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クリスツィナ・ツィマノウスカヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クリスツィナ・ツィマノウスカヤ
選手情報
国籍 ポーランドの旗 ポーランド
競技 陸上競技
種目 100 m, 200 m
所属 BFST Dynamo
生年月日 (1996-11-19) 1996年11月19日(29歳)
生誕地  ベラルーシマヒリョウ州クリマヴィチ
自己ベスト
100m 11秒04(2018年)
200m 22秒78(2019年)
獲得メダル
 ベラルーシ
2019年夏季ユニバーシアード200m
2017年ヨーロッパ陸上競技選手権大会100m
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クリスツィナ・ツィマノウスカヤベラルーシ語: Крысці́на Сярге́еўна Цімано́ўская, ラテン文字転写: Krystsina Siarheyeuna Tsimanouskayaロシア語: Кристина Сергеевна Тимановская, ラテン文字転写: Kristina Sergeyevna Timanovskaya1996年11月19日 - )は、短距離走を専門とするベラルーシ陸上競技選手[1]2017年ヨーロッパU23陸上競技選手権大会英語版100m銀メダルイタリアナポリ2019年夏季ユニバーシアード200m金メダルを獲得した。また、ベラルーシ・ミンスクで開かれた同年のヨーロッパ競技大会のチームイベントで、銀メダルを得た[2]

2020東京オリンピックベラルーシ代表に選抜されるも、開催期間中の2021年8月1日、同国当局によって強制的に連行された羽田空港亡命を求めた(後述)。

2020東京オリンピック

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2020東京オリンピックでは、100mと200mでベラルーシ代表に選抜された。

2020年3月24日東京オリンピック・パラリンピック組織委員会国際オリンピック委員会(IOC)は新型コロナウイルスのパンデミックへの配慮から、オリンピックの開催を1年程度延期すると発表した[3]

ベラルーシでは、2020年8月9日に行われた大統領選挙で現職のアレクサンドル・ルカシェンコが6選を果たすが、不正選挙を訴える市民と警官隊との間で衝突が発生。数十名の死傷者が出たほか、約3000人の身柄が拘束された[4]。反政権派が全土でデモを呼び掛けた同年8月中旬、ツィマノウスカヤはインスタグラムに「代表選手」として呼応する声明を載せた。「私たちは傍観者でいられず、市民や友人、同僚、親族への暴力に我慢できない。治安機関の行動は違法で受け入れられない」と批判し、言論の自由などを訴えた[5]

2021年7月23日、一年遅れでオリンピックが開幕すると、ベラルーシのスポーツ当局は、この2種目に加え、8月5日に行われる4×400mリレー予選にも出場することをツィマノウスカヤに強要した。

同年7月30日UTC)、ツィマノウスカヤはインスタグラムを更新。「女子1600m(4×400m)リレーに出場予定の一部選手が十分なドーピング検査を受けなかったため日本に来ることができなかった。そのため、自分がリレーメンバーに入れられた」とコーチ陣の不手際を批判する動画を投稿した[6][7][8][9]。また、自身は400mを走らないと付言した[10]。これに対し、コーチや本国関係者らは投稿の削除をツィマノウスカヤに要求した[11]

8月1日、ベラルーシオリンピック委員会英語版はツィマノウスカヤの部屋に入り、羽田空港まで強制的に連行した。翌日の陸上女子200m予選に出場予定だった。同委員会はルカシェンコ大統領の長男が率いており、彼女を「要注意選手」として警戒していた可能性があることが指摘されている[5]。本国のメディアがツィマノウスカヤの強制送還を報じると、ベラルーシ・スポーツ連帯基金(BSSF)は、日本在住のベラルーシのディアスポラ(離散者)やジャーナリストたちに対し、羽田空港に向かうよう呼び掛けた[12]

羽田へ連行される途中、祖母からの電話が入る。通話時間は10秒ほどだったが、祖母は「ベラルーシに戻った場合、精神科病棟に送られる。戻ってこないで」と告げた。この言葉によりツィマノウスカヤは亡命を決意[13]。同日夜、イスタンブール行きのトルコ航空便に搭乗させられそうになった際、日本の警察に保護を求めた。出国対応で空港にいた東京五輪・パラリンピック組織委員会の職員がサポートを行った[14]。ツィマノウスカヤは搭乗拒否の理由を「本国で投獄される可能性があるため」としている。ドイツあるいはオーストリアへの亡命を求めていることもあわせて報じられた[15][16]

ツィマノウスカヤはこの日、IOCの保護のもと、空港のホテルに宿泊[17]。深夜、駐日ポーランド大使館の領事に電話をかけ、救助を求めた。領事は人道ビザの発給と、亡命を受け入れる準備があると伝えた[18]

8月2日ポーランドチェコがビザ発行など支援の意向を表明[19]スロベニアヤネス・ヤンシャ首相も自身のツイッターに「スロベニアはツィマノウスカヤを歓迎する」と投稿した[20]

