駐輪場

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駐輪場。屋内式で前輪を固定するためのラックがついている(東京都豊島区

駐輪場(ちゅうりんじょう)とは、自転車駐車(駐輪)するべき所とされている場所の通称である。駐輪の設備あるいは駐輪のための施設はサイクルポートともいう。

日本

上下二段式のラック。より多くの自転車を駐輪できる(川崎市高津区

自転車の駐車対策などについて定めた日本の法律自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」(昭和55年11月25日法律第87号)では、自転車と原動機付自転車の駐輪場を併せて「自転車等駐車場」と定義しており、地方自治体によってはこれに倣って「自転車(等)駐車場(じてんしゃ〈とう〉ちゅうしゃじょう)」と呼称することもある。また、都市計画法に定める都市施設においては「駐車場」に分類され、同法に基づく都市計画運用指針において、駐輪場を「自転車駐車場」と称しているため、都市計画決定される駐輪場の名称は「自転車駐車場」となっている。大きななどの周辺で、地元の自治体などが放置自転車対策のために設置、運営している。自転車の延長として原動機付自転車の駐車も可能としているところも多い。

地域によっては、継続契約者は駅から近い場所に駐輪できるが、新規契約者は遠くの駐輪場へ割り当てるという方式を採っているため、無理を承知で駐輪場を利用せず、駅前周辺部に放置自転車として違法駐輪する者も多い。管理義務がないことが多く、盗難や事故については責任は負わないという趣旨の掲示を出して、事実上責任を放棄する姿勢の駐輪場が多い。無管理ゆえに安全を顧みず乗車走行しての乗り入れ、そのまま場内を走行するなどの利用者のモラルやそれに人身事故も問題視されている。自動車駐車場と同様に、条例において、一定規模以上の建築物を新増築する際に駐輪場の附置義務を定めている市町村もある。

なお自転車と密接な関係にある競輪を運営するJKA(旧・日本自転車振興会)の補助事業として造成された駐輪場もある。

運営・管理

公営の駐輪場
地方公共団体の外郭団体や委託を受けた業者が行う。近年では、指定管理者に管理させている場合もある。高齢者雇用対策の一環としてシルバー人材センターの就業先になっていることも多い。
民営の駐輪場
駅周辺では鉄道会社の関連会社が行うことがあるが、地方では個人経営の地元商店が敷地の一角を利用したものや、「自転車預かり所」を主たる生業とする業者・個人が駐輪場を運営していることもある。
居住者用の駐輪場
団地マンション等では居住者用の駐輪場を設けていることがある。
職場、学校の駐輪場
企業が従業員のために、学校が教職員、生徒・学生のために駐輪場を設けていることがある。
ファイル:駐輪場4.JPG
一定時間無料、以後時間料金制の駐輪場。精算機で精算するとロックが外れる(川崎市高津区

料金

商店に設置されるものを中心に無料である場合も多い。乗降客の多い駅周辺などの通勤客を対象にした駐輪場では月契約で1,000円から3,000円程度、日契約(1回利用)は50円から150円程度の料金を徴収し、管理人を常駐させているところもある。また、近年は駅などに近い大規模な商業施設で、買い物客以外の長時間駐輪に対処するため、駐輪場にコンピュータ制御の駐輪ラックを設置し、一定の時間を超えた場合に料金を徴収するところが増えている。これはコインパーキング同様に駐輪後に自転車がロックされ、退出時に精算することで自転車を取り出せる仕組みになっている。この際商業施設では、買い物や飲食の際に駐輪券への証明印や専用コインにより一定時間内の利用を無料とする例もある。

ファイル:Underground Bicycle storage at Chiba-Japan railway station east exit.JPG
千葉駅東口の機械式地下駐輪場(左)と地上の自転車のみの入出庫口(右)2009年春完成

