を割り込んだ[12])。この現象の全てが風化に原因すると考える人はそうそういないものの、未曾有の被災でさえも「意識の風化」から免れがたいのが現実である。

また、事故事件について「意識の風化」に言及されることは、むしろ日常的ですらある。月日が経つに連れて人々の記憶と関心が薄れることで徐々に風化してゆく未解決事件が最終的に迷宮入りしてしまうことも、日本のように時効制度がある国では珍しい出来事とまでは言えない。

脚注[編集]

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  1. ^ a b 文部省編 『学術用語集 地学編』 日本学術振興会1984年、44頁。ISBN 4-8181-8401-2
  2. ^ a b c d e f g 松倉 2007, p. 59.
  3. ^ a b 町田 1985, p. 12.
  4. ^ a b 文部省土木学会編 『学術用語集 土木工学編』 土木学会、1991年、増訂版。ISBN 4-8106-0073-4
  5. ^ 松倉 2008, p. 10.
  6. ^ a b c 松倉 2007, p. 60.
  7. ^ 松倉 2007, pp. 59-60.
  8. ^ a b 松倉 2008, p. 21.
  9. ^ 松倉 2007, p. 61.
  10. ^ 松倉 2007, pp. 60-61.
  11. ^ 松倉 2008, p. 27.
  12. ^ a b “震災ボランティア、ピークから9割減 被災3県”. asahi.com (朝日新聞社). (2012年1月13日). http://www.asahi.com/national/update/0113/TKY201201120765.html 2012年1月13日閲覧。 

参考文献[編集]

  • 松倉 公憲 『地形変化の科学―風化と侵食―』 朝倉書店、2008年ISBN 978-4-254-16052-9
  • 松倉 公憲 「地形は変化する(1) : 風化」『地球環境学―地球環境を調査・分析・診断するための30章―』 松岡 憲知・田中 博・杉田 倫明・村山 祐司・手塚 章・恩田 裕一(編)、古今書院、2007年ISBN 978-4-7722-5203-4
  • 町田 洋 「風化とマスウェイスティング」『写真と図で見る地形学』 貝塚 爽平・太田 陽子・小疇 尚・小池 一之・野上 道男・町田 洋・米倉 伸之(編)、東京大学出版会、1985年ISBN 978-4-13-062080-2

関連項目[編集]