江村超
人物情報 | |
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生誕 | 1941年7月19日(83歳)[1] |
居住 | 日本 アメリカ合衆国 |
出身校 | 東北大学 |
学問 | |
研究分野 | 機械工学、メカトロニクス、ロボット工学 |
研究機関 |
東北大学 横浜国立大学 オハイオ州立大学 東北文化学園大学 |
博士課程指導教員 | 棚沢泰[2] |
博士課程指導学生 |
課程博士 - 鍾兆偉[3]、王磊[4]、熊谷正朗[5] 論文博士 - 荒川章[6]、熊谷和志[7] |
学位 | 工学博士(東北大学)[2] |
主な業績 | 半規管が角速度受容体であることの解明。1970年代の動的二足歩行の実現。NCホブ盤の高精度化。 |
影響を受けた人物 | 酒井高男 |
影響を与えた人物 | 玄相昊 |
学会 | 日本機械学会、日本ロボット学会、精密工学会、計測自動制御学会、IEEE[1][8] |
主な受賞歴 |
瑞宝中綬章 日刊工業新聞社十大新製品賞 工作機械技術振興賞[9] |
江村 超(えむら たかし、1941年(昭和16年)7月19日[1] - )は、日本の工学者。専門は、機械工学・メカトロニクス。東北大学名誉教授[10][11]。学位は、工学博士(東北大学、1969年)[2]。吸振フライホイール、二相PLLによるサーボモータ制御、非円形歯車を加工できるNCホブ盤の開発、三半規管にヒントを得た角速度センサ、倒立振子や動的二足歩行ロボットの制御などで実績を残した[12][13][14][15]。2021年瑞宝中綬章受章者[16][11]。
来歴・人物
[編集]江村は1964年に東北大学工学部精密工学科を卒業。1966年には同大学大学院精密工学専攻修士課程を修了し、博士課程に進学する。この間、熱力学や流体力学を専門とし[17]、沈降塔による液体噴霧の粒度分布測定法の研究によって1969年に工学博士の学位を取得する[2]。学位を取得して博士課程を修了した江村は、1969年4月より横浜国立大学工学部機械工学科講師に就任。研究では大型船舶用エンジンの熱伝達などを研究する[12]。
1971年からは東北大学に戻り、教授の酒井高男の下で精密工学科の講師となる。江村はマイコンを勉強し、二足歩行ロボットの研究を開始する[12]。1972年には円弧状の足裏を持つ膝のない二足歩行ロボットで、動的な歩行を実現する[12][13]。さらに半規管が角速度受容体であると突き止め、流体を利用した角速度センサ(ジャイロスコープ)を製作している。しかし、二足歩行ロボットは見向きもされず、1974年頃に学会発表した半規管の研究成果もまともに取り扱ってもらえなかった。さらに江村の学内における風当りも強くなり、半規管の研究も進められなくなってしまう[12]。なお、上体駆動や車輪式の倒立振子の安定化制御も実現[13]。倒立振子はかなりの台数が製作されたと言われており、教え子の熊谷正朗にも影響を与えた[15]。
1980年代より、江村は工作機械方面ではサーボ制御や非円形歯車を加工するNCのホブ盤の研究に取り組む[14]。歯切りに伴う周期的な振動を抑えるため、吸振型のフライホイールを開発[18]。これはローターとフライホイールの間にシリコンオイルを満たしたもので[19][18]、NC歯車研削盤にも改良版が用いられた[20]。さらに二相PLLによるサーボモータ制御技術[21]なども開発し、高精度な非円形歯車の加工を実現した[14]。江村の技術は注目を集め、企業との共同研究も盛んになる[22]。これにより、ロボット関連の研究を行う資金的余裕もできた[23][14]。
