折田先生像
折田先生像(おりたせんせいぞう)は、京都大学の前身の一つである旧制第三高等学校の初代校長折田彦市(おりた ひこいち)の業績を讃えるために製作された銅像である。京都大学構内に設置されていたが、派手な落書き・いたずら(オブジェ化)が相次ぎ有名になる。本来の銅像が1997年に撤去されると、「折田先生像」と題してかつての設置状況を模倣したオブジェが制作・展示されるようになった。2000年代半ばより入学試験シーズンに定期的に登場するこのオブジェも、「折田先生像」の名で呼ばれている。
目次
本来の「折田先生像」[編集]
折田彦市(1849年 - 1920年)は第三高等学校の校長を(その前身校も含めて)30年にわたって務め、京都帝国大学の設立に際しても創立委員としてかかわった人物である。折田校長の下で培われた三高の「自由の学風」は、後身である新制京都大学にも影響を及ぼしているとされている。
折田の功績を顕彰するための像は1940年以来過去3回製作されている。
- 1940年(昭和15年) - 三高卒業生有志者の寄付により像が制作され、三高本館前に設置される。
- 1941年(昭和16年) - 太平洋戦争の金属供出により失われる。代わりに石膏像が制作される。
- 1950年(昭和25年) - 旧制高等学校廃止を記念し、同窓生の寄付により銅像が制作される。
現存する銅像「折田先生像」は1950年、辻晋堂(京都市立美術大学教授)製作によるものである。銅像は、かつての三高本館であった京都大学教養部A号館の前に設置された(教養部は1993年に廃止され、総合人間学部に移行)。しかし、ある時期から落書き・いたずらが相次いだため(後述)、1997年3月に大学当局は折田の像および台座を設置場所から撤去し、総合人間学部図書館の地下書庫に収納した。この像は13年半後の2010年10月より、京大吉田キャンパス本部構内南側の三高記念館設置準備室で一般公開が再開されている[1]。
銅像への落書き[編集]
いつの頃からかは不明であるが、この銅像に対する落書き・いたずらが行われるようになった。またそれが1回限りの単発的な出来事でなく繰り返し行われたことから、大学内外で衆目を集めるようになる。初期はペンキによる着色など単純なものであったが、行為は徐々にエスカレートし、「腕を取り付ける」「自転車を担がせる」などの物体の付加や、像全体を覆って別の物として展示することにその内容が移行していった。
遅くとも1986年には顔を赤くスプレーされ、台座に「怒る人」と落書きされた、その後の姿に比べればごくシンプルなバージョンであり、一部で「京大の『怒る人』」として知られていた。これは比較的長い期間放置されていたが、1991年に何者かが赤い顔を青に塗り替え、台座に「怒らないで」と上書きした。これを機に、一連の落書きの連鎖が始まることになる。
「怒らないで」の次に、彼らが行った落書きは「歌舞伎の隈取」の意匠であった。これはすぐさま大学側によって消された。その後、合成樹脂による両手を取り付けた「れーにん」、巨大な被せ物による「モアイ」など、初期の何種かのバージョンが製作された。その後も折田先生像への落書きは一種の文化のように継承され、回を追うごとにエスカレートしていき、一部では銅像アートと呼ばれるさまざまな作品を残した。
- 赤と黄色に彩られ、頭にカップを乗せたヤキソバンバージョン[2][3]
- 肩に自転車を掛け、「私も入ってます!!」と張り紙のされたサイクリング部勧誘バージョン
- 女性用下着を顔につけ、「フォオオオ」と書き込まれた変態仮面バージョン
- 全体にダンボールによって作られたモアイ像を被されたモアイバージョン
折田彦市先生は、第三高等学校の校長として京大の創設に尽力し、京大に自由の学風を築くために多大な功績を残した人です。 どうかこの像を汚さないで下さい。
総合人間学部
これに対し、1994年から大学は一旦銅像を清掃し、横に右記のような立て看板を立てて学生に落書きを止めるよう要請した。しかしこの立て看板に対抗して、「この像を汚さないで」と銅像に早速落書きされた。以後もアンナミラーズのウェイトレスバージョン、ウルトラマンゼアスバージョン、「お父様、お母様、今まで育ててくれてありがとう。今日、私…お嫁に行きます」と張り紙のされた花嫁バージョンなど衣装や被り物が数多く制作された。こうした銅像に対する落書き・いたずらは構内整備を機に折田先生像が撤去される1997年3月まで続いた[3][4]。
