キョウチクトウ
| キョウチクトウ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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キョウチクトウ (2022年7月10日) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Nerium oleander L. var. indicum (Mill.) O.Deg. et Greenwell (1952)[2] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| キョウチクトウ(夾竹桃) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| oleander | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 園芸品種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キョウチクトウ(夾竹桃[5]、学名: Nerium oleander var. indicum)は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。
形態
[編集]常緑樹の低木で蔓性の性質は無く直立する[6]。樹高は最大でも5メートル(m)程度で、株本からよく分岐する。
葉は単葉で茎には3輪生で付く[6]。針状の葉が重なり合って枝を覆うように生える[5]。葉身は細長く光沢のある長楕円形で、両端がとがった形で厚い[7]。葉の裏面には細かいくぼみがあり、気孔はその内側に開く。
花は1つの花の中に雄蕊と雌蕊を供える両性花である[6]。
花弁は基部が筒状、その先端で平らに開いて五弁に分かれ、それぞれがややプロペラ状に曲がる。花色は淡紅色がふつうだが、紅色、黄色、白など多数の園芸品種があり、八重咲きや大輪咲きの種もある[7][5]。数少ない夏の花木で、園芸種の数も多い[7]。
日本では適切な花粉媒介者がいなかったり、挿し木で繁殖したクローンばかりということもあって、受粉に成功して果実が実ることはあまりないが[5]、ごくまれに果実が実る。果実は細長い袋状で[7]、熟すると縦に割れ、中からは長い褐色の綿毛を持った種子が出てくる。
根系は小中径根が中心で、株本でよく分岐する。一部に垂下根も出るが水平根が多い。根端は肥厚が見られ、これは菌類と共生し菌根が形成されたためである[8]。
- 白花
- 白花は一重咲き、桃色は八重咲きが多い。
類似種
[編集]東洋種と西洋種は花ののど部分の附属体の形状が異なる[6]。
生態
[編集]インドでは、河原や道路脇などに生えている[9]。花は、熱帯地域ではほとんど一年中咲くが[10]、日本では夏期の6 - 9月ごろに開花する[7][10]
有毒な防御物質を持つため、食害する昆虫は少ないが幾つか知られている。
キョウチクトウアブラムシという黄色いアブラムシが新しく伸びた枝に寄生する[11]。アブラムシは天敵の多い生物であるが、他のアブラムシを食べる昆虫であっても、このキョウチクトウアブラムシを餌として与えると死亡したり正常に生育しなかったりするので、世界各地で研究者が実験を行ってきた。京都における観察ではこのアブラムシの天敵として最も重要なのはダンダラテントウであり、他にヒラタアブ類、寄生蜂・寄生蠅類、クサカゲロウ類などが見られた[12]。
新芽やつぼみをシロマダラノメイガの幼虫が、糸で綴って内部を食べる。九州の一部や南西諸島では、キョウチクトウスズメ(スズメガ科)の幼虫が、葉を食べて育つ。
分類
[編集]アジアに分布するものは地中海種とは種単位で異なるとする考えもあるが、本項では地中海産のNerium oleander var. olelanderの一変種 var. indicumとしてあつかう。
分布
[編集]古くから栽培されており、原産地はインド亜大陸とも地中海沿岸や北アフリカとも言われ諸説ある。
日本へは、中国を経て江戸時代中期の享保年間(1716 - 1736年)、あるいは寛政年間(1789 - 1801年)に渡来したといわれる[7][9][5]。暑さや乾燥に強く、世界中では乾燥地で繁茂していて、大面積を占有して大きな藪をつくる[5]。
人間との関係
[編集]園芸・緑化
[編集]園芸品種は数百はあるとされ、花の色、斑入りの葉など様々ある。
環境適性が広く、劣悪な環境に耐えることから幹線道路沿いの緑化などにも使われる。乾燥や大気汚染に強いため、工業地帯や市街地緑化の街路樹などに利用される[7]。神奈川県川崎市では、長年の公害で他の樹木が衰えたり枯死したりする中で、キョウチクトウだけはよく耐えて生育したため、現在に至るまで、同市の緑化樹として広く植栽されている。高速道路沿いの植栽でもよく見られ[10]、米国カリフォルニア州のヨセミテ国立公園から州都サクラメントまでのハイウェイの両脇には、延々とキョウチクトウが植栽されている[5]。
広島市の花として有名である。これは原爆投下による放射線汚染により数十年は木も生えないと言われた広島で最初に花が咲いた植物だからとされている。
燃えにくく火に強いため(防火樹)としても知られる[13]。
薬用
[編集]
全体に有毒であるが、葉は強心剤や利尿剤になり[7]、麻酔にも使われる[5]。キョウチクトウの全部位には、オレアンドリンなど様々な強心配糖体が含まれており、強心作用がある。ほかに利尿作用もある。しかし、同種は非常に毒性が強いため、素人は処方すべきでない。
毒性
[編集]全草に強心配糖体を含み有毒である。燃やした煙や腐葉土にも注意したほうが良いとされる。