ポーランドへ亡命

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8月2日午後5時、ツィマノウスカヤは警察の車両で駐日ポーランド大使館に到着[21][18]。同国への亡命を申請し、人道的ビザを発給された[22]。夫で、陸上競技選手のアルセニ・ジュダネビッチは同日、ウクライナに入国した。滞在先のキーウでメディアの取材に「こんな深刻な事態になるとは思ってもいなかったが、国を去ることに迷いはなかった」と答えた[23][24]。同日、EUは、ベラルーシが選手を強制帰国させようとしたことは、ルカシェンコによる「容赦ない抑圧」の実態を新たに示すものと非難した[22]。ウクライナでは8月3日、亡命者支援団体「ウクライナ内のベラルーシの家(BHU)」の代表、ヴィタリー・シショフ英語版がキーウの自宅近くの公園で首を吊られた状態で死亡しているのが発見された。警察は自殺を装った殺人の可能性があるとして調査を開始した[25][26][27]

8月4日、ツィマノウスカヤは駐日ポーランド大使館を出て、午前8時30分頃、成田空港に到着した。当初はポーランドのワルシャワへの直行便へ搭乗する予定だったが、直前にオーストリアウィーン行きへ変更。搭乗機は午前11時15分過ぎに離陸した[28]。現地時間の8月4日夜、ポーランドに到着。8月5日、ワルシャワで記者会見し、今後も競技を続ける考えを表明した。会見には、ルカシェンコ政権と対立し、ポーランドで反政権活動を続けるベラルーシのラトゥシコ元文科相が同席した[29]。同日、ポーランドで夫のジュダネビッチと再会した[30]

8月5日、ツィマノウスカヤを強制帰国させようとしたベラルーシ代表チームのヘッドコーチと役員の2人がIOCからIDカードを没収され、選手村を追放された[31]

8月30日、ポーランド国籍取得を発表した[32]

2023年8月6日ワールドアスレティックス(世界陸連)は国籍変更に伴い、本来必要とされていた3年間の待機期間を同日付で免除。これにより、同日からポーランド代表としての出場が可能になったと同月7日にロイター通信が報じた[33][34]。同月20日、ハンガリーブダペストで行われた2023年世界陸上競技選手権大会に出場した[35]

主要大会成績

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大会 会場 結果 種目 補足
 ベラルーシ代表
2015年 ヨーロッパジュニア選手権  スウェーデンエシルストゥーナ 6位 100 m 11.85
17位(予選) 200 m 24.51
2017年 ヨーロッパ室内選手権 セルビアの旗 セルビアベオグラード 12位(準決勝) 60 m 7.39
ヨーロッパU23選手権 ポーランドの旗 ポーランドブィドゴシュチュ 2位 100 m 11.54
4位 200 m 23.32
2018年 世界室内選手権 イギリスの旗 イギリスバーミンガム 31位(予選) 60 m 7.37
ヨーロッパ選手権 ドイツの旗 ドイツベルリン 13位(準決勝) 100 m 11.34
10位(準決勝) 200 m 23.03
2019年 ヨーロッパ室内選手権 イギリスの旗 イギリスグラスゴー 7位 60 m 7.26
ユニバーシアード イタリアの旗 イタリアナポリ 6位 100 m 11.44
1位 200 m 23.00
世界選手権 カタールの旗 カタールドーハ 26位(予選) 200 m 23.22
2021 ヨーロッパ室内選手権 ポーランドの旗 ポーランドトルン 60 m 失格
オリンピック 日本の旗 日本東京 全体37位(予選〈6組〉敗退) 100 m 11.47
200 m 不出場

個人記録

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屋外

  • 100 m - 11秒04(+0.7 m/s、ミンスク、2018年)
  • 200 m - 22秒78(-1.2 m/s、ミンスク、2019年)