銅像撤去後のオブジェ制作[編集]
度重なるいたずらを理由に大学側は銅像を総合人間学部図書館の地下に収納する措置を採ったため、1997年3月限りで銅像そのものは姿を消すこととなった。このため本来の銅像や台座に対して何かを描き加えたり装着したりするということはなされなくなったが、それに代わって独自のオブジェが制作され、折田像が元あった場所に展示される事態となった。展示にあたっては像(オブジェ)のみならず、台座および像の取り扱いに関する注意書きの立看板も含めて折田像がかつて設置されていた状況を模倣するパロディへとエスカレートするようになった。
折田先生像撤去後すぐに『北斗の拳』のラオウを模した漢の生き様バージョンが設置された。その他にも力石徹バージョン[2]、スターガオガイガーバージョン、さらには快傑ズバット像など、さまざまな新企画が示された。
2002年には場所を総合人間学部図書館前に移し、王蟲を連れたナウシカを模した風の谷のナウシカバージョン[3][5]、M16のモデルガンを構えたゴルゴ13バージョン[2]などが製作された。像だけでなく、横の「落書きしないように」との看板もキャラクターに合わせ文言を変えて再現するのが先生像撤去後の特徴の一つである。
それも2003年7月頃に撤去されていたが、2004年2月の入試期間前後にひょっこりひょうたん島のサンデー先生バージョンが作られ、復活した。そして、同年7月には再び撤去された。2005年2月下旬には場所を吉田南構内正門付近に移し、新たにDr.スランプのキャラクターを模したスッパマンバージョンが出現したが同年5月下旬に撤去された。
2006年2月中旬、折田大仏と題された像が設置されたが、後日何者かに大仏は破壊された。同年2月下旬、ちびまる子ちゃんのキャラクターを模した永沢くんバージョンが出現し、同年3月25日に撤去された。
2007年2月下旬、不二家のマスコットキャラクターを模したポコちゃんバージョンが出現したが、同年3月19日未明に何者かにより破壊され翌日に撤去。その後は大学側で保管されている[6]。
2008年2月下旬、アンパンマンの登場キャラクターを模したてんどんまんバージョンが出現した[7][4]。
2009年2月下旬、仮面ライダーV3の登場キャラクターを模したライダーマンバージョンが出現した[8](ライダーマンに変身する結城丈二は京都大学工学部出身という設定である)。
2010年2月25日、『ポケットモンスター』の登場キャラクターを模したタケシバージョンが出現した[9]。
2011年2月25日、グラクソ・スミスクラインの総合感冒薬「コンタック」のキャラクターを模したMr. CONTACバージョンが出現した[10]。横に掲げられた看板の声明は、Mr.CONTAC の声を務める笑福亭笑瓶[11]の名義で出された。なお、これに先立つ24日には、にせほるんという Twitter の bot[12]を模した折田先生像のパロディが何者かによって設置されたが、27日までに撤去された。
2012年2月25日、地上デジタル放送化のマスコットキャラクターである地デジカバージョン[13]が出現した。看板の声明は、同じく地上波デジタル放送推進のプロモーションを務めた草彅剛の韓国語読みであるチョナン・カン名義で出された。
2013年2月25日、ロッテのチョコレート菓子・TOPPOの販売促進キャラクターであるノッポトッポちゃんバージョン[14]が出現した。看板の声明はTOPPOのテレビコマーシャルに出演した経験のある長瀬智也の名義で出された。
2014年2月25日、森永製菓のチョコボールのマスコットキャラクターであるキョロちゃんバージョン[15]が出現した。看板の声明はチョコボールの「エンゼル」名義で出された。
2015年2月25日には漫画「サザエさん」に登場する磯野カツオの親友、中島弘バージョンが出現。なお、像の肩には小さなカツオ像が、像の後ろ側には小さなタマの像があった。看板の声明はサザエ名義で出された[16]。この年は本部構内の時計台前のクスノキにアナと雪の女王に登場する「オラフ」の小さな人形を多数吊るした「折フ先生の森」と称するオブジェも登場し、看板ではなく張り紙ではあったが、教養部名義で声明文も掲出された。
