マンスプレイニング

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マンスプレイニング英語: Mansplaining)は、男を意味する「man」(マン)と解説を意味する「explain」(エクスプレイン)をかけ合わせたかばん語。一般的には「男性が、女性を見下ろすあるいは偉そうな感じで何かを解説すること」とされる[1][2]

定義[編集]

ザ・アトランティック英語版』のリリー・ロスマンは「マンスプレイニングは通常、男性が女性に対して行うもので、相手が自分よりも多くを知っているという事実を考慮しようともせずに解説し出すこと」と定義する[3]レベッカ・ソルニットは一部の男性に見られるこのような現象を「自信過剰と無知」の組み合わせから来るものだとしている[4]

ソルニットは『ロサンゼルス・タイムズ』が運営するウェブサイト上で2008年4月に公開された「Men who explain things」(解説してくる男たち)と題する意見記事英語版の中で、パーティーで出会った男性についての逸話を紹介する。「本を何冊か出しているんだよね? 」と尋ねる彼に、彼女はエドワード・マイブリッジを最新作のテーマにしていると答えた。するとすぐさま、それが彼女の本であるかもしれないとは少しも考えようともせずに、「マイブリッジについて書かれたすごく重要な本が今年出版されたんだけど知っている? 」と返し、得意げに解説してきた。彼女がその本の著者であるという事実を認知していなかったのである[5]

マンスプレイニングは「男性は女性よりも知識が豊富である」あるいは「女性よりも多くのことを理解することができる」という全く根拠のない性差別を前提に根ざしているため、謙遜の他の多くの形態とは多少異なる[6]。一部のコメンテーターはこの言葉が広く乱用、過剰に使用されることで本来の意味を失っており、いくつかのケースでかえって逆効果になり、さらには相手の激昂した反応も引き起こす原因になっていると主張している[7]

マンスプレイニングは相手に対して偉そうな態度を取ることに関する男女間の問題で用いられる。似たような文脈を持つ言葉として、派生して人種間の「whitesplaining」(ホワイトプレイニング)、政治間の「rightsplaining」(ライトプレイニング)という言葉も生まれた[8]

歴史[編集]

複数の場所で同時に使用されるようになった新語なので、その起源を立証するのは難しい[9]。この言葉は2008年か2009年に最初に使用されたものと考えられている[10]

レベッカ・ソルニットは2008年4月に発表したエッセイMen who explain things」の中ではまだマンスプレイニングという言葉を使用していなかったが、前出の体験談を紹介した上で「女性ならみんな知ってる」現象だと述べている[5]

ソルニットのコラムは分かっているようなことを上から男性から解説された経験がこれまでにある多くの女性から共感を呼び、発表されて1か月後にはソーシャルネットワークの『ライブジャーナル』でマンスプレイニングという言葉が使用されるようになった。フェミニストのブロガーが中心になって広め、さらには政治的な議論においてもこの言葉は用いられるようになった[3][9]。2010年には「mansplainer」(マンスプレイナー)が『ニューヨーク・タイムズ』の「ワード・オブ・ザ・ イヤー英語版」の一語に選ばれた[11]

マンスプレイニングはアメリカ方言学会英語版(ADS)の「2012年の最もクリエイティブな言葉」にノミネートされ[2]、2014年には『オックスフォード英語辞典』のオンライン版に追加された[12]日本でも『英辞郎』に収録されている[13]

2010年以降、HBOのドラマシリーズ『ニュースルーム』に登場する複数の人物[14][15][16]アメリカ合衆国大統領候補のミット・ロムニー[17]テキサス州知事英語版リック・ペリー[18]MSNBCの番組の司会を務めるローレンス・オドネル[19]らがジャーナリストからマンスプレイナーとして言及されている。

2013年にDictionary.com英語版は「mansplain」と接尾辞-splain」の両方をその辞書に追加したことを発表した。「革新的であることに加えて、この言葉の特に-splainingの部分は信じられないほど強力で2013年の連結形として有用であることが証明されている」と解説している[20]。また、古い-splainの言葉が依然として重い文化的、政治的(ミット・ロムニーのMittsplainerのように政治家の名前の後ろに繋げてよく用いられる)な意味合いを保ちながらも、マンスプレインの語調が2009年から「強烈で真剣なものから軽くひょうきんなもの」へと変化していっていることにも注目している[20]

論争[編集]

