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「高齢出産」の版間の差分

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'''高齢出産'''(こうれいしゅっさん)とは、[[統計]]上または[[医学]]上、女性が35歳以上で[[子ども]]を産むことを指す。
'''高齢出産'''(こうれいしゅっさん)とは、[[統計]]上または[[医学]]上、女性が35歳以上で[[子ども]]を産むことを指す。


なお、「35歳」という年齢に何か特別な意味があるのかと誤解されがちであるが、高齢出産のリスクは30歳を超えた頃から徐々に高まっていくものであり、35歳を境に「急に」危険性が上昇するわけではない。
なお、「35歳」という年齢に何か特別な意味があるのかと誤解されがちであるが、高齢出産のリスクは、親となる男女の加齢に応じて、30歳を超えた頃から徐々に高まっていくもので、35歳を境に「急に」危険性が上昇するわけではない。


== 高齢出産の増加 ==
== 高齢出産の増加 ==
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== 高齢出産のリスク ==
== 高齢出産のリスク ==
高齢出産のリスクには「高齢妊娠」に関するリスクと「高齢分娩」に関するリスクの2つに分けられる。なお、実際の高齢出産では大半が正常な[[妊娠]]・[[分娩]]の経過をたどっており、高齢出産が常に高いリスクを伴うということではなく、妊娠・出産時の夫婦の年齢が高いと、若いうちの妊娠・出産と比べて相対的にリスクが高くなるという意味である。
高齢出産のリスクには「高齢妊娠」に関するリスクと「高齢分娩」に関するリスクの2つに分けられる。なお、実際の高齢出産では大半が正常な[[妊娠]]・[[分娩]]の経過をたどっており、高齢出産が常に高いリスクを伴うということではなく、妊娠・出産時の夫婦の年齢が高いと、夫婦が若いうちの子づくりに比べて相対的にリスクが高くなるという意味である。


=== 高齢妊娠のリスク ===
=== 高齢妊娠のリスク ===
; 妊娠のしにくさ
; 妊娠のしにくさ
: 年齢が高まるほど卵子の質が劣化し妊娠しにくくなる。
: 男女ともに年齢が高まるほど精子・卵子の質が劣化または老化し妊娠しにくくなる。
: (なお、日本人の夫婦の平均年齢差は2歳であるが、[[不妊]]の原因とされるのは、男性側に理由がある場合と、女性側に理由がある場合、ほぼ半々である。)


