美術書

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美術書(びじゅつしょ)とは、書籍の中でも美術を主題とする書籍の総称。

その編集形式はさまざまであるが、写真で作品の詳細を伝えるために大版、高価になるものが多いのが、他種類の書籍と異なる点である。一般に、展覧会カタログ、写真集なども含まれる。トピック別や作者別の全集などもある。

歴史

現在残っている日本で最も古い芸術美術分野の鑑定のための書は正和5年(1316年)を基点にした刀剣書『銘尽』で、国立国会図書館の貴重書画像データベースで見ることができる。[1] これらを含めた、美術書には以下のものが含まれる。

形態としては、巻物折本冊子体電子媒体などに別れ、装幀の方法で、和装本洋装本電子書籍などがある。 作業方法により筆写する写本、碑文等を墨で写す拓本、彫物を摺ったり捺印する印仏拓印版本、データ転送する電子図書がある。 美術の各分野(彫刻絵画版画デザイン工芸建築等)や地域によっても、それぞれ歴史は異なる。ここでは、分野順・地域順に記述する。

芸術・美術全般

彫刻

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

絵画

  • 日本
    • 作品類

信仰や美を目的として複数の他者へ伝達する書物には作品として扱われるものもある。仏像を捺印した摺仏の例は12世紀の<阿弥陀如来像>(奈良国立博物館蔵)がある[6]

現存する巻物形式(絵巻)の最古の作品は8世紀の<絵因果経>である[7]印刷された絵巻の最古作品は1391年(明徳2)、大阪大念仏寺蔵の<融通念仏縁起絵巻[8]がある。

作品としての美術書の代表格は1608年-1624年頃の嵯峨本である。本阿弥光悦版下筆、俵屋宗達版下絵による木版木活字版で京都嵯峨角倉素庵の私刊本で、<伊勢物語>や『観世流謡本』等が含まれる[9]

  • 絵入り写本
  • 絵入り版本
  • 画集・売立て目録・展覧会カタログ
  • 画論・画譜
  • 美術雑誌
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

版画・印刷

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

デザイン

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

工芸

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

建築

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

諸芸

  • 日本
  • 中国
  • 東洋
  • 西洋
  • その他の諸国

脚註

  1. ^ http://rarebook.ndl.go.jp/pre/servlet/pre_com_menu.jsp の重要文化財を検索
  2. ^ 『国華』(Webcat書誌所蔵情報
  3. ^ 『みずゑ』(Webcat書誌所蔵情報
  4. ^ 『日本・東洋古美術文献目録』(書誌所蔵情報
  5. ^ http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40069578&VOL_NUM=00000&KOMA=1&ITYPE=0
  6. ^ [1] 奈良国立博物館所蔵写真検索システム(名称「アミダ」を含む分類「印仏」で検索)
  7. ^ [2] 奈良国立博物館所蔵写真検索システム(名称「絵因果経」で検索)
  8. ^ 典拠:『原色図典日本美術史年表』(Webcat書誌所蔵情報:[3]
  9. ^ 典拠:『本阿弥行状記と光悦』Webcat書誌所蔵情報:[4]

印刷

カラー印刷では絵画の場合、原作の色彩を忠実に伝えることが重要。

流通

出版社

日本

アメリカ

イギリス

ドイツ

フランス

  • Flammarion(フラマリオン)
  • Hazan(アザン)
  • Marval(マーヴァル)
  • Contrejour(コントレジュール)

その他

  • TORST(トルスト)(チェコ)

書店

美術書の多くは対象とする美術品(絵画彫刻写真デザイン建築など)の写真を掲載するため大版となりがちでかさばること、また品動きも鈍いことから、一般の書店ではよほどの売れ筋でない限り在庫を持たないことが多い。店舗の中で美術書に一定以上のスペースを割く書店は多くはなく、特に美術全集を在庫として持つ書店は限られる。