この間、江村は精密工学科の助教授を経て1985年に教授へ昇進。さらに1989年にオハイオ州立大学に半年間ほど滞在する[17]。この時、カーネギーメロン大学の自動操縦自動車を目にし、帰国後に江村も研究を開始。非円形歯車を自動操縦車のステアリングに応用している[24]。これはヴァーチャル・リアリティによるドライビングシミュレータにも発展し、そのための磁気式モーションキャプチャーも開発している[25]。また、二足歩行ロボットの研究についても、熊谷正朗(博士課程、助手[1])や玄相昊(助手、講師[8])らを中心に、研究が進められた。熊谷は不整地移動のためのセンサや制御技術について研究し[26]、玄は高速な「2足走歩行」について研究を深めた[27][28]。
なお、江村は大学院工学研究科 機械電子工学専攻、バイオロボティクス専攻と所属が変わった後、2005年3月に定年退職。同年4月から東北文化学園大学科学技術部 応用情報工学科 教授に就任する[14][29]。2015年時点で科学技術部 知能情報システム学科 客員教授[30]。2021年秋には瑞宝中綬章を受章した[16][11](受章時の肩書は東北大学名誉教授[11])。
受賞・栄典
[編集]主な受賞歴
[編集]- 1989年 - 第32回(1989年)日刊工業新聞社十大新製品賞[29][注 1]
- 1990年 - 第11次(平成元年度)工作機械技術振興賞(論文賞)[注 2]
- 2000年 - 1999年度 日本機械学会賞(論文)[注 3]
栄典
[編集]主な著作
[編集]学位論文
[編集]- 『沈降塔による液体噴霧の粒度分布測定法に関する研究』東北大学〈博士論文(甲第1082号)〉、1969年3月25日 。博士論文審査要旨 hdl:10097/8909
著書
[編集]- 『メカトロニクス入門』 日刊工業新聞社、1981年3月、ISBN 4-526-01479-6。
解説
[編集]- 「歯車加工とサーボメカニズム」、『計測と制御』第23巻第4号、1984年4月、 345-352頁。
- 「機械制御におけるメカトロニクス」、『日本機械学会誌』第88巻第799号、1985年6月、 603-608頁。
- 「不等速運動動力伝達機構」、『精密工学会誌』第60巻第10号、1994年10月、 1422-1427頁。
- 「超高速NC歯車研削盤」『日本機械学会誌』第97巻第912号、1994年11月、960頁。
- 「ロボット研究こぼれ話 ― 早すぎた研究,三半規管の機能 ―」、『木這子(東北大学附属図書館報)』第28巻第102号、2003年6月、 3-7頁。
- 「メカトロニクス機器のための新しいセンサ技術」、『システム/制御/情報(システム制御情報学会誌)』第48巻第4号、2004年4月、 125-130頁。
- 「倒立振子から始めた動的2脚ロボットの開発」、『日本ロボット学会誌』第23巻第4号、2005年5月、 418-421頁。- 玄相昊との共著
- 「窮して生まれた私のアイデア ― NC歯車加工機の開発を中心にして ―」、『東北文化学園大学科学技術学部年次報告』第7巻、2006年4月、 101-106頁。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 受賞製品 - CNCクランクピン研削盤「GV70/GV100」(豊田工機)[31]
- ^ 受賞論文 - 鍾兆偉、江村超「ダイレクトドライブ式NCホブ盤に関する研究 ― 第1報 慣性ダンパの併用によるサーボ剛性の増大 ―」、『日本機械学会論文集』第53巻第496号、1989年、2561-2567頁。および鍾兆偉、江村超「ダイレクトドライブ式NCホブ盤に関する研究-第2報 歯切精度向上の検討-」、『日本機械学会論文集』第55巻第516号、1989年、2259-2265頁。[32]
- ^ 受賞論文 - 王磊、江村超「トラクションドライブを用いたサーボ機構の研究 ― 第2報 高速回転における制御精度の向上 ―」、『日本機械学会論文集C編』第65巻第633号、1999年5月、1928-1936頁。[33]
出典
[編集]- ^ a b c d 熊谷正朗、江村超「汎用Linuxによるロボット制御システムの開発」、『日本ロボット学会誌』第20巻第2号、2002年3月、 157-163頁。
- ^ a b c d 江村 1969.