==== 染色体異常等が起こる可能性 ====
==== 染色体異常等が起こる可能性 ====
: 年齢が高まるほど卵子の質が劣化または老化し、染色体異常などが起こりやすくなる。加齢からの精子のDNA損傷よる影響も確認されている。
: 年齢が高まるほど精子・卵子の質が劣化または老化し、染色体異常などが起こりやすくなることも男女共共通している。
; 加齢による精子のDNA損傷
: 医療関係者が接するのはもっぱら出産する女性側であるために、女性側への啓蒙が主として行われがちであるが、[[男性]]の[[精子]]も高齢になると劣化することが、近年の研究により報告されている。中高年男性であっても精子はたえず再生産されるから[[射精]]は可能だといっても、再生産される[[毛髪]]の質が年齢と共に劣化するのと同様、中年になると[[ホルモン]]系の老化が始まり、男性が良質な精子を作り出す能力が衰えていく。その結果として、男性の[[精子]]の質も劣化し、女性を妊娠させる可能性も低下する。欧州での報告によると、被験者2,100人を対象とした研究で、45歳を超える男性の精子DNAの損傷は、それ以下の年齢グループに比較して有意に高く、30歳未満の男性との比較では2倍であった<ref>2005年[[コペンハーゲン]]で開かれた[[欧州]]ヒト[[生殖]]学会議(ESHRE)での報告。</ref>。
; 新生児の[[小人症]](軟骨形成不全症)の発症率の増加
: 米国の研究においては精子の[[DNA]]の損傷と[[染色体異常]]は男性の年齢と共に増加し、[[遺伝子]]の[[突然変異]]による[[小人症]](軟骨形成不全症)の発症率は男性が1年歳をとるごとに2%ずつ増加することが報告されている<ref>2006年[[米国]][[国立]]ローレンス・リヴァモア研究所の研究発表<!--http://www.llnl.gov/pao/news/news_releases/2006/NR-06-06-01.html--></ref>。
; 新生児の[[ダウン症]]の発症率の増加
; 新生児の[[ダウン症]]の発症率の増加
: [[ダウン症]]も一種の[[染色体]]異常であるが、父母となる男女のどちらが高齢であっても[[ダウン症]]児が生まれるリスクは増加する。40代の夫婦が出産した場合、新生児の約1%がダウン症を発症するとされている<ref>なお、ダウン症の4件に3件が女性側の原因、残り1件が男性側の原因によるものとされている。</ref>。
: [[ダウン症]]も一種の[[染色体]]異常である。
; 新生児の[[自閉症]]の発症率の増加
: [[米国]]の研究によると、父親が40歳以上の時に生まれた新生児は[[自閉症]]や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30~39歳の父親と比較すると1.5倍以上とされている。一方、母親については、年齢が高いと若干の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子どもの[[自閉症]]に発症に与える有意な影響は認められなかったとされている<ref>[[米国]][[精神医学]][[専門誌]]「Archives of General Psychiatry」(アーカイブズ・オブ・ゼネラル・サイカイアトリー)2006年9月号</ref>。


=== 高齢分娩のリスク ===
=== 高齢分娩のリスク ===
高齢分娩の場合、母体が危険なだけではなく、[[流産]]・[[早産]]する危険性が増加する。危険因子は、遷延分娩・分娩停止、分娩時出血量の増加、分娩時出血量の増加、産道損傷、帝王切開率の上昇、などがあげられる。
高齢分娩の場合、母体が危険なだけではなく、[[流産]]・[[早産]]する危険性が増加する。


第一子出産が高齢出産である場合は、母体の健康が損なわれる危険性や、[[流産]]・[[早産]]の可能性が増加する。経産婦が高齢出産を行う場合は、非経産婦の場合と比べて母体の健康に対するリスクは相対的に低くなるが、生まれてくる子供の健康に関するリスク(染色体異常が発生しやすくなることなど)は同じである。
第一子出産が高齢出産である場合は、母体の健康が損なわれる危険性や、[[流産]]・[[早産]]の可能性が増加する。経産婦が高齢出産を行う場合は、非経産婦の場合と比べて母体の健康に対するリスクは相対的に低くなるが、生まれてくる子供の健康に関するリスク(染色体異常が発生しやすくなることなど)は同じである。


=== まとめ ===
=== まとめ ===
高齢出産の増加は年齢が高い[[妊婦]]が安全に出産する事が可能になった事を反映するものにすぎない。確かに[[不妊治療]]などの進歩によって高齢になってからの妊娠も増加はしているが、高齢になるにつれて妊娠を可能とする条件・能力は低下していくという前提条件は変わっておらず、妊娠した女性の負担も決して軽くはないことに留意する必要がある。
高齢出産の増加は年齢が高い[[妊婦]]が安全に出産する事が可能になった事を反映するものにすぎない。確かに[[不妊治療]]などの進歩によって高齢になってからの妊娠も増加はしているが、父親・母親が高齢になるにつれて妊娠を可能とする条件・能力は低下していくという前提条件は変わっておらず、妊娠した女性の負担も決して軽くはないことに留意する必要がある。


また、女性に比べれば影響は小さいとはいえ、男性側もやはり加齢によってができにくくなることを認識おく必要がある。
また、男性側も、子どもがほしいのであれば、自分が高齢になるとどもができにくくなることをもっと認識すべきである(日本では特にこの点についの社会的認識希薄である


