けもの道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
獣道から転送)
移動先: 案内検索
森の獣道

けもの道(けものみち)とは、山野において(動物)が通るのことを言う。獣道とも表記する。大型の哺乳類が日常的に使用している経路のことである。森林内にヒトが作った林道などがある場合、これをほかの動物が利用することも多い。

獣道の成因と特徴[編集]

森林の中を移動する大型哺乳類は、やみくもに森林内を行き来するのではなく、それなりにコースを決めて移動する。これは動物のそれぞれの習性によって、エサをとる場所や水を飲む場所などか決まっており、できるだけ障害物が少ない移動しやすい場所、移動経路として向いている経路がある一方で、逆に移動しにくい場所、移動経路として向かない場所もあるからである[1]。そのようなところは自然発生的に地面が多少とも踏み固められて、動物ごとにクマの通り道やイノシシの通り道など、いつも通る決まった道を総称した「けもの道」となる[1]。低木の小枝は折られ、足下の下草は喰われて短くなったり、踏みつけられて枯れたりするので、獣道は肉眼でも見つけられる[2]。さらに、大型哺乳類に種子を付着させて分布を広げる戦略を取っている植物や、大型哺乳類に果実を食べさせ中にある種子を運ばせる戦略を取っている植物や、踏まれることに強い構造を持った植物など、何らかの特徴を持った植物が、獣道沿いに分布を広げているケースもある。なお、この中で、果実の種子が運ばれた場合、獣道沿いに餌場ができるので、これにより、ますます経路が固定化しているとの指摘もある。

ニホンカモシカの群れ

なお、ヒトが作った林道をほかの動物が利用することもあるように、使用する道が一致する場合もある。しかし、動物の種類によって使用する道が一致しない場合もある。ニホンカモシカの獣道は、往々にして断崖絶壁に向かい、ヒトには通りにくいので、「カモシカの道はたどるな」と言われるのが、使用する道が一致しない例である。

ヒトが作る獣道[編集]

人がつくる道路のルーツをたどれば、それが「けもの道」だといわれる[1]。つまり、自然発生的に出来た、ヒトが踏み固めることでできるルートがヒトの作った「けもの道」であり、それに手を加えられて歩きやすく幅広く作られて路(みち)となり、さらに改良されて道路となった。 太古の人間は、動物が作ったけもの道をたどれば、歩きやすくて獲物となる動物を見つけやすいと考え、けもの道をたどって歩くようになり、やがて人間が歩くための道路が作られていったとも考えられている[2]。 これとは反対に、かつては整備された交通の往来が活発な道路(街道)が、別ルートの開拓によって廃れたことによって、結果的に「獣道」化する古道里道も存在する。

たとえば、熊野古道や高野の古道など、山塊を越えて続く道の場合、道はほぼ尾根筋をたどり、特に高いピークは山腹に回って向こう側の尾根に抜ける。これに対して自動車道をつくる場合、より低い山腹をゆっくりと上り下りするコースを取るから、両者は全く異なるコースとなる。共通するのは、尾根を越える場合にその低くなったところを通るくらいなので、そういうところで古道を車道が分断することになる。

ヒトが歩くためだけに使う獣道は、なだらかでなめらかな場合もあるが、傾斜地では階段を区切る場合もある。なお、ヒトが通ることでできた獣道は、ほかの動物にとっても道となり得る。

自動車道路とけもの道[編集]

近年では、人間の手によって自動車道路が山奥までつくられ、人が住むようになり、野生動物の生息数も少なくなったうえ道を外れて山奥を人が歩くことがほとんどないため、けもの道を目にする機会は少なくなったといわれる[2]。人間が動物の通り道となる場所を横切って道路を造ったために、動物が自動車道路を横切って轢かれる場合も発生している[2]。このため、道路を建設するときにボックスカルバートとよばれる野生動物が通るためのトンネルを道路下につくったり、リスやムササビといった樹上で暮らす動物が渡れるように、道路上に歩道橋のような構造物をつくって、人工の「けもの道」が作られるようになってきている[2]

脚注[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]