声優養成所

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声優養成所(せいゆうようせいじょ)は、声優を目指している者に声優になるための知識や演技力などを学ぶ機関である。

概要[編集]

声優養成所(せいゆうようせいじょ)は、声優を目指している一般人に声優になるための知識や演技力などを教授し、養成する機関である。

学校法人とは違い、声優のマネージメントを主とする芸能事務所が独自で経営している場合が多いが、一部の養成所では声優事務所(声優プロダクション)の付属の養成所としてではなく、養成学校のような形式で、単に養成だけを目的(スクールビジネス)としている所もある。青二プロダクションアーツビジョンIAMエージェンシーなどの声優事務所から、声優個人が経営する事務所まで多くが傘下に養成所を持っており、養成所に通う受講生からの受講費(入所金やレッスン料など)が声優事務所・声優養成所の大きな収入源となっている。

歴史[編集]

日本で初めて声優という職業を生業とした人は、「ぶらり途中下車の旅」のナレーターで有名な滝口順平とされる。1953年に地上波のテレビ放送が始まり、1956年には早くも「カウボーイGメン」という海外ドラマが放送され、生放送で吹き替え全役を一人で演じたのが滝口である[1]

声優という言葉が初めて使われたのは、ラジオの時代である。1925年7月に東京放送局(現在のNHK)でラジオ本放送が開始される。その年にラジオドラマを放送。1941年にはそのラジオドラマに出演するため、俳優を養成するための劇団(NHK放送劇団)を創設した。これが、最初の養成所とも言われている[2][3]。さらに、その第1期合格者を報じるために新聞で初めて「声優」という言葉が使われた。

1970年代半ば、「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」が放映され人気をはくした。また、1981年、初のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)「ダロス」が作られ、アニメの世界に新しい分野が生まれる。これまでアニメは子供が見るものであるといわれていたが、このブームによりアニメは娯楽としても市民権を手に入れた。

アニメブームに伴って、声優への注目が高まり第二次アニメブームと呼ばれるほど盛り上がったこの時期にぷろだくしょんバオバブ81プロデュースアーツビジョン大沢事務所などの声優事務所が設立され、既存のプロダクションは声優専門の養成所を設立した。声優の専門養成機関が本格的に誕生したのはこの時期である。この時期に声優志望の若者が育成所に入り、そこを卒業し事務所に採用されれば新人声優として日俳連のランクに登録され、アニメのアフレコを中心に活動するという今の形が確立した。そのような形で育てられた声優たちが大ブレイクするのが第三次アニメブームである。

1992年美少女戦士セーラームーンの放映により声優人気が爆発した。これはキャラクターの人気から派生するものとは異なり、声優個人に魅力を感じはじめ、人気女性声優は、やや退潮ぎみだったアイドル世界への、新たな発信源となった。このころから、声の出演にとどまらず声優個人のCDデビュー、コンサート、写真集と活動が幅広くなり、声優雑誌も創刊され、声優を目指す人が増加した[4][5]。声優養成所に通う人が増えている要因としてアニメ市場の拡大があげられる。一般社団法人日本動画協会の「アニメ産業レポート2016年」によると、第三次アニメブームの1992年は、アニメ番組の放映作品数は91本だった。しかし、2015年の放映作品数は約4倍の341本に増えている。市場規模も1兆8000億を超えた[6][7]。このように、アニメが身近になることにより若者の関心が増えた。そして、声優の活躍する場が増えたため認知度が上がったため目指す人が増えたと言える。

ただ、声優の現状に苦言をさされてもいる。『これまでは芝居の経験者が多かったが、最近は初心者が増えて、年齢も下がってきた』。今年4月に、おもちゃメーカー、バンダイの系列会社『ミューラスが開校したタレント養成所の声優・俳優コースでも、声優の希望者は、俳優の3倍にのぼるそうだ。声優はアニメ以外にも、テレビゲームなど活躍の場が広がっている。なかには、武道館コンサートを開いた人気声優もいる。プロとして食べていけるのは100人に1人、ともいわれているが、若者にとっては、『別世界への近道』に見えるのかもしれない」と警告を鳴らしている。」[8]と記事で述べた。

さらに、声優の浪川大輔は「声優を目指している人は30万人ぐらいいる。声優自体はおよそ一万人いる。その中でも、声優単体で、食べていける人は300人ぐらいだ。1万人は全然食べられていない」と声優業界の過酷さを語った[9]。また、声優の岩田光央は自書で、「僕が声優道を歩み始めた30年前と比べてみると、その職業観は大きく変わりました」[10]と語った。そして、「声優の仕事を始めた30年前に比べれば、仕事の幅も機会も広がっています。(中略)志望者が30万人にまで膨れ上がった」[11]とも語る。雑誌声優グランプリ付録声優名鑑によれば、2001年に掲載された声優の数は370名以上、2015年には1192名になっている[12]

声優養成所の分類[編集]

声優養成所は3つに分類できる。一つは声優俳優プロダクションが経営する養成所。二つ目は劇団付属養成所。三つ目は学校法人が経営しているいる専門学校がある[13]。実際に活躍している声優の8割は専門学校出身者と言われている[14][注 1]

声優の養成所とは、多くの場合声優プロダクションなどが運営を行っている。一方専門学校とは、声優になるための技術を磨く訓練校である。しかし専門学校の場合、卒業後ほとんどの学生が事務所に所属することはなく、養成所に新たに入り直すケースも多い。

