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東武70000系電車

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東武70000系電車
71710編成(2019年12月)
基本情報
運用者 東武鉄道
製造所 近畿車輛
製造年 2017年 -
製造数 112両[1]
運用開始 2017年7月7日
投入先 中目黒駅 - 南栗橋駅
主要諸元
編成 7両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
最高運転速度
  • 100 km/h(東武線内)
  • 80 km/h(日比谷線内)
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
編成定員 1,035人
車両定員
  • 先頭車:140人
  • 中間車:151人
自重 Mc1=34.3 t
M1=33.2 t
M2=32.9 t
M3=35.1 t
M2'=33.2 t
M1'=33.1 t
Mc2=34.5 t
全長
  • 先頭車:20,470 mm
  • 中間車:20,000 mm
全幅 2,780 mm
全高
  • 3,972 mm
  • パンタグラフ付き車両全車3,995 mm
車体 アルミニウム合金
台車 ボルスタ付きモノリンク式片軸操舵台車 SC-107 (TRS-17M)
主電動機 永久磁石同期電動機 (PMSM) 全閉自冷式 SEA-535
主電動機出力 205 kW
駆動方式 WN継手式平行カルダン方式
歯車比 109:14 (7.79)
編成出力 2,870 kW
制御方式 Si-IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 三菱電機製 MAP-214-15V284形、MAP-216-15V286形
制動装置 ATC連動電気指令式空気ブレーキ回生ブレーキ併用)純電気ブレーキ
保安装置
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車内の様子

東武70000系電車(とうぶ70000けいでんしゃ)は、2017年7月7日に運行を開始した東武鉄道通勤形電車である。伊勢崎線(東武スカイツリーライン)日光線東京地下鉄(東京メトロ)日比谷線との直通運転用車両として、20000系・20050系・20070系の置き換えなどを目的として製造された。 2017年10月、グッドデザイン賞を受賞した[2]。 なお、本項では派生形式の70090型電車についても記述する。

概要

これまで日比谷線乗り入れ用車両として充当されてきた20000系・20050系・20070系には全車3扉車編成と一部5扉車編成が混在しており、それによってホームドア設置の支障や乗客の混乱を招いていたため、その対処を主な目的として製造された[3][4]。また、東京メトロでもほぼ同一仕様の13000系が導入されており[5]、同線の車両置き換えが完了し、日比谷線の各駅に2020年度から2022年度にかけてホームドアの設置を進めている[3]

日比谷線内に半径200mを切る急カーブが多数存在していたことから、本形式の導入まで、東武本線の日比谷線への乗り入れには18m級の専用車両が充当されてきたが、測定機器を用いて日比谷線の再計測を行った結果、20m級車両を導入しても弊害がないことが確認され、本系列では20m級7両編成を採用された。(東京メトロ13000系も同様)。70000系と東京メトロ13000系の導入によって東武スカイツリーラインを走行する車両が20m級車両で統一されることから、東武スカイツリーラインでもホームドアを導入する計画があることを、東武鉄道広報が取材に対して言及している[5]

製造は、東京メトロ13000系と同じく、近畿車輛が請け負っている。近畿車輛製の車両が東武鉄道に導入されるのは、本事例が初めてである[6]

なお、以下の本項目において「13000系」と称する場合には、それを東京メトロ13000系電車について指すこととする。

構造と性能

前述のとおり、多くの仕様において13000系との共通点が見られる。

車体

13000系と同形の軽量かつリサイクル性に優れたアルミ合金のダブルスキン構造・レーザー・MIGハイブリッド溶接を採用している[7]が、無塗装の13000系に対して、70000系では20000系の帯色であるマルーンを2つの原色に分けて昇華させた「イノベーションレッド」と「ピュアブラック」の2色の帯をまとわせている[4]。前頭部のデザインは直線的な13000系と異なり、前面下方が後方に折れ曲がったものを採用していて、前照灯のデザインも大きく異なっている[8]

電源・制御機器

電動機と制御機器類は13000系と同じものが用いられており、主電動機には1時間定格205kWの永久磁石同期電動機 (PMSM) を採用[9]することにより、消費電力が20050系の約25%削減される。

