藪漕ぎ

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藪漕ぎ(やぶこぎ)とは、ササ雑草タケ灌木等が繁茂し進行がままならない山野をかき分けて進む様子を表した言葉である。

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背の低い草地は歩くに苦労しない。森林の中は意外と隙間の多いものであり、これも普通は歩くに困らない。かき分けて進まねばならないのは、人間の背丈前後の高さの群落である。

たとえば2m程度のススキササの群落は、人間が普通に歩けるほどの幅もなく密生し、また群落の上層では枝葉が互いに絡まっていて、かなりの力でかき分けるか、根本から刈り取らなければ進むのが難しい。このような群落をかき分けて進むのが藪漕ぎである。日本ではこのような群落は多くの場合植生遷移の途中に出現するものであり、あるいはより遷移が進んだ群落が攪乱を受けた場合に出現する。

たとえば伐採された森林は、まず低木が出現して密生した群落を作りやすい。しかもそこにはモミジイチゴニガイチゴなど半蔓性のいばら類が多く含まれる。そのため、そこに生じる藪は非常にやっかいな存在である。植林の手入れにおける草刈りはこれを片づけることでもある。また、本州南部以南の低山ではそのような場所にコシダウラジロの藪が生じやすい。

森林であっても、日本のブナ林では林床スズタケチシマザサが密生することが多く、藪こぎをさせられることがよくある。

行う人々[編集]

職業的に行う人々としては(1)電力会社通信会社等の現場調査・施設工事担当者(2)軍隊においてレンジャー兵科に所属する隊員(3)警察消防等公的機関のレスキュー隊員や救助隊(即応編成部隊員を含む)(4)猟師(5)山菜等を恒常的に扱う企業(6)遺構調査や生態系調査、鉱物資源地質調査等を行う、大学などの学術的機関 (7) 山岳や動植物等を被写体として作品を制作する写真家等があげられる。

一方、趣味的もしくは自発的に行う人々として、(1)単なる山歩きに飽きたらず、敢えて林道を外れて茨の道を進む藪漕ぎに目覚めた人(2)遺跡・遺構調査や化石調査を個人的興味の対象としている人(3)山菜キノコ採り・釣りを趣味とする人 (4) 動植物や鉱物等を対象として活動する非職業的研究者や写真家等があげられる。

注意点[編集]

藪漕ぎをする際に注意すべき点には以下が挙げられる。

  1. 山を侮らず相応の装備(携帯食・飲料・時季に見合った衣類・通信手段・オレンジ色のポンチョ等)を整えて山に入る。
  2. 山の所有者や環境の保全に配慮して、無闇なタケノコキノコなどの山菜や希少植物などの採取はしない。
  3. 火の用心は徹底する。非常時以外はたき火は勿論、禁煙するのが望ましい。
  4. 「迷った」と感じたら視界の開けた所に留まり、無闇に動かない。
  5. 体力(疲労)回復にはあめ玉やスティックシュガー・スティックハニーが便利。
  6. 発汗によって体内の塩分等が失われるため、を携帯する。摂りすぎると喉が渇くため、摂取する量に気をつける。また持参の飲料水が無くなったからと沢の水などを無闇に飲まない(鉱毒寄生虫バクテリア等に起因する感染症等に罹患するなど健康被害を受けるリスクが高い)。そのような水を飲む事が予想される場合には、携帯用浄水器を持参すると良い(ネットショップや実店舗で購入可能)。
  7. 出かける前に自分の行く方面を周囲に知らせておく(移動に使う自家用車内に書き置きを置いておくなど)。
  8. 山刀(マチェテ、マチェット、マシェット)やがあれば便利である。しかしこれを扱う場合は充分注意し、特に同伴者との間合いや位置関係を常に気に留めるとともに、転倒による受傷に注意する。
  9. 毒蛇(マムシヤマカガシなど)、野獣類(など)に気をつける。概して藪は見通しがきかないので、うっかりするとこれらに真正面から遭遇する。特筆すべきはスズメバチ(なかでもオオスズメバチ)で、この大型且つ獰猛な蜂は土中に幾層にも渡る巣を形成している為、知らずに付近を歩いたり巣を壊したりして蜂の大群に急襲され、命を落としたり大怪我(刺される怪我のみならず、蜂から逃れようとして転倒や斜面滑落して大事に至る場合もある)をすることがある。この蜂は羽音が大きく、また独特な警戒音を発するので、そのような蜂を一匹でも見つけたら、直ちに迂回行動をとって静かにその場を離れる。
  10. 藪の延長線上にある沼地や崖の縁および下りの急斜面、風穴、隠れた縦穴や地表の亀裂等に注意する(窪地に滞留した火山性ガスやメタンガス等の有毒ガスに巻かれての死亡事故例もある)。
  11.  天候の急変もあり得ることを念頭に置き、行動の中断・中止・撤収等の判断を誤らないようにする。携帯型ラジオや商用ラジオ・テレビ放送の音声受信機能を持つアマチュア無線用のトランシーバー (無線機)などを携行すると有益な情報が得られる。(予備電池等、電源の確保と機器の操作に習熟しておく)

参考文献[編集]

  • 『アメリカ陸軍サバイバルマニュアル』 鄭仁和(訳・編)朝日ソノラマ ISBN4257050284
  • 『SASサバイバルハンドブック』 ジョン・ワイズマン 並木書房 ISBN4890630260
  • 『サバイバル読本』 工藤章典 主婦と生活社 ISBN439110508x
  • 『フィールドナイフの使い方』 平山隆一 並木書房 ISBN4890630694
  • 『サバイバル・バイブル』 柘植久慶 原書房 ISBN4562026146

関連項目[編集]