構造

駐輪場の設備の構造としては、屋根のみのシンプルな構造のものもあるが、駐輪専用の設備としてサイクルラックが設けられることもある。

2段式
上下二段に駐輪することができる方式。
スライド式(平面式・平置式、段差式)
ラックをスライドさせて駐輪する方式。

設置の態様

立体駐輪場
ターミナル駅をはじめ、学校住宅地に近い駅の駐輪場では利用客が集中するために多層化するところが多くなっている。定期利用者と一時利用者を階層で分ける、駅前の再開発や区画整理でペデストリアンデッキと一体化、高架下を利用することが多い。
地下駐輪場
地上に設置したくても周辺に適切な用地が確保できない場合、地下駐輪場を採用することが多い。このほか既設の鉄道を地下化したり、地下鉄を新規に敷設したりする際、地下空間の有効利用として駐輪場を設置することもある。地下駅への出入口を兼ねることもあり、入出場の労力を軽減するためにスロープベルトコンベアを設置することがある。
機械式駐輪場
自動車タワーパーキングの自転車版で、自転車だけを出入口からタワー内の空いている駐車スペースへ自動的に移送して収容する。地上・地下を問わず土地を立体的に有効活用できることから注目が集まっており、2007年頃から実用化されている。上部や地下に機械で格納するため、盗難をはじめとした防犯効果が非常に高い。
路上駐輪場
2005年の道路法施行令改正によって、道路上に道路管理者が設ける駐輪場が「道路の附属物」として認められるようになった(令第34条の3第6号)。これにより幅広歩道や、横断歩道橋の下などといった遊休地を利用した駐輪場の設置が可能になった。これに応じて、都市計画法に基づく都市計画運用指針において、駐輪場(自転車駐車場)を都市計画決定する場合、都市計画道路に含めて決定することも可能とされた。2007年からは、道路管理者以外の公共団体や民間事業者が整備することも可能になった。

原動機付自転車の扱い

上段に自転車、下段に原動機付自転車を駐輪・駐車できるようにしたラック(川崎市高津区
  • 「自転車等駐車場」において法律の定める原動機付自転車は道路交通法に基づくもの(50cc以下の二輪など)となっている。 ただし一部の地方自治体や民間が運営する駐輪場においては、独自に施設内の整備を行って道路運送車両法に基づく原動機付自転車(125cc以下の二輪など)の駐輪を認めているところもある。
  • 2006年から50cc超の自動二輪車については駐車場法の適用を受けることが定められている。

かつては原動機付自転車がオートレースを運営する日本小型自動車振興会の分野であったことから、競輪の補助により造成された駐輪場には原動機付自転車が利用できない所もあった。なお2008年に日本自転車振興会と日本小型自動車振興会がJKAとして統合され補助事業が一元化したことにより、この問題は解消されている。

ヨーロッパ

自転車の利用が盛んなヨーロッパでは、路上駐輪場が多く、前輪を固定するため垂直や逆U字形のポールやラックなどの駐輪器具を設置して利用者の便宜を図っている。また駅周辺に設けられ、あるいは駅そのものと一体化した大規模な駐輪場が、修理や販売・レンタルといったサービスも行う「自転車サービスステーション」として位置づけられている例もある。

ミュンスターの自転車ステーション

ドイツノルトライン=ヴェストファーレン州では1996年から「自転車ステーション(Radstation=ラートスタチオン)100」という鉄道駅に直結した118箇所に上る大規模駐輪場の整備が進められている。ミュンスターにある「自転車ステーション」はその第1号で、1999年、ミュンスター中央駅前広場地下に開設された。収容台数は3,300台で、ドイツ最大である。自転車の修理・レンタル・販売といったサービスを提供する施設も併設されている。地下式でありながらガラス屋根のため明るくなっており防犯効果も高めている[1]。同州では駅構内に駐輪場を整備することを原則とし、駅から離れる場合でも200メートル以内に設置することを義務づけている[2]

オランダユトレヒトでは、駅のプラットホーム下に駅構内地下通路と直結する駐輪場を設置している。合計7,000を収容できる大規模なもので、修理をすることのできる管理人が常駐する[3]



関連項目

脚注

  1. ^ 森記念財団編集・発行『港区サーベイブック4 : 自転車に乗りたくなるまち : 自転車先進都市への転換』などによる。
  2. ^ 石田久雄・古倉宗治・小林成基『自転車市民権宣言 : 「都市交通」の新たなステージへ』リサイクル文化社、2005年 ISBN 4434056077
  3. ^ 石鍋仁美「ここまで進んだ欧州の脱クルマ」『日本経済新聞』1998年6月14日「Monday Nikkei 地球カレントアイ」。