- ^ 鍾兆偉『ダイレクトドライブ式NCホブ盤に関する研究』東北大学〈博士論文〉 。(博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨 hdl:10097/9886)
- ^ 王磊『CBNウォームを用いたDD式NG歯車研削盤に関する研究』東北大学〈博士論文(甲第4600号)〉、1992年3月27日。doi:10.11501/3088246。(博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨 hdl:10097/6643)
- ^ 熊谷正朗『人型2脚ロボットの時変傾斜面への適応に関する研究』東北大学〈博士論文(甲第7365号)〉、2000年3月。doi:10.11501/3177864。(博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨 (Report). 東北大学. hdl:10097/7694。)
- ^ 荒川章『車輪を有する移動ロボットの操舵機構と軌道生成に関する研究』東北大学〈博士論文(乙第6179号)〉、1993年9月8日。doi:10.11501/3074637。
- ^ 熊谷和志『球面連鎖を用いた関節機構の構造設計に関する研究』東北大学〈博士論文(乙第8620号)〉、2005年3月9日 。(博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨 hdl:10097/10949)
- ^ a b 江村・玄 2005, p. 421.
- ^ 『官報』号外第250号、令和3年11月4日
- ^ 瀬戸文美 『絵でわかるロボットのしくみ』 平田泰久 監修、講談社〈KS絵でわかるシリーズ〉、2014年1月30日、136頁。ISBN 9784061547674。
- ^ a b c d e “秋の叙勲、褒章受章者のお知らせ”. 計測自動制御学会. 2021年11月6日(UTC)閲覧。
- ^ a b c d e 江村 2003.
- ^ a b c 江村・玄 2005.
- ^ a b c d e 江村 2006.
- ^ a b 瀬戸文美「あのロボットを作った人に会いたい第6回 バラエティ豊かで独創的な倒立振子型ロボットの研究室へ潜入」、『ロボコンマガジン』2009年5月、 68-頁。
- ^ a b c “秋の叙勲受章者”. 毎日新聞 (東京朝刊). (2021年11月3日)。
- ^ a b 江村 2003, p. 3.
- ^ a b 江村 2006, pp. 101–102.
- ^ 鍾兆偉、江村超「ダイレクトドライブ式NCホブ盤に関する研究 ― 第1報 慣性ダンパの併用によるサーボ剛性の増大 ―」、『日本機械学会論文集』第53巻第496号、1987年、2561-2567頁。
- ^ 江村 2006, p. 102.
- ^ 江村 2006, pp. 104–105.
- ^ 江村 2006, pp. 105–106.
- ^ 江村 2003, pp. 3–4.
- ^ 荒川・江村 1994, pp. 1426–1427.
- ^ 江村超、熊谷正朗、野村亮太「回転磁界と差動磁界を用いたモーションキャプチャの開発」、『計測自動制御学会論文集』第38巻第2号、2002年、 129-136頁。
- ^ 熊谷正朗博論・同審査要旨 2005.
- ^ 江村・玄 2005, pp. 420–421.
- ^ 「【座談会】2足歩行ロボット技術の現在」、『日本ロボット学会誌』第30巻第4号、2012年5月、 336-343頁。および「【座談会】2足歩行ロボット技術の現在(完結編) (PDF) 」 、『日本ロボット学会誌』第30巻4(append)、2012年5月、 1-19頁。2018年12月2日閲覧。
- ^ a b “江村超”. researchmap. 科学技術振興機構 (2005年10月31日). 2015年10月12日閲覧。
- ^ “教員紹介”. 知能情報システム学科. 東北文化学園大学. 2015年10月12日閲覧。
- ^ “十大新製品賞 過去の受賞製品 第31回〜第35回”. 顕彰事業の紹介. 日刊工業新聞社. 2015年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月19日閲覧。
- ^ “論文賞一覧”. 助成・実績について. 工作機械技術振興財団. 2015年9月19日閲覧。
- ^ “1999年度 日本機械学会賞,日本機械学会奨励賞受賞者”. 表彰 最近の受賞者一覧. 日本機械学会. 2018年12月3日閲覧。
外部リンク
[編集]- Emura Mechatronics Labratory - ウェイバックマシン(2014年7月20日アーカイブ分)
- 江村超 - researchmap
- 江村超 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース
- 江村超 - CiNii Research