宇宙政治学

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宇宙政治学(うちゅうせいじがく、英語:politics of outer space)とは、宇宙法宇宙基本法といった宇宙空間の諸条約、宇宙開発における国際協調と競争、地球外知性との接触による仮想の政治的影響などを研究する学問。

宇宙地政学[編集]

宇宙地政学(astropolitics)は地政学にその起源を有し、最も広い意味での宇宙に適用される理論である。これは政治学の一分野としての安全保障学国際関係論の観点から研究される。地表の監視やサイバー戦争のための人工衛星の軍事利用と同様に、外交における宇宙開発の役割も含む。特に重要な点は、外宇宙からの地球に対する軍事的脅威の防止にある[1]

宇宙計画に際する国際協力は新たな宇宙機関の設立をもたらし、2005年までに官民合わせて35の機関が存在した[2]

宇宙空間(太陽系)の分類[編集]

物理的特性を元にすると、宇宙地政学では宇宙空間を以下の4つの領域に分けられる[3]

地球
地球とその大気圏の内側。地表からカーマン・ラインまでの空間を指し、地球と宇宙空間を往来するすべての物体が通過する場所でもある。地球と宇宙空間を隔てる沿岸地方のような役割を有しており[4]、ドールマンはこれを「『地政学』が『アストロポリティクス』へと変わる領域」と表現している。
地球周辺の空間
最低高度の軌道から静止軌道の上(高度約36,000キロ)までの空間。この中の低い領域では、発射された衛星にとって推進力が不要となり始める高度であり、長距離弾道ミサイルのルートともなる。対する高高度領域の静止軌道は通信衛星気象衛星GPS衛星などが利用している。
月と月周辺の空間
静止軌道の外側から月の軌道までの空間。ここで目にすることができる物体はのみだが、遠地点が月軌道を超えうる長楕円軌道を除くすべての軌道が含まれる。
太陽空間
月軌道以遠の太陽系すべて(太陽重力圏)の空間。火星木星をはじめとする惑星、それらの間に位置する小惑星帯などには、新たな工業化時代を引き起こすほどの天然資源が存在する。また、地球上で増加し続ける人口を支えうる「生存圏」(ドイツ地政学でいう「レーベンスラウム」)でもある。

地政学の開祖でありランドパワーを提唱したハルフォード・マッキンダーは、「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」と述べたが[5]、ドールマンは資源が豊富な太陽空間をこのハートランドに喩え、そこを確保するための東ヨーロッパに相当するのは、宇宙空間への出入口を管理するのみならず常時飛び交う衛星からの情報が地表での戦闘をも有利にしうる地球周辺の空間となることから、そこが宇宙地政学上の最重要領域であると主張した。

宇宙空間におけるチョークポイント[編集]

シーパワーの概念を生み出したアルフレッド・セイヤー・マハンは、「広大な公有地」に見える海洋にも一定の「使い古された通路」があると述べたが[6]、重力のために宇宙空間にもそうしたルートが存在し、海上交通路におけるチョークポイントがそうであるように、宇宙空間にも特定の場所をコントロールすれば他国の軍事行動や貿易を支配できる複数のチョークポイントや通商路が存在する、とドールマンは主張する。以下のチョークポイントはエネルギー資源の存在が疑われる領域付近にあることが多いため、資源へ到達する際の中継点ともなりうる。[7]

ホーマン遷移軌道
低軌道から高軌道、または高軌道から低軌道へと高い燃料効率にて移乗するために、特定のポイントで噴射することによって利用されるとする軌道。ドールマンは「未来の交易路と軍事・交通・通信路」となる可能性が高いと予測している。
対地静止軌道帯
地表の特定地点上空に唯一常に安定して配置できる、静止軌道を含む赤道上空の領域。ここで隣り合った衛星は互いに電波障害を生じる場合があるために制約が課されており、1976年のボゴタ宣言(Bogotá Declaration)は赤道直下の国々の主権をこの軌道帯の高度にまで延長した。ドールマンはこれについて、「『人類共通の遺産』と考えられていた地域を地政学的な紛争地域に変化させてしまった」としている。
ラグランジュ点
2つの公転する天体における引力が相殺し合う5ヵ所しか存在しないポイントであり、それぞれL1からL5までと呼称される。この付近にある物体は、燃料を消費せずとも半永久的に安定して配置されうる。 しかし厳密には、太陽フレア流星塵などが引き起こす摂動のために、本当に安定するポイントは「三角解」や「トロヤ点」と呼ばれるL4とL5のみである。一時期はここのコントロールを要求したL5協会というロビー団体も存在した。
ヴァン・アレン帯
地球を磁力圏で取り囲む帯電した粒子で構成された領域。ここを通る宇宙船などはダメージを負うことがあり、特に南半球の高緯度低空へ張り出したそれは極軌道の衛星にとって危険だとされるため、この領域を避ける航路を通る。

また、エリノア・スローンは宇宙空間におけるチョークポイントの定義について、ヴァン・アレン帯を避けるルートやホーマン遷移軌道、ロケットの打ち上げ施設などといった「交通量が多くて限定的なアクセスをもつ場所」としている。これに加え、打ち上げ施設に適した地域として、地球の自転によりその東側が海に面した海岸付近や赤道付近、居住者がいない広大な土地などを挙げ、そうした条件や各地に衛星との通信基地を多く有する国などが「スペースパワー」として優位になる述べている。[8]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ promotional material for "Meta-Geopolitics of Outer Space" by N. Al-Rodhan
  2. ^ Peter, Nicolas (2006). “The changing geopolitics of space activities”. Space Policy 22 (2): 100–109. doi:10.1016/j.spacepol.2006.02.007. 
  3. ^ エヴェレット・C・ドールマン「宇宙時代の地政戦略 アストロポリティクスによる分析」コリン・グレイ / ジェフリー・スローン編、奥山真司訳『進化する地政学 - 陸、海、空そして宇宙へ』五月書房、2009年、pp.200-202。
  4. ^ Barry Smernoff, ‘A Bold, Two-TrackStrategy for Space’, in Uri Ra‘anan and Robert Pfaltzgraf (eds.) International Security Dimensions of Space (Medfors, MA: Archon 1984) pp.17-31.
  5. ^ ハルフォード・マッキンダー『マッキンダーの地政学 デモクラシーの理想と現実』曽村保信訳、原書房、2008年、p.177。
  6. ^ アルフレッド・T・マハン『海上権力史論』北村謙一訳、原書房、1982年、p.41。
  7. ^ ドールマン、同、pp.206-213。
  8. ^ エリノア・スローン『現代の軍事戦略入門ー陸海空からPKO、サイバー、核、宇宙までー≪増補新版≫』奥山真司 / 平山茂敏訳、芙蓉書房出版、2019年、pp.342-343。

外部リンク[編集]