高齢出産には、経済的に余裕ができてから子育てができるケース多いなど、必ずしもデメリットばかりではないが、子の負担を考えれば、実子を望む性は30歳前後までに出産するよう家族計画をたてるのが望ましいといえるであろう。
高齢出産には、経済的に余裕ができてから子育てができること、子どを育てる上で精神上に余裕ができることなど、必ずしもデメリットばかりではないが、<!--健康な-->どもが必ずほしいであれば、<!--さほど年齢の離れていない男が、-->夫婦ともに30歳前後までに出産するよう家族計画をたてるのが望ましいといえるであろう。


== 高齢出産した女性有名人 ==
== 高齢出産した女性有名人 ==
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* [[戸川昌子]](46歳で初出産)
* [[戸川昌子]](46歳で初出産)
* [[兵藤ゆき]](46歳で初出産)
* [[兵藤ゆき]](46歳で初出産)
* [[生田智子]]([[ジュビロ磐田]][[中山雅史]]夫人)
* [[村松英子]]
* [[村松英子]]
* [[大杉君枝]]
* [[武内陶子]]
* [[武内陶子]]
* [[ジャガー横田]](6歳年下の医師と結婚、45歳で初出産)
* [[ジャガー横田]](6歳年下の医師と結婚、45歳で初出産)
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* [[ヒラリー・クリントン]]
* [[ヒラリー・クリントン]]
* [[シェリー・ブレア]]([[英国]][[ブレア首相]]夫人。[[弁護士]])
* [[シェリー・ブレア]]([[英国]][[ブレア首相]]夫人。[[弁護士]])
* [[マドンナ]]
* [[有賀さつき]]
* [[有賀さつき]]
* [[小島奈津子]]
* [[小島奈津子]]
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.llnl.gov/pao/news/news_releases/2006/NR-06-06-01.html 米国国立ローレンス・リヴァモア研究所の研究発表(英語)"Study shows that genetic quality of sperm deteriorates as men age"]

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[[Category:出産|こうれいしゆつさん]]
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2007年10月10日 (水) 06:09時点における版


高齢出産(こうれいしゅっさん)とは、統計上または医学上、女性が35歳以上で子どもを産むことを指す。

なお、「35歳」という年齢に何か特別な意味があるのかと誤解されがちであるが、高齢出産のリスクは、親となる男女の加齢に応じて、30歳を超えた頃から徐々に高まっていくもので、35歳を境に「急に」危険性が上昇するわけではない。

高齢出産の増加

厚生労働省統計情報部によれば、2005年に40歳以上で出産した女性は2万348人で、1958年以降47年ぶりに2万人を超えたことを発表した。同統計によれば、35歳以上の出産は全体の16%に上り、うち第一子出産が3人に1人という状況であった。

高齢出産の「高齢」という意味は、一般語としての「高齢者」(通常60代以上を指す)とは一致していない。閉経後は女性は妊娠しなくなるため(日本人女性の平均閉経年齢は約50歳)、高齢者の女性は、自然妊娠のかたちでは子供を生むことはできない[1]

高齢出産のリスク

高齢出産のリスクには「高齢妊娠」に関するリスクと「高齢分娩」に関するリスクの2つに分けられる。なお、実際の高齢出産では大半が正常な妊娠分娩の経過をたどっており、高齢出産が常に高いリスクを伴うということではなく、妊娠・出産時の夫婦の年齢が高いと、夫婦が若いうちの子づくりに比べて相対的にリスクが高くなるという意味である。

高齢妊娠のリスク

妊娠のしにくさ
男女ともに年齢が高まるほど精子・卵子の質が劣化または老化し妊娠しにくくなる。
(なお、日本人の夫婦の平均年齢差は2歳であるが、不妊の原因とされるのは、男性側に理由がある場合と、女性側に理由がある場合、ほぼ半々である。)