2016年2月25日、任天堂のゲームソフトである星のカービィシリーズの主人公キャラクターであるカービィバージョンが出現した。像の後ろ側にはピンク色が共通しているためなのか、小さな桂ヒナギクのフィギュアがあった。看板の声明はカービィのライバルである「メタナイト」名義で出された。看板裏の写真はAV女優の上原亜衣のポートレート写真が貼られた。
2017年2月25日には、お笑い芸人である、コウメ太夫[17]バージョンが出現した[18]。看板の声明は「狩野英孝」名義で張り出されていた。さらに、その横には京都大学からの告示に似せた偽告示文が掲示されており、発出者はよく読むと京都大学ではなく「京都太夫」を称する謎の人物によるものであった。また「折田先生」の名称が、「告示文からの追求から逃れるため」として「川田先生」と改称させられていた。
看板裏写真[編集]
「京都大学からのお願い」看板の裏には女性芸能人の写真が貼られることが恒例になっている。異例のものとしては2014年の艦隊これくしょん -艦これ-のキャラクター、島風のフィギュア写真[19]、2016年のAV女優である上原亜衣がある。2017年には、アイドルマスター シンデレラガールズのキャラクターである島村卯月が登場し、女性芸能人という設定の非実在人物が初登場となった[20]。
「再建」後の一覧[編集]
| 年度 | 像のモチーフ | 付随した制作物 | 看板の声明者 | 看板裏写真 |
|---|---|---|---|---|
| 2000年[21] | ラオウ (北斗の拳) |
武論尊 | - | |
| 2002年[22] | ナウシカ (風の谷のナウシカ) |
王蟲 (風の谷のナウシカ) |
総合人間学部 | - |
| 2003年 | ゴルゴ13 (ゴルゴ13) |
さいとう・たかを | 安倍なつみ | |
| 2004年 | サンデー先生 (ひょっこりひょうたん島) |
ドン・ガバチョ | 上戸彩 | |
| 2005年 | スッパマン (Dr.スランプ) |
- | 石原さとみ | |
| 2006年 | 永沢 君男 (ちびまる子ちゃん) |
藤木君 (ちびまる子ちゃん) |
さくらももこ | 長澤まさみ |
| 2007年 | ポコちゃん (不二家のキャラクター) |
黒塗り | 綾瀬はるか | |
| 2008年 | てんどんまん (それいけ!アンパンマン) |
やなせたかし | 北乃きい | |
| 2009年 | ライダーマン (仮面ライダーV3) |
V3 | 優木まおみ | |
| 2010年 | タケシ (ポケットモンスター) |
イワーク | 広末涼子 | |
| 2011年 | Mr.CONTAC (グラクソ・スミスクラインのキャラクター) |
笑福亭笑瓶 | 加藤あい | |
| 2012年 | 地デジカ (地上デジタル放送推進協会のキャラクター) |
ニコニコテレビちゃん (ニコニコ動画のキャラクター) |
チョナン・カン | 本仮屋ユイカ |
| 2013年[23] | ノッポトッポちゃん (ロッテのキャラクター) |
きのことたけのこ (明治製菓のキャラクター) |
長瀬智也 | 岩佐真悠子 |
| 2014年[19] | キョロちゃん | 連装砲ちゃん (艦隊これくしょん -艦これ-) |
エンゼル | 峯岸みなみ 島風 |
| 2015年[24] | 中嶋弘 (サザエさん) |
磯野カツオ (サザエさん) タマ (サザエさん) チンアナゴ |
サザエ | 菅野美穂 |
| 2016年[25] | カービィ (星のカービィ) |
メタナイト | 上原亜衣 | |
| 2017年[20] | コウメ太夫 | 狩野英孝 | 島村卯月 |
大学当局の対応[編集]
2008年に登場したてんどんまんバージョンに対しては、京都大学高等教育研究開発推進機構が大学ホームページを通して公式声明を発表した[26]。例年置かれる像の出来映えを賞賛し、折田先生像を「吉田南構内の風物詩の一つ」として事実上黙認する構えを見せた。また、いつも何者かに折田先生像が破壊される事実に対しては「創作物を壊すという行為は、最も悪質で下劣で野蛮な行為」と厳しく断じた。一方で『アンパンマン』シリーズの著作権を保有する企業から問い合わせがあり、撤去要求はなかったが著作物のイメージを損ねないよう要請があったことを明かした。これを受けて機構は制作者が自主的に像を撤去することを呼びかけ、それが叶わぬときは誰の目にも劣化したことが明らかになった際に機構が撤去するとした[4][27]。
