エドモンド・ハミルトン

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エドモンド・ムーア・ハミルトンEdmond Moore Hamilton, 1904年11月21日 - 1977年2月1日)は、アメリカ合衆国SF作家ホラー作家、推理作家オハイオ州ヤングスタウン(Youngstown)生まれ、ペンシルベニア州ニューキャッスル育ち。ペンネームとして他に、ロバート・キャッスル(Robert Castle)、ロバート・ウェントワース(Robert Wentworth)、S・M・テネショー(S.M. Tenneshaw)などがある。またホラー作品専用の別ペンネームにヒュー・デイヴィッドスン(Hugh Davidson)がある。ハウスネーム(複数作家の共有ペンネーム)にウィル・ガース(Will Garth)、ジョン・S・エンディコット(John S. Endicott)、アレクサンダー・ブレイド(Alexander Blade)がある。「キャプテン・フューチャー」専用のハウスネームとしてブレット・スターリング(Brett Sterling)がある。

妻はSF作家リイ・ブラケット

生涯[編集]

父スコット・B・ハミルトンは鉄工所を経営し、新聞の寄稿漫画家でもあった。ハミルトン家はスコットランドアイルランド人で、ウェールズ系やアメリカ・インディアンの血も引いており、代々長老派教会の信徒であった。母親モード・ホィーナリイは元教師でクエーカー教徒だった。ハミルトンの誕生後間もなく、父親が農場経営に失敗し、貧困生活を送った末、6歳の時に母親の故郷ニューキャッスルに転居した。父親は地方新聞社に就職する。10歳でハイスクールに入学し、14歳で厳格な長老派教会の学校であるウェストミンスター・カレッジに入学し、物理学を専攻する。しかし、周囲の学生との年齢差に悩み、『オールストーリー・マガジン』誌や『アーゴシー』誌などのパルプ・マガジンのファンタジー小説にのめりこむようになる。その結果、学業や礼拝をおろそかにするようになり、3年次の半ば、17歳で放校される。その後ペンシルベニア鉄道のパート仕事を点々とする。

1924年、20歳で短編「Beyond the Unseen Wall」を書き、『ウィアードテールズ』誌に持ち込む。同作は改稿の末、『ウィアードテールズ』誌1926年8月号に「マムルスの邪神」(The Monster-God of Mamurth)として掲載され、作家デビューする。続けて第2作となる長編「Across Space」(火星人が地球を滅ぼすために他の惑星を軌道から引き離してぶつけようとするというストーリー)を執筆し、『ウィアードテールズ』誌1926年9月号から11月号に掲載される。1928年、短編「凶運の彗星」(The Comet Doom)を『アメージング・ストーリーズ』誌に発表し、メジャー誌にデビューを果たす。しかし、狭いファン層向けのマイナー雑誌『ウィアードテールズ』への恩を忘れず、H・P・ラヴクラフトロバート・E・ハワードらと共に中核メンバーであり続け、1926年から1948年までに79編の作品を同誌に寄稿している。

SF黎明期に多くのスペースオペラを発表。地球規模、あるいは宇宙規模の大危機を数多く描き、「ワールドレッカー(宇宙破壊者)」「ワールドセイヴァー(世界救済者)」の異名をとった。当時の作品は、深みは少ないが、アイディアが豊富で、その後のSFでしばしば使われるガジェットが多数含まれている。主なスペースオペラ作品に「星間パトロール」シリーズ、「スターキング」シリーズ、「キャプテン・フューチャー」シリーズがある。

1930年代ごろからは年下の友人、SF作家ジャック・ウィリアムスンの影響もあり意図的に作風を変え始め[1]、これまで通りの豊富なアイディアの中にペシミスティックな虚無感を盛り込むようになった。このころの代表的な作品のひとつが、マッド・サイエンティスト物の名作として知られる短編「フェッセンデンの宇宙」である。これは実験室内に「ミニチュアの宇宙」を創造してしまう科学者を描き、我々の住む宇宙もその種の科学者の創造物ではないかという不安感を掻き立てる名作である。

