皿うどん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。丹の字 (会話 | 投稿記録) による 2012年2月24日 (金) 11:39個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (183.176.5.73 (会話) による ID:41368325 の版を取り消し)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

京都の飲食店で出された細麺
写真からは麺が具に隠れてよく見えないが、長崎の太麺

皿うどん(さらうどん)は、長崎県郷土料理。名称からはうどんの一種と思われやすいが、多くのものは焼きそばに近い。

調理法

まず鍋を熱してラードサラダ油を敷き、カキイカエビなどの魚介類豚肉かまぼこ竹輪などの具材を炒める。続いてキャベツもやしなどの野菜を加え、を入れて豚骨などでとったスープをからませる。最後に、水溶き片栗粉でとろみをつけたを麺の上にかける。

概要

長崎市四海樓で、ちゃんぽんと同様に陳平順が考案したとされる。元々はちゃんぽんを出前用にアレンジし、配送時にこぼれないよう汁を少なくしたものだった[1]。なお当時から長崎ではちゃんぽんの出前が盛んで、蓋をつけた専用の丼も作られるようになった。このような経緯から当初の麺や具材はちゃんぽんとほぼ同様であり、現在でも「ちゃんぽん・皿うどん」のように一緒に紹介されることも多い。見た目が皿に盛った焼きうどんのようだった事[2]などから「皿うどん」の名が付き、その後堅焼きそばが伝わって長崎で発展し、同じように皿うどんと呼ばれるようになったといわれている。

九州では全体的に人気が高く、2004年11月に九州の地方銀行シンクタンク6社が共同で行なった郷土料理の調査では、「ちゃんぽん・皿うどん」は、知っているか、食べた経験があるか、食べたいかの3部門全てについて回答者の90%以上が肯定し、1位を獲得している[3]

尚、福岡市周辺で『皿うどん』と言えば、『博多皿うどん』を指しており、長崎の皿うどんとは別のものである。昭和50年代頃から福岡でも『長崎皿うどん』の知名度が上がり良く食されるようになった為、近年では混同を避ける為『長崎皿うどん』『博多皿うどん』と区別して呼ぶ事が多い。福岡の中華料理店で『皿うどん』と注文すると『博多皿うどん』が出てくる事があるので注意されたい。

標準的な『博多皿うどん』はちゃんぽん程の太さがある中華麺を豚骨ベース中華餡とともに炒めてあり、具材はエビ・イカ・豚肉・鳴門カマボコ・キャベツ・ニンジン・タマネギ・キクラゲ・シイタケ等多彩で、味覚的にはちゃんぽん博多ラーメンと近いものがあり、麺にスープの味がしみ込ませてある事が多い。『博多皿うどん』は昭和初期に現在も営業を続けている福岡市の中華料理店『福新樓』の料理人張兆順が開発したとされている。福新樓によれば、「正式名称は“福建炒麺”。日もちのしない生麺を煎めることで、麺は熟成し、味の深みが増し、海綿状になった麺にスープが染み込み、濃厚な味を作り出す」とされている。

細麺と太麺

は、主に二種類、で揚げた細麺(通称パリパリ、バリバリ、バリ麺)と、中華麺ちゃんぽんの麺)を焼いたものである。細麺はあんかけ、太麺はやきそばの様に他の具材と一緒に炒める店もある。店によっては専用の太麺・中くらいの太さの麺を用いたりする。注文の際何も言わなければ細麺が出てくる店があることから、観光客や長崎以外の地域の人には細麺の方が一般的と思われ、太麺は地元以外ではあまり知られていない。地元でも太麺派と細麺派に分かれる。

長崎県における皿うどん

大人数分を一度に注文し、大皿から各自取り分けて頂くのが地元の食べ方。祝い事の時や、職場で残業時にこれを出前で取る、ということもある。また、長崎ではウスターソースをかけて食べるのが一般的であり、テーブルに酢の常備が無くてウスターソースが当たり前のように常備されていることが多いが、店によっては特製のを用意している場合もある。また、このソースは、出前などにおいて栄養ドリンクのような、遮光ガラスの瓶に入れて配達されるのが一般的である。

宝来軒の特製皿うどん
名称について

同じ長崎県内でも県南地域と県北地域では細麺と太麺の呼称に対する認識の違いがある。「皿うどん」としてオーダーした場合、長崎市周辺地域では細いパリパリ麺にて調理したものが出てくるが、佐世保市周辺地域では太いちゃんぽん麺を使用したものが出てくる。地元民でも皿うどんについては混乱する事が多く、注文する際は太麺もしくは細麺である事を確認した方が無難である。

学校給食

長崎県では小学校給食に皿うどんが出ることがある。このときの麺は細めんである。ただし、煮込まれているためパリパリ感はない。しかし近年はインスタントラーメン状に袋詰された細麺タイプのものが出る地域もある。椀に入れられた具入りの餡に麺を入れて混ぜて食べる。好みによって麺をバリバリに砕いたりなどもする。なお、ちゃんぽんも出る。

関東地方における皿うどん

皿の淵に和からしが添えられ、飲食店では食卓に酢が用意されている。 また、ラー油や酢醤油、小口ネギ、紅ショウガ等々を添えて出す場合もある。

商品展開

関連項目

参考文献

  • 長沢利明「ああ、長崎は今日も皿うどん」『食の学舎』、Vol.3(1)、P.76-77、2002年

脚注

  1. ^ 長沢、2002年、P.77
  2. ^ 長沢、2002年、P.76
  3. ^ 長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島の5県について8品ずつ40品目の代表的な郷土料理・名産品を挙げ、佐賀県を加えた6県で調査を行なった(朝日新聞 2005年6月10日付 朝刊、熊本地方面、P.30)
  4. ^ 商品ホームページ
  5. ^ 朝日新聞 2008年1月19日付 朝刊、経済面、P.11

外部リンク