ブレーキシステムは回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを搭載している[10]

台車

操舵台車「SC-107」。設計は、東京メトロが担当したため、ボルスタ付台車となっている。

車体に装備される台車は、13000系と同様に、車端側を電動機を搭載した電動軸と車両の中央側を付随軸とし、付随軸は、曲線走行時においてレールと車輪から発せられる騒音を低減するため、輪軸の向きを変えられる自己操舵軸とした操舵台車が採用されている[9]

台車のメーカー形式はSC-107で、東武鉄道社内の独自形式は「TRS-17M」である。

内装

間接照明を採用した13000系に対し、70000系は「室内のどこにいても明るく快適な車両」を目指し、直接LED照明を採用した[11]。シートの割り付けやスタンションポールの配置などは13000系と同様であるが、シートモケット地には、車体外板にも使用されている「エナジードット」柄が織り込まれており、一般席は赤色、優先席では青色の配色となっている。座席表地は龍村美術織物製のものが使用されている[12]

妻引戸のガラスには、1号車(東武動物公園方)から7号車(浅草方)へ順番に東武スカイツリーライン沿線の代表的な風景(隅田川東京スカイツリー東武動物公園など)をイラスト化したものが表されている[9]。このイラストの中には、本系列が乗り入れない北千住 - 浅草間の風景も含まれる。

妻引戸の位置 イラスト 最寄駅
1 - 2号車 東武動物公園のアトラクションと動物たち 東武動物公園駅
2 - 3号車 大凧と牛島の藤 春日部駅
3 - 4号車 元荒川堤の桜 北越谷駅
4 - 5号車 日光街道の松並木 獨協大学前駅
5 - 6号車 隅田川にかかる千住大橋 北千住駅
6 - 7号車 東京スカイツリーと隅田川の花火 浅草駅

客室扉の上部には、13000系と同様に、17インチワイド液晶の車内表示器が、それぞれ3つ搭載される。

その他の相違点としては、ドアエンジンが13000系は空気式を採用していることに対し、70000系は電気式が採用されていること、車両間の妻引戸は、13000系が各車両側に在るものの、70000系では片側のみにあること、また、13000系は、網棚のガラスに江戸切子をベースにした模様が刻まれていることに対し、70000系にはそれが無く、透明なものになっていること、さらに、13000系は間接照明を採用していることに対し、70000系は直接照明を採用していることなどが挙げられる[13]

車内放送久野知美によるもので、久野は出発式にも出席した[14][15]

運用

当初、営業運転開始時期を2017年6月上旬と予定していたが[16]、実際はそれに遅れて東武スカイツリーライン・日光線及び乗り入れ先の東京メトロ日比谷線での営業運転を、ともに同年7月7日から開始することになった[17][18]

70090型

70090型車両

2019年3月26日、東武鉄道は、日比谷線直通列車に有料着席サービスを導入し、これに対応したマルチシート車両(座席は天龍工業[19])として70090型を2020年度に導入することを発表した[20]。さらに、同年12月19日には、列車名を「THライナー」とすること、及び当該ライナーサービスを2020年6月6日から開始させることを発表した[21](普通運用は2020年3月20日から開始した[22])。東武鉄道でのマルチシート車は50090系に次ぐものであり、2019年度までに投入される70000系22編成のうち4編成が当該列車に充当され[23]、2020年度には2編成増備され[24]、同形式の配備は完了した。 現在は、71791Fから71796Fまでの6編成体制で、THライナーや一般運用として運転されている。