染色体異常等が起こる可能性

年齢が高まるほど精子・卵子の質が劣化または老化し、染色体異常などが起こりやすくなることも男女共に共通している。
加齢による精子のDNA損傷
医療関係者が接するのはもっぱら出産する女性側であるために、女性側への啓蒙が主として行われがちであるが、男性精子も高齢になると劣化することが、近年の研究により報告されている。中高年男性であっても精子はたえず再生産されるから射精は可能だといっても、再生産される毛髪の質が年齢と共に劣化するのと同様、中年になるとホルモン系の老化が始まり、男性が良質な精子を作り出す能力が衰えていく。その結果として、男性の精子の質も劣化し、女性を妊娠させる可能性も低下する。欧州での報告によると、被験者2,100人を対象とした研究で、45歳を超える男性の精子DNAの損傷は、それ以下の年齢グループに比較して有意に高く、30歳未満の男性との比較では2倍であった[2]
新生児の小人症(軟骨形成不全症)の発症率の増加
米国の研究においては精子のDNAの損傷と染色体異常は男性の年齢と共に増加し、遺伝子突然変異による小人症(軟骨形成不全症)の発症率は男性が1年歳をとるごとに2%ずつ増加することが報告されている[3]
新生児のダウン症の発症率の増加
ダウン症も一種の染色体異常であるが、父母となる男女のどちらが高齢であってもダウン症児が生まれるリスクは増加する。40代の夫婦が出産した場合、新生児の約1%がダウン症を発症するとされている[4]
新生児の自閉症の発症率の増加
米国の研究によると、父親が40歳以上の時に生まれた新生児は自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30~39歳の父親と比較すると1.5倍以上とされている。一方、母親については、年齢が高いと若干の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子どもの自閉症に発症に与える有意な影響は認められなかったとされている[5]

高齢分娩のリスク

高齢分娩の場合、母体が危険なだけではなく、流産早産する危険性が増加する。

第一子出産が高齢出産である場合は、母体の健康が損なわれる危険性や、流産早産の可能性が増加する。経産婦が高齢出産を行う場合は、非経産婦の場合と比べて母体の健康に対するリスクは相対的に低くなるが、生まれてくる子供の健康に関するリスク(染色体異常が発生しやすくなることなど)は同じである。

まとめ

高齢出産の増加は年齢が高い妊婦が安全に出産する事が可能になった事を反映するものにすぎない。確かに不妊治療などの進歩によって高齢になってからの妊娠も増加はしているが、父親・母親が高齢になるにつれて妊娠を可能とする条件・能力は低下していくという前提条件は変わっておらず、妊娠した女性の負担も決して軽くはないことに留意する必要がある。

また、男性側も、子どもがほしいのであれば、自分が高齢になると子どもができにくくなることをもっと認識すべきである(日本では特にこの点についての社会的認識が希薄である)。

高齢出産には、経済的に余裕ができてから子育てができること、子どもを育てる上で精神上に余裕ができることなど、必ずしもデメリットばかりではないが、子どもが必ずほしいのであれば、夫婦ともに30歳前後までに出産するよう家族計画をたてるのが望ましいといえるであろう。

高齢出産した女性有名人

脚注

  1. ^ 但し、代理出産など、自らの卵子が受精したのではない受精卵を、自らの子宮に移して出産することは閉経後の女性でも医学的には可能で、日本でもごく少数ながら実例はある。
  2. ^ 2005年コペンハーゲンで開かれた欧州ヒト生殖学会議(ESHRE)での報告。
  3. ^ 2006年米国国立ローレンス・リヴァモア研究所の研究発表
  4. ^ なお、ダウン症の4件に3件が女性側の原因、残り1件が男性側の原因によるものとされている。
  5. ^ 米国精神医学専門誌「Archives of General Psychiatry」(アーカイブズ・オブ・ゼネラル・サイカイアトリー)2006年9月号

関連項目

外部リンク