球面調和関数

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低次の球面調和関数。赤色は正、緑色は負の領域を示す。
球面調和関数の球表示(左)と原子軌道表示(右)。 (gifアニメーションへのリンク)

球面調和関数(きゅうめんちょうわかんすう、: spherical harmonics[1])は、3次元ラプラス方程式の解を球座標で書いたときの角度部分の関数である。

定義[編集]

球面調和関数 Ym (θ, φ) は、次の式で表される関数である。

ここで、 は非負の整数mm の整数である。Pmルジャンドル陪関数である。

関連する微分方程式[編集]

3次元のラプラス方程式の、球座標 (r, θ, φ) による表式

に対し、u (r, θ, φ) = R (r)Y (θ, φ) と変数分離してその分離定数を λ とおくと、微分方程式

が得られる。λ = ( + 1) のときのこの方程式の解が、球面調和関数である。

完全性[編集]

球面調和関数は完全直交関数系であり、球面上の任意の関数 g (θ, φ) を展開できる[2]

ここでA lm は複素定数であり、次式で表される。

具体例[編集]

いくつかの球面調和関数の具体的な表式を示す。

代数的性質[編集]

加法定理[編集]

球面調和関数には「加法定理」と呼ばれる性質がある。これは三角関数における加法定理

を一般化したものと捉えることができる。上式の右辺は球面調和関数に、左辺はルジャンドル多項式に置き換えられる。

二つの単位ベクトル x および y を考え、それらの球面座標をそれぞれ (θ, φ) および (θ′, φ′) とする。このとき、加法定理は以下のように表わすことができる[3]

(1)

ここで P次のルジャンドル多項式である。この表式は実数調和関数・虚数調和関数の双方について成り立つ[4]。この結果は単位球面上のポアソン核の性質を用いて、あるいはベクトル yz軸に沿うように幾何的に回転させたのちに右辺を直接計算することにより解析的に証明することができる[5]

特に、 x = y の場合はウンゼルトの定理[6]

に帰着する。この式は一次元の三角関数における恒等式 cos2 θ + sin2θ = 1 を二次元に拡張したものとみなすことができる。

式 (1) の左辺 P(x·y) は 次の帯球調和関数英語版の定数倍である。この観点から、より高次元の場合にも次のように一般化することができる。Yjn次元超球面上の次の球面調和関数の張る空間 H の任意の正規直交基底とする。このとき、単位ベクトル x に対応するℓ次の帯球調和関数 は以下のように書き下せる[7]

(2)

さらに、帯球調和関数 は適切なゲーゲンバウアー多項式の定数倍として表わすことができる。

(3)

x および y が球面座標で表わされる場合、 (2) および (3) を組み合わせると (1) が得られる。最後に、 x = y の場合を評価すると次の恒等式が得られる。

ここで ωn−1(n−1)次元超球の体積である。

クレブシュ–ゴルダン係数[編集]

クレブシュ–ゴルダン係数とは、二つの球面調和関数の積を球面調和関数の線形結合で展開する際の展開係数である。ウィグナーの3-j記号ラカー係数スレーター積分など様々な計算方法があるが、本質は同じである。抽象的には、クレブシュ–ゴルダン係数は二つの回転群の既約表現のテンソル積を既約表現の和で表わすときの係数と見ることができる。よって、適切に正規化すれば多重度と一致する。

パリティ[編集]

球面調和関数には、原点を不動点とする点対称操作に対して偶関数であるか奇関数であるかにより、パリティを定義することができる。原点を不動点とする点対称操作は のように表わすことができる。立体角で表わせば、 {θ, φ} を {πθ, π + φ} に置き換える操作と表わせる。随伴するルジャンドル多項式(−1)ℓ+m を、指数関数は (−1)m を与えるので、これらをあわせると球面調和関数のパリティは (−1) となる。

このことは、高次元に一般化した場合にも成り立つ。次の球面調和関数に点対称操作を施した場合、符号の変化は (−1) となる。

量子力学での応用[編集]

量子力学で、球対称ポテンシャル V (r )に対する1粒子シュレーディンガー方程式(代表的なものは水素原子におけるシュレーディンガー方程式

を解いたときに、球面調和関数が現れる。量子力学では、 Ym方位量子数m磁気量子数という。

球面調和関数は軌道角運動量 と密接な関係がある。球面調和関数は 2z の同時固有関数になっており、その固有値はそれぞれ である。すなわち

となる。また、上昇下降演算子 +-を球面調和関数に作用させると

となる。

脚注[編集]

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  1. ^ 文部省日本物理学会編 『学術用語集 物理学編』 培風館1990年ISBN 4-563-02195-4
  2. ^ Earl G. Williams; 吉川茂、西條献児訳 『フーリエ音響学』 シュプリンガーフェアラーク東京、2005年、231頁。ISBN 4-431-71174-0 
  3. ^ Edmonds, A. R.. Angular Momentum In Quantum Mechanics. Princeton University Press. p. 81. 
  4. ^ これは次の球面調和関数のどんな正規直交基底にも成り立つ。
  5. ^ Watson & Whittaker 1927, p. 395.
  6. ^ Unsöld 1927.
  7. ^ Stein & Weiss 1971, §IV.2.

参考文献[編集]

関連項目[編集]