人魚姫の像

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座標: 北緯55度41分34.3秒 東経12度35分57.4秒 / 北緯55.692861度 東経12.599278度 / 55.692861; 12.599278


人魚姫の像(にんぎょひめのぞう、デンマーク語Den lille havfrue英語The statue of The Little Mermaid)は、ハンス・クリスチャン・アンデルセン童話人魚姫』をモチーフにしたブロンズ像デンマークコペンハーゲンにあり、観光名所として知られる。

概要[編集]

岩の上に腰掛けた格好をした像であり、コペンハーゲン港英語版北東部ランゲルニエ埠頭(Langelinie)にある。コペンハーゲンのシンボルであり、有名な観光名所でもある。護岸部に設置されており、通常は岸から数m先の海上にあるが、干潮時には歩いて像までいくことができる。

高さ1.25m[1]、重量約175kg[2]

製作の経緯[編集]

『人魚姫』の物語を演じたバレエに感銘を受けた、カールスバーグ醸造所の創立者の息子カール・ヤコブセンは1909年、彫刻家エドヴァルド・エリクセンに人魚姫の像の制作を要請する。1912年9月14日の試験的な設置を経て1913年8月23日、現在の場所で恒久的に公開された[3]。そのバレエの主役を演じ当時デンマーク王立劇場プリマドンナであるエレン・プリースがモデルとして予定されたが(厳密には真偽不明[4])、彼女が裸体モデルを拒否したため頭部のみのモデルとなり、エドヴァルドの妻エリーネ・エリクセンが首から下のモデルとなっている。

アンデルセンの原作では、腰から下は魚だったはずだが、この人魚像は二本足の足首の辺りまで人間で、それ以下が魚のひれになっている。それは、肢体のモデルになったエリーネの脚があまりに美しく、鱗で覆うのがしのびなかったためとの説がある[5]

エリーネ・エリクソンの妹のインゲボルグ・セバルセンは、岡田眞澄の母である[6]

像の損壊[編集]

人魚姫の像はヴァンダリズムの対象となり、幾度も損傷を受け、そのたびに修復されている。特に断らない限り[7]を出典とする。

  • 1961年髪の部分を赤く塗られ、ブラジャーとパンツを描かれた。
  • 1963年全身を赤く塗られる。
  • 1964年4月24日芸術家のヨルゲン・ナッシュらにより、頭部が挽き切られ持ち去られた。取り戻すことは出来ず、新たに制作された頭部が設置された。
  • 1976年全身を赤く塗られる。
  • 1984年7月22日右腕が切断され、その2日後に破壊行為を後悔した2人の若者から切断された腕が返却された[8]
  • 1990年首に18センチメートルの深さの切れ込みが入れられ、頭部が切断されかけた
  • 1998年1月6日頭部を失い、約1ヶ月後の2月4日、覆面男が突然地元テレビ局に現れて切断された頭部を持ってきた[9]
  • 2003年9月11日ダイナマイトと思われる爆発物で像の台座にあたる岩石が爆破された[10]
  • 2004年12月16日黒いブルカがかぶせられ、そのブルカにはデンマーク語で「EUトルコ?」と書かれた襷が掛けられていた。同日にトルコのEU加盟問題を話し合うEU首脳会議がブリュッセルで始まった[11]
  • 2006年3月8日手にディルドーを付けられ、緑色のペンキが全身にかけられて「3月8日」と書かれる。当日は国際女性デーである。
  • 2007年3月3日全身をピンクで塗られる[12]
  • 2007年5月全身を赤く塗られる。
  • 2007年5月20日全身を覆う黒いイスラム装束がかけられ、頭部にスカーフが巻かれた。
  • 2017年5月30日全身を赤いスプレー塗料で塗られる。像の近くに「フェロー諸島の鯨を守れ」という文字が書かれた。
  • 2017年6月14日左側に青と白の塗料をかけられた[13]

複製[編集]

1970年、大分市の水族館にこの像のレプリカ到着。デンマーク国外としては世界初[14]。現在日本国内には大阪港[15]、名古屋港[16]、 愛知県安城市のデンパーク[17]などにある。

日本国外では、Mermaids of Earthに記載されているだけで少なくとも13か所に、この像の損傷を受けていない複製が設置されている[18]。カリフォルニア州ソルバング、アイオワ州キンボールトンピアトラ・ネアムツ(ルーマニア)[19]トレホン・デ・アルドス(スペイン・マドリード州)、ソウル[20][21]にもある。

なお、出典[7]によると、コペンハーゲン港に設置してある像自体がコピーで、オリジナルはエリクセンの子孫により公開されていない場所に保管されている。

その他[編集]

上海万博[編集]

コペンハーゲン市議会は、2010年の上海国際博覧会(5月1日から10月31日)の間、デンマーク館でこの像を展示することを可決した[22]。像が上海にある間、コペンハーゲン近郊のチボリ・ガーデンズの湖の岩の上にコピーが展示された[23]

2010年11月20日現地時間14:00、元の場所に戻る。経済産業大臣Brian Mikkelsen、市長Frank Jensen、駐デンマーク中国大使Xie Hangshengが帰還のセレモニーに参加した[24]

著作権[編集]

