遺伝子系図

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遺伝子系図(いでんしけいず、: genetic genealogy)とは、遺伝子上の情報を基にした系図である。

個体間の遺伝的関係やその度合いを決定する目的で用いられる。

概要[編集]

分子生物学[1][2]やコンピュータ技術の進展[3][4]により、ある個体からサンプルされたオーソロガスな遺伝子について、ヌクレオチド単位で個体間比較、種間比較が可能となった。このことは遺伝子の進化の歴史や系統関係について実験や統計を用いて定量的に議論できることを意味する。

しかしながら、実際には生物集団内における遺伝子系図を決定することは容易ではない[5][6]。これは個体が移動すること(遺伝子流動)や核マーカーにおける遺伝的組み換えの効果、自然選択の効果、また、個体群動態の変化[7]などが遺伝子系図のトポロジーや枝長に影響を与えるためである。これらの効果を区別することは容易ではないが[8]、主に合祖理論を基盤とした研究[9][10]によってこの問題は議論されている[要出典]

使用例[編集]

出典[編集]

  1. ^ 高畑 1986a, pp. 57–61.
  2. ^ 高畑 1986b, pp. 77–83.
  3. ^ 石川、田中、宮崎 2014, pp. 1167–1176.
  4. ^ Mahmoudisaber 2017, 『ヒト科とヒト上科特有のコード・非コードゲノム要素の進化的変化に関するコンピュータ解析および実験的解析』.
  5. ^ 颯田 2005, pp. 1749–1752.
  6. ^ 舘田 2010, pp. 335–335.
  7. ^ Tajima 1983, pp. 437–460.
  8. ^ 五條堀 2004, pp. 26–28.
  9. ^ 能登原 2005, pp. 41–47.
  10. ^ 石坪 2006, p. 112.

参考文献[編集]

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  • Tajima, F (1983). “Evolutionary relationship of DNA sequences in finite populations.” (pdf). Genetics 105: 437-460. http://www.genetics.org/content/105/2/437.full.pdf. 
  • Mahmoudisaber, Morteza (2017-03-23) (英語). Computational and experimental analysis of evolutionary changes at Hominidae and Hominoidea specific coding and conserved noncoding genomic elements. 東京大学. doi:10.15083/00075664 NAID 500001080701。並列タイトル『ヒト科とヒト上科特有のコード・非コードゲノム要素の進化的変化に関するコンピュータ解析および実験的解析』、博士論文(理学):甲第33572号。
  • 石川淑、田中飛鳥、宮崎敏明「FPGAを用いたBLASTアルゴリズムの高速化」『情報処理学会論文誌』第55巻第3号、2014年3月、 1167-1176頁、 ISSN 1882-7764NAID 110009752406
  • 石坪卓麻「遺伝子系図による合祖時間の研究 : 有限サイトモデルによる推定(6.平成18年度修士論文)」『Annual review』第11巻、名古屋市立大学、2006年、 112頁、 ISSN 1342-9329NAID 110006979758
  • 五條堀孝「バイオインフォマティクス:生命の多様性と進化に基づく生命科学の統合化に向けて(総研大レクチャー)」 (pdf) 『総研大ジャーナル = Sokendai journal』第5号、総合研究大学院大学教育交流センター、2004年3月25日、 26-28頁、 NAID 1100064339482021年7月20日閲覧。 2003年(平成15年)当時の議論の梗概。
  • 颯田葉子「20万年前の人類の祖先は何人だったか? (二層膜オルガネラの遺伝学) -- (哺乳類のミトコンドリア 哺乳類ミトコンドリアゲノムの遺伝と進化)」『蛋白質核酸酵素』第50巻第14号、共立出版、2005年11月、 1749-1752頁、 ISSN 0039-9450NAID 40007006388
  • 高畑尚之「細胞質オルガネラDNAの変異と進化-3-遺伝子系図学-1-」『遺伝』第40巻第3号、裳華房、1986年3月、 57-61頁、 ISSN 0387-0022NAID 40000130751
  • 高畑尚之「細胞質オルガネラDNAの変異と進化-4-遺伝子系図学-2-その応用」『遺伝』第40巻第4号、エヌ・ティー・エス、1986年4月、 77-83頁、 ISSN 0387-0022NAID 40000130725
  • 舘田英典「樹木識別あるいは系統解析におけるバーコード情報の可能性」『日本森林学会大会発表データベース』第121巻0、日本森林学会、2010年、 335-335頁、 doi:10.11519/jfsc.121.0.335.0NAID 130004617876
  • 能登原盛弘「集団遺伝学における確率モデル」『Annual review』第9号、名古屋市立大学、2005年3月、 41-47頁、 ISSN 1342-9329NAID 110004628452

関連項目[編集]

関連文献[編集]

出版年順

  • 高畑尚之「遺伝子系図学のすすめ」『科学』第58巻第5号、p278–286 (コマ番号0007.jp2)、岩波書店、1988年5月。国立国会図書館内限定公開。
  • Takahata N (1989) "Gene genealogy in three related populations: consistency probability between gene and population trees." Genetics, 122, 957–966.
  • Hudson RR (1990) "Gene genealogies and the coalescent process." Oxford Surveys in Evolutionary Biology 7: 1–44.
  • Kingman, J.F.C. (2000) "Origins of the coalescent 1974–1982." Genetics 156:1461–1463.
  • Rosenberg and Nordborg (2002) "Genealogical trees, coalescent theory and the analysis of genetic polymorphisms." Nature Reviews Genetics 3: 380–390.
  • 斉藤成也「遺伝子からみた東ユーラシア人」『地學雜誌』第111巻第6号、ISSN 0022-135X、2002年12月、832–839。doi:10.5026/jgeography.111.6_832
  • 鈴木増雄、荒船次郎、和達三樹(編)『物理学大事典』朝倉書店、2005年。「遺伝子系図学」766、「遺伝的浮動」765。
  • 日本バイオインフォマティクス学会(編)『バイオインフォマティクス事典』共立出版、2006年。「遺伝子系図」585、「遺伝統計学多型マーカー」587。
  • 森林総合研究所(編)『森林大百科事典』朝倉書店、2009年。「遺伝子系図」259、「遺伝子系統樹」265、「遺伝子多様度」260、「遺伝子地図」251。
  • 津村義彦、陶山佳久(編)『森の分子生態学』第2巻、文一総合出版〈種生物学研究 ; 特別号〉、2012年。「遺伝子系図学 gene genealogy」53。
  • 日本進化学会(編)『進化学事典』共立出版、2012年。「遺伝子系図」506-509, 511-514, 673、「遺伝子系図学」630、「遺伝子系図」50916.5。
  • 小酒井亮太『地理的構造を持つ遺伝子系図モデルの研究』名古屋市立大学博士学位論文 (生体情報)、2016年。
  • 「遺伝子系図を使った犯罪捜査への期待と懸念」『Natureダイジェスト』第17巻第12号、東京 : ネイチャー・ジャパン、2020年12月、16–21。ISSN 2189-7778