脚注

出典

  1. ^ 車両紹介|鉄道事業|東武鉄道
  2. ^ "東武スカイツリーライン・東京メトロ日比谷線直通新型車両70000系が「2017年度グッドデザイン賞」を受賞" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 4 October 2017. 2018年2月1日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月30日閲覧
  3. ^ a b "東京メトロ日比谷線、東武スカイツリーラインに新型車両を導入します ‐日比谷線・東武スカイツリーライン新型車両を導入し、日比谷線にホームドアを設置‐" (PDF) (Press release). 東京地下鉄/東武鉄道. 30 April 2014. 2019年12月2日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月30日閲覧
  4. ^ a b 鉄道ファン 2017, p. 55.
  5. ^ a b 栗原景 (2014年7月26日). “君は日比谷線の新型車両を知っているか 東京メトロと東武鉄道が2016年度から導入”. 東洋経済オンライン 鉄道最前線. 東洋経済新報社. 2014年8月3日閲覧。
  6. ^ "東武鉄道株式会社殿東武スカイツリーライン新型車両(東京メトロ日比谷線相互直通運転車両)の製作者に決定しました" (Press release). 近畿車輛. 17 June 2015. 2020年3月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月2日閲覧
  7. ^ 鉄道ファン 2017, p. 56-57.
  8. ^ 鉄道ファン 2017, p. 56.
  9. ^ a b c 鉄道ファン 2017, p. 58.
  10. ^ 鉄道ファン 2017, p. 59.
  11. ^ 鉄道ファン 2017, p. 57.
  12. ^ 「産業資材」 - 龍村美術織物HP
  13. ^ 小佐野景寿 (2017年4月8日). “東武の新型車両70000系は何が画期的なのか (3/3)”. 東洋経済オンライン 鉄道最前線. 東洋経済新報社. 2017年8月10日閲覧。
  14. ^ 伊勢崎線~日比谷線、新時代へ 東武の新型電車70000系が7月7日、出発進行!”. 乗りものニュース. メディア・ヴァーグ (2017年7月7日). 2017年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年3月4日閲覧。
  15. ^ 上新大介. “東武鉄道70000系、日比谷線直通の新型車両デビュー! 初運行は北越谷駅から”. マイナビニュース (マイナビ). オリジナルの2018年3月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180304021155/https://news.mynavi.jp/article/20170707-a079/ 2018年3月4日閲覧。 
  16. ^ 東武鉄道、新型70000系公開 沿線風景をデザイン、6月から運転”. 埼玉新聞 (2017年4月13日). 2017年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月27日閲覧。
  17. ^ 鉄道ファン 2017, p. 61.
  18. ^ "東武スカイツリーライン・東京メトロ日比谷線直通新型車両「70000系」7月7日(金)運行開始" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 22 June 2017. 2017年10月7日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月30日閲覧
  19. ^ 東武鉄道株式会社様 70090型L/C腰掛納入 - 天龍工業株式会社、2020年8月7日。2020年9月20日閲覧。
  20. ^ "東武線・東京メトロ日比谷線相互直通列車に有料着席サービスを新たに導入します! 〜東武鉄道70000系をベースとした新造車両「70090型」を導入予定〜" (PDF) (Press release). 東武鉄道/東京地下鉄. 26 March 2019. 2019年3月30日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月30日閲覧
  21. ^ "2020年6月6日(土)東武鉄道・東京メトロダイヤ改正 東武線・日比谷線相互直通列車に初の座席指定制列車「THライナー」が誕生!" (PDF) (Press release). 東武鉄道/東京地下鉄. 19 December 2019. 2019年12月19日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年5月30日閲覧
  22. ^ 東武70090形営業運転を開始”. 鉄道ファン・railf.jp. 鉄道ニュース. 交友社. 2020年4月10日閲覧。
  23. ^ "2019年度の鉄道事業設備投資計画 設備投資計画は総額397億円 〜安全・安心で暮らしやすく、そして選ばれる沿線を目指して〜" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 26 April 2019. p. 4. 2019年11月1日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年8月25日閲覧
  24. ^ "2020年度の鉄道事業設備投資計画 設備投資計画は総額219億円 〜安全・安心で暮らしやすく、そして選ばれる沿線を目指して〜" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 25 August 2020. p. 3. 2020年8月25日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2020年8月25日閲覧

参考文献

  • 薄賀則(東武鉄道 鉄道事業本部 車両部 設計課)「東武鉄道70000系」『鉄道ファン』第57巻第9号、交友社、2017年9月、55-61頁。 

外部リンク