中毒症状は、嘔気・嘔吐(100%)、四肢脱力(84%)、倦怠感(83%)、下痢(77%)、非回転性めまい(66%)、腹痛(57%)などである[14]。治療法はジギタリス中毒と同様である。
高カリウム血症になると予後不良になる確率が高いという。
治療としては血液透析はオレアンドリンがタンパク質に強く結合してしまうために効果が薄い。オレアンドリンはジギタリスの強心配糖体であるジゴキシンと交差反応を示し、ジゴキシンが検出されたようなデータが出ることがあるので留意する。海外の研究ではジゴキシン抗体の投与がキョウチクトウ中毒にも有効であることを示す結果があるという[15]。
妊娠するためにという理由で葉を漬けた水を飲んで中毒した事例がある[16]。
地域によっては事故ではなく自殺目的での使用も多いとされる[5]。
中毒事例
[編集]- 日本では、1877年(明治10年)の西南戦争のときに、官軍の兵が折った枝を箸代わりに利用し、中毒した例がある[5][10][17]。
- フランスでキョウチクトウの枝を串焼きの串に利用して死亡者が出た例がある[17]。
- 1980年に、千葉県の農場で牛に与える飼料の中にキョウチクトウの葉が混入する事故があり、この飼料を食べた乳牛20頭が中毒をおこし、そのうちの9頭が死亡した。混入した量は、牛1頭あたり、乾いたキョウチクトウの葉約0.5g程度だったという[18]。家畜がキョウチクトウを食べることで中毒症が問題になる。致死量は乾燥葉で50mg/kg(牛、経口)という報告がある[19][20]。
- 福岡市では、2009年12月、「毒性が強い」として市立学校に栽植されているキョウチクトウを伐採する方針を打ち出した[21]が、間もなく撤回している[22]。
- 2017年、香川県高松市内の小学校の校庭に植えられたキョウチクトウの葉を3枚から5枚食べた2年生の児童2人が、吐き気や頭痛などの中毒症状を起こし、一時入院した[23]。
- 2025年7月、千葉県市原市の自宅で、同居する伯父のいびきに腹を立てた高校3年生の男子生徒がキョウチクトウの葉を刻んでみそ汁に入れ飲ませたとして、殺人未遂容疑で同年9月1日に再逮捕された。混入させた葉は致死量に達していたが、すぐに吐き出したため口内のしびれ、腹痛などの軽症であった[24]。
花粉症
[編集]種の保全状況評価
[編集]国際自然保護連合(IUCN)作成のレッドリストでは、本種の絶滅の可能性について2013年現在で低危険種(Least Concern, LC)と評価している[1]。日本の環境省が作成するレッドリスト(植物の最新版は2025年公開の第五次リスト)には掲載されていない。そもそもが前述のように外来種である。
象徴
[編集]
キョウチクトウの花言葉は、「危険な愛」「用心」「油断大敵」「たくましい精神」「心の平和」とされる[5]。
ギリシャ神話や文献では、夾竹桃は「美と危険」を象徴する植物として扱われることがある。
スペインでは「聖ヨセフの花」と呼ばれているという。これは重病人の枕もとで祈っていたら、神が現れ重病人の胸の上にキョウチクトウの葉を置き、結果病人は快復したからだという[26]。本種の強心配糖体の薬理作用を暗示するような話である。
自治体の木・花
[編集]綺麗な花を付けるが毒性も強いために指定する自治体は少ない。前述の広島市のものが指定のエピソードと共に有名であるが、他にも以下の自治体が指定している。
名称
[編集]中国名は夾竹桃[2]。和名のキョウチクトウは、漢名の「夾竹桃」を音読みにしたのが語源で、漢名は葉がタケのように細く似ていること、花がモモに似ていると中国人が思ったことに由来する[5][9]。属名の Nerium は、ギリシア語で「湿った」を意味し、この木が湿気を好むと考えられたことに由来し[5][注 1]、もともとは近縁のセイヨウキョウチクトウ(学名: N. oleander)が湿地に生えることからきている[9]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- 1 2 Lansdown, R.V. (2013). Nerium oleander. The IUCN Red List of Threatened Species 2013: e.T202961A13537523. doi:10.2305/IUCN.UK.2013-1.RLTS.T202961A13537523.en
- 1 2 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Nerium oleander L. var. indicum (Mill.) O.Deg. et Greenwell キョウチクトウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年8月12日閲覧。
- ↑ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Nerium indicum Mill. キョウチクトウ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年8月12日閲覧。
- ↑ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Nerium oleander L. var. indicum (Mill.) O.Deg. et Greenwell 'Plenum' ヤエキョウチクトウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年8月12日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 田中潔 2011, p. 147.