美術書(和洋問わず、新本古本問わず。写真、デザイン、建築を含む)の品揃えに特色をもつ書店をあげる。

ナディッフ(NADiff)
表参道にある書店。東京池袋の西武百貨店12階の西武美術館横に店舗を構えていた芸術書中心の書店「アール・ヴィヴァン」が閉鎖されたのち、そのスタッフを中心に開店された。東京を代表する繁華街の一つである表参道と、日本で最も優れた洋美術書の品揃えのあったアール・ヴィヴァンの後を継いでいることもあり、選書の質は高い。
表通りからかなり奥に位置した地の利の悪さに加えて店舗スペースはかなり狭い。20世紀の大家のレゾネから、最近の実験的作品集まで取り揃えている。
店内に美術作品の展示スペースがあり、前衛的な演出も行っている。
オン・サンデーズ
外苑前ワタリウム美術館の地下にある洋書店。20世紀美術に関しては、絵画・彫刻・写真・建築・デザインとも、漏れのない豊富な品揃えである。ワタリウムの企画と連動した書籍を揃えていることも多い。駅からは遠いが、東京でもここにしかない本も多くある。
TSUTAYA TOKYO ROPPONGI
全国にFC展開するTSUTAYAの六本木にあるフラッグシップ直営店。ライフスタイルによる独特の棚割りをしている。美術書コーナーは比較的狭いが、在庫は意外と豊富。スターバックスとのブック&カフェで、どんな本でもコーヒーを片手にゆっくり選べる。すべての本にサンプルが出ており、中身をしっかり確認してから買える便利さがある。専門店のような仰々しさがなく、よい本を誰でも手に取れるハードルの低さが売り。デザイン、建築も豊富。
青山ブックセンター
六本木にある。
洋書ロゴス
渋谷のPARCOの地下にある割には、流行に流されることなく、地道な活動をしている。店名のとおり洋書のみの取扱いで、ファッション、デザイン、写真を中心とするが、青山ブックセンターのようにそれらのみに特化しているというわけでもない。スペースが広く、ナディッフやオン・サンデーズに比べてゆったりと書籍を見ることができる点が大きな強みである。
東京国立近代美術館ミュージアムショップ
竹橋にある。改装に伴い、別棟のようなスペースで開店。面積が狭いため、取り扱う書籍の数が限られている。また一般美術書(和書・洋書)よりも、近日の展覧会カタログ(過去のものを含む)やミュージアムグッズの販売に力を置いている。
東京都写真美術館ミュージアムショップ
恵比寿に、1995年の美術館総合開館とともにその1階に開店。もともとは、美術館自体が運営していたが、現在は、ナディッフに委託されており、「ナディッフ ×10」(「×10」は、「バイテン」と読む。「売店」と「8×10フィルム」を掛けているのか?)という名称がついている。写真に関する内外書を取り扱っており、特に、展覧会企画と連動した書籍に関連しては一見に値する。ただ、スペースが狭いこともあり、品揃えには限界がある。また、「ミュージアムショップ」であることから、ミュージアムグッズやポストカードなどにむしろ力を入れ、スペースを充てているきらいがある。
東京都現代美術館ミュージアムショップ
木場の東京都現代美術館内にあるミュージアムショップ。施主である東京都と設計者柳澤孝彦氏ともに、ミュージアムショップの必要性を考えていなかったようで、竣工時にはスペースはなく、竣工後に通路に急遽設けられた経緯がある。
ミュージアムグッズを取り扱うとともに書籍関連としては同美術館の展覧会カタログと内外の現代美術書を取り扱っているが前記の設営当初のまま売り場スペースが不足している。美術館に寄ったついでに立ち寄るには適している。

大規模書店

売り場面積にあわせ、美術書もそれなりに揃っている可能性が高い。ただし、郊外型の大規模書店は売れ筋以外は期待できない。

丸善丸の内本店
丸の内にある。「洋書の丸善」であり、洋美術書に関しても、一般的には遜色はない。しかし、写真に関しては、絵画に関する洋美術書に比べると品揃えは数段落ちるので、注意が必要である(日本橋本店の時代からそうである)。
ジュンク堂書店 神戸本店・大阪本店・池袋本店
一般書店だと侮っていると、その洋美術書の品揃えに驚くことになる。写真に関しては丸善をしのいでいるといってよい。また、写真以外の絵画等に関しても、20世紀以降に偏っていたり、他の書店で見られないような書籍を手に取れるような、明らかに他の書店との差別化を狙った品揃えとなっている。
八重洲ブックセンター
八重洲にある。

古書店

源喜堂書店
神保町で美術書を探すのであれば、ここを避けて通ることはできない。内外の美術書、展覧会カタログ、雑誌などが多数取り揃えられている。かつては日本の写真展のカタログは一般的に弱かったが、次第に強くなってきている。
悠久堂
神田にある
魚山堂
写真集専門。
閑々堂
東銀座にある。

東海

マナハウス
名古屋市中区にある。
パルコブックセンター名古屋店
地区、矢場町にある。

関西

アセンス
心斎橋にある。
メディアショップ
京都市にある。

その他、通販など

アートアンドブックス
もともとカタログによる通販のみを行っていたが、現在は泉岳寺に店舗も設けている。取扱いは洋美術書のみで、そのカタログは1988年から作成されているが、他に類似のものがないため、洋美術書探索のための貴重な資料となっている。

美術書の検索

美術書(図版を主たる内容とするもの)の検索・探索には、用途によって特異な問題がある。

  1. まず、図版が目的である場合、本文の言語が限定されない。極端な例では、ドイツ語が読めなくても、ドイツ語の美術書でかまわない、ということである。つまり選択の対象となる本の冊数は増大する。したがって検索に使用する書名や作者名は多種多様になり、調査が煩雑で手間がかかる。
  2. 次に、図版が目的に合致するかどうかは、実物を確認しないとわからないことが多い。例えば日本国内で日本の美術についての本を探し閲覧するのは容易である。しかし洋書となると所蔵や流通の少なさからそれが困難になってくる。本来その本が最も多く流通している場所に行けないならば、通信販売で購入するか、所蔵機関を見つけて問い合わせるくらいしか手段が無い。