マンスプレイニングの有用性に関する論争が起こっている。レスリー・キンゼルはその性別固有の性質と否定的な意味合いを考えると、本質的に先入観にとらわれており、本質主義的、軽蔑的、ダブルスタンダードな言葉だと述べている[21]

著作家キャシー・ヤング英語版は「おそらく鈍感で傲慢な男性に対する」軽蔑語であり、「どうやら今は女性との意見の相違にも適用されているようだ」と述べている[22]

出典[編集]

  1. ^ Katy Steinmetz (2014年11月18日). “Clickbait, Normcore, Mansplain: Runners-Up for Oxford’s Word of the Year” (英語). TIME.com. 2015年9月11日閲覧。
  2. ^ a b Ben Zimmer (2013年1月5日). “Tag, You're It! "Hashtag" Wins as 2012 Word of the Year” (英語). VisualThesaurus.com. 2015年9月11日閲覧。
  3. ^ a b Lily Rothman (2012年11月1日). “A Cultural History of Mansplaining” (英語). TheAtlantic.com. 2015年9月11日閲覧。
  4. ^ Rebecca Solnit (2012年8月20日). “Men Still Explain Things to Me” (英語). TheNation.com. 2015年9月11日閲覧。
  5. ^ a b Rebecca Solnit (2008年4月13日). “Men who explain things” (英語). LATimes.com. p. 1. 2015年9月11日閲覧。
  6. ^ Scott Jaschik (2012年8月16日). “Calling Out Academic 'Mansplaining'” (英語). InsideHigherEd.com. 2015年9月11日閲覧。
  7. ^ Benjamin Hart (2014年10月21日). “RIP “mansplaining”: The Internet ruined one of our most useful terms” (英語). Salon.com. 2015年9月11日閲覧。
  8. ^ Benjamin Zimmer,Charles C. Carson (2013). “Among The New Words” (英語). American Speech 88 (2): 196-214. doi:10.1215/00031283-2346771. http://americanspeech.dukejournals.org/content/87/2/190.full.pdf+html. (要購読契約)
  9. ^ a b Sady Doyle (2014年5月1日). “Mansplaining, Explained” (英語). InTheseTimes.com. 2015年9月11日閲覧。
  10. ^ Anna Robinson (2012年12月1日). “The Art of Mansplaining” (英語). NationInstitute.org. 2015年9月11日閲覧。
  11. ^ Sam Sifton (2010年12月18日). “The Words of the Year” (英語). NYTimes.com. 2015年9月11日閲覧。
  12. ^ New words added to OxfordDictionaries.com today include binge-watch, cray, and vape” (英語). OxfordDictionaries.com. 2015年9月11日閲覧。
  13. ^ マサキチトセ (2014年5月14日). “上から目線の男の解説にうんざり! あなたの身近に必ずいる「マンスプレイニング系男子」とは?”. Wotopi.jp. 2015年9月11日閲覧。
  14. ^ Hank Stuever (2013年7月13日). “‘The Newsroom’ vs. ‘Honey Boo Boo’: Which one really gives us more to think about?” (英語). WashingtonPost.com. 2015年9月11日閲覧。
  15. ^ David Weigel (2013年8月5日). “Trying to Tolerate The Newsroom, Week Four” (英語). Slate.com. 2015年9月11日閲覧。
  16. ^ Andy Greenwald. “Death by Newsroom” (英語). Grantland.com. 2015年9月11日閲覧。
  17. ^ Marin Cogan (2012年8月1日). “The Mittsplainer: An Alternate Theory of Mitt Romney's Gaffes” (英語). GQ.com. 2015年9月11日閲覧。
  18. ^ David Weigel (2013年6月27日). “Mansplaining the Mansplainer: Rick Perry's Acciden” (英語). Slate.com. 2015年9月11日閲覧。
  19. ^ Julia Ioffe (2013年8月8日). “Dear Lawrence O'Donnell, Don't Mansplain to Me About Russia” (英語). NewRepublic.com. 2015年9月11日閲覧。
  20. ^ a b Jane Solomon (2013年12月6日). “Word Watch 2013: -splain” (英語). Dictionary.com. 2015年9月11日閲覧。
  21. ^ Lesley Kinzel (2012年8月17日). “Why You’ll Never Hear Me Use the Term “Mansplain”” (英語). xoJane.com. 2015年9月11日閲覧。
  22. ^ Cathy Young (2013年9月29日). “Is The Patriarchy Dead?” (英語). Reason.com. 2015年9月11日閲覧。

関連項目[編集]