ロング・ロング・ロング

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ロング・ロング・ロング
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名Long, Long, Long
リリース1968年11月22日
録音
ジャンルサイケデリックフォーク
時間3分3秒
レーベルアップル・レコード
作詞者ジョージ・ハリスン
作曲者ジョージ・ハリスン
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ 収録曲
ヘルター・スケルター
(DISC 2 A-6)
ロング・ロング・ロング
(DISC 2 A-7)
レボリューション1
(DISC 2 B-1)

ロング・ロング・ロング」(Long, Long, Long)は、ビートルズの楽曲である。1968年に発表された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。作詞作曲はジョージ・ハリスンが手がけた。1968年初頭にビートルズの他のメンバーとともにインドリシケーシュにて、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーのもとで超越瞑想の修行を行っていたときに書かれた楽曲で、ハリスンの神に対する愛を歌ったものとなっている。

コード進行はボブ・ディランの「ローランドの哀しい目の乙女」からヒントを得ているが、アレンジ面ではザ・バンドが1968年に発売したアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』から部分的に影響を受けている。レコーディングは、アルバムのレコーディング・セッションの終盤で行われた。

背景・構成[編集]

1968年2月から4月のインドリシケーシュ滞在時に、ハリスンは「ロング・ロング・ロング」を書き始め[1][2]、8月に歌詞を完成させた[3]。甘美な欲望を歌ったものと見ることも出来るが[4]、本作の歌詞についてハリスンは、「歌詞に出てくる“きみ”とは神のことだ」と明かし[5]、「神とか主とか、単純な『ビー・バップ・ア・ルーラ』以外の話をしようとすると、恐れをなしてしまう人がいる。その人たちは『お説教するな』とか『御託を並べるな』という以外の逃げ道がなくなってしまう。本当はそうではないのに。個人的なエゴのほかにも、何か大切なものがあるということを受け入れられないのさ」と語っている[4]

楽曲は穏やかで瞑想的な雰囲気を持ち[6][7]、ミドルエイトで激しくなるという構成になっている。キーはFメジャーで、ギターの 3フレットにカポタストを付けて演奏している。本作について、音楽評論家のアラン・W・ポラック英語版は「ジャズワルツフォークソング、そして60年代後半のサイケデリアクロスオーバー」とコメントし[8]、作家のケヴィン・ハウレットは前曲の「ヘルター・スケルター」を引き合いに、「狂騒的な『ヘルター・スケルター』に対しての、もの静かな返答」と評している[4]。コード進行は、ボブ・ディランの『ローランドの悲しい目の乙女』にヒントを受けたとしており[9]、アレンジ面においては、ザ・バンドのアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』からの影響を受けている[10]

レコーディング[編集]

「ロング・ロング・ロング」のレコーディングは、1968年10月7日にEMIレコーディング・スタジオで開始された[11][12][4]。レコーディング時にはインドの香が焚かれ、落ち着いた雰囲気の中で行なわれた[13]

この日は、ハリスンのアコースティック・ギターポール・マッカートニーハモンドオルガンリンゴ・スタードラムで67テイクほどリズムトラックが録音された[14]。レコーディング時の曲名は「It's Been a Long, Long, Long Time[注 1]とされていた[13]。テイク65の最後でマッカートニーがハモンドオルガンの低音を弾いている際に、ハモンドオルガンに繋いでいたレスリースピーカーの上に置かれたワインボトルが振動した[5][4]。その後のテイクでも同様に振動するのを確認した[15][4]メンバーは、この音を取り入れることを決めた[16]。この音に対してより効果を持たせるため、スターの高速ドラムロールとハリスンの高音の叫び声が加えられた[15][4]

10月8日にハリスンがシタールの音色を思わせる歪みを加えたアコースティック・ギターとボーカル[17]、マッカートニーがベース[18]、10月9日にミドルエイトに対してマッカートニーがバッキング・ボーカルクリス・トーマスピアノオーバー・ダビングし、楽曲が完成した[18]

なお、ジョン・レノンは、本作のレコーディングに参加していない[19][20]

リリース・評価[編集]

「ロング・ロング・ロング」は、1968年11月22日にアップル・レコードより発売された[21]オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』のC面を締めくくる楽曲として収録された。前曲にはマッカートニー作のハードロック・ナンバー「ヘルター・スケルター」が収録されていることから、作家のマーク・ヘルツガード英語版は「穏やかな着地点」と称している[22]。『メロディー・メーカー英語版』誌が「穏やかで軽快なトラック」[23][24]と称賛する一方で、『レコード・ミラー英語版』誌は「ドラムが音をひとり占めしている」と評した[25]。『ニューズウィーク』誌のフーベルト・サールは、ハリスンを「アルバムの“ヒーロー”」と見なし、本作と「サボイ・トラッフル」を最高の楽曲として挙げた[26]

オールミュージック』のスティーヴン・トマス・アールワインは、「忘れられない楽曲」と評し[27]、他のアルバムでのハリスンの貢献にあまり感銘を受けていなかった音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は「ビートルズにおけるハリスンの最高の瞬間」と称賛している[28]ティム・ライリー英語版は本作を「アルバムに収録されたハリスンの4作品の中で最も弱い楽曲」として挙げている[29]

2006年に『モジョ』誌が発表した「The 101 Greatest Beatles Songs」では第80位にランクインし[30]、2011年に『ローリング・ストーン』誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」では第98位にランクインした[31]

