アオノリ

アオノリ(青海苔、青のり)は、スジアオノリなど食用として利用される数種類の海藻の総称。
植物分類としては以前は緑藻綱アオサ科アオノリ属 Enteromorpha の分類があったが、アオサ属 Ulva に移された[1][2]。なお、地域によって「青のり」と呼ばれる場合があるヒトエグサ[3]は、従来はアオサ目に分類されアオサ類に属していたが、ヒビミドロ属に改められたため植物分類上はアオサ類からも外れている[4]。
植物分類としてはアオサやヒトエグサはそれぞれ異なる種類の緑藻だが、食品としては長年の習慣で地域によってさまざまな名前で流通しており「あおさ海苔」や「青のり(ヒトエグサ)」などの食品表示がみられる[3]。
アオサ類と旧アオノリ属[編集]
植物としてのアオサ類は、狭義にはアオサ科アオサ属(Ulva)の海藻の総称、広義にはアオサ科あるいはアオサ目の海藻を含む海藻をいう[4]。従来はアオサ科のうち、体の横断面が1層のものをアオノリ属、2層のものをアオサ属としていたが、DNA分析や比較形態学的研究から同属と指摘されるようになった[4]。
旧アオノリ属にはスジアオノリ、ウスバアオノリ、ヒラアオノリ、ボウアオノリなどが属していた。
加工食品としての青のり[編集]
日本[編集]
日本食品標準成分表では「あおのり<青海苔>」の素干し(09002)を、スジアオノリを主体としてウスバアオノリを混ぜたものとしている[5]。
- スジアオノリ - 食品として高値で取引されているのは高知県四万十川河口域産のスジアオノリである[4]。他のアオサ属はスジアオノリよりも品質が劣るとされ、安価であり、代用品として使用されている[4][6]。
- ウスバアオノリ - もともと海に生息していた種でスジアオノリよりは高塩分の環境を好むとされる[7]。
- ヒトエグサ - 地域によって「青のり」と呼ばれている場合がある[3]。一大産地である三重県の伊勢志摩地方では「あおさのり」と呼ばれる。また沖縄県では「アーサ」と呼び、アーサ汁や天ぷらなどに利用される。
なお、日本食品標準成分表では「あおさ<石蓴>」の素干し(09001)も掲載されているが、アナアオサが主に食用とされるとなっており、「あおのり<青海苔>」とは別の分類としている[5]。
- アナアオサ - 乾燥して2–3 mmの大きさに粉砕したものが「あおさ粉」などの名称で流通している[8]。大阪では「坂東粉」「バンド粉」と呼ばれる。
生産[編集]
上記のように天然物が採取されるほか、主に海で養殖される。タンクを使った陸上養殖も取り組まれている[9]。
利用[編集]
そのほか卵焼きに混ぜ込む、おむすびや温かいご飯にまぶすなど、様々な利用例がある。
朝鮮[編集]
朝鮮では青のりは「パレ(파래)」と呼ばれる。アオノリはナムルの野菜として食べられる。また、キム(韓国海苔)を作るためにも使われる。
脚注[編集]
- ^ Satoshi Shimada, Masanori Hiraoka, Shinichi Nabata, Masafumi Iima, Michio Masuda (2003) Molecular phylogenetic analyses of the Japanese Ulva and Enteromorpha (Ulvales, Ulvophyceae), with special reference to the free-floating Ulva. Phycological Research. Volume 51, Issue 2, pages 99–108
- ^ 吉田忠生・吉永一男 (2010) 日本産海藻目録(2010年改訂版), 藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui) 58:69-122, 2010 Archived 2014年7月20日, at the Wayback Machine.
- ^ a b c 天野秀臣「ヒトエグサの思い出」 一般財団法人海苔増殖振興会
- ^ a b c d e 名畑進一「海藻アオサ類の分類と利用」北水試だより69(2005年)
- ^ a b 9)藻類 - 文部科学省
- ^ 食品新聞(2019年2月4日) - 食品新聞社
- ^ 團昭紀「アオノリ類の生理、生態から見た養殖技術の検証」徳島県立農林水産総合技術支援センター水産研究課研究報告(2005年)
- ^ かつては「青のり」として販売されていたが、2010年代以降は旧アオノリ属との混乱を避けるため、「青のり」という食品表示はスジアオノリとウスバアオノリを原料とするものに限定されるようになった。
- ^ 「高級青のり、陸上養殖/スリーラインズ 月産100キロ体制に」『日経MJ』2018年5月28日(フード面)2018年9月28日閲覧。