また1935年から1940年にかけてミステリ専門のパルプ・マガジン『ポピュラー・ディテクティブ(Popular Detective)』誌、『スリリング・ディテクティブ(Thrilling Detective)』誌、『スリリング・ミステリー(Thrilling Mystery)』誌などに30編のミステリを発表している[2]

1940年代にはロサンゼルスに居を構えて執筆活動の傍ら、SFファンダムや後進の若手作家たちとの交流を深める。1946年12月31日に同じSF作家のリイ・ブラケットと結婚(ちなみにこのときの付添人はリイの後輩作家で弟子でもあったレイ・ブラッドベリが務めた)。結婚を機にオハイオ州キンズマン(Kinsman)に転居。

1946年から1966年にかけて、旧知の編集者モート・ワイジンガーの誘いでDCコミックの看板タイトル『スーパーマン』と『バットマン』の原作を書いている(総計314編)。中でも特に著名なものは「Superman Under the Red Sun」(Action Comics #300, 1963。遠未来の赤い太陽に照らされた地球ではスーパーパワーが発揮できず、そこから脱出できなくなるというストーリー)。

第二次世界大戦後には既に過去の作家と見なされるようになっていたが、『時果つるところ (City at World's End)』(1951年)でカムバック、健在ぶりを示した。戦後の代表作としてほかに『虚空の遺産 (The Hounted Star)』(1960年)がある。

最晩年にはニュー・スペースオペラとも言うべき「スターウルフ」シリーズを発表した。 しかし第3巻『望郷のスターウルフ』 (World of the Starwolves)を発表し、第4巻『Run Starwolf』に取り掛かった直後の1977年2月1日、カリフォルニア州ランカスターにおいて腎臓手術の予後不良により死去(72歳)。なお、妻のリイもその翌年、後を追うかの様に死去している。

大の読書家で、ドイツ語、フランス語、イタリア語を自由に読みこなした。また音楽愛好家でもあり、バッハからニューオーリンズジャズまで、グランド・オペラから民謡まで多くのレコードをコレクションしていた[3]

日本語訳作品リスト[編集]

星間パトロール (Interstellar Patrol) シリーズ[編集]

  • 銀河大戦 (Outside the Universe) ハヤカワ文庫SF ISBN 978-4150100155
  • 太陽強奪 (The Star Stealers and other Stories) ハヤカワ文庫SF ISBN 978-4150100537
    • 激突する太陽(Crashing Suns)
    • 太陽強奪 (The Star Stealers)
    • 星雲のなかで(Within the Nebula)
    • 彗星を駆るもの(The Comet-Drivers)
    • 宇宙の暗雲(The Cosmic Cloud)

キャプテン・フューチャー (Captain Future) シリーズ[編集]

キャプテン・フューチャーの項を参照

スターウルフ (Star Wolf) シリーズ[編集]

スターウルフの項を参照

スターキング (The Star Kings) シリーズ[編集]

スターキングの項を参照

他の長編[編集]

日本でまとめられた短篇集[編集]

