フェモラータオオモモブトハムシ

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フェモラータオオモモブトハムシ
Sagra femorata (Drury, 1773) (13873135054).png
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目 Coleoptera
: ハムシ科 Chrysomelidae
亜科 : コガネハムシ亜科 Sagrinae  
: Sagra  
: フェモラータオオモモブトハムシ Sagra femorata  
学名
Sagra femorata
和名
フェモラータオオモモブトハムシ
オオモモブトハムシ
コガネハムシ

フェモラータオオモモブトハムシSagra femorata)は、コウチュウ目ハムシ科昆虫である。コガネハムシ亜科(Sagrinae)に分類される。熱帯産の美しい甲虫として知られる種だが、2009年までに日本国内での定着が確認されており、拡大が懸念されている。

別の和名として単に「オオモモブトハムシ」、または「コガネハムシ」とすることもある。

概要[編集]

美しい金属光沢のある体色と、太い後脚の腿節が特徴。オスのほうがメスより後脚が長い[1]。体色には変異が多く、赤、緑、青、黒などがある[2]。ただし国内で見つかっているものは赤い個体ばかりである。

以下は日本国内の個体群の情報になるが、クズを主な食草としており、6-8月頃に成虫が発生する。クズの茎に産卵し、幼虫はクズの蔓にゴール(虫こぶ)を作り、ここで越冬する。ゴール内には20mm程度の蛹室を作り、大きなゴールには数十個の個体が入っていることもある。成虫はゴール自体の白化した部分や、樹皮などを食べ、葉はあまり食べないという。なおゴールが発生してもクズは枯れないという[3]

クズの蔓が他の植物に絡まった場合はそちらに侵入することもあり、その場合はゴールのない蛹室となり、見つけにくいという[4]

環境省発表の「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」では「その他の総合対策外来種」に分類している[5]。2018年時点国内でクズ以外での定着報告はないが、海外では他の食害報告もあり、警戒される。

分布[編集]

原産地はカンボジア中国インドジャワ島ラオスミャンマースリランカタイベトナムなど、東南アジア熱帯地域に広く分布する。

日本では2006年以降に発見されている。

国内での経緯[編集]

2009年に三重県松阪市で県内の研究者らに発見され、その時点で既に定着していた可能性が高いことが報告された。以降の継続調査で実際の越冬も確認され、その調査により死亡個体が少ないことも判明し、熱帯産にもかかわらず日本の冬に適応していると結論づけられている[3]。なお同市内では2006年にも3個体が見つかっていたことが後に判明し、実際はこの頃までに定着していた可能性が高いと考えられる[6]。移入経路はペットとして違法に輸入されたものと推測されている。本種は2005年ごろに各地のペット店で売られており、発見地近くの店に持ち込まれたものが逸出または故意に放された可能性がある。市内で見つかるのが赤い個体ばかりであることも、由来が少数の個体であることを示唆する[3]

食草はどこにでもあるクズであり、冬の低気温にも耐えうるため、関東以南ならばどこでも定着できると予想されている。2010年には発見者らを含む有志が駆除作業を実施したが、手作業による駆除は困難と結論づけられている。直接捕食する天敵も知られていない。こうした事情で徐々に分布を広げていくだろうと予見されているが、移動能力自体は低いという。しかし、その美しさのために生体が持ち出され、人為的に拡大する可能性も警戒されている[3]

2016年には松阪市での記録が急増したほか、隣接する津市でも生息が確認され始め、さらに同年、1個体のみであるが兵庫県宍粟市でも発見された[7]。こうした分布拡大の要因について、車について運ばれるなど、人間活動に伴う移動が起こっていると推測されている[7]

和名と分類[編集]

国内で見つかる以前から「オオモモブトハムシ」という和名があるが[2]、本種はコガネハムシ亜科(本種以外は国内に生息しない)に分類され、元から国内にもいるモモブトハムシ亜科とは別種であり、混同が指摘される[8]

国内での発見以降は学名のカナ読みの「フェモラータ」をつけて表記しているものが多い。亜科名そのままの「コガネハムシ」という和名を使っていることもある[9]

参考文献[編集]

  1. ^ 三重県総合博物館 フェモラータオオモモブトハムシ(Sagra femorata (Drury))[1]
  2. ^ a b 東海大学出版会『タイ・インドシナ産ハムシ類図説』p56
  3. ^ a b c d 『月刊むし』2011年7月号(通巻485号)36-43p「三重県に定着したフェモラータオオモモブトハムシ」
  4. ^ 『月刊むし』2010年7月号(通巻473号)43-44p「三重県のフェモラータオオモモブトハムシの駆除を試みて」
  5. ^ 「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の公表について(お知らせ)[2]
  6. ^ 『月刊むし』2011年10月号(通巻488号)41p「三重県におけるフェモラータオオモモブトハムシの2006年の記録」
  7. ^ a b 三木進 2017.兵庫県宍粟市でフェモラータオオモモブトハムシ. きべりはむし 39(2) 72-73.
  8. ^ 出版芸術社『葉虫―小檜山賢二写真集』118p
  9. ^ 幻冬舎 丸山宗利 『きらめく甲虫』75p

上記のほか、文一総合出版『ハムシハンドブック』、中日新聞2010年7月20日朝刊。