旗艦

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旗艦(きかん、はたぶね、Flagship)とは、海軍用語で、司令官(司令・司令長官などを含む)が座乗し、指令・命令を発するである。海上自衛隊では「はたぶね」と読む。

語源

複数の海軍艦艇からなる部隊の指揮官が座乗する艦または艇には指揮官旗(flag)が掲げられる。この艦を旗艦と呼ぶ。なお、旗旒信号(きりゅうしんごう)はsignalである。

変遷

元々旗艦が誕生する背景には、海戦において戦術的な艦隊が形成し始めた「艦隊戦」の登場による。そして使用される艦種は時代と共に変遷した。

木造帆船時代

司令官とその幕僚を乗せて、艦隊に指示を出す高いマストを有する艦、すなわち艦隊で最大の戦列艦が旗艦とされ、中でもトラファルガー海戦に勝利した英国ネルソン提督の旗艦「ヴィクトリー」が有名である。

前弩級艦時代

無線による意思疎通が始まった時期だが、重要な命令は旗によった。戦闘では司令官は艦隊を率いる先頭艦に座乗する。そこで木造帆船時代と同様、最大最強の艦を旗艦とした。日本海海戦で活躍した東郷平八郎が座乗した連合艦隊旗艦戦艦三笠」が現在も横須賀にあり一般公開されている。

第一次世界大戦~第二次世界大戦初期

無線による指令・命令が一般的に使用されるようになった。また司令部に属する人員の数も増えたため、旗艦用に特に居住区を設置した艦も作られた。第一次世界大戦時のドイツ海軍の旗艦戦艦「フリードリッヒ・デア・グロッセ」は特に旗艦用として居住区を設けていた。

第二次世界大戦中期以後

従来旗艦として使っていた戦艦は、航空機の攻撃に対して鈍重すぎて時代遅れになりつつあることが明瞭となった。また情報伝達量の飛躍的増大を受け、高速力で通信能力に優れた艦を旗艦とするようになった。昭和19年5月に日本の連合艦隊旗艦となった軽巡洋艦大淀」が代表例。

現代

艦固有の運動力(速力)・攻撃力・防御力よりも指揮・通信能力が最重要視されるようになった。米国第7艦隊旗艦「ブルー・リッジ」の艦種は「揚陸指揮艦」であり、指揮・通信能力や居住区は十分あるが戦闘能力はほとんど無い。日本の海上自衛隊護衛艦たちかぜ」も、護衛艦隊旗艦になる際に2番砲塔を撤去して司令部施設を設けていた。(2010年6月に退役した「さわかぜ」を最後に海上自衛隊護衛艦隊では旗艦運用は廃止され、現在海上自衛隊護衛艦隊旗艦は存在しない。)

転用

上記の意味が転じ現代では「旗艦」を、同一会社の中で最大の設備・規模を有する中核店舗・工場を指す場合もある。(※)
  例)某デパートの本店、某工業の本社工場。ヒンデンブルク号はツェッペリン社が有する最大の飛行船で旗艦と呼ばれた等。

フラグシップ

フラグシップ機の記事も参照。

他の多くの海軍用語と同様、“旗艦”(フラグシップ)もほかの用途に転用されて、日常的な用語として使われる。この場合、集団やグループの“最も重要な位置付けにあるもの”を指すが、この“最も重要な位置付け”とは、通常、ステータス性を持つものや戦略的に重要なものとしての位置づけである。

利益を上げることを目的とした「営利企業」という存在においては、利益を生み出す製品が主力製品といわれ“最も重要な位置付けにあるもの”であるが、企業の製品に対して用いられる「旗艦製品」という呼称は、会社の利益を支える最多販売製品であることよりも、絶対額としての利益への貢献は少ないかもしれないがその会社の技術の粋を尽くしてつくられた最高価格製品を指して用いられる。

製造業の企業ではフラグシップ・プロダクト(例:自動車メーカーにおける、そのメーカーの最高級車)、小売業のチェーンストアでは先駆的な試みをする位置付けの店舗としてフラグシップ・ストア(旗艦店)のように形容詞的に用いられる。ラジオやテレビなどの放送網にあってはキー局(ホーム・ステーション)をフラグシップ・ステーションのように表現される。

他方、小説における旗艦の位置付けは比較的大雑把な用いられかたが多い。例えばSFテレビドラマや映画の『スタートレック』シリーズにおける USS エンタープライズ号は、その他の多くの宇宙艦に乗船している高位の階級の部隊指揮官は座乗していないが、惑星連邦の旗艦としてしばしば紹介される。

関連項目

参考図書

  • 世界戦艦物語 福井静夫著作集第6巻 1993年8月 光人社
  • 近代戦艦史  世界の艦船1987年3月増刊号  海人社
  • 世界の艦船  2004年1月号

外部リンク