クレジット[編集]

※出典[32][4]

カバー・バージョン[編集]

1994年10月31日、フィッシュがニューヨークでアルバム『ザ・ビートルズ』に収録の全曲をカバーするライブを行い、本作はブルーグラス調にアレンジされて演奏された。このライブでの演奏は、2002年に発売された4枚組のライブ・アルバム『LIVE PHISH 13 10.31.94』で音源化された[33]

タニヤ・ドネリーは、2006年に発売されたアルバム『This Hungry Life』にカバー・バージョンを収録した。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 曲の出だしの歌詞からの引用。

出典[編集]

  1. ^ Womack 2014, p. 571.
  2. ^ Paytress 2003, p. 12.
  3. ^ Winn 2009, p. 217.
  4. ^ a b c d e f g h White Album 2018, p. 28.
  5. ^ a b Harrison 2002, p. 132.
  6. ^ Greene 2006, p. 99.
  7. ^ Leng 2006, p. 38.
  8. ^ Pollack, Alan W. (1998年). “Notes on 'Long, Long, Long'”. soundscapes.info. 2020年8月1日閲覧。
  9. ^ Everett 1999, pp. 204, 349.
  10. ^ Leng 2006, p. 318.
  11. ^ Miles 2001, p. 311.
  12. ^ Quantick 2002, pp. 28–29, 141.
  13. ^ a b Lewisohn 2005, p. 159.
  14. ^ Everett 1999, p. 205.
  15. ^ a b MacDonald 1998, p. 283.
  16. ^ Shea & Rodriguez 2007, p. 170.
  17. ^ Everett 1999, pp. 205–206.
  18. ^ a b Lewisohn 2005, p. 160.
  19. ^ Winn 2009, pp. 217, 219.
  20. ^ Lewisohn 2005, pp. 158–159.
  21. ^ Hertsgaard 1996, pp. 261, 322.
  22. ^ Hertsgaard 1996, pp. 259–260.
  23. ^ Walsh, Alan (9 November 1968). “The Beatles "The Beatles" (Apple)”. Melody Maker: 5. 
  24. ^ Sutherland, Steve (ed.) (2003). NME Originals: Lennon. London: IPC Ignite!. p. 53 
  25. ^ Uncredited writer (16 November 1968). “The Beatles: The Beatles (White Album) (Apple)”. Record Mirror. http://www.rocksbackpages.com/Library/Article/the-beatles-ithe-beatles-white-albumi-apple-2. 
  26. ^ The White Album: Our Less-Than-Positive 1968 Review of the Beatles' Masterpiece”. newsweek.com (2018年11月21日). 2020年10月18日閲覧。
  27. ^ Erlewine, Stephen Thomas. The Beatles [White Album] - The Beatles | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月18日閲覧。
  28. ^ MacDonald 1998, pp. 264, 282–283.
  29. ^ Riley 2002, pp. 260, 262, 282.
  30. ^ Alexander, Phil (July 2006). “The 101 Greatest Beatles Songs”. Mojo: 66. 
  31. ^ Rolling Stone staff (2011年9月19日). “100 Greatest Beatles Songs: 98 - 'Long, Long, Long'”. Rolling Stone. 2020年10月18日閲覧。
  32. ^ MacDonald 1998, p. 282.
  33. ^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月22日閲覧。

参考文献[編集]

  • Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver Through the Anthology. New York, NY: Oxford University Press. ISBN 0-19-512941-5 
  • Greene, Joshua M. (2006). Here Comes the Sun: The Spiritual and Musical Journey of George Harrison. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. ISBN 978-0-470-12780-3 
  • Harrison, George (2002) [1980]. I, Me, Mine. San Francisco, CA: Chronicle Books. ISBN 978-0-8118-5900-4 
  • ハウレット, ケヴィン (2018). ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) (スーパー・デラックス・エディション) (ブックレット). ビートルズ. アップル・レコード.
  • Leng, Simon (2006). While My Guitar Gently Weeps: The Music of George Harrison. Milwaukee, WI: Hal Leonard. ISBN 978-1-4234-0609-9 
  • Lewisohn, Mark (2005) [1988]. The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970. London: Bounty Books. ISBN 978-0-7537-2545-0 
  • MacDonald, Ian (1998). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties. London: Pimlico. ISBN 978-0-7126-6697-8 
  • Paytress, Mark (2003). “A Passage to India”. Mojo Special Limited Edition: 1000 Days of Revolution (The Beatles' Final Years - Jan 1, 1968 to Sept 27, 1970). London: Emap 
  • Miles, Barry (2001). The Beatles Diary Volume 1: The Beatles Years. London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-8308-9 
  • Quantick, David (2002). Revolution: The Making of the Beatles' White Album. Chicago, IL: A Cappella Books. ISBN 1-55652-470-6 
  • Riley, Tim (2002) [1988]. Tell Me Why - The Beatles: Album by Album, Song by Song, the Sixties and After. Cambridge, MA: Da Capo Press. ISBN 978-0-306-81120-3. https://archive.org/details/tellmewhybeatles00rile 
  • Shea, Stuart; Rodriguez, Robert (2007). Fab Four FAQ: Everything Left to Know About the Beatles ... and More!. New York, NY: Hal Leonard. ISBN 978-1-4234-2138-2 
  • Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970. New York, NY: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9 
  • Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four. Santa Barbara, CA: ABC-CLIO. ISBN 978-0-313-39171-2 

外部リンク[編集]