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小法廷

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小法廷(しょうほうてい)とは、最高裁判所における、裁判官5人で構成される合議体、あるいは5人の合議体で審理する場合の最高裁判所における法廷のこと。定足数は3名。

概要

第一・第二・第三の3つの小法廷がある。

最高裁判所の裁判官は、下級裁判所裁判官を務めた者以外からも任命されるが、各小法廷には出身分野の偏りが生じないよう、裁判官が振り分けられている。おおむね1つの小法廷につき、裁判官出身から2名、弁護士出身から1 - 2名、検察官出身から0 - 1名、法曹以外出身の行政官外交官法学者らから1名の配分だが、一時的に崩れることもある。

最高裁に上告申立てのあった事件はまず小法廷に係属する。小法廷の裁判長は固定されておらず、事件ごとに小法廷所属のいずれかの裁判官に割り当てられる。違憲判決が下される場合等、重要な事件は小法廷から大法廷に回付される。それ以外の多くは公判口頭弁論を開くことなく、書面審理のみで原判決の結論が維持される(三行決定)。法廷を開いて当事者による弁論が行われる場合は、何らかの形で原判決が見直される可能性が濃厚である。ただし、死刑事件に限っては、慣例として必ず公判を開いて弁論が行われる。

各小法廷が共通の法律問題を含んだ事件を抱えている場合に、仮にそれぞれの解釈が異なっていると、一つの小法廷が先行して判決を出した場合は他の小法廷は不本意ながら同じ趣旨の判決を出すか、あるいは事件を大法廷に回付して先行判決の変更を求めるかしなければならないので、判決の前にお互いの考え方を確認しておくために各小法廷が一堂に会して事実上の意向確認をする[1]。3小法廷が一堂に会する場合は「事実上の大法廷審議」と呼ばれる[1]。慣例的に小法廷に出席しない最高裁判所長官は「事実上の大法廷審議」にも出席しない[2]

長官と小法廷

  • 最高裁判所長官もいずれかの小法廷に所属する。
  • 長官は内閣総理大臣衆議院議長参議院議長と共に「三権の長」の1人として、司法行政事務や外部の公式行事があり裁判所内外の業務で多忙になるためか、小法廷の個々の事件の審理に関与しないことが慣例である[3]。このため、長官の所属する小法廷に係属した事件は、基本的に長官を除く4人の判事によって審理されている。
  • 長官が小法廷の審理に関与することは可能で、その場合は必ず長官が裁判長を務める。
  • 第4代長官の横田正俊は小法廷の審理に関与し続け、長官時代に少なくとも3件の審理に関与して裁判長として判決を言い渡した[4][5][6]
  • 最高裁判所判事を経ずに第17代長官に就任した竹崎博允は、就任時に小法廷の審理に関与する意向を表明し、少なくとも4件の審理に関与して裁判長として判決を言い渡した[7][8][9][10]
  • 長官の人事により、長官が所属する小法廷において裁判官2人のうち民事裁判官が長官のみとなってしまう場合、小法廷構成上の理由から裁判官会議の議を経た上で、長官の小法廷が配置換えになった事例もある[11](例として矢口洪一草場良八三好達町田顯寺田逸郎)。

小法廷の構成

(2019年10月2日現在、太字は長官)

第一小法廷 第二小法廷 第三小法廷
裁判官出身 小池裕
深山卓也
大谷直人
菅野博之
戸倉三郎
林道晴
弁護士出身 木澤克之
山口厚
草野耕一 宮崎裕子
検察官出身 池上政幸 三浦守 -
行政官出身 - 岡村和美 林景一
法学者出身 - - 宇賀克也
  • 山口厚は弁護士出身の枠で任命されているが、経歴の大部分は法学者で、弁護士登録していた期間は1年未満である。
  • 岡村和美は行政官出身の枠で任命されているが、弁護士、検察官の経歴もある。

脚注

参考文献

  • 野村二郎『日本の裁判史を読む事典』自由国民社、2004年。ISBN 4426221129 
  • 泉徳治『一歩前へ出る司法』日本評論社、2017年。ISBN 4535522197 

関連項目

外部リンク