室内

脚注

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  1. Team results”. 2019 European Games. 2019年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月9日閲覧。
  2. 東京五輪・パラ、「1年程度」の延期決定 「東京2020」の名称は維持”. BBC NEWS (2020年3月24日). 2020年3月25日閲覧。
  3. “ベラルーシ警察が数千人を拘束、大統領選の現職勝利発表で大規模デモ”. bloomberg.co.jp. ブルームバーグ. 2020年8月10日. 2020年8月11日閲覧.
  4. 1 2 “過去に政権を非難 市民弾圧「我慢できず」―ベラルーシ選手”. 時事ドットコムニュース. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  5. “ベラルーシの五輪選手が亡命求める 羽田空港で搭乗拒否”. 朝日新聞. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  6. "Чаму я даведваюся пра гэта ад левых людей?" Функцыянеры паставілі спартсменку, якая бегае спрынт, на эстафету 4х400 (ベラルーシ語). Наша Ніва. 2021年8月1日閲覧。
  7. "Они накосячили с девчонками" — белорусская легкоатлетка Тимановская заявила, что "очень крутое начальство" поставило ее на эстафету на Олимпиаде без ее ведома”. Telegraf.by (2021年7月30日). 2021年8月1日閲覧。
  8. Из-за косяка чиновников (они включили дурака и не признают вину) у беларусов в Токио подвисла эстафета 4 по 400. В нее заявляют девушек совсем другого профиля – и это просто жесть”. BY.Tribuna.com. 2021年8月1日閲覧。
  9. "Получила лишь игнор" - Спринтерша Тимановская объяснила свою реакцию на неожиданные перестановки на Играх в Токио”. Telegraf.by (2021年7月31日). 2021年8月1日閲覧。
  10. “亡命希望のベラルーシ選手「投獄される可能性がある」”. 朝日新聞. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  11. Фонд спортивной солидарности/BSSF”. Telegram. 2021年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月1日閲覧。
  12. “ベラルーシ五輪選手、身の危険感じ亡命決意”. ロイター. 2021年8月4日. 2021年8月10日閲覧.
  13. Belarus Olympics: Krystsina Tsimanouskaya refusing to fly home”. BBC News (2021年8月1日). 2021年8月1日閲覧。
  14. “コーチ批判のベラルーシ五輪選手、帰国迫られ拒否 保護求める”. ロイター. 2021年8月1日. 2021年8月2日閲覧.
  15. “【東京五輪】 ベラルーシ女子陸上選手、帰国拒否 羽田空港へ連れられ”. BBCニュース. 2021年8月1日. 2021年8月2日閲覧.
  16. “羽田空港で保護のベラルーシ選手「安全な場所に置かれている」 IOC会見”. 東京新聞. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  17. 1 2 笠原真 (2021年8月8日). “ベラルーシ選手から深夜のSOS 大使が明かした舞台裏”. 朝日新聞. 2021年8月9日閲覧.
  18. 八田浩輔 (2021年8月2日). “ベラルーシ選手の帰国拒否 IOCが介入 ポーランドなど支援表明”. 毎日新聞. 2021年8月2日閲覧.
  19. “Belarus sprinter "safe" in Japan after removal from Olympics: IOC”. 共同通信. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  20. Morgan, Liam (2021年8月2日). “Belarusian sprinter arrives at Polish Embassy after refusing to board Minsk flight”. Inside the Games. 2021年8月2日閲覧.
  21. 1 2 “ベラルーシ五輪代表、4日にポーランドに出発 夫も合流へ”. ロイター. 2021年8月3日. 2021年8月3日閲覧.
  22. 'We're just normal sports people': Belarusian sprinter Krystsina Tsimanouskaya arrives at Polish embassy in Tokyo as husband enters Ukraine”. Sky News. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  23. “帰国拒否のベラルーシ選手、ポーランド亡命申請 夫はウクライナに”. ロイター. 2021年8月2日. 2021年8月2日閲覧.
  24. “亡命ベラルーシ人グループのリーダー ウクライナで消息不明後、遺体で発見”. BBC News. 2021年8月3日. 2021年8月4日閲覧.
  25. 石橋亮介 (2021年8月3日). “ベラルーシ反政権派の男性、遺体で発見 隣国で脱出支援”. 朝日新聞. 2021年8月4日閲覧.
  26. “ベラルーシの反体制派活動家の遺体発見 自殺に見せかけ殺害か”. 毎日新聞. 2021年8月4日. 2021年8月4日閲覧.
  27. “亡命希望のベラルーシ選手が成田空港から出国…報道陣の呼びかけに無言通す”. 新聞. 2021年8月4日. 2021年8月4日閲覧.
  28. 石橋亮介 (2021年8月6日). “「同じ境遇の人の力に」 ベラルーシ選手、亡命先で会見”. 朝日新聞. 2021年8月6日閲覧.
  29. “ベラルーシ五輪選手、亡命先のポーランドで夫と再会”. ロイター. 2021年8月6日. 2021年8月6日閲覧.
  30. 亡命ベラルーシ選手 強制帰国させようとしたコーチら2人が選手村を追放 - 陸上 - 東京オリンピック2020 : 日刊スポーツ”. nikkansports.com. 2021年8月7日閲覧。
  31. “陸上=東京五輪で亡命のベラルーシ女子選手、ポーランド国籍取得”. ロイター通信. 2021年8月31日. 2023年3月22日閲覧.
  32. Tétrault-Farber, Gabrielle (2023年8月7日). “Two years after Olympic defection, Belarusian sprinter cleared to race for Poland”. Reuters. 2023年8月8日閲覧.
  33. ポーランド代表変更を認可 東京五輪で亡命の陸上選手”. 共同通信 (2023年8月7日). 2023年8月8日閲覧。
  34. 岩壁峻 (2023年8月20日). ベラルーシ東京五輪代表、世界陸上に亡命先ポーランドの代表で出場”. 毎日新聞. 2023年8月21日閲覧。