カーブル陥落 (2021年)
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カーブル陥落(カーブルかんらく、英語: Fall of Kabul)は、アフガニスタン紛争中、2021年8月にターリバーンによってアフガニスタンの首都・カーブルが陥落した出来事である。
概要
[編集]米軍がジョー・バイデン大統領の声明[1]の下、同年8月末を期限に撤退を進めることをきっかけとし、ターリバーン軍は8月14日夜までにカーブル以外の主要都市を陥落させ、駐留米軍の撤退によって大きく弱体化したアフガニスタン政府軍に向かって想定を遥かに超えるスピードで侵攻した[2]。その早い進撃はアメリカ国民及び政府に大きな打撃となった。
翌15日にはターリバーン軍はカーブルを包囲したと声明を発表し、また同時に「武力によって首都カーブルに攻め入る意図はない」として、事実上の「カーブルの無血開城」を目指す考えを明らかにした[3]。
しかし同日夜、ターリバーンの戦闘員はターリバーン本部から市内に入るよう指示を受け、アフガニスタン当局の治安部隊が撤退した後略奪が多発するなど治安情勢が悪化したカーブル市内に「治安維持のため」に突入した。
市内では抵抗を受けることはなく、アフガニスタン当局の治安部隊はすでに撤退していたため、これが事実上のカーブル陥落となった。
これによりアフガニスタン・イスラム共和国政府は崩壊、アシュラフ・ガニー大統領は家族とともにアラブ首長国連邦に滞在していることが明らかになった[4]。
国際社会の対応
[編集]- 日本 - アフガニスタンに残る日本人や大使館で働くアフガニスタン人のスタッフなどを国外に退避させるため、航空自衛隊の輸送機をカーブル国際空港に派遣し、日本人1人・アフガニスタン人14人をパキスタンに輸送した[5][6]。自衛隊統合任務部隊の指揮官を務める金古真一空将は「遠い地での任務で不安を抱えている者もいるかもしれないが、それぞれが役割を果たし、任務を完遂することを期待している」とコメントした[7]。
- アメリカ合衆国 - 2021年7月時点でバイデン大統領自ら政権の崩壊はあり得ないとしてきた。しかし8月に入ると、アメリカ大使館の閉鎖準備はターリバーンの侵攻スピードに追い付かなくなり、最後の大使館員はカーブルが陥落した8月15日当日に大使館の屋根から直接ヘリコプターに乗って退避した[8]。その後、アメリカの民間人や現地協力者は、軍用機で周辺国へピストン輸送され8月25日までに約8万8000人がアフガニスタンを後にした[9]。8月30日、アメリカ軍は撤退を完了したが、9月上旬時点でアフガニスタン国内には約100人の民間人が残留している[10]。
- イギリス - イギリスは8月13日以降、8月23日頃までに現地在住のイギリス人や現地協力者など7100人以上(うち4200人余りがアフガニスタン人)を国外退避させた[11]。一方、外相であったドミニク・ラーブはカーブル陥落当時、地中海で休暇を取っていたことが問題視され、9月に入って副首相兼司法相に転任した[12]。
- オランダ - オランダ大使館員はカーブルにターリバーンが迫る中、アフガニスタン人職員に出国することを伝えないまま大使館から退避行動を開始。国内で批判を浴びたため[13]8月17日に救援機を差し向けたが、混乱した空港内のロジは不十分で、第一便はオランダ人やアフガニスタン人を1人も搭乗させないまま時間切れとなり出発を余儀なくされた[14]。その後はオランダ人とアフガニスタン人の輸送は進み、8月26日の大使館員とオランダ軍部隊を乗せた機が最終便となった[15]。
関連項目
[編集]- カーブル陥落 (曖昧さ回避)
- カーブル陥落 (2001年)
- サイゴン陥落 - ベトナム戦争末期の1975年4月30日に、ベトナム共和国(南ベトナム)首都サイゴン[注 1]がベトナム民主共和国(北ベトナム)によって陥落させられた事件。アメリカの一部報道には今回のカーブル陥落をサイゴン陥落に準える評価もある。
- アメリカ同時多発テロ事件 - 今回の紛争(アフガニスタン紛争)の引き金となったテロ事件。
- カーブル国際空港自爆テロ事件 - 8月26日に発生した自爆テロ事件。ISILの分派であるISKPが犯行声明を出した。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “バイデン氏「米最長の戦争終結」宣言 同時多発テロ20年の節目までにアフガン撤退へ”. BBCニュース (2021年4月15日). 2021年8月16日閲覧。
- ^ “タリバーン、アフガン州都の半数を制圧 首都カブールへの進撃加速”. CNN.co.jp. 2021年8月16日閲覧。
- ^ “首都包囲のタリバーン「攻め入らない」 無血開城めざす:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年8月16日閲覧。
- ^ “逃亡のガニ氏、UAEに タリバン進攻後所在不明”. 時事通信 (2018年8月18日). 2021年8月18日閲覧。
- ^ 産業経済新聞社. “自衛隊機がアフガン人輸送 活動再開は不透明”. 産経ニュース. 2021年9月4日閲覧。
- ^ 渡辺信 (2021年9月8日). “緊迫のアフガン 13日間 退避ドキュメント”. 日本放送協会. 2021年9月12日閲覧。
- ^ “アフガンの邦人など退避へ 自衛隊機2機が物資積み基地を離陸”. NHK. 2021年8月24日閲覧。
- ^ “<カブール陥落>米大使館の屋上からヘリで脱出する「サイゴン陥落」再び”. ニューズウィーク (2021年8月16日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ “国外脱出作戦の航空機、39分ごとに1便離陸 カブール空港”. CNN (2021年8月26日). 2021年8月30日閲覧。
- ^ “アフガンから米の民間人4人が退避 陸路で国境越える、軍撤退後初か”. 朝日新聞 (2021年9月7日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ “【詳しく】加速するアフガニスタン“脱出” 家族離れ離れも”. NHK (2021年8月24日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ “アフガン政権崩壊時に地中海で休暇、批判浴びた英外相が交代…英で内閣改造”. 読売新聞 (2021年9月16日). 2021年9月16日閲覧。
- ^ “カブール空港で混乱続く 各国がアフガニスタン出国を急ぐ”. BBC (2021年8月19日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ “オランダのアフガン退避の航空機、オランダ人搭乗できず”. AFP (2021年8月19日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ “仏・オランダ、カブール退避便を今週終了へ 米軍の撤退計画受け”. AFP (2021年8月26日). 2021年9月7日閲覧。
外部リンク
[編集]- “もぬけの殻”のカブール日本大使館はタリバンが警備していた【須賀川記者 現地リポート②】 TBS NEWS - 2021年11月10日取材