折田彦市一族の対応[編集]
折田彦市の曾孫は、朝日新聞の2012年の取材に対し、「折田一族全員、落書きや現状を知っています。誰も怒っていません」とコメントしている[3]。
脚注[編集]
- ^ 「安全圏」で御利益? オリジナル折田像を展示 京都新聞ウェブサイト 2011年2月17日 2011年2月26日閲覧
- ^ a b c 「ゴルゴ13、京大にも来ていた──伝説の「折田先生像」」 ASCII.jp デジタル、2008年4月14日。
- ^ a b c d “【京大・折田先生像】我こそ自由の体現者”. 朝日新聞デジタル. (2012年3月1日) 2017年1月22日閲覧。
- ^ a b c 「京都大学入試シーズンの風物詩・折田先生像、今年は「てんどんまん」」 GIGAZINE、2008年2月29日。
- ^ 『朝日新聞』2012年(平成24年)2月22日付大阪本社夕刊3面。
- ^ 京都大学 高等教育研究開発推進機構 「折田先生像」について
- ^ 「「てんどんまん」に大変身 京大の折田先生像 受験生を出迎え」 京都新聞Web News、2008年2月25日。
- ^ 「京大、「ライダーマン」がお出迎え 国公立大入試の二次試験始まる」 京都新聞Web News、2009年2月25日。
- ^ 今年はポケモン「タケシ」京大・折田先生像 京都新聞Web News、2010年2月25日。
- ^ 京大「合格」効用あり!? 折田先生像 受験生出迎え 京都新聞Web News、2011年2月25日
- ^ 1日2回の総合感冒薬「新コンタック®かぜ総合」 新TVCM 「コンコン秘書篇」 グラクソ・スミスクライン 2010年9月13日 2011年2月26日閲覧
- ^ Twitter-にせほるん
- ^ 地デジカ、受験生を出迎え 京大「折田先生像」 京都新聞Web News、2012年2月25日
- ^ ノッポトッポが受験生お出迎え 京大恒例「折田先生像」京都新聞Web News 2013年2月25日
- ^ “京大の自由の象徴・折田先生像、2014年は「キョロちゃん」になって出現”. GIGAZINE (2014年2月25日). 2014年2月25日閲覧。
- ^ “京大「折田先生像」、今年はサザエさんの中島くん 受験生あおるアニメ看板も”. ねとらぼ (2015年2月25日). 2015年2月25日閲覧。
- ^ 偽告示文では小梅太夫表記だが、2009年以降はコウメ太夫に改名している。
- ^ 京大入試の風物詩「折田先生像」今年も出現 受験生ら迎える /京都 - みんなの経済新聞ネットワーク(yahoo!ニュース) (2017年2月25日。同日閲覧)
- ^ a b H26 キョロちゃん - 折田先生を讃える会
- ^ a b 小梅太夫 - 折田先生を讃える会
- ^ H12 ラオウ
- ^ H14 ナウシカ
- ^ H26 ノッポトッポちゃん - 折田先生を讃える会
- ^ H27 なかじまくん - 折田先生を讃える会
- ^ H28 カービィ - 折田先生を讃える会
- ^ 京都大学 高等教育研究開発推進機構 平成20年度版 折田先生像について
- ^ 「「てんどんまん」像は残った 京大と著作権者の“粋な計らい”」 ITmedia News、2008年2月29日。
関連項目[編集]
- 折田彦市
- 京都大学
- ヴァンダリズム
- 石垣カフェ
- 人魚姫の像 - 政治的メッセージなどためにたびたび装飾されている。
- 初代ウェリントン公爵騎馬像(英語) - グラスゴー市内にある、ウェリントン公爵の騎馬像。像の頭に三角コーンを被せるという悪戯が伝統化している。
- Student prank(英語) - 欧米の大学で学生によって行われる悪戯。
- MIT hack(英語) - マサチューセッツ工科大学での学生の悪戯。
- ベンサムのオートアイコン
- 芸術テロ
- 京都大学吉田寮
外部リンク[編集]
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座標: 北緯35度1分30.1秒 東経135度46分49.5秒 / 北緯35.025028度 東経135.780417度