- 1 2 3 4 岡本省吾 著, 北村四郎 補 (1959) 『原色日本樹木図鑑 (保育社の原色図鑑 ; 第19)』. 保育社, 大阪. doi:10.11501/1377276 (国立国会図書館デジタルコレクション図書館送信サービスで閲覧可能)
- 1 2 3 4 5 6 7 8 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 91.
- ↑ 苅住昇 (2010) 『最新樹木根系図説 各論』.誠文堂新光社, 東京. ISBN 978-4-416-41005-9
- 1 2 3 4 5 辻井達一 2006, p. 178.
- 1 2 3 4 辻井達一 2006, p. 180.
- ↑ 森津孫四郎 (1983) 『日本原色アブラムシ図鑑』. 全国農村教育協会, 東京. doi:10.11501/12602188(国立国会図書館デジタルコレクション図書館送信サービスで閲覧可能)
- ↑ 高田肇, 杉本直子 (1994) キョウチクトウアブラムシの京都における生活環およびその天敵昆虫群構成. 日本応用動物昆虫学会誌, 38巻2号, pp.91-99. doi:10.1303/jjaez.38.91
- ↑ 藤山宏『プロが教える住宅の植栽』学芸出版社、2010年、9頁。
- ↑ 門田奈実, 田渕真基, 清水貴志 ほか、 『日本集中治療医学会雑誌』 2012年 19巻 4号 p.685-686, doi:10.3918/jsicm.19.685
- ↑ 武藤憲哉, 伊関憲 (2022) キョウチクトウ中毒. 日本集中治療医学会雑誌, 29巻5号, pp.498-499. doi:10.3918/jsicm.29_498
- ↑ Ibraheem Khan, Chandra Kant, Anil Sanwaria, Lokesh Meena (2010) Acute Cardiac Toxicity of Nerium Oleander/Indicum Poisoning (Kaner) Poisoning. Heart Views 11 (3): 115–116. doi:10.4103/1995-705X.76803
- 1 2 “キョウチクトウ(夾竹桃)”. 植物の話. 高橋京子 花の絵美術館 (2022年8月27日). 2025年8月12日閲覧。
- ↑ 黒毛和種繁殖雌牛群に発生したキョウチクトウ混入粗飼料給与によるオレアンドリン中毒事例 大分県家畜保健衛生並びに畜産関係業績発表会集録 60, 35-43, 2011 (PDF)
- ↑ Namera A.、et al.「Rapid quantitative analysis of oleandrin in human blood by high-performance liquid chromatography」『日本法医学雑誌』第51巻第4号、日本法医学会、1997年、315-318頁、PMID 9366138。
- ↑ 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 安全性研究チーム (2004年5月10日). “キョウチクトウ”. 写真で見る家畜の有毒植物と中毒. 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所. 2009年12月11日閲覧。
- ↑ 鈴木美穂; 門田陽介 (2009年12月11日). “キョウチクトウ:「毒性強い」と学校の木すべて伐採 福岡”. 毎日jp. 毎日新聞. 2009年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月20日閲覧。
- 1 2 “学校のキョウチクトウ伐採 福岡市教委、一転見送り 「安易に切らないで」指摘受け”. 西日本新聞 (2009年12月17日). 2009年12月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月20日閲覧。
- ↑ “キョウチクトウで小学生2人が食中毒 高松”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞 (2017年12月16日). 2017年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月20日閲覧。
- ↑ 産経新聞 (2025年9月1日). “毒素入り味噌汁で同居の伯父殺害試みる 再逮捕の高3男子「いびきがうるさい」”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年9月5日閲覧。
- ↑ 池本信義 (1970) キョウチクトウ花粉喘息に関する研究 : 第1報.キョウチクトウ花粉(雄しべ)アレルゲンについて. アレルギー, 19巻3号, pp.188-192. doi:10.15036/arerugi.19.188
- ↑ 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、228頁。
参考文献
[編集]- 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、147頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
- 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、178 - 180頁。ISBN 4-12-101834-6。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、91頁。ISBN 4-522-21557-6。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- “Nerium oleander L.” (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2012年3月28日閲覧.
- “Nerium oleander”. National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- "Nerium oleander" - Encyclopedia of Life
- 波田善夫. “キョウチクトウ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学総合情報学部. 2012年3月28日閲覧。
- 『キョウチクトウ』 - コトバンク