  • 「フェッセンデンの宇宙」早川書房、ハヤカワSFシリーズ版
    • フェッセンデンの宇宙 (Fessenden's World)(1950年版)
    • 反対進化 (Devolution)
    • 未来を見た男 (The Man who Saw the Future)
    • 翼をもつ男 (The Man who Hath Wings)
    • 追放者 (Exile)
    • 虚空の死 (The Dead Planet)
    • ベムがいっぱい (Wacky World)
    • 時の廊下 (The Inn Outside the World):「世界の外のはたごや」の訳題で『マイ・ベストSF』(創元SF文庫)にも収録
    • 世界のたそがれに (In the World's Dusk)
    • 何が火星に (What's It Like Out There?)
  • 「星々の轟き」(青心社)
    • 進化した男 (The Man Who Evolved)
    • 星々の轟き (Thundering Worlds)
    • 呪われた銀河 (The Accursed Galaxy)
    • 漂流者 (Castaway/The Man Who Called Himself Poe)
    • 異星からの種 (The Seeds from Outside)
    • レクイエム (Requiem)
    • 異境の大地 (Alien Earth)
    • プロ (The Pro)
  • 「フェッセンデンの宇宙」河出書房新社 奇想コレクションISBN 978-4309621845
    • フェッセンデンの宇宙 (Fessenden's World)(1937年版)
    • 風の子供 (Child of the Winds)
    • 向こうはどんなところだい? (What's It Like Out There?)
    • 帰ってきた男 (The Man Who Returned)
    • 凶運の彗星 (The Comet Doom)
    • 追放者 (Exile)
    • 翼を持つ男 (The Man who Hath Wings)
    • 太陽の炎 (Sunfire!)
    • 夢見る者の世界 (Dreamer's Worlds)
  文庫版では以下3編が追加されている。
* 世界の外のはたごや (The Inn Outside the World)
* 漂流者 (Castaway/The Man Who Called Himself Poe)
* フェッセンデンの宇宙(一九五〇年版) (Fessenden's World)(1950年版)
  • 「反対進化」 創元SF文庫 ISBN 978-4488637033
    • アンタレスの星のもとに (Kalder, World of Antares)
    • 呪われた銀河 (The Accursed Galaxy)
    • ウリオスの復讐 (The Vengence of Ulios)
    • 反対進化 (Devolution)
    • 失われた火星の秘宝 (Lost Tresure of Mars)
    • 審判の日 (Day of Judgement)
    • 超ウラン元素 (Transuranic)
    • 異境の大地 (Alien Earth)
    • 審判のあとで (After a Judgement Day):初訳のSFマガジン1977年8月号掲載時のタイトルは「審判の後に」
    • プロ (The Pro)
  • 「眠れる人の島」 創元SF文庫 ISBN 978-4488637040
    • 蛇の女神 (Serpent Princess)
    • 眠れる人の島 (The Isle of the Sleeper)
    • 神々の黄昏 (The Twilight of the Gods)
    • 邪眼の家 (The House of Evil Eyes)
    • 生命の湖 (The Lake of Life)

まとめられていない中・短編[編集]

  • マムルスの邪神 (The Monster-God of Mamurth):SFマガジン 1977年8月号に掲載
  • 樹のごときもの歩む (The Plant Revolt):SFマガジン 1962年9月号に掲載
  • 吸血鬼の村 (Vampire Village):『吸血鬼伝説』原書房(1997)に収録。ヒュー・デイヴィッドスン名義[4]
  • 大氷原突破! (Under the White Star):SFマガジン 1975年12月号に掲載
  • さいはての星 (Forgotten World):SFマガジン 1962年11月号に掲載
  • 帰ってきた男 (The Man Who Returned):『ウィアードテールズ 3』国書刊行会(1984)に収録
  • 太陽破壊者 (The Sun Smasher):『太陽破壊者』日本文芸社(1978)に収録

エッセイ[編集]

  • 「寄稿者、愛読者にとって《ウィアード・テールズ》は“クラブ”と呼ぶにふさわしいものですらあった。」:『ウィアード・テールズ 4』国書刊行会(1985)に収載

ミステリ[編集]

  • 「整形外科手術」:『探偵倶楽部』1957年10月号に掲載。著者名はエドモンド・スミルトン

アレクサンダー・ブレイド名義[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 「フェッセンデンの宇宙」河出書房新社 奇想コレクション版
  2. ^ 「フェッセンデンの宇宙」河出書房新社 奇想コレクション版
  3. ^ SFマガジン1997年8月号『ハミルトン追悼特集号』「夫を偲ぶ」(リイ・ブラケット)
  4. ^ 吸血鬼伝説(編:仁賀克雄、原書房)

出典[編集]

  • ウィアードテールズ3 (国書刊行会、1984)
  • 星々の轟き(編:安田均、青心社)
  • 世界SF全集11 ハミルトン・ラインスター(早川書房、1969)巻末解説「エドモンド・ハミルトン -その人と解説-」(南山宏