この像は、作者の死後70年の2029年まで(正確には2030年1月1日、保護は終了する)著作権で保護されている。Edvard Eriksens Arvinger I/Sという会社が著作権を管理しているが、それに基づき、いくつかの彫像に対して訴訟が提起された[25]。2018年現在、像のレプリカはネットを介して購入できるが、エリクセンの孫のAlice Eriksenの許可を得ている[26]

Wikipediaデンマーク語版では、この像の写真は加工され、像の外見がわからないようになっている。

世界三大がっかり[編集]

『世界三大スープ言えますか?』では、「コペンハーゲンの人魚、シドニーのオペラハウス、シンガポールのマーライオン」を「世界三大がっかり」とする[27]。ただしこの定義は文献によって異なり、『《図解》世界の「三大」なんでも事典』では、「シンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫、ブリュッセルの小便小僧。シドニーのオペラハウスが加えられることがある」となっている[28]


脚注[編集]

  1. ^ Little Mermaid Copenhagen”. Denmark.net. 2018年10月30日閲覧。
  2. ^ Travelling Little Mermaid to resurface in Copenhagen by video”. INDEPENDENT (2010年4月30日). 2018年10月30日閲覧。
  3. ^ The Little Mermaid”. Copenhagen Pictures (1999年6月21日). 2018年10月30日閲覧。
  4. ^ 田辺悟 『ものと人間の文化史 143・人魚』 法政大学出版局、2008年、206頁。ISBN 978-4-588-21431-8
  5. ^ 神谷敏郎 『人魚の博物誌』 思索社、1989年、12頁。
  6. ^ 岡田美里 (2013年8月17日). “マーメイドは祖母のお姉さん”. まだみぬ物があるところ. 2018年11月1日閲覧。
  7. ^ a b Alter schützt Meerjungfrau nicht vor Rabauken”. Der Spiegel (2008年8月17日). 2018年10月4日閲覧。
  8. ^ MARIA LÜTZEN (2007年8月1日). “Den Lille Havfrue reddet fra gramsende turister”. Jyllands-Posten. 2018年10月30日閲覧。
  9. ^ Feminists claim responsibility for statue attack”. BBC News. BBC (1998年1月8日). 2018年10月30日閲覧。
  10. ^ Little Mermaid's unexpected swim”. BBC News. BBC (2003年9月12日). 2018年10月30日閲覧。
  11. ^ 飯塚恵子 (2004年12月17日). “人魚にブルカ、意味はともかく日本人観光客は大騒ぎ”. YOMIURI ONLINE. 読売新聞社. 2018年10月30日閲覧。
  12. ^ Little Mermaid statue vandalized”. The Associated Press (2007年5月15日). 2018年10月30日閲覧。
  13. ^ 人魚姫の像がまた被害、青と白の塗料かけられる デンマーク”. フランス通信社 (2017年6月14日). 2017年7月19日閲覧。
  14. ^ 『海に魅せられた50年 「マリーンパレス」の40年と「うみたまご」の10年』 マリーンパレス50周年記念誌編纂委員会、株式会社マリーンパレス、2015年、20頁。
  15. ^ 『楽楽 大阪(2016年版)』 ジェイティビィパブリッシング、2015年、143頁。ISBN 9784533105203
  16. ^ ぐるっとまるごと満喫しよう!”. 公益財団法人名古屋みなと振興財団. 2018年10月30日閲覧。
  17. ^ 土屋誠二「安城産業文化公園デンパーク」、『風力エネルギー』第22巻第1号、一般社団法人日本風力エネルギー学会、1998年、 6-7頁。
  18. ^ Public Art Mermaid Statues & Sculptures around the World”. Mermaids Of Earth. 2018年10月30日閲覧。
  19. ^ Timothy Aeppel (2009年7月27日). “In a Mermaid Statue, Danes Find Something Rotten in State of Michigan”. WSJ.com. Dow Jones & Company, Inc.. 2018年10月30日閲覧。
  20. ^ Joel Lee (2016年10月31日). “Little Mermaid’s replica statue unveiled in Seoul”. The Korea Herald. 2018年10月30日閲覧。
  21. ^ 유원모(ユ・ウォンモ) (2016年7月8日). “デンマーク国宝「人形姫の像」のレプリカ、漢江に10月に設置”. 東亜日報. 2018年11月1日閲覧。
  22. ^ Maid in China”. Jyllands-Posten (2008年9月11日). 2018年10月31日閲覧。
  23. ^ The Little Mermaid statue in Tivoli Gardens in 2010”. Mermaids of Earth (2012年11月27日). 2014年5月25日閲覧。
  24. ^ Dorte Heide Pedersen (2010年11月21日). “Havfruen er hjemme igen”. Jyllands-Posten. 2018年10月4日閲覧。
  25. ^ In a Mermaid Statue, Danes Find Something Rotten in State of Michigan”. THE WALL STREET JOURNAL (2009年7月27日). 2018年10月31日閲覧。
  26. ^ Products and prices”. THE LITTLE MERMAID. Edvard Eriksens Arvinger I/S. 2018年10月31日閲覧。
  27. ^ 雑学教養研究会 『ザ教養 世界三大スープ言えますか?』 新潮社、2002年、133-134頁。ISBN 978-4104552009
  28. ^ 世界の「ふしぎ雑学」研究会 『《図解》世界の「三大」なんでも事典』 三笠書房、2007年、176-177頁。ISBN 978-4-8379-6379-0

関連項目[編集]

外部リンク[編集]