プロダクション経営の養成所[編集]

週1回からでも声優になるためのレッスンがうけられる。優秀な場合ごくまれに1年で修了する飛び級もあるが、2年制のところが多い。さらに声優プロダクションが直接養成所を設けている場合が多いため養成所の中でも頭角をあらわせば、エスカレータ式にその事務所に所属することができデビューにつながりやすい。また、自分の入りたいプロダクションに養成員として入れることができる。

一方、入所するのにオーディションがあるため、合格しないと養成所に入ることはできない。そのため入所できる人が限られる[15]

さらに、コマ数が少ないため実践的な演習になったりする。例えば、地方出身者向けのイントネーションの練習など基礎的な学習が省かれる場合がある[16]

インターナショナル・メディア学院[編集]

インターナショナル・メディア学院は、声優プロダクションであるIAMエージェンシー直結の声優養成所である。IAMグループの教育事業として2006年に開校された。 全国18ヶ所(東京校、名古屋校、大阪校、福岡校、岡山校、札幌校、仙台校、高松校、大宮校、新潟校、浜松校、宇都宮校、長野校、広島校、金沢校、柏校、八王子校、横浜校、ハワイ校)に養成所がある。多くの声優養成所では年齢制限が設けられている一方で、インターナショナル・メディア学院は年齢制限のない数少ない声優養成所である。声優コース、アニソン声優コース、Youtube声優プロコース、声優ダンサーコースと声優単科以外にも幅広くコースを展開している。

日本ナレーション演技研究所[編集]

日本ナレーション演技研究所は声優事務所のアーツビジョンが経営している養成所である。現在代々木、池袋、お茶の水、立川、町田、大宮、柏、横浜、千葉、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸に養成所がある[注 2]。週1回からレッスンが受けられ、基礎科・本科・研修科に分かれており、基礎から実践まで幅広く習うことができる[17][18]

学校法人の専門学校[編集]

学校法人が経営している専門学校ではほかの学校と同じで全日制で授業を行っている。そのため授業時間が長いので、基礎からみっちりと技術を身に着けることができる。

さらに、プロダクション経営とは違い特定のプロダクションに縛られないため、入所試験を受けられる事務所が多い。

しかし、学費が年間で100万円から150万円ほどかかる。さらに全日制のため、朝から晩まで授業がある。仕事をしている人や他学校に在籍している人には両立が難しい[16]

劇団付属養成所[編集]

劇団が経営している養成所である。劇団付属の養成所は各劇団の舞台に立つ演技者を育成するのを重きを置いている。声優として活躍する人もいるが、養成所としては声優を育成しているとは言えないのだ。ほぼ毎日芝居にかかわるあらゆるレッスンが受けられるため、覚悟と実力が育つ場所である[19]

主な声優事務所[編集]

プロダクション経営養成所[編集]

劇団付属養成所[編集]

学校法人の専門学校[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ ただ専門学校、養成所に通わずとも、直接事務所に所属することは不可能ではない。前例に、花江夏樹がいる。彼は、直接自分の声を収録したものを事務所に送り声優となった。だが、才能と実力が伴わない志願者からの入門希望はほとんどの場合、門前払いされてしまう。ただ、稀な例とはいえ人より抜きんでた実力さえ備わっていれば、「飛び級」することは可能である。
  2. ^ 2018年4月より難波校、天王寺校開校予定
  3. ^ 現在は「青二塾
  4. ^ 現在は「日本ナレーション演技研究所」

出典[編集]

  1. ^ 声優の歴史とこれから”. 総合学園ヒューマンアカデミー. 2018年1月10日閲覧。
  2. ^ 声優という仕事の歴史”. 声優ナレーター応援project. 2018年1月11日閲覧。
  3. ^ 山本.2007(P60)
  4. ^ 山本.2007年(P64~P65)
  5. ^ 夏葉・町口・深水.2015年(P19~21)
  6. ^ 関.2017年 (P5)
  7. ^ 一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2017」2017年10月24発行によると2016年度のアニメ産業の総額は2兆9億円を記録したと記載された。
  8. ^ 『朝日新聞』1997年08月21日付朝刊「アニメ夢見る声優の卵、急増」 
  9. ^ TBSジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』2013年10月26日放送
  10. ^ 岩田.2017年 (P5)
  11. ^ 岩田.2017年(P49~50)
  12. ^ 岩田.2017年(P49)
  13. ^ 山本.2017(P120~122)
  14. ^ 岩田.2017(P50)
  15. ^ 関.2017年(P58)
  16. ^ a b 声優養成所と専門校はどっちを選ぶべき?”. 総合学園ヒューマンアカデミー. 2018年1月11日閲覧。
  17. ^ 声優・ナレーターの養成所【日本ナレーション演技研究所】”. 日本ナレーション演技研究所. 2017年12月16日閲覧。
  18. ^ 日本ナレーション演技研究所パンフレットより
  19. ^ 山本.2007年(P122)

参考文献[編集]

  • 山本健翔 2007年『声優になるには』ペリカン社
  • 岩田光央 2017年『声優道』中央公論新社
  • 夏葉薫 町口哲生 深水黎一郎 2015年『声優論』河出書房出版
  • 関智一 2017年『声優に死す~後悔しない声優の目指し方~』角川書店
  • 岡田真澄 1996年『女の職業解体シリーズ3~アニメ声優~』広美(株) 出版事業部
  • 大塚明夫 2015年『声優魂』星海社(株)

関連項目[編集]