例えば、次のような例を考えてみよう。

デ・キリコ以外の画家による形而上絵画のカラー図版が、50点程度掲載されている美術書を探す」(図版がもっと多ければ、その方がいい)

誰でも使えるような一般的な手段でこのような美術書の検索はほぼ不可能である。2006年12月の時点で、図版数やそれの性質に特化したデータベースは存在しない。強いて言うなら、通常の書籍の検索でキーワードを工夫する、一般書や雑誌論文の参考文献リストにあたる、などである。または形而上絵画に詳しい専門家(学芸員学者、美術館図書室または美術系大学・学部の図書室の司書など)に質問するということもできる。いずれにせよ多少の美術に関する知識、語学の能力が前提である。

美術書と図書館

美術書は、高価なこともあり、一般の公立図書館には、かならずしも、網羅的に所蔵されるわけではない。また、特に、次の2種の美術書については、公立図書館の所蔵対象からは一般にはずされているため、公立図書館で閲覧することは、特殊な例を除いて、極めて困難である。

  • (国内の)展覧会カタログ
  • 洋美術書(展覧会カタログを含む)

ただし、美術館が、美術館内の図書室を一般公開している場合があり、そのような図書室であれば、上記2種の美術書についても、閲覧することは可能である(とはいえ、資料収集にはもちろん限界があり、網羅的に所蔵されているわけではない)。そのような図書室としては、主として次の図書室を挙げることができる(順不同)。

いずれも、図書貸出はしていないが、閲覧・複写はできる。また、上記の各図書室については、いずれもネット上での所蔵図書検索が可能である。

美術書の具体例

2006年の美術書

  • 全集もの
    • 西洋絵画の巨匠(全12巻・小学館)(2月刊行開始、2007年1月に完結)
    • 美の20世紀(全16巻・二玄社)(10月刊行開始、2008年4月に完結)
  • 単行書
    • 写真、「芸術」との界面に(光田由里青弓社)(書評:読売新聞2006年10月1日)
  • 文庫・新書
  • ムック
  • パートブック(分冊百科)
    • 名作写真館(小学館・全30巻)(2月刊行開始、9月完結)
    • 週刊人間国宝(朝日新聞社・全70冊)(5月刊行開始、2007年9月完結)

2007年の美術書

  • 全集
  • 単行書
    • 大正期新興美術資料集成(五十殿利治・他、国書刊行会)
    • 世界のグラフィックデザイナーのブックデザイン(小柳帝、PIE)
    • 国際構成主義―中欧モダニズム再考(谷本尚子、世界思想社)
    • 大辻清司の写真-出会いとコラボレーション(大日方欣一・光田由里編、フィルムアート社)(書評:読売新聞2007年9月23日)
    • 光のプロジェクト(深川雅文、青弓社)
    • ブラッサイ パリの越境者(今橋映子白水社
  • 文庫・新書
  • ムック
  • パートブック(分冊百科)
    • 週刊アーティスト・ジャパン(日本画家の巨匠たち)(全60号・デアゴスティーニジャパン)(1月刊行開始、現在継続中・毎週火曜日発売)

2008年の美術書

  • 全集もの
  • 単行書
    • すぐわかる20世紀の美術―フォーヴィスムからコンセプチュアル・アートまで(千足伸行・東京美術)
    • ルネサンス美術館(石鍋真澄監修・小学館)
    • 西洋名画の読み方2(19世紀中期-20世紀)(ジョン・トンプソン、創元社)(注:「1」は2007年刊行)
    • フェルメール論―神話解体の試み(増補新装版・小林頼子・八坂書房)
    • 日本の写真家101(飯沢耕太郎編・新書館)
    • 時代をつくった写真、時代がつくった写真 戦後、写真クロニクル(鳥原学編・日本写真企画)
    • 日本芸術写真史 浮世絵からデジカメまで(西村智弘・美学出版)
  • 事典類
    • ロシアアヴァンギャルド小百科(タチヤナ・ヴィクトロヴナ・コトヴィチ、桑野隆訳、水声社)
  • 復刻
    • 満洲グラフ・全15巻(財団法人満鉄会・監修、ゆまに書房)(2009年年末までにかけて、全4回配本)
  • 文庫・新書
    • フォト・リテラシー(今橋映子・中公新書1946)
    • 肉声の昭和写真家―12人の巨匠が語る作品と時代(岡井耀毅・平凡社新書429)
  • ムック
  • パートブック(分冊百科)
    • 週刊 世界の美術館(全80巻・講談社)(7月刊行開始、現在継続中・毎週木曜日発売)

2009年の美術書

関連項目

外部リンク